2019年3月22日 (金)

企業不祥事による信用毀損に保険金が出るそうです

3月21日の日経朝刊に「企業不祥事に保険」との見出しで、東京海上日動さんの新しい保険開発について報じられています。企業不祥事発生時における企業のブランド価値の毀損を保険で賄う、とのこと(4月から販売開始)。食品への異物混入や情報漏えい、施設内事故、従業員による不適切行為などが保険の対象のようですが、組織的な違法行為は除外とされています。

補償限度額は約1億円で、具体的には第三者委員会の費用や弁護士、コンサルタント会社への相談費用等が想定されているようです。新聞が報じるように、こういった保険の開発が予防意識の向上につながればよいと思います。ただ、第三者委員会がまじめに仕事をすればするほど、保険を使いたい会社側の意思とは離れていきますね。件外調査を含めてフォレンジックス調査を厳格に行えば費用は著しく増えますし、また新旧にかかわらず「経営陣による指示があった」と第三者委員会が認定すれば保険会社が免責される可能性が高まります。そうなりますと、「なんちゃって第三者委員会」(会社側の意思を上手に忖度して「第三者委員会」のふりをする委員会)が出現する可能性がこれまで以上に高まるのではないでしょうか。

また「ブランド毀損を防ぐ」ことが目的であれば、たとえば世間に公表していない不祥事などはどうなるのでしょうか。公表しないための危機対応などにもかなり費用は要しますし、公表されずとも内部告発対応の支援なども「ブランド毀損の防止」といえそうです。いずれにしましても、保険金が出るための要件というのも、かなり微妙な場面が予想されるのではないかと思います。


| | コメント (0)

2019年3月20日 (水)

ココログのリニューアル作業のためブログ更新が遅れました。。。

日経法務面のアドバネクス前会長解任決議不存在判決(地裁判断)やLIXILのCEO解任に向けた機関投資家の動きなど、いろいろと興味深い報道がされておりましたが、ココログさんのリニューアル作業のためタイムリーなアップができませんでした。アドバネクス社の裁判報道は以前の記事の続編ということですね。また、頃合いをみながらコメントを書きたいと思います。とりあえず祝・復旧(?)ということで。

| | コメント (0)

2019年3月18日 (月)

伊藤忠とデサント、「ガバナンス・コスト」はどちらが負担するのか?

すでに報じられているとおり、伊藤忠商事によるデサント株式へのTOBが成功し、伊藤忠はデサントの40%の株式を保有することになりました。伊藤忠の思惑通りに買付けが進んだわけですが、大企業による敵対的TOBが成功した例は極めて珍しいそうです(たとえば朝日新聞ニュースはこちらです)。昨日(17日)、TOB成立後としては初めて、両社が今後に向けての協議を行ったそうですが、デサントの創業家社長さんは退任する方向で協議が進められていると報じられています(産経新聞ニュース)。

今後はデサントの取締役会の構成をどうするか・・・、といったところで双方の意見に食い違いがあるようですが、私がもっとも関心があるのは「今後、デサントの経営に伊藤忠が主導権を握るのであれば、そのガバナンス・コストはどっちが負担するのだろうか?」という点です。友好的なM&Aであれば(円満な協議によって)コストは双方が負担し合い、またそれほど大きなコストにはならないと思います。しかし、今回のように敵対的TOBによって経営支配権が変わる場合(40%の株取得→経営陣の交代)、従業員の多くも経営権交代に反対を表明しているわけですから、伊藤忠の経営方針をデサントに浸透させるためには多大なコストがかかるはずです。

たとえば新たな経営陣の人的資源(報酬を含めた)の投下、PMIの実効費用(通常は100日プランと言われていますが)、(TOBに反対を表明している)従業員とのコミュニケーションコスト、デサントの経営の「見える化」に向けた内部統制コストなどです。デサントは一貫してTOBには反対を表明していますし、また両社の企業規模には相当の差がありますので、おそらく伊藤忠側でガバナンス・コストを負担するものと思います。ただ、そうであるならば、これだけのガバナンス・コストを負担してでも、デサントと伊藤忠に資本コストを上回るだけのシナジー効果があることを説明できなければならないはずです。伊藤忠経営陣による威圧的な買収と(いまでも)囁かれているわけですから、そのあたりの合理的な説明がなければ「過去の遺恨による『弱いものいじめ』にすぎなかった」と言われてしまう気がします。

