2019年2月19日 (火)

ひさびさの「監査役の乱」?-廣済堂MBOに社外監査役が反対表明

今年1月にMBOを決議した廣済堂さんにおいて、創業家大株主と同社の社外監査役の方(元経営者)が反対を表明し、近々声明を公表されるそうですね。東洋経済さんのスクープの後、日経でも報じられるようになり、18日の夜には廣済堂さんが釈明のリリースを出しています。これは久しぶりの「監査役の乱」かもしれません。

ただ、以前の「監査役の乱」の頃とは時代が違いまして、企業統治改革が進み、取締役会の多様性が推奨される時代です。かつては「こら!監査役!お前があばれたら株価が下がるやないか!ひっこんどけ!」と(短期的利益の追求を重視した)株主の皆様から罵声を浴びせられることもありましたっけ(なつかしい・・・)。

しかしながら時代は変わり、市場では「これは企業価値を毀損するから反対だ」「きちんと事前の説明もないのだから反対だ」といった意見が出てくることを(コーポレートガバナンス・コードによって)歓迎する時代になったのですから、他社でも同様の事態は普通に想定されるはずです。「経営陣が株主の利益を第一に考えていない」と判断すれば、会社のレピュテーションの毀損に配慮しながら(少なくとも社外役員は)個人的な反対意見を述べることが期待されています。

全会一致ではなく、こういった意見が議事録に掲載されている中で、もしMBOが失敗した場合、全会一致の場合と比較して取締役の法的責任が認められやすくなるのでしょうか?裁判官としては、代表訴訟における原告株主側の主張に引っ張られてしまう可能性も否めません(まあ、この点はいろいろと意見は分かれると思いますが)。ちなみに会社側の釈明のリリースには「取締役会終了直後は『がんばってね』と言っていたではないか。とくに反対の意思は示していなかったではないか」との会社意見が述べられていますが、そもそも直前に説明を受けた監査役さんが「俺は聞いてないぞ」と言って暴れだすほうがおかしいわけで(笑)、経営者までされていた方は、とりあえずその場では紳士的に振る舞うのが当然ではないかと。後日、社外役員が十分な情報を入手しえた時点で反対意見を表明するということも、普通に起きると考えます。

かりにMBOがとん挫してしまいますと、MBOを決議したプロセスが問題とされる可能性も出てきます。そうなりますとシャルレMBOとん挫株主代表訴訟の2014年10月16日神戸地裁判決が示すような法的リスクにも留意しなければならず、会社側としても今後の対応には慎重を期す必要がありそうです(とりあえず、本日は第一印象程度のみ)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

成長戦略法制-イノベーションを促進する企業法制設計

411ggsk6xl_sx350_bo1204203200_ 今朝(2月18日)の日経朝刊法務面では、AI開発における法制面での制約が技術開発の萎縮を招き、海外との競争力の差につながりかねないとして、各企業による自主ルールの活用が紹介されていました。AIに対応した法的インフラの整備は喫緊の課題として、経済界から法律の世界に様々な提言が出されています。

成長戦略法制-イノベーションを促進する企業法制設計(成長戦略法制研究会 編 2019年2月 商事法務) 3,400円税別)

さて、西村あさひ法律事務所の武井一浩弁護士からご恵贈いただきました本書は(どうもありがとうございます!)、いま日経法務面で特集されている各記事を理解するには最も参考となる一冊です。日本企業の知財戦略、オープンイノベーション、働き方改革と成長戦略、ベンチャー投資法制、国際紛争解決に向けた効率的な対応等、最近の日経法務面で、頻繁に取り上げられている話題について、経済学者や行政官の立場から法律学に対して(日本企業の成長に向けた)提言が示されています。本日の日経法務面の話題も「デジタルイノベーションと成長戦略」として取り上げられています。

