2022年1月19日 (水)

内部通報制度の充実が「人的資本の開示」とつながる時代

最近、また大きな問題を抱える会計不正事案が目につきますね。私はコロナ禍において「監査の不全」を理由に「コロナ禍から3年経過したころから会計不正事案が急増する」とブログで何度か書きました。しかし、本日お昼に市場関係者の方々とお話をしていて「コロナ禍によってカネ余りとなり、行き場を失った余剰資金が『わけあり企業』の新規上場を後押ししている」との解説にはナルホド・・と納得いたしました。個別の事件とは関係ありませんが、このような理由から問題案件が増えているとなれば、今後ますます会計不正事案は増えると思います(以下、本題)。

週刊東洋経済の最新号(2022年1月22日号)の特集記事「気候変動対応の次はこれ!-人的資本の開示で企業価値を向上させる」を読みました。環境経営への取組みに関する基準であるTCFDのような開示指標がない「人的資本」について、各社思い悩んでいる様子が紹介されています。

たしかに「人事部」は情報開示の世界とはこれまで無縁だったので、「人的資本の開示」と言われても、何を開示すれば「他社比較」の参考になるのか、よくわからないと思います。しかしながら、非財務情報の開示の中で、気候変動への対応の“次”として注目を集めているのが「人的資本の開示」・・・だそうです。

各社取組みの中で「従業員が自社の強みであること、スキルやモチベーションを上げる具体策を丁寧に述べた上新電機の『まごころ統合報告書』も参考になる」といった上新電機の例に目が留まりました。

上新電機でユニークなのは、年度ごとの内部通報件数を時系列で開示していること。件数は年々少しずつ増えている。マイナス情報にも見えるが、従業員の経営への信頼感の向上やオープンな社風への会社側の自信の表れとも受け取れる。いずれにしろ、開示が投資家との対話のきっかけになる可能性は高い

とのこと。実は上新電機ではありませんが、別の上場会社に私が提言した内容と全く同じだったので「同じ考えを持った人がいるんだ」と少しうれしくなりました。内部通報の窓口を担当してわかるところですが、ハラスメントの通報の半分以上が同じ職場の第三者から、という時代です(以前はほとんどがハラスメントの被害を受けている、という社員からの通報でした)。自分の私利私欲のためではなく、職場環境配慮の視点から通報をする社員が増えています。つまり内部通報の件数が多くなれば、それだけ経営に関心を持つ社員が増えている、という見方もできるのではないでしょうか。

もちろん、件数が増えることにより「トンデモ通報」(不誠実目的通報)や「オレオレ通報」(他責型通報)も増えていきます。また、通報制度の充実を図ることは「件数を増やすこと」が最終目的ではなく、「健全なレポートラインを担保する組織風土を醸成すること」が最終目的です。ただ、副次的産物として、通報件数の増加は社員の経営関与意識の高まりを社内外で認知するための良い指標になりうることは間違いないと思っています。

そもそもESG経営への取組みを示す開示基準が不明確なので(社会的な合意が得られていないので)、むしろエンゲージメントのための材料として「なぜ、この数値を(人的資源の評価基準として)開示したのか」というところも含めて対外的に説明できることがポイントではないかと。

「どうすれば通報件数が増えるのか」という悩みは、通報制度の仕組みを整備している企業ならばどこでもお持ちではないでしょうか。ステークホルダーに示している「事業戦略」を実践するための優秀な中途採用者が(新しい職場環境を形成するために)通報制度を活用するのか、「うーーん、外から見ていたのと、この会社、ちょっと違う」と嘆いてさっさと退職していくかは、エライ違いだと思います。

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2022年1月17日 (月)

企業における人権対応の重要課題は「救済メカニズムの実践」にある

1月15日の日経デジタル記事(法務・ガバナンス)に「取引先の人権リスク調査、実施4割弱 質には課題も」との見出しで、取引先などでの人権侵害のリスクを調べる人権デューデリジェンス(人権DD)を実施する企業が増えていることが報じられています。国内主要企業への日本経済新聞社の調査では、すでに回答企業の4割弱が人権DDを実施しているそうですが、有識者からは「実施率や調査の質の点で課題は多い」と指摘する声も多いとのこと。