今年6月には政府(経産省)からグループガバナンスの実務指針が公表される予定です。積極的なM&A戦略が進む日本企業において、いままで「手つかず」だったグループガバナンスの在り方が示されます。友好的M&Aであれば経営判断として「管理強化」か「放任主義」か、といった選択肢もありそうですが、敵対的TOBによるM&Aとなりますと「放任主義」とはいかないでしょう。今回の伊藤忠、デサントの攻防も、TOBや株主総会が終了した後も、様々な面で世間の関心の的になるものと予想しています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年3月14日 (木)

日本監査役協会における研修(受講)に関する御礼

本日はご報告のみです。毎年恒例となりました公益社団法人日本監査役協会における春季研修講演ですが、今年は「内部通報制度の最新事情とその有効活用-近時の企業不祥事例から学ぶものは何か」と題するテーマで講演をさせていただきました。7会場、延べ2500名を超える監査役、監査委員、監査等委員の皆様に聴講いただきました。ご来場いただいた皆様、どうもありがとうございました。(大阪 2月14日・ANAクラウンホテル、15日・監査役協会関西支部会議室、九州 2月19日・TKPガーデンシティ博多新幹線口会議室、東京 3月5日~7日・東京プリンスホテル、名古屋 3月11日・ミッドランドホール)

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2019年3月13日 (水)

大塚家具、なぜ監査等委員会設置会社から監査役会設置会社へ戻るのか?

3月11日の大塚家具さんのリリースによりますと、同社は、3月31日開催予定の定時株主総会において、監査役会設置会社に移行するための議案(定款変更議案)を上程するそうです。同社は2017年3月に監査等委員会設置会社に移行したばかりですから、わずか2年で従前の監査役会設置会社に戻ることになります。3月12日の朝日新聞朝刊記事によれば、「意思決定のスピードを重視するため」(広報)に戻すそうです。

しかし、2年前の同社リリースでは、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行する理由として、以下のように開示しておられます。

監査等委員会設置会社への移行について   (1)移行の理由
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、社外取締役の複数選任及 び役員の指名・報酬に係る任意の委員会設置など、コーポレートガバナンスの充実・強化に継 続的に取り組んでまいりました。今般、取締役会の監督機能を一層強化するとともに、経営の 意思決定をより迅速に行い、更なる企業価値の向上を図るため、監査等委員会設置会社へ移行 するものであります。

つまり、同社は(世間でよく言われるように)取締役会の監督機能の強化と迅速な意思決定のために監査等委員会設置会社へ移行しました。しかし、実際には監査役会設置会社の時代のほうが意思決定は迅速だった、ということのようです。ちなみに大塚家具さんのように、任意の指名・報酬委員会を持つ監査等委員会設置会社では、情報収集権を持つ監査等委員である社外取締役が、任意の委員会委員を兼務することでパフォーマンスを発揮しやすいと言われていますが、それでも実効性に乏しかったということなのでしょうか。なぜ監査等委員会設置会社ではスピード経営が実現できなかったのか、その真相をぜひとも知りたいところです。

三井住友信託銀行さんの調査では、2018年6月時点で監査等委員会設置会社は927社にまで増加しているそうです。しかし、すでに関西では複数の企業が監査等委員会設置会社から監査役会設置会社に復帰していることはご紹介済みですが、関東の企業にも「復帰」の兆しがみえてきたのかもしれません。また「復帰」とまではいかずとも、スピード感がないとして、社外監査役から横滑りしていた監査等委員全員を「総入れ替え」した関西企業もありました(旬刊商事法務の論稿で、ISSの日本法人代表の方が紹介されていました)。そもそも立案担当者は、制度開始にあたり「指名委員会等設置会社への移行過程として活用していただきたい」と説明しておられましたが、いまのところ指名委員会等設置会社に移行した監査等委員会設置会社は皆無だと思います(もしあれば教えてください)。

2月4日に日本監査役協会から公表された監査等委員会設置会社アンケート調査結果(選任等・報酬等に対する意見陳述権に関連して監査等委員会設置会社に期待される検討の在り方について)を拝読しましたが、経営執行部の意向とは異なる意見を株主総会で実際に陳述した企業がわずか3社(2018年の株主総会における。回答企業は450社)とのこと。会社法の機関である監査等委員会と任意機関である指名・報酬諮問委員会との関係もかなりグレーなままの企業が多いようです。取締役の選任や報酬について、総会上程議案とは別に広く審議、意見形成をしたと回答した会社も全体の3割程度ということで、うーーーん、かなり問題山積の状況ではないでしょうか。