本書は、2016年4月ころから開始された成長戦略法制研究会の発言録や同会会員の方々によるご論稿をとりまとめたものです(武井一浩弁護士も上記研究会委員のおひとりですね)。会社法改正の目玉である株式交付制度(M&A法制における)なども、本書をお読みになりますと興味が湧いてくると思います。

P_20190216_222538_400上記の新刊書とは異なりますが、2016年3月に出版されたこちらの本を、私は拙ブログのネタ本として活用しております。経済成長のために、金商法や独禁法のルール(創造や解釈を含めて)はいかにあるべきか・・・という点を考えるにあたって、豊富なヒントが語られていてとても参考になります。

「成長戦略論-イノベーションのための法と経済学」(ロバート・E・ライタン編著 木下信行・中原裕彦・鈴木淳久監訳 NTT出版 2016年)

本書は米国の経済学者が中心になって、米国の経済的な成長を後押しするための法創造や法運用の在り方に関する論稿を集めたものであり、(今回初めて知ったのですが)上記「成長戦略法制」の著者の多くは、本書の監訳にあたっておられた方々です。経産省では平成22年ころから「成長戦略と法制度のあり方」については研究が重ねられておりましたので、その流れの中で監修作業が続けられたものと推測します。

昨日(2月17日)のNHKスペシャルで「田中耕一、ノーベル賞受賞からの苦闘の16年」を視聴しましたが、まさに上記「成長戦略法制」で語られていた「日本企業におけるイノベーションの阻害要因」を認識しました。また、グローバル企業との競争に負けないためには法務部門の強化が不可欠であることや、企業法務に携わる者が(ソフトロー等を通じて)法創造機能を発揮する必要性も、本書から認識したところです。なお、「成長戦略論」の全体像は、上記「成長戦略法制」の第1章にて概要が示されていますので、もしご興味がありましたら、このほど出版された上記「成長戦略法制」をまずご一読されることをお勧めいたします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

2019年2月18日 (月)

企業実務に大きな影響を及ぼすパワハラ防止体制の法制化

2月15日(金)の日経朝刊記事にもありましたが、厚労相が提出した女性活躍推進法等の一部改正に関する法律要綱案が労政審議会で承認され、3月の通常国会に法案が提出されるようです。注目のパワハラ防止義務の法制化ですが、「労働施策推進法(以前の雇用対策法)の一部改正」として導入されることになりました。パワーハラスメントの定義としては「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」と、要綱案では示されています。

かなり小さな事業主(たとえば小売業であれば資本金5000万円、継続雇用の従業員50名以下等)については、パワハラ体制整備義務は(公布日から3年間)努力義務とされていますが、全事業主に対してパワハラ通報をした従業員、パワハラ調査に協力した従業員への不利益処分の禁止を定めています。日経の見出しにあるように、大企業は違反に対する行政処分付きでパワハラ防止体制の整備が義務化されるようです。では「どこまで体制を整備すればいいのか」という点は、今後政省令にて指針を策定するとのこと。

今年はいろいろな働き方改革関連法が施行されますが、もっとも企業実務に影響を及ぼすのは来年施行予定のパワハラ防止法でしょうね。そもそもセクハラの「グレーゾーン」はグレーゾーンごと禁止してしまえばよいのでしょうが、パワハラの「グレーゾーン」は(適切な指揮監督関係を委縮させてしまいかねないので)事業主が白黒をはっきりとさせなければなりません。その「はっきりとさせる」ことに失敗すれば「ブラック企業」との烙印を押されたり、判断者が「セカンドパワハラ」として被告にされてしまうリスクは極めて大きいはずです。

審議の中で論点とされていた「労働者に対するパワハラ禁止規定」は盛り込まれませんでしたが、事業主や労働者のパワハラ配慮義務(努力義務)は盛り込まれています。したがいまして、今後、各事業主において自主的に策定されるパワハラ防止に向けた自主ルールにおいて、従業員へのパワハラ禁止規定が盛り込まれることが予想されます。いずれにしても、きわめて忙しい厚労省管轄の対策となりますので、パワハラ対策には事業主による自主解決を期待するものとして、自主解決が期待できない状況に至って、厚労省が厳しい事後規制に臨む・・・という建付けにて運用されることになりそうです。

会社法上の(役員の)内部統制構築義務や内部通報制度の在り方にも関連する大きな法改正なので、今後の労働施策推進法の改正作業に注目しておきたいと思います。

| | コメント (1) | トラックバック (0)
|

2019年2月14日 (木)

監査法人のビジネスは監査からコンサルタント業務へシフト?

