2009年7月 6日 (月)

日本監査研究学会報告「会計不正に係る判決と課題」

7月4日土曜日、第32回の日本監査研究学会西日本部会(於 あずさ監査法人)におきまして、「会計不正に係る判決と課題」というテーマで特別報告をさせていただきました。私の報告内容につきましては、また「現代監査」第20号で改めて掲載されるようでして、詳細はそちらでご覧いただきたいのですが、報告要旨は以下のとおりです。

1 司法と会計 この異質なるもの

  相対的真実、重要性の原則、リスク・アプローチと絶対的真実、当事者主義、善管注意義務

2 会計監査上の過失が問題とされた最近の判決より

  ナナボシ判決と東北文化学園大学判決を題材として法律要素たる「善管注意義務」と会計監査要素たる「リスク・アプローチ」の関係を考える

3 医療過誤訴訟におけるチーム医療訴訟と会計監査訴訟

  高度な資格保有者間における協働作業上の法的責任論につき、信頼の原則はどこまで適用されるか

4 弁護過誤訴訟と会計監査訴訟

  金融庁の懲戒処分と自主規制ルールによる懲戒処分の関係(それぞれの処分の目的、会計処理方法の妥当性は誰が判断するのか)

5 法律家からの提言

  鉄道事故調査委員会、医療事故調査委員会のような会計不正事件における事実認定・原因分析を行う委員会の設置、民事・刑事事件における専門委員会の設置、会計監査上の責任を問うエンフォースメントの多様性(ハードローとソフトローの使い分け等)

会計士協会の増田会長曰く、「(一学会員として)たいへん勉強になりました。でも、証拠(証憑)の評価については先生が言われるよりも、会計士はもっと厳密に精査していますよ。弁護士さんとはそんなに変わらなと思うけどなぁ。ちょっとあれは異論があるなぁ。。。」

太陽○SG監査法人の某会計士の方曰く「相対的真実主義の取り上げ方がちょっと違和感があった。70%で正しいとする合理的な心証の問題というよりも、複数の会計基準選択の余地がある場合に、どれを選択しても正しい・・・という例の方がわかりやすかった」

有限責任監査法人○ーマツの某会計士の方曰く「うーーーん、そういわれてみると、たしかに私もリスク・アプローチってようわかりまへん(笑)」(←たぶんご冗談でしょ・・・)

等々、ご意見をいただきました。(どうもありがとうございます)西日本部会としては、これまで以上に多くの方にご参加いただいたそうでして、大証の○○さんや、新○本有限責任監査法人の○○先生、また私が監査役を務めるフ○ンドリーの常勤監査役の○○さん、○○新聞の○○さんなど、応援にかけつけていただいた方もいらっしゃって、たいへんうれしかったです。また、とりわけチーム医療訴訟における医師の過失責任の考え方と会計監査人の責任との比較については、みなさま非常に関心が高いことがわかりました。

しかし、一番うれしかったのは、昨年の7月青山学院における日本内部統制研究学会の基調報告の際、かなり厳しいご意見を頂戴しましたT北大学のT田教授より、(懇親会の席上)「いや~、今日の報告は良かった! キミ、ずいぶんと成長したね~。去年は幼稚なこと言っとったけど・・・」←( ̄∇ ̄ ;)
とおほめの言葉(ですよね?)を頂戴したことであります。(なんか雪辱を果たしたような気分♪)この歳になって人様から「成長したね」などと言われることは、ほとんどありませんので、ホント嬉しかったですね。(あっ、でも私は部外者ですから、これからもホンネでお話させていただきますね)

学会員以外の者に、1時間も特別報告をさせていただき、またパネリストとして討論に参加させていただいた(開かれた)日本監査研究学会に敬意を表するとともに、貴重な勉強の機会を与えていただいた関係者の皆様(特にあずさの佐伯先生と北山先生)に、この場を借りて厚くお礼申しあげます。(東日本部会も盛会となりますよう祈念しております。そういえば、監査学会の会長選挙も「直接投票」に変わったそうですね。H田先生からお聞きしました)

7月 6, 2009 不正を許さない監査 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年7月 3日 (金)

内部統制 総括するには早すぎる・・・(ような気がします)