ご承知のように、欧米で人権DDを求める法令が相次いでおり、日本企業も対応は急務ですが、「やらされ感」による対策がほとんどではないかと思います。国連指導原則、OECD多国籍企業行動指針、ILO多国籍企業宣言等をもとに対策を検討するのであれば、対策の重要ポイントは(1)人権方針の策定、(2)人権デューディリジェンスの実施・運用、(3)救済メカニズム(苦情処理・問題解決制度)の構築・運用ということになりますが、このうち(1)と(2)は「やらされ感」でもなんとかなりそうですが、(3)については本気で人権への取り組みが持続的成長につながると考えないとむずかしいと思います。デューデリジェンスの結果として、調達先の問題行為が疑われた場合に、その排除へのイニシアチブをとるだけの勇気があるのか、ないのか。

上記日経記事で紹介されていた先進的な取組みを行う5社のうち、この(3)まで「やっています!」と宣言しているのは花王さんだけのように読めました(インドネシアのパーム油農園労働者からのスマホによる苦情受付を2022年から開始)。おそらく花王が始める「苦情受付」までやらないと国連の指導原則にある「マルチステークホルダー・エンゲージメントの実践」とは評価されないのではないでしょうか。

もし機関投資家や銀行が(フィデューシャリー・デューティーの一環として)企業のESG評価を行うのであれば、企業が(3)について言及しているかどうかを(同業他社との比較において)チェックすることで効率性を向上させるような気がいたします。結局のところ「人権DDをやっています」と開示しても、「ではDDの結果として、問題があればどうするのか」というところへの答えが用意されていなければ、DDの本気度が伝わらないと思います。

 

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2022年1月11日 (火)

改正公益通報者保護法対応は本格化するか?-通報者探しは厳禁です。

1月11日の日経朝刊「法税務面」に、「2022年法律・ルールはこう変わる-公益通報者保護法【告発者探し】を禁止」なる見出しで、6月から施行される改正公益通報者保護法の実務面での影響が紹介されていました。「事業者は体制づくりだけでなく、担当者への適切な研修など、実効性を高める必要がある」と有識者の方がコメントされていますが、まさにその通りです。いや、そもそも「担当者」になる人はいるのだろうか・・・との懸念さえ抱いております。

先日もリスクコンサルタント会社の方からご相談を受けましたが、公益通報への対応業務従事者となる人は、対応業務を終えた後(つまり担当を外れた後)も守秘義務が解除されませんので、かなり長期間にわたり、犯罪行為に手を染めないように注意しなければならない、ということです。だからこそ研修はきちんと受講する必要があります。

事業者の中には、対応業務従事者となったとしても「通報者を特定できる情報」を故意に漏えいすることなどありえないから大丈夫、と思っておられるかもしれません。また刑事罰といっても30万円以下の罰金ということなので、そもそも立件される可能性も乏しいとも思えます。

しかし、対応業務従事者を立件するのは「懲らしめ」ではなく、犯人捜しの首謀者である上司(経営者含む)を教唆犯もしくは共同正犯として立件するために活用することは十分あり得ます(正直に供述すれば、上司の立件に必要な証拠が収集できますので、その時点で対応業務従事者は不起訴となるようなケース)。また、そもそも公益通報をする社員は、義憤にかられた勇気のある社員である確率が高いので、「対応業務従事者だった〇〇さんはけしからん!」ということで告訴・告発に踏み切ることも十分予想されます。つまり、検察は嫌でも立件に動かざるを得ない場面も想定できます。

事業者は「あなたが改正公益通報者保護法上の対応業務従事者だ」と指定する必要がありますので、指定された方は、身に降りかかるかもしれないリスクを十分認識しておく必要があります。毎度申し上げるとおり、通報者を特定する情報が社内で漏れた場合(もしくは噂されている場合)、通報者は「誰かが情報を漏らした」と考えます(実際には通報前の言動から噂が広まるケースもありますが)。その矛先が対応業務従事者に向けられることもありますので(私も過去に苦労しました・・・)、たとえ本人が注意をしていても犯人扱いされるリスクもあることまで、研修で理解しておくべきと考えます。

事業者は、対応業務従事者(過去に対応業務従事者であった社員も含めて)を全力で守ってあげていただきたいと切に願います。

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2022年1月 7日 (金)

関電金品受領問題-取締役責任調査報告書の信用性はどうなる?