内部通報制度の自己適合宣言登録申請の受付が、2月12日に開始されましたね(関心のある方は、商事法務研究会さんの関連ページをご覧ください)。果たしてどれくらいの企業さんが申請し、また認証されるのか、そして認証マークはどのように活用されるのか、今後の運用が楽しみです。

さて(ここからが本論ですが)、毎年恒例の週刊エコノミスト「弁護士・会計士・弁理士」特集記事(2月19日号)をさっそく読みました(結構楽しみにしております)。今年は「進化する弁護士・会計士」ということで、起業する弁護士・会計士や組織内弁護士・会計士に光があたり、私の知らない世界も垣間見えて面白い内容です。

そのような中、「弁護士が日本版司法取引の施行でコンプラ特需!」などという記事もありますが(ホンマかいな?(*´Д`)?)、一番興味を惹いたのは「監査報酬が上昇、目立つ『新日本離れ』」なる特集記事。伊藤歩記者お得意の(?)詳細な調査・分析に基づく記事でして、読み応えがあります。最近、新日本監査法人さんから別の大手監査法人・準大手監査法人に会計監査人が代わった上場企業が多いことが読み取れます。

「新日本離れ」の原因としては、記者の指摘する「東芝の会計不正事件の影響」ということもたしかにあるかもしれませんが、最近の会計不正事件への会計監査人の厳しい対応、頻繁な監査人交代をみておりまして、他の大手監査法人も含めて「できればリスクの高い企業の監査は避けたい、もしくは続けるとしても、厳しい監査基準に見合う監査報酬に増額したい」といった気持ちの表れ、ともいえそうです。

つまり、新日本さんは、どこよりも早く決断し、ビジネスモデルの転換に舵を切ったのでは、というのが私の見立てです。1月22日に東証さんが適時開示ガイドブックを改訂され、監査人交代時における理由開示の詳細化を要請していますので、今後はこのあたりも明らかになってくるかもしれません。そこにもし東芝事件の影響があるとすれば、「監査意見にもセカンドオピニオンはありうる」という認識が、監査業界において共有されてきた、という現実ではないかと(だからこそ会計監査における情報提供の充実が求められるわけですが・・・)。

監査報酬を上昇させることも経営面では大切ですが、もっと効率的なのがアドバイザー、コンサルタント事業にシフトすることです。これだけ監査業務のリスクが高まり、監査自体も厳格になっているわけですから、企業としては監査に耐えうるガバナンス、内部統制に力を入れるのが当然であり、そこに監査法人のアドバイザリー業務の需要が高まります。最近は不正発見、予兆発見のためのAIソフトも稼働しており、監査スキルを持った人的資源の不足を補う道筋も見えてきました。そこで、たとえ会計不正が発生したとしても、決算修正に至る前の重要性に乏しい不正で見つかれば、企業にとっても費用対効果という面でも合理的です。

なんといっても、独占業務である監査実務を経験されてきた方々がアドバイザーとして会社を支援するわけですから、これは監査法人さんの強みだと思います。上記週刊エコノミストの特集記事「組織内弁護士のトレンド」では、企業内弁護士も実務経験のある法律家への需要が高まっているそうで、このあたりは弁護士も会計士も同様かもしれません。おそらく大手監査法人は監査収益よりもアドバイザーとしての収益のほうが(現状でも)上回っているものと推測いたしますが、その傾向は(監査の厳格化が増すにしたがって)さらに強まるものと思います。

| | コメント (3) | トラックバック (0)
|

2019年2月12日 (火)

