2008年11月19日 (水)

金融庁「インサイダー取引規制に関するQ&A」を公表(自社株取得)

3回にわたって当ブログでエントリーしてきました「シャルレ社のMBO」ですが、ついに火がついてきちゃったようでありまして、18日、大阪証券取引所より「不適切開示」として改善報告書を求められているそうであります。(シャルレ社の適時開示)この流れは「不適切開示」へのエンフォースメントのひとつとして注目されそうですし、今後の展開がありそうですので、また別エントリーにて検討してみたいと思っております。

さて、9月2日に日経法務インサイドの特集記事を受けて、「インサイダー取引のリスクマネジメント」なるエントリーをアップいたしました。そのなかでも、触れていたところでありますが、昨年の小松製作所さんや大塚家具さんの(いわゆる)「自社株取得に伴う”うっかりインサイダー”リスク」の衝撃によって、企業の自社株買付が委縮している現状が問題視されていたところであります。私は上記エントリーのなかで「自社株を信託方式で買い付ければ問題ないのでは?」と書いておりましたが、ある方からメールにて「小松製作所さんの自社株買いは信託方式によるものですよ」(こちらがリリース)と教えていただいておりましたので、実をいうとちょっと考えが甘かったわけでありますが※1、本日金融庁(および証券取引等監視委員会)よりリリースされましたQ&Aの内容を拝見しましても、やっぱり単に信託方式を採用しているだけでは十分ではなく、場合によっては、きちんとしたチャイニーズウォール体制を構築していることが条件となっているようであります。※2金融庁リリースはこちら

※1 たしかに小松製作所の件は信託方式による自社株買付ですが、ここではすでに重要事実を知ったうえで信託方式による買付を決定したように思われます。現に、小松製作所はほとんど営業活動をしていない海外子会社の解散発表までが「重要事実」に該当するのか?といったコメントを出しておりましたので、むしろここでは「重要事実」の内容が問題視されていたのでありまして、直接的に「信託方式による買付」の是非が問題になっていたわけではないと理解しております。

※2 なお、チャイニーズウォールを敷く必要がないケースとして、買付信託契約の後、会社側から信託銀行に買付の指示を行わない場合があげられておりますが、これはそもそも「重要事実を知ること」と取引行為との因果関係が切れることで、処罰対象たる内部者取引の行為態様には該当しない、とみるのでしょうね。先日のBNPパリバの社外第三者委員会の報告書でもすこし触れられていた事例だと思います。

チャイニーズウォールというのは、ここでは「同一会社内における情報障壁」程度にお考えいただければ結構かと思いますが、要するに、自社株売買を執行する部署と、重要事実を知りうる部署との情報の流れを遮断するような体制が構築される必要がある、というものであります。買付信託を採用する場合には、信託銀行へ売買の指示を行う部署と、重要事実を知りうる部署との情報障壁を未然に構築しておけばインサイダー規制には該当しない、ということがほぼ明確にされ、こういった状況のなかであれば安心して自社株取引を行うことが可能となるようであります。

ただ、これまでチャイニーズウォール体制といいますと、インサイダー取引規制や顧客との利益相反取引防止、自己勘定取引の峻別など、一般的には金融機関の厳格な自己規律のために構築されるもの・・・といった印象を持っておりますので、おそらく一般の上場企業にとっては、耳慣れないものではないでしょうか。具体的にどのような体制を構築すれば「指示を行う部署が重要事実から遮断され、かつ、当該部署が重要事実を知っている者から独立して指示を行っている」と認められるのでしょうか?こういったことも、今後検討を要する問題のひとつではないかと考えております。

このあたりは金融規制法分野に精通された先生方のご意見をうかがいたいところでありますが、ただ金融機関に要求されるようなものがそのまま一般の上場会社にも妥当する、とみるのもちょっと厳しすぎるのではないかと思いますし、また証券会社のように恒常的に体制を敷いておかなければならないというものでもないと思います。そこで、一般の上場会社の場合には、①インサイダー取引防止のための社内研修の一貫として情報隔絶の必要性を関係者に周知徹底させること、②チャイニーズウォールに関する社内手続きをマニュアル化(文書化)しておくこと、③執行部門と重要事実の管理部門とを組織的にも明確に分けること、④人的交流が必要な場合には交流の記録を残しておき、内部監査もしくはコンプライアンス部門が事後チェックをしておくこと、あたりが思いつくところです。(全部、あたりまえといえばあたりまえのことばかりですが・・・(^^; )こういった未然防止策をとっていれば、とりあえずインサイダー規制に引っ掛かるリスクはかなり低減されるものだと思いますが。(甘いでしょうか・・・?)