昨年12月23日の朝日新聞ニュースによりますと、関西電力の役員らによる金品受領問題で、法人である関電と関電株主らが元会長ら旧経営陣6人に損害賠償を求めている訴訟に関連して、大阪高裁(大島真一裁判長)が関電側の代理人弁護士3人のうち2人を、訴訟から排除する決定をしたそうです(12月22日付け)。訴訟代理人からの排除の対象とされた弁護士2人は、金品受領問題をめぐり、関電が旧経営陣の法的責任を調べるために設置した「取締役責任調査委員会」の委員を務めておられたようです。

関電元会長らもその調査に応じていたわけですが、元会長らは、調査委の調査に対して「独立性を担保された委員の立場を信頼して、問われるまま供述した」「(調査委員である弁護士が損害賠償請求訴訟でも関電側の代理人に就いていることについては)被告らの内情を知り尽くした両弁護士を代理人とする行為は、関電として信義則に反する」として、昨年7月、当該弁護士2名を訴訟から排除するよう大阪地裁に申し立てていました(大阪地裁は今年3月、申し立てを却下し、元会長らが抗告していたものです)。

そういえば本件については、当初、元会長が代理人を飛び越えて直接関電側に「けしからん!」と圧力をかけたとして、元役員のほうが世間的に批判をされていましたよね。

調査委員会委員を務めていながら、その後、会社側の代理人に就任する、という点については(諸事情ございますので-笑)あまりツッコミを入れないことにしますが、どのような理屈から「排除」という法的効果が生じたのか、その判断プロセスについては知りたいところです(2020年8月に、「コンフリクトの疑われる代理人を相手方は裁判で排除できる-特許権侵害事件・知財高裁決定の衝撃」と題するエントリーを書きましたが、この決定と同じような理屈で排除決定が出されたのかどうか。

また、大阪高裁の排除決定によって、訴訟が継続している大阪地裁の審理、とりわけ「責任調査委員会報告書の事実認定の信用性」にどのような影響が生じるのか、こちらも興味があります。中立性のある弁護士⇒代理人弁護士という流れだから影響はない、ということなのか、後日平然と代理人弁護士に就任している経過からみれば、そもそも中立性はなかった(よって事実認定は会社寄りであり信用性に乏しい)、ということなのか。調査委員会委員を経験する者として、裁判所がどのような見方をするのか、参考にさせていただきます。

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2022年1月 6日 (木)

「ZAITEN」最新号(2022年2月号)を読んだ感想をふたつほど・・・

ZAITEN2月号が改正公益通報者保護法の特集を組んでいることから、興味深く拝読いたしました(相変わらず尖っている記事が多い('◇')ゞ)。改正公益通報者保護法の弱点についても、なかなか鋭いツッコミが入っていて勉強になりますね。とりわけ「弱小消費者庁が行政処分を下すことができるのか?」という挑戦的な(?)問題提起は、たしかに当たっているのではないか(だからこそ、人員増強が必要ではないか)と思うところです。

ただ、最近の企業不祥事の発覚経緯をみると、著名事案の多くが(社員もしくは取引先社員による)内部通報もしくは外部への情報提供が端緒となっていることは間違いないわけでして、まずは6月に施行される改正法の運用状況をみながら前に進むしかないものと思います。上記記事によると、最近は自社の違法行為を海外当局に申告して、高額の報奨金を狙っている社員もいらっしゃるようですから、これまで以上に内部通報を促す制度作りに励みたいところです。

なお、ZAITEN2月号の記事の中で、もっとも面白かったのは「株主を惑わす『議決権行使一体型委任状』の姑息」なる記事でした。いや、記事というよりも、甲南大学梅本教授へのインタビュー回答集でして、内容はかなり格調が高い。今後、商事法務や他の法律雑誌で関西スーパーの一連の決定に関する評論を執筆される方は、日経の記事や梅本教授の意見として書かれていることは無視できないのでは、と思います。私は12月24日のエントリーにて