ただ、社外監査役さんは社外取締役に「横滑り」できますので監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行は比較的容易ですが、社外取締役さんが社外監査役に横滑りすることはできませんので(会社法の決まりです)、戻りたいと思っても人材面で困難が伴う、ということになります。コーポレートガバナンス・コードの改訂や開示府令の改正、そして会社法改正に伴う事業報告の詳細化など、後継者選任プロセスや報酬決定プロセスの公正確保の要請が高まる中で、どのように取締役監査等委員が善管注意義務を尽くしていくべきか、経営評価権能を持つ監査等委員固有のリーガルリスクも含め、真剣に検討すべき時期に来ているものと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年3月12日 (火)

日産自動車のガバナンスから前会長の取締役会出席不許可決定を考える

3月11日の各メディアが報じるとおり、保釈中の日産前会長が3月12日の日産取締役会に出席できるよう地裁に許可申請を行ったところ、東京地裁は出席を許可しませんでした(準抗告も棄却とのこと)。ご承知のとおり、前会長さんは日産の取締役として、取締役会に出席する義務があるわけですが、保釈条件として「出席には地裁の許可を要する」とされておりましたので欠席には正当理由がある(善管注意義務違反には該当しない)、ということになります。

「3月8日に、前会長が出席の許可申請を出した」と報じられた際、私は特別な事情がないかぎり、許可決定は出るだろうと予想しておりました。といいますのも、「証人威迫のおそれがある」「利害関係人と接触するおそれがある」といった刑事手続の公正性を害するような危険性の有無で(出席の可否を)判断するのであれば、たとえば弁護人を同席させることで危険性を低減させたり、取締役会の議長の議事進行権によって一部の審議から前会長を排除することで足りるものと考えたからです(実際、弁護人から「同席」に関する提案は出ていたようですね)。

私見としては、刑事手続の公正性確保は、日産の取締役会の運用によって担保することは可能だと思いました。たしかに産経新聞ニュースが伝えるように、日産の反対理由として報じられているところは、(1)前会長は取締役を解任される予定で出席の必要がない(2)事件関係者が出席するため、証拠隠滅の恐れがある(3)議事進行への圧迫となる可能性がある、とのことだそうです。しかし、これらの理由にはどうも違和感をおぼえます。①そもそも取締役を解任するのは株主総会なので、日産の経営陣が「解任の予定」というのは理由にならないですし、②前会長は、もはやルノー、日産とも指揮命令系統からはずされていますので証人を優越的地位によってコントロールできる立場にはありません。さらに③前会長は、現在、取締役会議長ではありませんので、現議長が議事進行権を行使すればなんら証人圧迫のおそれもないはずです。なによりも、ここに記載された日産の反対理由を前提とするのであれば、そもそも「出席を許可制とする」という扱いではなく、はじめから「取締役会への出席禁止」という保釈条件を付していれば足りるはずです。

この10年間の日産におけるガバナンスが(事件発覚後に)何ら語られてこなかったにもかかわらず、前会長が保釈されるや否や「証人威迫のおそれ」とか「取締役会の議事が混乱する」といわれても、どうも唐突感が否めません。世間で作られたイメージだけで「証拠隠滅のおそれ」があるということになってしまうのでしょうか(むしろ事件発覚までの10年間にマスコミの作り上げたイメージはとてもクリーンだったように思います)。

ただ、それでも今回の出席許可申請に対して日産側から「取締役会の議論に影響する」との理由で反対意見が出された重みはありそうです。つまり、日産側としては①今回の取締役会では、前会長の解任に関する(臨時株主総会への)上程議案に関する審議が行われる予定であり、前会長が決議だけでなく審議にも加わることことになれば「会社法369条2項に基づき、特別利害関係人による審議への参加は議案に影響を及ぼしかねない」と判断されること、②日産は社内調査の結果に基づき、前会長に対する損害賠償請求を検討しているところ、このような状況において前会長が出席したとしても、そもそも自己の利益よりも会社の利益を尊重して審議に参加すること(取締役としての善管注意義務を尽くすこと)が期待できない状況にあること、③すでに保釈中である前代表取締役のグレッグ・ケリー氏も、同様の理由から取締役会には欠席していること等から、反対意見が出されたのではないでしょうか。そうであるならば、地裁はこの日産の自律的判断を尊重せざるをえないと考えます。