コメント欄におきまして、すでに内部統制報告制度に関する総括的なご意見も出てまいりました。(みなさま、ご意見どうもありがとうございます。)プリンシプルベースによる規制手法に慣れていない日本の企業にとりまして、内部統制報告制度の初年度にいろいろと問題が呈示されるのは、制度趣旨としてはとても良いことだと認識しております。良い見本が見つかれば、そこに集約されていくわけで、また制度自体に欠陥が見つかれば大幅な改廃もあって良いと考えております。したがいまして、まだまだ総括には時間が早すぎると考えております。

さて、当ブログにおきましても約10日間にわたり「内部統制報告書の検討シリーズ」を続けてまいりましたが、本日(7月2日)の日経新聞朝刊にて「内部統制に欠陥、56社」(開示会社の2%)という見出しで、とりあえずの総括記事が掲載されておりました。(※ 正確には「重要な欠陥あり」と開示したのは55社、「内部統制は有効ではない」と開示したのが1社で合計56社ということになります)フリード社とフォーバル社の報告書の内容から、これを一つの重要な欠陥の開示と括りますと、私のこれまでのエントリーで表示しております企業とピッタリ56社一致しておりましたのでホッといたしました。(^^;ちなみに、日経朝刊のQ&A記事は一般読者向けにはタイムリーな解説だと思いますし、またプロティビティ・ジャパンの神林さんのご意見につきましても、(金融庁や監査法人が用意周到に進めた結果として2%にとどまったのかどうかは、ちょっと異論もありそうですが・・・)概ね賛同するものであります。(結局、重要な欠陥があり、内部統制は有効ではない、とする報告内容(予定を含めて)を適時開示として公表したのは岩崎通信機さんとBB太田昭和さんだけだったのでは?)なお、内部統制報告書につきまして、監査法人が「意見を表明しない」とした9社(7月1日リリースのJDC信託まで含め)についても、やはり内部統制に問題を残した企業として含めるべきでしょうから、内部統制に欠陥があったのは合計では65社とみるのが正確ではないでしょうか。

ところで内部統制における「重要な欠陥」とその是正について各社報告書を研究することも重要でありますが、今後注目されるのは、今回「当社に重要な欠陥は認められず、内部統制は有効であると判断した」と報告している企業につきまして、過年度決算訂正を必要とするような、財務報告に重要な影響を与えるような企業不正(不正とまでは言えない誤謬も含む)が発覚したときにはどうなるのか?という点であります。これは内部統制を評価した企業の経営トップおよび内部統制監査を担当した(適正意見を表明した)会計監査人の対応に関する問題であります。7月2日の内部統制報告書関連の記事の横に有限責任監査法人トーマツさんの調査結果が掲載されておりましたが、そこには512社のうち21%の上場企業において資産流用行為や不正な財務報告などの不正が発生していた、とのことであります。(また、70%ほどの企業が、内部統制報告制度対応が、不正防止や発見に一定の効果があった、とのこと)不正の財務報告に対する影響度にもよりますが、これだけ多くの上場企業において経理面に影響のある不正が発生しているということは、これからも当然のこととして、従来から継続していた会計不正事件が発覚することは100%間違いないと思われます。今回、内部統制は有効である、と評価した企業において、そのような不正が発覚した場合、どういった理由をつけて「あのときは重要な欠陥はないと思いましたが、実際には大きな不備が存在していました。」と説明するのでしょうか?それとも、そういった場面において、はじめて「内部統制の限界論」が登場してくるのでしょうか?

また、今後増加するであろう会計不正に関する法的責任追及訴訟におきまして、内部統制報告書はどのように活用されるのでしょうか?経営者の内部統制構築義務を具体的に根拠付ける「経営トップが管理すべきリスク」や、会計監査において「通常実施すべき監査手続き」を裁判上特定するための「固有リスク」や「統制リスク」を裁判官に説明するにあたり、文書提出の申立てによってかなり「おいしい」文書が出てくるはずであります。(実施基準によって保存期間は5年と定められておりますので、「紛失した」「廃棄した」とは言えないはずであります)今後露見するであろう「内部統制報告制度リスク」といったものが、どのような形で法的に問題となるのか、そのあたりが判明することでやっと総括ができるのではないでしょうか?