11月 19, 2008 インサイダー規制と内部統制の構築 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2008年11月18日 (火)

景表法違反事例と「闘うコンプライアンス」の必要性

昨日の商品表示問題とも若干関連性のある話題でありますが、広告表示の適正性を確保するための法律といえば独占禁止法の特別法たる景品表示法が真っ先に頭に思い浮かぶところであります。当ブログにおきましても、過去にカー用品の「燃費向上」事件や、ANAのプレミアムシート事件などにおける公取委の排除命令への疑問を述べ、いずれもことごとく有識者(と思しき方々)より反論のご意見を多数頂戴いたしました。

経済法分野につきましては、それほど詳しい立場にあるものでもなく、多くの反論をいただいてもしかたないとは思っておりましたが、今月号のビジネスロージャーナル(2008年12月号)の広告法務特集におきまして、独占禁止法分野ではたいへん著名な法律事務所のパートナーの先生が「広告表示にもっと自由を~最近の景表法違反事例から考える~」なる小稿を発表しておられます。そしてこれがまた実に(私にとりましては)胸のすくような内容であります。以前のように誰がみても詐害まがいの悪質な広告ばかりであれば厳格な規制も当然だとは思いますが、最近は広告の在り方に対する企業の認識と公取委の認識のズレにより、頭をかしげたくなるような公取委の対応がみられる、とのことであります。現在の消費者保護行政に傾斜している景表法実務の運営においては、真剣にコンプライアンス経営に取り組んでいる企業ほど、表示に自信がもてなくなってしまい、一般人に向けた広告表示には消極的にならざるをえない時代になってきている、ということを問題の前提とされております。著者の方は、とくに具体的な事例に対するご意見を述べるようなことはされておりませんが、例のANAのプレミアムシートの事例についても紹介されております。

景表法問題は、あまり抽象的に議論することはおもしろくないので、具体的な事件が発生した場合以外にはブログ上で意見を述べることはしませんが、企業としても理屈のうえで「闘う」必要性の高い分野の一つではないかと考えております。たしかに公取委の判断を実際に覆すことはなかなか困難ではあります。くわえて一度「排除命令」が出てしまいますと、最近のCSR調達の風潮などからみて、対象商品が取引先大手販売店の陳列棚から消えてしまう・・・という事態も考えられ、企業としては泣く泣く命令に従わなければならないこととなります(これは私の経験からであります)。これでは排除命令を争いたくてもなかなか争えないわけでして、公取委の判断に不満をもつ企業にとっては司法的救済の道が実質的には閉ざされているようなものであります。そこで、昨日の食品偽装問題ではありませんが、景表法の制度趣旨を中心として、理屈の上であるべき方向性(たとえば消費者保護における「消費者」とはどういった人たちを指しているのか、広告を見た人が企業による説明や問い合わせによって誤認する可能性が乏しくなるのではないか、企業が広告によって訴求しようとしている点と公取委の問題としているポイントとはずれていないか、その公取委の注目するポイントが一般の消費者にとっても納得のいくものであるかどうか等)を議論するべきでありまして、正式な行政手続きを通じて、景表法における消費者保護行政との調和点を見出す必要があるのではないでしょうか。(以上、本日は備忘録程度にて失礼いたします)

11月 18, 2008 消費者庁構想案 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月17日 (月)

産地偽装事件と「食の安全」とはあまり関係ないのでは?

一連のウナギロンダリング事件の関係で、一昨日魚秀の社長さんや神港魚類社の担当課長さんなど計8名が(不正競争防止法違反容疑にて)逮捕されたそうでありまして、日曜日あたりのニュースによりますと、産地偽装事件発覚時における魚秀社長さんの説明とは異なり、実は昨年あたりから偽装計画があったのではないか、と報道されているところであります。

こういった食品偽装問題に詳しい方でしたら、「いまさら何言うとんねん」と言われそうなお話ではありますが、どうもマスコミの報道をみておりまして、一般消費者の方々に誤解を与えているのではないか?と思っておりますのが、産地偽装事件と「食の安全」との関係についてであります。今回のウナギロンダリングの一連の報道でも、偽装業者が中国産ウナギを国産と表示して卸市場に販売していたことは、消費者に対する食の安全、安心に対する信頼を大きく裏切るものであり・・・・云々、といった報道がなされているところです。しかしながら、産地偽装事件というのは、本当に「食の安全」と深い関係にある事件なのでしょうか?