本日、午前11時に日経電子版(有料版)で配信された「関西スーパー争奪の教訓 裁判招いた株主以外の意外な票」はとても興味深いですね

と書きましたが、ほぼ時を同じくしてZAITENが発売されていたようで、ナイスなタイミングです。実際にこの「議決権行使一体型委任状」のために錯誤に陥って「統合反対」の意思を表明していた株主は(自らの不注意によるものだとしても)「統合賛成に一票」とされてしまったのですが、反対票に計上されていたら決議はどうなっていたのでしょう。東京高裁の決定が出る前に日経の記事やZAITENの記事が出ていればもっと面白かったのではないか・・・と悔やまれます(いや、さすがに決定前は出せなかったのか?)。

今後、会社法の趣旨に反する総会実務(一体型委任状)は改訂されるのか、それともそのまま維持されるのか。関西スーパー事案は裁判だけをみれば事例決定に過ぎないのかもしれませんが、実に興味深い問題を残したと思います。

最後になりますが、当ブログ宛に世間で話題になっている会社の社員の方々から内部情報が届きます。たいへん真摯なお気持ちで情報をお伝えいただいていることは承知しておりますが、当職はZAITENではありません。どんなに興味深い情報でも、コメントは公開できませんので、あしからずご了承ください。

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2022年1月 1日 (土)

謹賀新年2022-本年もよろしくお願いいたします。

Img_20211231_092616_512 明けましておめでとうございます。本年も拙ブログをよろしくお願いいたします。ちなみに大晦日~年始は毎年同様、しっかり休養しております(写真は正月を過ごしております白良浜です)。

昨年は3つの調査委員会の活動中はほとんどブログの更新ができませんでした。今年も状況次第では4月末までは三菱電機のガバナンスレビュー委員会が続くかもしれませんので、更新頻度は落ちそうですが、なんとか時間をみつけて続けたいと思っております。

 

昨年12月20日の日経朝刊で「弁護士が注目した2021年のトピック」として、5位に並んだ「三菱電機検査不正」と「公益通報者保護法の改正」はいずれも引き続き話題を提供することになると思います。いずれにも関わってきた者として、企業実務家の皆様にお役に立てるようなお話がここでできるよう、今年も健康に留意しながら本業も頑張って参ります。皆様にとりましても、良い一年となりますように・・・🐱

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2021年12月29日 (水)

社外取締役受難の時代到来か-商船三井によるダイビルへのTOB

コーポレートガバナンス改革も「形式から実質へ」と言われて久しいですが、昨日(12月27日)の日経ビジネス電子版「商船三井のダイビルTOBに異論『副業・不動産』に統治のメス」を読みますと、独立社外取締役も会社経営陣と真摯に向き合わなければ「提訴リスク」を負う時代になったのでは、と思わざるを得ないですね。機関投資家の方々の意見も正論だけに逃げるわけにはいかないはず。

ご承知のとおり商船三井が上場子会社であるダイビルにTOB(株式公開買い付け)を実施しており、これにダイビルが賛同表明をしているわけですが、AVI、ニューバーガーバーマン、オアシス等複数の海外投資家から異論が相次いでいます。商船三井としては長らく指摘されていた「親子上場」問題の解消を狙ったものですが、買い付け価格にダイビルが保有する不動産の「含み益」が反映されていないという不満があり、ダイビルの特別委員会の説明にも納得がいかない、とのこと(ダイビルの賛同表明に関するリリースはこちら、ニューバーガーバーマンの声明はこちらです)。

上場子会社であるダイビルの財務・法務アドバイザーには大手証券会社、著名大手法律事務所等がついているだけでなく、独立社外役員(社外取締役、社外監査役-企業法務で著名な法律事務所の番頭格の方も含まれています)で構成されている特別委員会も、著名法律事務所やフィナンシャルアドバイザーの支援のもとで活動しており、フェアネスオピニオンも取り付けた上で、実際にも「2000円は安い」と商船三井側に申し入れて2200円まで買付価格を上げた経緯もあります。ダイビル側としては、おそらく意思形成プロセスの適正性はこれ以上ないほどに万全を期して賛同表明に至ったものと思われます。