もちろん、特別利害関係にあり、また会社側と利益相反状況にある取締役も、会社側が積極的に出席を要請すれば、すくなくとも審議には出席が認められるはずです。しかし日産側は保釈された前会長に説明を求めるような意思は全くないことが明確になりました。つまり、このたびの地裁の不許可決定は、こういった日産側の自律権を尊重したうえで(日産側からの反対意見が出されたことを重視して)判断されたものと考えます。未確定報酬の開示や損失の付け替え、知人への資金援助とは別に、あまり起訴事実とは関係のないような前会長の不適切行為に関する報道が諸々出されていましたが、それらは日産と前会長との民事賠償の請求根拠にはなりうる、という意味において、このような場面で意味を持つように思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年3月11日 (月)

東証の市場区分において検討すべき「コーポレートガバナンス基準」

東証において、市場第一部への上場に必要な時価総額を引き上げること、市場区分を変更することが検討されていることはこちらのエントリーなどでも述べたところですが、RMBキャピタルさんは「第一部を時価総額による基準で峻別することは反対」「コーポレートガバナンスによる上場基準を新たに設置すべき」との意見を表明しておられます(この意見内容を伝える時事通信ニュースはこちらです)。私も基本的にRMBキャピタルの意見に賛同いたします。

この6年ほど、ガバナンス改革の施策として、ポピュレーションアプローチとしての「コーポレートガバナンス・コード」「スチュワードシップ・コード」を深化させ、またハイリスク・アプローチとして機関投資家による集団的エンゲージメントを促すことにより、一定の効果が得られたようです。しかしながら、どうも日本企業の特質(集団が他の集団に及ぼす日本企業独特の影響)をみると、このようなアプローチを補完するものがなければガバナンス改革の目的は達成できないように思えます(たとえば後継者育成、後継者の選解任プロセスの透明化、報酬ガバナンス等)。RMBキャピタルの意見にもありますように、たとえば東証ルールによって(1部やプレミアム市場に上場する会社には)指名・報酬委員会の強制、過半数の独立社外取締役の選任の義務化、といったことがなければ、ガバナンス改革の深化も限界が来るのではないかと。

RMBキャピタルさんも指摘しているように、ここへきて機関投資家の方々が「守りのガバナンス」への関心を高めています。以前であれば、企業不祥事が発覚した企業の株価は(ほとぼりが冷めたことに)上昇することが見込まれていたのですが、2014年に導入されたスチュワードシップ・コードの影響によって株価の低下率が大きくなり、また株価が戻りにくくなりましたので、アクティブ・パッシブいずれにおいても「守りのガバナンス」に関心が高まるのは当然かと思います。

もちろん、東証では、これまでも内部統制に問題がある企業は「特設注意市場銘柄」に指定することをもって市場に注意を喚起することはしていますが、これも(企業不祥事等の発生を前提とした)「事後規制」であり、事前規制として活用されているわけではありません。いま機関投資家が求めているのは「事前規制」であり、そこに(恣意性を排除した形での)ガバナンス体制による基準を設置する実用性があるように思います。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2019年3月 6日 (水)

日産前会長の裁量保釈はなぜ許可されたのか?(冷静に考える)

昨年12月21日および一昨日のエントリーで予想したとおり、日産の前会長さんの裁量保釈が三回目の請求により許可されました。5日深夜の報道によると検察の準抗告を裁判所が棄却したということで、これでようやく前会長弁護人は検察と対等に攻撃・防御ができる地位に立ったと思います。

これまでのエントリーをお読みになればおわかりのとおり、三回目の保釈請求は「機が熟したから」許可されたのであり、交代前の弁護人の方でも許可された可能性はあったと考えています。①司法制度改革の時代における保釈の在り方(とりわけ公判前整理手続きとの関係)を現役裁判官が示した、いわゆる「松本論文」(2006年)の存在、②証拠隠滅のおそれの解釈指針を提示した平成26年、27年の最高裁決定、③「日本版司法取引」という検察の新たな武器に対応して「裁量保釈の解釈指針」を示した平成28年刑事訴訟法改正と参議院附帯決議、そして④実質的な余罪捜査の終結(と評価されたこと)が、今回の裁量保釈が許可された大きな要因だと考えています。