Syokuhingisou001 最近、農林水産省の現役行政担当官3名の方による著書「食品偽装~起こさないためのケーススタディ~」(ぎょうせい 2,381円税別)を拝読させていただきましたが、さすがに食品表示に関する取締りの現場で活躍されていらっしゃる行政担当官の方々による著書だけあって、企業コンプライアンスの立場から、こういった食品偽装の現状把握と社内体制整備への提言を中心とした書物としてはピカイチの内容です。本書(とりわけ後半部分)を読み進めていきますと、産地偽装事件と「食の安全」とは、世間で言われているほど関係がないのではないか、ということが理解できるように思います。

たとえば「産地・銘柄の偽装」が行われた場合、基本的にはJAS法違反の有無が問われることになるわけでありますが、そもそもこの法律は消費者と食品加工業者との「情報の非対称性」を埋めることによって、消費者が自己の選択基準によって適正に商品を選択できるよう、商品表示の適正性を確保することが第一次的な目的であります。つまり、そこでは、自己の嗜好によって商品を選択しようとする消費者、つまり台湾産のウナギが好きな人であれば台湾産、中国産を好む人であれば中国産のウナギ・・・といったように、自己の選択を間違わないように、その選択のための表示の適正性を保護することが問題となるのであって、安全な食品を国民に提供することは第一次的な目的ではない、ということであります。自己責任原則を前提としない消費者保護、つまり食品の安全性を確保するための法律は、たとえば食品衛生法があるわけですから、行政がそのような一般国民の生活の平穏を守るための消費者行政と、JAS法のように、自己責任原則を前提として、商品選択が適正に行えるようにするための消費者行政の規制方法とは別次元の話である・・・という点が、本書をもって理解できるところだと思われます。

上記の点につきましては、私も以前から漠然とは認識していたところではありますが、JAS法が加工食品に対する「消費期限」や「賞味期限」の表示についても規制対象としていることから、「食の安全」との関係については否定できないものではなかろうか・・・と考えておりました。しかし本書を読みますと、たとえば消費期限の表示規制につきましても、「消費期限、賞味期限は、食品の品質を消費者が自らの五感経験で判断するためにも必要な情報であり、これの改ざんは表示に対する消費者の信頼を損なう行為として許されない行為である」と説明されております。つまり、そこで念頭に置かれている消費者とは、自ら食品の品質のちがいを五感によって区別できる人でありまして、できたての加工食品、消費期限切れ間近の食品、そして消費期限を切れてしまった食品のそれぞれの品質の違いを自己責任において判断できる消費者が前提とされているわけであります。そういった自己責任をもって判断できる人たちが、情報の非対称性によって加工食品側から騙されないように、その品質表示の適正性を確保しようというのがJAS法の立場からの目的でありまして、そうだとしますと、消費者に自己責任を問えるものではないような弱者のためにも、一定ラインの食の安全を確保することとは、一線を画すものである、といったことになろうかと思われます。

このように考えますと、産地偽装事件の場合、「食の安全」というよりも、「食への信頼」が損なわれる・・・といった説明方法のほうが適切ではないかと考えます。また、単に説明の問題だけでなく、行政による規制方法にも差が生じてくるように思います。食品の安全に関わる規制であるならば、「絶対に消費者の口に入る前に差し止めなければならない」といった要請が強く働くでしょうし、いわば行政による事前規制への傾斜はあまり抵抗感なく受け入れられそうですが、産地偽装問題のように(つまりJAS法が関係する場合)「一般消費者の選択にとって必要かどうか」という点からの規制となりますと、たしかに行政による事前規制が妥当かどうかはいろいろな問題を含むことになります。このような観点から、JAS法違反のケースでは、行政による事後的調査を厳格に行い、違反の程度が悪質な場合には警察との連携をはかることによって不正競争防止法違反や詐欺罪の適用をもって厳罰で臨む・・・という手法がもっともオーソドックスな規制手法ということに落ち着くのではないでしょうか。本書は「食品偽装」をとりあげて、これに対する行政規制の在り方を問うものでありますが、食品偽装問題だけにかぎらず、行政による事前規制と事後規制の在り方、消費者行政という場合の「消費者」というものを合理的判断ができる理性的な人間と捉えるのか、ひとりではそういった判断ができない人たちを想定するのか、といったように一義的にはとらえきれない面があること等なども検討できる格好の書物であり、いわゆる企業の立場から政策法務的な行政手法を学ぶうえでも貴重な一冊と言えそうです。