デサント株式に対する敵対的TOBと取締役の経営責任

すでに報じられているように、スポーツ用品大手のデサントさんの経営陣と伊藤忠商事(筆頭株主)さんの対立は、敵対的TOB(株式公開買い付け)に発展しています。伊藤忠さんの買付期限は3月14日だそうで、市場外買付により、出資比率を30.4%から40%に引き上げ、経営体制を刷新する予定だそうです。これに対してデサントさんの取締役会ではTOBに反対を表明しています。

「敵対的TOB」は(大規模企業によるものとしては)2006年の王子製紙、北越製紙の事例以来ほとんど行われておらず、しかも成功例がない、日本の企業文化にはなじまないのではないか・・・、といったことが報じられているものの、マスコミネタとしては興味深いところです。私のブログでも2006年当時、王子・北越紛争は何度もエントリーで書かせていただきました。ただ、12年前と現在とでは「敵対的TOB」を取り巻く経営環境が変わってしまって、私のような「場末の弁護士」が面白おかしく(?)語るネタではなくなったような気もします。

伊藤忠さんが「突然のTOB表明」に至ったというのは、たしかに王子・北越紛争の法的規範から学んだところが大きいと考えます(たしか、当時の王子製紙の社長さんが、北越さんに仁義を切ったのが失敗だった-あらかじめ礼を尽くして「やります!」と宣言して準備期間を与えてしまい、法的に苦しい立場になった-と反省されていた会見を記憶しています)。しかし株式時価の5割増しの買付価格を提示したのは2017年のソレキア・富士通の例を参考にしたものと思います(ホワイトナイトになりたくても、取締役会の合理的な判断が優先)。さすがに5割増しとなりますと、よほどのシナジー効果が認められないかぎりは支援したくても取締役会がナットクしない可能性が高いです。支援企業の役員が経営責任を問われかねません。

効率的な支配権取得(協議継続が前提であれば40%で十分)を目指す、ということで、40%を買付上限としたことも含めて、伊藤忠さんとしては、TOBに関わる会社役員のリーガルリスクへの配慮よりも、経営責任を尽くすことへの配慮を優先した戦略を採用したと考えます。なんといいますか、語弊があるかもしれませんが「真綿で首を絞める」ようなプレッシャーをかけて交渉するような感覚でしょうか。そもそも敵対的買収防衛の場面において、日本の取締役は善管注意義務違反に(司法の場で)問われる可能性は極めて低い・・・敗訴リスクだけでなく、提訴リスクも乏しい・・・というのが王子・北越紛争から得た教訓ではないかと。。。

これに対してデサントさんも、きたるべき株主総会の委任状争奪戦も念頭に置きながら伊藤忠さんと協議を継続すると表明しています(たとえば産経新聞ニュースはこちらです)。TOBへの反対表明を補強する意味での広報戦略の意図もありますが、伊藤忠さんのTOBが成功することも想定したうえでの発言と思料いたします。なお、敵対的TOBとは異なり、委任状争奪戦による実質的な支配権取得は2008年のスティールP・アデランス事件以来、何度か成功例がありますので、伊藤忠さんも当然のことながら(TOB終了後の)委任状争奪戦は念頭に置いておられるはずです。

ただ委任状争奪戦の場面でも、スチュワードシップ・コードの影響により、たとえば大株主さんの議決権行使結果の開示や政策保有株式の株式行使基準の設定、議決権行使助言会社の影響力など、支配権争いを取り巻く経営環境が大きく変わりました。オリンパス社に取締役選任を成功させた機関投資家(5%保有)のように、集団的エンゲージメントの手法で投資先のガバナンスに介入する手法もあたりまえの時代になりました。おまけに、ガバナンス・コードの影響により、たとえ争奪戦に負けたとしても、会社側上程議案への企業側の対応表明など、敗者側がさらに作戦を検討する余地もあります。委任状争奪戦の法的な枠組みは変わらずとも、その中身を動かす要素に大きな変動が生じています。