では、新しい弁護人の弁護方針は保釈に影響がなかったのか・・・といいますと、けっしてそんなことはありません。たとえば新しい弁護人の方は、前会長との協議によって、自宅に監視カメラを設置したり、携帯・PCの使用を制限するなど、(前会長が証拠を隠めつするおそれがないことを示すために)厳格な条件を自ら裁判所に提案したといわれています。3月4日のエントリーでも書きましたが、裁判所がこの時点で保釈を却下した場合には、日本の刑事司法に対する国際的な批判が一気に高まることが予想されます。しかし、裁判所はこれを理由に保釈を認めることは(主権国家の司法機関としては)できません。

また、「無罪の他人を巻き込むおそれ」が日本版司法取引には懸念されるなかで、否認を続ける被告人への勾留には、裁判所は最大限のデュープロセスを保障しなければなりませんが、一方で事件の背景にある「日産・ルノーの政治力学」の存在も、裁判所は忖度(そんたく)せざるをえないのかもしれません。そこで弁護人は「裁判所の逃げ道を作ってあげる」必要があります。このような条件なら現行法の解釈によって保釈を許可することができる・・・といえる道を新しい弁護人は裁判所に示したものだと思います。とかく優秀な弁護士は「法解釈」によって裁判所を説得したくなるのですが、「新たな事実」を提示することで裁判所の解釈を助ける手法をあえて採用した点にとても感銘を受けます。

この「裁判所に逃げ道を作ってあげる」という発想は、元検察官の弁護人にはなかなか思いつかないものであり、長年、(被告人の利益のために全力を傾ける)刑事弁護に携わってきた弁護士だからこそ考え抜かれたものではないでしょうか。この点は「さすが」と言わざるを得ません。国連に人権侵害を申立てつつ、保釈審査の最中に外国特派員協会で会見を行うことで裁判所を追い込みながらも、一方で逃げ道を用意するという手法は、したたかな手法であり、私も見習わねば・・・と思うところです。ともかく、これでようやく「10年間の日産のガバナンスはどのようなものだったのか」明らかになる道が見えてきたようです。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2019年3月 4日 (月)

日産前会長の(3度目の)保釈請求は認められるか

ひさしぶりの日産前会長・会社法等違反容疑事件に関するエントリーです。2月27日(木)、日産前会長の弁護人が3度目の保釈請求を行った、と報じられました。1回目、2回目の保釈請求時には、いまだ検察側の余罪捜査が続いているために「無理だろうなあ」と思いましたが、今回は裁判所が保釈を認める可能性があると推測しております。以下はその理由です。

1 マスコミのリーク記事の枯渇

ここ数週間はマスコミの検察リーク報道も影を潜めました。これは検察による余罪捜査や裏付け捜査がほぼ終了したため、検察側からマスコミに提供するネタがなくなってしまったことによるものと思います。検察側がほぼ立件に必要な証拠は収集したものとみて、今後は(たとえ否認をしてるとしても)被告人には証拠隠めつのおそれは乏しいと判断される状況になりました。少なくともゴーン氏が逃亡や罪証隠めつに出る「具体的危険性」を裏付ける事実は乏しいのではないでしょうか。

2 公判前整理手続きの決定

昨年12月のこちらのエントリーでも書きましたが、公判前整理手続きを被告人側(弁護人側)が維持するためには、検察と対等の立場で弁護人が対峙しなければならず、そのためには被告人の早期身柄解放が大前提です。2月21日にゴーン氏、ケリー氏、そして法人としての日産いずれの被告人の事件も公判前整理手続きを行うことになったそうなので、ゴーン氏は検察だけでなく、ケリー氏や法人としての日産との間でも利害が対立する可能性があります。ケリー氏や日産が十分な準備ができるのにゴーン氏だけが準備にハンデを背負うとなりますと、国際的に「人質司法」との批判がさらに高まるものと思います。

3 繰り返される日産側からのメッセージ

前会長さんの金商法、会社法違反事件を裏付けるようなニュースが影を潜めた一方で、最近は日産トップの方のインタビュー記事や特別ガバナンス委員会による審議内容などが出てくるようになりました。これはゴーン氏が保釈された場合には、おそらくゴーン氏の発言に社会の注目が集まることを想定して、日産側が機先を制するための広報作戦ではないでしょうか。日産側も「保釈される日は近い」と考えているように思います。