ちなみに、本書は魚秀の件をはじめ、ウナギロンダリングが農水省Gメンらによってどのように調査されていったのか、昨年7月からの行政の動きが解説されておりまして、企業コンプライアンスという視点からも非常に参考になるところであります。先に述べましたように、事後規制といった手法で対応するにしては、あまりにもウナギロンダリングは蔓延しているようでして、今回の魚秀の事例も「氷山の一角」にすぎないことが理解できます。そうなりますと、事後規制的手法といいましても、限界があるわけでして、業界団体による食品流通の監視体制の強化や、小売店側において食品表示監理士を置くことなども検討されておりますが、究極的には食品表示に関する合理的な判断ができる消費者が増えることが、(消費者による行政への良質な情報提供行為を通じて)食品偽装なる企業不祥事を根絶できる唯一のカギになってくるのではないか、と思うところであります。

11月 17, 2008 食の安全 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年11月16日 (日)

「ジャッジⅡ島の裁判官」第四話もおもしろかったです。

遺産分割調停→審判という、テレビドラマでは比較的描きにくいテーマを中心に、主人公の裁判官があえて最高裁決定に反する審判を下すシナリオにはたいへん感動しました。回を重ねるたびにおもしろくなってくるドラマですが、もう来週が最終回になってしまうんですね。

嫡出子と非嫡出子の相続分を2:1と定める民法の規定が、憲法14条(法の下の平等)に反するものかどうか・・・という問題は本当にむずかしいですね。私個人の考え方は、残念ながら、この主人公の裁判官とは異なり、正式婚重視の考え方に近いものですが、「子は親を選べない」ということや、死亡した父親が分け隔てなく子供をかわいがっていた意思を尊重するならば、憲法違反、という考え方もありうると思います。

ただ、あのような労働災害の事例で父親が死亡した場合の補償金としては、労災補償金ということであれば、事実婚主義が採用されますし、また会社の規定による死亡補償金であれば、会社の規定に受給資格が定められていますので、弁護士としてはこういった憲法違反などのむずかしい問題に持ち込む前に、調停前の遺産確認訴訟の提起、別事件としての寄与分の申立など、相手方の譲歩を引き出す手段を検討するのが得策だと思いますね。

しかし、大美島支部に配属された司法修習生が、主人公の裁判官と接するうちに、内定していた東京の大手渉外法律事務所への就職を白紙に戻して、もういちど自分の進路を考え直すに至った・・・というシナリオ、東京の渉外事務所の先生方が見ていたら、どう思ったでしょうね。(笑)なんか異議が出そうな気もしますが。。。

11月 16, 2008 未完成にひとしいエントリー記事 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2008年11月13日 (木)

子会社の不祥事と親会社経営陣の法的責任

私が非常勤講師を務めております同志社大学ロースクールの商法演習の前期期末試験とそっくりの事案が実際に発生したようであります。学期末試験では、「設問5」として、上場している親会社の100%子会社(レストラン)が食中毒事件を起こして、お客様に損害を与えた事例でありますが、そのお客様は誰にどのような責任を追及できるか?といった問題であります。基本的には親子関係といっても別法人ゆえ、親会社(もしくは親会社経営者)には責任は問えないのでありますが、親会社と子会社との特別な関係があるような場合には、例外的に責任追及が可能となる場合もあるのではないか・・・といったところを書いていただければいいわけです。ただ、もう一点、企業集団における内部統制システムの構築義務(会社法施行規則100条)をどうとらえるか?という点についても検討していただきたいという出題者(実は私ですが)の狙いもあったのですが、そこに触れていた答案は皆無でした(^^;出題者の能力の問題かも・・・