「敵対的買収」というと、かつては米国の先例を参考にして「A社の取締役はこんな善管注意義務違反になるから」「B社の取締役は利益相反のうえで忠実義務を負うから」といったリーガルリスクを前面に出して行為規範を求めることが多かったように思います。しかしながら、パッシブ運用による対話主流の時代となり、企業統治改革が進み、ESG経営の重みが増してきますと、取締役のリーガルリスクを語るだけでは勝敗は決しないように思います。「市場での株主の判断」と「従業員の総意」「海外を含めた消費者の考え方」といったステイクホルダーの賛同をどちらが得られるか、といった要素のほうが勝敗に影響を及ぼすようになったのかもしれません。また、勝敗は裁判や総会で決するのではなく、その後のパフォーマンスによって決まるようになった(経営責任で決まる)と考えます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

2019年2月 6日 (水)

日産前会長会社法違反事件-会社法違反の「過料」を刑事罰に格上げせよ

丸々1カ月、新聞ウォッチングを怠けておりましたので、日産前会長さんの事件の流れを把握できておらず、すっかり情報に疎くなってしまいました。ということで、各紙バックナンバーをチェックしておりますが、近時の新聞記事において目に留まったのが1月30日の毎日新聞朝刊「論点-ゴーン事件の教訓」です。なかでも上村達男先生の「制裁金を含めた法整備を」なる論稿は何度も精読いたしました。

特別背任罪での立件は検察側にとってもハードルが高いのですが、世間の関心は(次から次へと報じられる不正事実によって)刑事立件の可能性に集まっています。一方、長期間にわたり、検察や会社側が指摘しているような不正が経営者によって続けられていたのであれば、なぜこれをもっと早く会社内部で止められなかったのか、という素朴な疑問が前よりも増して強く生じてきます。経営者不正を止められるのは事後の厳罰(刑事立件)か、事前のソフトロー(ガバナンス)か、という選択は、どうも極端に思えます。

そこで上村先生のように(会社法の世界ではありますが)金融庁が登場して行政制裁的な処分をもって対処せよ、という考え方が登場します。経済刑法に詳しい学者の方々にも、検察の人的資源の関係からみて、会社法の過料制裁を刑事罰にいきなり引き上げるとなると、その運用がもたない、というところから行政制裁をもって対処すべし、という意見も有力に出されているようです。でも(たぶん「大人の事情」によるものと思いますが)、法務省と金融庁の所轄の壁は、思いのほか高いので、そう簡単には会社法違反に(金融庁主導による)行政制裁が組み込まれるようには思えないのです。

私は公開大会社で有価証券報告書を提出している株式会社に限り、会社法違反に過料が課されているディスクロージャー規制違反および競業避止、利益相反報告義務違反の行為に対しては刑事罰をもって対処するように改正することを提案したいところです。やや複雑ではありますが、過失ではなく故意の違反行為のみを刑事罰対象として、過失によるものはこれまで通り過料、という運用です。

このたびの日産事件をみておりまして、役員報酬の開示違反を「形式犯」ではなく「実質犯」と捉える風潮になったのであれば、会社を取り巻く利害関係者への報告義務違反も含めて、罰金の対象とすべきではないかと。また、競業避止、利益相反取引の事後報告を懈怠することが刑事罰に該当するとなれば、ソフトローの運用次第ではハードローの厳しいペナルティが待ち構えているとの緊張感が取締役会出席者にも生じて、いまよりもガバナンス改革が進むのではないかと思います。

当ブログでは、これまで3回ほど会社法違反行為を過料から刑事罰対象に引き上げよ・・・と提案してきましたが、今回はそれなりの風が吹いてきたような気もしますが。。。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