ただ、それでもダイビルの非上場化にあたっては、(たとえ会社運営は継続するとしても)多数の不動産を保有しているがゆえに「修正簿価純資産法」も加味したうえでの企業価値算定が妥当ではないか、三井不動産が東京ドームを買収した際も、不動産の含み益を評価していたではないか、という機関投資家側の意見が根強く、これに特別委員会側が価値算定の理由を合理的に説明できなければ納得が得られないということで、厳しい対応を迫られています。機関投資家のこのような声は一部の個人株主の意見にも反映される可能性があるため、(たとえ機関投資家は提訴まで至らないとしても、個人株主による)価格決定申立事件や株主代表訴訟等の提訴リスクも浮上しますね。

今回はたまたま親子上場の解消が問題となっていますが、独立社外取締役が(社内取締役の)利益相反状況の中で、独立的な意見形成を図らなければならない場面はとても増えているように思われます。敗訴リスクの回避という意味であれば、プロセス重視の発想でなんとか乗り切れそうですが、本件のように(社内の役員の力を借りずに)判断理由の中身を説明しなければ納得されない、ということになりますと、有事対応だけでなく、平時から積極的に役割を果たしているかどうかが問われることになります。

今回のダイビル株式へのTOBは、東証新市場への移行を目前に控えて「お飾り社外取締役問題」に対して警鐘を鳴らす一件ではないかと。いやいや、私自身も他人事ではないので、自戒を込めて今後の進捗状況を見守りたいと思います(もちろん、ダイビルの特別委員会を構成する社外役員の方々は「お飾り社外役員」ではございません-私のよく存じ上げている方も含まれております('◇')ゞ)

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2021年12月24日 (金)

日経「企業が選ぶ弁護士ランキング2021」にて、危機管理部門3位に選出していただきました。

昨日の三菱電機ガバナンスレビュー委員会報告書(第一報)の公表・記者会見を終えて、少しだけ「中休み」の時間がとれましたので、年末年始にブログを再開したいと思っております。少し遅くなりましたが、今週月曜日(12月20日)の日経朝刊にて「企業が選ぶ弁護士ランキング2021」が掲載されておりまして、3年ぶりに3位(危機管理部門)に選出していただきました。ちなみに電子版のほうは企業+弁護士によるランキングで4位となりまして(これは組織票を持たない私の宿命でございます)、こちらも併せて投票いただいた皆様に厚く感謝申し上げます(本当にありがとうございました!)。

記事にもありますように、今年は大きな企業(上場、非上場含め)の調査委員会(正確には評価委員会も含まれている)の委員長を3社務めましたが、東京の大手法律事務所の先生方との連携でなんとかここまで大過なく仕事を進めることができました。1年の半分くらいは「委員長!」と呼ばれていたので、そのように呼ばれることに慣れていく自分に若干コワさを感じております。現在務めております三菱電機のGR委員会(委員長)のお役目も3月か4月ころまでは続きそうなので、委員・委員補佐の皆様とのチームワークで、これからも頑張ってまいります<(_ _)>。

ところで全然話は変わりますが、本日(24日)午前11時に日経電子版(有料版)で配信された「関西スーパー争奪の教訓 裁判招いた株主以外の意外な票」はとても興味深いですね(同日午後、記事の見出しが「関西スーパー争奪の教訓 議決権行使、ある株主の反省」に修正されました)。裁判が確定し、オーケーさんが株売却に動く中で、本件への世間の関心が薄れていることは間違いありません。しかし、この記事にあるような状況は私が最も懸念していたケースであり、また、オーケー側も「(賛成したい立場の株主の真意が尊重されるのであれば)否決したい立場の株主の真意と外形的な投票行為との齟齬はどうするのか」と反論していましたから、記事のようなケースで株主の真意を会社側がくみ取っていればどれほど投票結果に影響が出ていたのか、知りたいところです。

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2021年12月17日 (金)

ESGをめぐるビジネス上の諸問題への対応(セミナーのご紹介)

いつもタイムリーな話題で「今年はどんなテーマで開催されるのだろう」と気になるCSR普及協会さんが、来年1月25日にこちらのセミナーを開催するそうです(昨今、当ブログで一番取り上げるテーマです)。「やっぱり、そうだよなア」と思ったので、ご紹介いたします。

ESGをめぐるビジネス上の諸問題への対応(2020年1月25日14:00~17:00 WEBセミナー)