12日夜の時事通信ニュースや産経ニュースによりますと、東京ディズニーランド内のレストランで食事をした方が腹痛を訴え、病院に運ばれた件で、レストランで調査したところ、その男性は消費期限切れの鴨肉を使った料理を食べていたそうでありまして(ただし、腹痛との因果関係については調査中とのこと)、このレストランはTDLの運営母体であるオリエンタルランド社の100%子会社であります。(TDLのHPでも本件についてはリリースされているようです)

原則としては、本件は当該子会社の食品管理ミスに起因する事態だと思われますので、子会社自身が(因果関係が認められた場合には)この男性の損害を補てんする責任があると思われます。しかしながら、別法人といいましても、当該レストランはTDLの敷地内にあるわけで、運営している子会社(連結子会社)もオリエンタルランドの100%出資を受けたものであります。また調べてみたところ、役員構成も、社長および会長以外の取締役、執行役員はオリエンタルランドの取締役を兼任されている方がほとんどであります。いわば実態面でいえば、オリエンタルランドという上場企業の一事業部であるとみても何ら問題はないと思います。こういったケースでは、親会社(もしくは親会社役員)の法的責任については別途検討すべき対象になるのかもしれません。このあたりは、法的責任を追及する立場にある代理人の腕の見せ所のような気もします。

そして、私的な考察でありますが、こういった場面において、「法的責任追及」とまでは申しませんが、再発防止策をとるにあたり、親会社たるオリエンタルランド社については何らの対応も必要ないのでしょうか?(リリースを読む限りは、「重要な拠点」と評価しうる子会社であるにもかかわらず、親会社としての対策は何ら記載されておりません。ちなみにオリエンタルランド社のガバナンス報告書を読みますと、内部統制の基本方針としてグループ管理体制を整備することが決定されております。)こういった重要な子会社の問題発覚時こそ、親会社としての対応を検討することが、グループ企業内部統制の「運用」評価に影響するのではないかと考えますが、いかがなものでしょうか。

なお、本件ではもうひとつ特徴的な問題点がありまして、たとえレストランの出した鴨肉に関して、男性の腹痛との因果関係が認められなかったケースであったとしても、本来ならば大きくマスコミでとりあげられなかった(つまり、それだけでは報道価値が低く、公表されることもなかったであろう)不祥事が、突発的な事件を契機として大きく浮かび上がる、という「やぶへびコンプライアンス」の典型事例、ということであります。「この程度なら報告や公表せずに放置しておこう」といった不祥事は世間に山ほどあると思いますが、不祥事とはいえない偶発的な出来事によって、その放置していた不祥事が表面化して、マスコミからは「なぜ隠していたのか?」とか「これが表面化していなかったのであれば、同種不祥事は100倍程度発生しているのではないか?」といった質問を浴びせられ、企業の社会的信用を揺るがすような事態に陥るケースに発展するのであります。「ヒヤリ、ハット事例」を平時においてどのように処理していくべきか、このあたりも企業コンプライアンスの要諦であります。

11月 13, 2008 企業集団における内部統制 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年11月12日 (水)

BNPパリバの株式売買はインサイダー取引に該当するか?

(12日午前 追記あります)

昨日は裁判員制度に関するエントリーをアップしたところ、あまりにも偶然のことでありますが、最高裁判所司法研修所から「裁判員制度に関する重要な研究報告書」がリリースされたようであります。(日経ニュースはこちら)ニュースで報じられております研究報告の内容はビックリでありまして、裁判員法廷に臨む(すくなくとも私のような不埒な)弁護士の意識は、ここにおきまして改革しなければならないことになりそうであります(この件についてはまた別の機会に・・・・・)

さて、すでに多くのブログで話題になっておりますが、アーバンコーポレーションの不適切開示(違法開示)に関与したとされるBNPパリバ日本法人の件につき、11月11日付けにて、外部検討委員会による最終報告が発表されたようでして、その報告書概要を読ませていただきました。(委員のみなさまは、元検事総長の方を筆頭に、錚々たるメンバーです)アーバンコーポレーションによる不適切開示(スワップ契約部分をあえて開示しないこと)への積極的関与につきましては、すでに金融庁から(不適切→違法)認定を受けておりますので、それに追随した形で、かなり厳しい判断が下されているものと受け止めました。