2019年2月 4日 (月)

今年、企業に必要なのは知財戦略に強い弁護士(だと思う)

昨年4月、企業の国際競争力強化に向けて法務部門を強化すべし、との報告書が経産省から出されて以来、日経新聞でも「国際紛争に強い弁護士待望論」の特集記事が掲載されています。大企業を中心に、国際紛争に強い日本人弁護士が求められていることはわかりますが、今もっとも企業にとって必要とされているのは知財戦略の面で企業を支援できる弁護士だと私は確信しています(ちなみに私はそちらの専門家でもありませんが)。最近、弁護士と弁理士の資格を持った同業者の方々とお話をしていて痛感します。

著作権法や不正競争防止法の平成30年改正が施行され、新らしいビジネスモデルが違法か適法か境界線がますますファジーになっています。新たに保護対象となる「限定提供データ」など、専門家に意見を聞いてみても明確にならない分野がたくさんありますね。つまり「やったもん勝ち」の世界の中で、知財コンプライアンスを正直に(保守的に)遵守するのか、とりあえずやってみて後でクレームがついたらそのときに考えよう、といった態度でビジネスを進めるのか。知財戦略における経営判断は、当該企業の行動規範とも密接に関係すると思います。

システム特許にしても、先日の「いきなりステーキ事件」のように特許の有効性判断が裁判で二転三転していますし、日本企業が不得意とされるオープン&クローズ戦略も知財の活用といった面では良質な経営判断が模索されているところです。「知財」といいますと、いままでは専門性の高い弁護士の方々の専門領域という認識が強かったと思いますが、そういった専門性の強い法律家と(担当部署だけでなく)経営陣がどのようにアクセスしていくか・・・、というところが企業競争力の向上に大きな影響を及ぼすのではないでしょうか。知財、とりわけ著作権法や不正競争防止法に強いとされる弁護士の方々に、最近すこしばかり「うらやましい」と感じております。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

2019年2月 1日 (金)

当職が委員長を務める第三者委員会報告書が開示されました

昨年末から調査を続けておりました日住サービス社(東証2部)の会計不正事件につきまして、当職が委員長を務めております第三者委員会は本日、報告書を会社に提出し、31日午後4時に全文が開示されました(東証適時開示はこちらです)。調査にご協力いただいた皆様に厚くお礼申し上げます。とりわけハードなスケジュールの中、精力的にフォレンジックス調査に尽力いただいたデロイトトーマツ・ファイナンシャルアドバイザリーの皆様には、この場を借りて感謝申し上げます。

「件外調査」の重要性をあらためて認識したものであり、また組織の構造的欠陥について「根本原因」まで遡って解明することの難しさも痛感いたしました。会計監査人と監査役との連携と協調に光をあてて、監査役監査や取締役会の監督機能の発揮場面を詳述する報告書というのも珍しいかもしれません。ぜひコーポレートガバナンスにご興味のある方はご一読いただければ幸いです。ちなみに厚労省の不適切統計で話題となっているような「忖度」は一切ございません。

委員会活動も本日でとりあえず終了しましたので、また「普通の忙しさ」に戻れそうです。ブログも来週から再開しようと思っております。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

2019年1月24日 (木)

第三者委員会を設置する上場会社が急増しているようで・・・

ある同業者の方が2018年の(上場企業によって公表されている)第三者委員会報告書の数を調べたところ、なんと2017年の1.5倍(40件→61件)に増加しているそうです。ここで「第三者委員会」と述べているところは「特別調査委員会」や「外部調査委員会」など、名称は様々ですが、ほぼ全委員が社外の専門家等によって構成された委員会を指します。