もちろん刑事弁護に詳しい同業者の方から「早くても(保釈が認められるのは)今年の年末くらいではないか・・・」との意見も出されていますので、上記は私の勝手な推測であります。ただ、今回の保釈請求が却下されることになりますと、本当に身柄勾留の長期化が予想される事態となります。そうなりますと、さすがに国際世論を敵に回すことにもなりかねず、もっと大きな刑事司法制度改正に向けた意見形成につながる可能性が出てくるのではないでしょうか。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2019年2月28日 (木)

指名委員会委員である取締役の善管注意義務について

大手スーパーのいなげやさん(東証1部)の自浄作用が半端ないです。内部通報に基づいて社内規則違反に及んだ3名の従業員の不正が発覚したのですが、当該3名に対する懲戒処分、そして監督責任として専務取締役さんに対する解職決議(→取締役辞任)だそうです。そしてこの不正を公表した理由は「公正な調査を実施するため、および関係者の隠蔽を防止するため」とのこと。うーん、なかなか厳しい・・・。(ここから本題)

昨日に引き続き、独立社外取締役に関する話題です。株式会社LIXILグループさんが2月25日に開示した「当社代表執行役の異動における一連の経緯・手続の調査・検証結果について」を読みました。すでに多くのメディアが取り上げているLIXILグループさんの経営権に関する話題なので、事例はご紹介するまでもないと思います(なお、この会社は指名委員会等設置会社です)。

機関投資家などのステイクホルダーから「CEO交代の経緯が不透明である」との指摘を受けて、監査委員会が主導して調査を行い、その結果を開示した姿勢は評価できます。おそらく社内では開示するにあたっては相当に葛藤があったと思いますが、一連の事実経過は、かなり詳細に記述されているようです。元CEOの退任の意思表示には(まちがった情報に基づく錯誤があるため)瑕疵が認められ、意思表示は無効ではないか・・・との疑問が呈されていました。しかし、この調査では、認定した事実をもとに「無効と言えるほどの瑕疵はない」と判断しています。

元CEOの方の意思表示の有効性、その意思表示を前提とした取締役会の決議の有効性といった論点は、先例などを参考とした法律的判断を伴うものなので、ここでは私的な意見を述べることは控えます。ただ、この調査結果が正しいとしますと、指名委員会を構成する5名の取締役さんが(当時)何をしなければならなかったのか・・・という点が次にクローズアップされることになると思います。この「一連の経緯・手続の調査」は、事実経過と機関決定の有効性に焦点を当てておりますが、指名委員会や取締役会に出席していた取締役が善管注意義務・忠実義務を尽くしていたかどうか・・・という点は調査範囲外のようです。

(審査の対象となる)CEOの方が、本当に自分から退任する意向を示しているのかどうか・・・、これをどうやって確かめようとしたのか、たとえば確かめるにあたっては指名委員会の誰が代表でヒアリングするつもりだったのか、取締役会当日、当のCEOは退任に反対の意思を表明しているにもかかわらず、「あれ?話が違うんじゃないの?」ということで、指名委員会による再協議を誰も申し出なかったのか(ちなみに指名委員会は執行役の選解任を拘束しないのが会社法のルールですが、LIXILさんでは事実上の慣行として執行役の選解任の決議も拘束していたそうです)、時間を巻き戻して考えてみると、いろいろと疑問が生じてきます。

CEO交代を決する取締役会の決議の前に、(やむをえない事情があったそうですが)指名委員会委員であるお二人の社外取締役さんが帰ってしまったという生々しい事情も記述されていますが(*´Д`)、もしこのような会社の有事に直面した場合に、指名委員である取締役に求められる善管注意義務とは果たしてどのような行動なのか・・・、とても考えさせられる事案だと感じました。このたびのコーポレートガバナンス・コードの改訂は、まさにこのような場面を想定して取締役会の監督機能の強化、経営トップの選解任手続の透明化を求めているはずです。見方によっては「やっぱり社外取締役なんてお飾りだよね」と言われてしまいそうで心配です。さて、このリリースを前提として、機関投資家の方々は今後どのような対応をされるのか、興味は尽きません。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

«上場子会社の独立取締役は厳しい仕事ですよ!(ホンネです)