問題はスワップ取引が存在するにもかかわらず、このような重要事実を秘匿して、その間にもヘッジ取引を繰り返していたBNPパリバの取引については、金融商品取引法で禁止されているインサイダー取引に該当するかどうか、という点でありますが、外部検討委員会は、

当該情報を知りながらヘッジ取引を行っていたBNPP東京支店の行動は、インサイダー取引に該当する可能性は否定できないものと考えております。しかしながら、本件ヘッジ取引は、スワップ契約に基づいて機械的に行われていたものであり、実質的にみると法が本来予定していた行為形態とは異なっている面があること、またインサイダー取引の該当性については、本委員会は判断する立場にはないことから、その点の判断については控えさせていただきます。

として、なんだかよく趣旨がつかめないような、「ん~、どっちやねん!」といいたくなるような歯切れの悪い報告内容になっております。現行のインサイダー規制は形式犯として処罰対象とされており、重要事実があって、その重要事実を知りながら、株式売買を行ってしまえば、その取引で儲けようといった目的があってもなくても(また実際に利益を獲得していなくても)インサイダー規制には該当してしまうわけであります。(軽微基準に該当するケースを除く)ただ、BNPパリバのヘッジ取引が、そもそも株価の変動(差益?)に基づく利益獲得を目的としたものではないということから、「本来予定していた行為形態とは異なっている面がある」と判断されたのかもしれませんが、インサイダー取引の可能性は否定できないけれども、可能性が高いとまでは述べられていないようであります。刑事罰を基本とするならば、インサイダー取引の構成要件該当性は認められるけれども、その違法性に乏しい、といった説明になるのでしょうか。課徴金制度を基本とするならば、課徴金算定の基礎となる利得計算の根拠がない、といった説明になるのでしょうか。もし、「富の変動」が「既存株主→BNPパリバの手数料」といった流れの場合、変動の要因が重要な事実の不開示によるものなのか、それともMSCB類似の株式価値の希薄化によるものなのか、という点においても結論が異なってくるように思いますが。

また、素朴な疑問ではありますが、そもそもインサイダー取引規制が適用されるのは、重要事実につきましては、後日「公表されること」が前提になっているものと思われます。しかしながら、スワップ取引の不開示ということが「重要事実」だとしましても、アーバンコーポレーションさえ倒産しなければ、後日このスワップ取引を公表することがBNPパリバにとっては「予想しうるもの」とは言い切れないのではないでしょうか。インサイダー取引を取締る趣旨は、重要事実が後日公表されるからこそ、そのタイムラグを利用する不公正取引を防止するところにあると思いますし、むしろBNPパリバとしては、後日になっても公表されるような事実はそもそも認識されていなかったのではないか、という疑念がぬぐい切れません。(←この点につきましては、「通りすがりさん」と大杉先生にご異論をいただきましたので、また検討してみます。理屈だけでなく、結論もおかしくなる・・・といったことになりますと、私としても十分検討する必要がありそうです。私の意見に対する「ダメ押し」でも結構ですので、またご意見がございましたらどしどしコメントいただければ幸いです。)ということで、スワップ取引の存在が「重要な事実」ではあっても、これがインサイダー取引規制における「重要事実」には該当しないか、もしくはBNPパリバ側にはインサイダー取引についての犯意(故意)がなかったとみるべきではないかと思いますが、このあたりはいかがなものでしょうか。(注:不適切開示以前の株取引との関係では、「重要事実」であることは当然だと思いますが、不適切開示以後の株取引との関係ではどうなんだろうか?といった疑問であります。脊髄反射的に書いておりますので、勘違いがあれば、またご指摘ください)

もうひとつ興味深いのは、先のシャルレの件でもそうでありますが、企業行動の「法令順守」について、最近こういった外部の第三者委員会報告の持つ役割がかなり重要になってきたのではないか、といった点であります。司法的救済による事後規制がなかなか奏功しないなかでの有力なソフトローとしての役割を担いつつあるのではないか、といった感想を持っております。(また、この点につきましては別の機会にもエントリーしたいと思います)

(12日午前;追記)

朝日新聞ニュースによりますと、金融庁がBNPパリバに対して金融商品取引法違反に基づき、「投資者保護規定」に抵触するものとして行政処分を検討している、とのことであります。(ニュースはこちら)アーバンコーポレーションの不適切開示について、積極的に働きかけた点を捉えて・・・ということのようですね。