近年、ESGについては、環境問題だけでなく、人権問題をきっかけに企業がサプライチェーン・商品供給の見直しが迫られるなど、ビジネスと人権をめぐる問題がクローズアップされる機会が増えています。(中略)本セミナーでは、ESGをめぐるグローバルな議論にも精通し、ビジネスと人権に関する行動計画に係る作業部会の構成員である登壇者による基調講演とともに、サプライチェーンを中心にビジネスと人権をめぐる問題に取り組んでおられる企業担当者、弁護士をパネリストとして、ESGをめぐる現時点での状況の整理と共に、今後、国内外において検討・留意すべきビジネス上の諸問題、内部統制について議論いたします。

とのこと。基調講演をされる第一生命ホールディングスの銭谷さんは、私も面識がありますが、歯切れがよい語り口でメディアでもESG関連のご発言をお見かけします。日経ニュースでは「ESGの光と影」として、ようやく「影」の部分も取り上げられるようになりましたが、まさに「投資家から見たESG経営の現在地」を理解するたいへん良い機会になりそうですね。パネルディスカッションでは、銭谷氏に加え、実務家の立場からNECの方にもご参加いただき、普及協会の主要メンバーの方々とともにESGと内部統制に焦点をあてて討論が行われるそうです。

当ブログで先日ご紹介した「D&IR」誌の拙稿でも述べましたが、「ビジネスと人権」のテーマはいろんな切り口があります(企業価値向上との相関関係の検証、AIと人権-「カネ」につなげるための技術開発と人権思想との調和、経済安保-国家協働による企業規制、官民連携-共助の精神と新しい資本主義、巨大企業規制-グローバル企業への競争法の活用等)。また、日本ではソフトローとして活用されるのか、ハードロー化するのか、というあたりも(政治との絡みもありますが)最近は気になるところです。

どの切り口から取り上げるのか、明確にしなければ議論が総花的なものになってしまって、企業実務に役立たないように(私的には)考えています。おそらく、登壇者の雰囲気では(人権問題への配慮が)企業価値向上につながるのかどうか、といった視点が中心になるものと思いますが、ぜひ実り多いシンポが開催されることを期待しております。ぜひ、ご興味のある方は、有料ではございますが(2,000円)ご視聴されてはいかがでしょうか。

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2021年12月16日 (木)

HISグループ補助金不正問題について

この2か月ほど、東京・大阪間を往復しているうちに、すっかりブログネタから遠ざかってしまいました。💦10日間もブログの更新が滞りましたが、病気とか元気がなかったからということではございませんので、どうかご安心を(誰も心配してない?)。

とくに関西スーパーの株式交換差止仮処分の一連のネタは、気が付いたら最高裁の決定が出てしまっており、完全に法務の話題から取り残されてしまっております( ;∀;)。ただ、こちらのエントリーでも少し書きましたが、日経インタビューによるとオーケーは2023年にも関西に大量出店するとのことですが、オーケーの存在感(脅威を含めて)をこれほどまでアピールした一連の裁判は、同社の企業価値をかなり高めたのではないでしょうか。

そんな中でも、ひとつだけ気になるのがHISグループ会社による補助金不正受給問題です。これだけ名門の企業(グループ会社)で起きたとんでもない問題の発覚ということで、調査委員会を立ち上げて説明義務を果たすことは当然だと思うのですが、調査委員会の構成をみますと社内CFOの役員さん、社外取締役の方が委員として含まれています。

うーーーん、同社の現状だと完全に利害関係のない弁護士、会計士による「日弁連ガイドラインに準拠した第三者委員会」の設置は必須のように思えるのですが(何か特別な事情があるのでしょうか、たとえばまだ不正行為の全容が把握できていないとか、とりあえず決算への影響についてのみ把握するため、とか)。。。もちろん、就任された方々は中立公正な立場で調査業務にあたるであろうことはよく理解できるのですが、「社外役員が選定した第三者委員会委員のみで構成される」という見栄えがないと、なかなか公表される事実をステークホルダーに信用してもらえないのではないかと、老婆心ながら思った次第です。

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«企業不祥事・調査委員会による「再発防止策の提言」には限界がある(と思う)