会計監査人の監査の品質が厳しく問われたり、東証さんが裁判で民事賠償責任を追及される中で、市場の番人とされる方々の姿勢の変化が影響しているのでしょうか。私も会計不正事件に関する委員会活動の真っ最中でして、書きたいネタは山ほどあるのですが、ほとんどブログを更新する時間もございません。あと1週間~10日くらいは第三者委員会に没頭しますので、更新が滞りがちになりますが、どうかご容赦ください<(_ _)>

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

2019年1月21日 (月)

内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)が2月以降実施予定

最近は「内部通報制度」といえば公益通報者保護法改正の話題が多いのですが、同法改正法案はおろか(上場会社等に社外取締役を義務付ける)会社法改正法案すら今年の通常国会では提出されない見込みとなってきましたので、本日は制度認証に関する話題です。旬刊商事法務の新春合併号(2187号)に掲載されておりますが、内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)の登録申請が、いよいよ2月以降に開始されるそうです(同誌121頁以下)。昨年12月、商事法務研究会さんが制度運用を統括する指定登録機関に選定されましたので、告知の意味も含めて「トピック」として掲載されたのかもしれません。

なお、内部通報制度認証の登録への流れは商事法務研究会さんのこちらのHPで解説されています。認証登録の有効期間はどのくらいなのか、同一の法人に複数のヘルプラインが存在する場合には個別で登録しなければならないのか、親会社と子会社は別々に認証を得る必要があるのか、第三者認証制度は自己適合宣言登録を経なくても申請できるのか・・・など、かなり有益な情報がQ&Aに掲載されています。

先週、消費者庁に伺った際に職員の方からお聴きしましたが、商事法務研究会さん主催の登録申請説明会(東京会場)は午前も午後も満員札止めの盛況だったようで、やはり企業の関心の高さが窺えます。大規模、中規模、小規模の区分で認定レベルも異なるようですし、また会社だけでなくNPOや学校法人なども登録申請ができますので小さな組織にも普及してほしいですね。幸い大阪会場の説明会はまだ空きがありましたので、なんとか時間を作って説明会に参加してこようと思います。

私のコメントも掲載されましたが、1月14日の朝日新聞朝刊(東京版)記事によりますと、内部通報制度を強化した日産さんでは、1年間に全世界で1000件以上の内部通報が社員から寄せられたそうです(2017年ベース)。このたびの前会長さんの件では内部通報が届いて社内調査に至ったそうですが、たしか無資格検査事件では一件も内部通報が届いていなかったようです。つまり、日産社内で長年にわたって続いていた重大な不祥事については通報制度がタイムリーには機能していなかったといえます。ガバナンスを補完するための内部通報制度の必要性を感じます。

このように、件数だけをみれば内部通報制度が機能しているようにはみえますが、その運用をみると機能不全に陥っていたとも評価できそうで、内部通報制度の評価というのはなかなか難しいですね。実効性という意味からすれば「不正の早期発見」のために有効かどうか・・・というところばかりに目がいきがちですが、実は「不正の予防」に活かすための組織風土の醸成に有効という見方、「有事対応」における信用回復に有効(たとえばリニエンシーや司法取引、連邦量刑ガイドライン等)という見方、そしてマネジメントのためのレポートラインの実効性確保の視点こそ評価すべき、という意見もあり、実効性の評価にも様々な視点があります。

改正独禁法の確約手続(事前相談制度)や、働き方改革関連法施行後の罰則付き違法行為への是正勧告など、内部通報制度が機能したことで命拾いする企業が今後たくさん出てくると思いますし、だからこそ制度構築における実力の差は大きく開くことと思います。非財務情報の開示が推奨される時代において「不正が発生したときの企業対応」という、目に見えない企業価値(組織風土)をステイクホルダーに「見える化」する意義は大きいです。認証のための審査は内部統制や内部通報制度に精通した有識者の方々が行う・・・と上記HPでは説明されていますが、どういったところにポイントを置いて評価するのか・・・、今後いろいろな試行錯誤の中で運用が向上することに期待をしています。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

«東証・市場区分の見直しと社外取締役の複数化