11月 12, 2008 インサイダー規制と内部統制の構築 | | コメント (10) | トラックバック (1)

2008年11月11日 (火)

ビジネスパーソンのための裁判員制度入門(その1)

ここのところ、かなりマニアックな話題が続きましたが、息抜きのつもりで、本日はビジネスパーソンと裁判員制度との関係について、留意いただきたい点など列記してみました。「裁判員制度の是非を問う」ことにつきましては、これを論じるだけの私自身の素養もございませんし、高尚な議論は刑事裁判や刑事弁護にお詳しい先生方のブログ等におまかせすることとしまして、忙しい企業人として「裁判員に選ばれちゃったらどうしよう?」的な「おたすけマニュアル」程度にお読みいただければ結構かと存じます。いわば裁判員制度に当事者として直面してしまった場合のリスクマネジメント程度にお考えください。

すでにご承知の方も多いとは思いますが、あと2週間程度(11月28日ころ)で、最高裁判所から平成21年度の裁判員候補者宛に通知が届くことになっております。(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 第25条、以下「裁判員法」といいます)全国有権者1億385万人のなかから、平成21年度は29万5000人程度が裁判員名簿に登載されることとなりますので、補充裁判員を含む裁判員候補者となる確率は360人にひとり程度であります。たしかに実際に裁判員裁判が開廷されるのは、(施行日を5月21日として)おそらく来年の7月中旬ころからだと思われますが、「まだまだ先のこと」と考えていて、突然「候補者通知」が舞い込んできますと、おそらくビックリされる方も多いのではないでしょうか。そこで、すこしばかりビジネスパーソンにとっての裁判員制度について検討しておきたいと思います。

1 「裁判員候補者通知が届いたよ!」とブログに書いていいのか?

最高裁判所HPの「裁判員制度」に関するWEBページをご参照いただければ、とくに申し上げる必要もありませんが、私のブログのように個人が特定されるようなブログにおいて裁判員候補者たる地位にあることを公表することは禁止されております。(裁判員法101条1項参照)また匿名ブログであっても、全体から個人が特定できる場合であれば、公表しないほうが無難かと思います。ブログをおもちの方々は、400人中の1人になったことで、どうしても「書きたい」といった衝動にかられるかもしれませんが、そこはあえてグッとこらえて(笑)、裁判員の保護のための措置として禁止されていることをご理解ください。

なお、実際に裁判員に選ばれて、その職務を全うされた後であれば、実名ブログで「裁判人として頑張りました~♪」なる公表はだいじょうぶであります。ただし、今度は裁判員を終えた者としての守秘義務が課せられておりますので、評議の秘密ほか職務上知りえた秘密を漏らしてはなりません。(裁判員法108条)漏示してしまいますと、6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることになります。したがいまして、ブログへの記述は、裁判員としての職務を全うした感想程度にとどめておくことをお勧めいたします。

また、家族や友人、会社の上司などに、候補者となったことを話すことは、とくに禁止されているものではないと思われます。とくに、仕事の関係で(たとえば裁判員有給休暇制度に関する問い合わせや、仕事の繁忙時期に関する相談など)上司の耳に入れておく必要のある方もいらっしゃるかもしれません。ただ、相談を受けた友人、上司が「あいつ、ふだんは運悪いくせに、裁判員候補者になったんやて。えらいとこで運使い果たしよったなァ(笑)・・・」はたぶんマズイと思われます。

2 株主総会(直前)でも、総務担当社員は裁判員を務めなければいけないの?

これも最高裁HPの「調査票」のWEBページを詳しく見ていくと記載されているところですが、調査票を候補者通知と同時に送付する目的のひとつに、

月の大半にわたって裁判員となることが特に困難な特定の月がある場合,その特定の月における辞退希望の有無・理由。※注(例:株主総会の開催月など)

※注 調査票の記載から,特定の月の大半にわたって,裁判員になることができない事情(辞退事由)があると認められた場合,当該特定の月に行われる事件については,裁判員候補者として裁判所に呼ばれることはありません。

といった記載がありますので、おそらく具体的に、自身が総会担当者として、代替性のない仕事をしており、特定月においては職務を一時停止することは困難であることを詳細に説明することで、とりあえず「絶対に裁