※ ノオトさんより「通常実施すべき監査手続き」なる用語が古い・・・というご指摘を受けましたが、(もちろん以前の裁判上でも用語は問題となりましたので、従来の監査用語としては古いことは承知しておりますが)リスク・アプローチが採用される現在でも、一般に専門家としての注意義務を尽くして監査を行うこと示す用語としては用いられることになるんじゃないでしょうか。適切な言葉がございましたらお教えいただければと。

7月 3, 2009 内部統制報告書研究 | | コメント (3) | トラックバック (1)

2009年7月 1日 (水)

英国流パネルと司法謙抑主義

6月26日の日経朝刊に小さな記事が掲載されておりましたが、財団法人日本証券経済研究所内の英国M&A制度研究会より報告書がとりまとめられ、6月30日に公表されております。日本型ライツプランに頼る割合が多ければ多いほど、外国投資家からは「日本は透明性の低い市場だと認識される(後述対談におけるF弁護士の言葉)ことになってしまいますが、TOBルールを整理することも含め、英国流のM&Aルールをきちんと理解しよう、というのが本研究会発足の趣旨のようであります。

つまり、敵対的買収防衛ルールについては、これまで米国流ライツプランが主流でありますが、この対極にあるといわれております英国流テイクオーバーパネル(通称パネル)におけるテイクオーバー・コード(通称コード)に関する研究会報告というものであります。それほど話題になっていないのかもしれませんが、報告書の末尾をご覧になればおわかりのとおり、日本を代表する商法学者の方々と金融庁、経産省の方々による研究会でありまして、買収防衛の在り方を企業自身による防衛から市場の環境整備へと傾斜させるひとつのきっかけになるのではないか、と言われているところですね。

「MARR(マール)」の2009年1月号におきまして、東大のK教授とM&A弁護士として名高いF弁護士との対談「防衛策の検証と日本の企業買収ルールの今後のあり方-世界金融危機とグローバル化の中で-」を拝見したときから、この英国M&A制度研究会における議事内容が気になっておりましたが、本研究会報告書を読ませていただき、パネルコードが日本における資本市場の環境整備に役立つものになるのかどうかは、英国と日本の職業文化や司法制度の違いを考えますと、まだまだこれから検討すべき点は多いのではないかと感じました。

パネル自身が2006年の英国改正会社法に基づくようになりましたので、コードが純粋なソフトローとは言えなくなりましたが、こういった自主ルール(一般原則と細則からなる)が我が国におけるM&Aルールとして定着するのかどうか、また民間組織による裁定について、我が国における司法判断は謙抑主義を貫くのかどうか、「合法的村八分」のようなものが職業選択の自由を制限する正当性を有するのか、民間組織の裁定に反する行為を行った者へのアドバイスを完全に拒否しうるほど、日本のM&Aアドバイザーには職業人としての名誉を重んじる気風があるのだろうか・・・など、いろいろな疑問が湧いてくるところであります。(そもそも、これってプリンシプルベースによる規制が社会規範として成り立ちうる文化がまず先にありき、では?)問題の切り口はいろいろあるのでしょうが、私的には(英国のような膨大な審決の先例を持たない日本においての)民間裁定の正当性、そしてソフトローのエンフォースメントの在り方ですね。先日のレックスHD事件などをみましても、裁判所は企業価値研究会のMBO報告書などをかなり尊重しておりましたので、こういった分野におけるソフトローにつきましても、司法謙抑主義の基礎ができつつあるのではないか、とも考えております。

参考書としては、「市場取引とソフトロー」(有斐閣 編集代表中山信弘)における渡辺教授の論文がお勧めです。

7月 1, 2009 テイクオーバーパネル | | コメント (2) | トラックバック (0)

2009年6月30日 (火)

内部統制報告書の検討(その7-やはり投資家にはわかりにくい制度)

個人的な趣味と備忘録の意識で「内部統制報告書検討シリーズ」を続けていますが、気がつくと6月30日のココログ記事ランキング(デイリー)の100位以内に当ブログのエントリーが3つも含まれていました。(皆様、閲覧どうもありがとうございます・・・m(__)m・・・)

さて、本日(6月30日)は、3月決算会社の有価証券報告書提出も山場を過ぎましたので、「重要な欠陥が認められるために内部統制は有効とは認められない」とする報告書の提出会社は8社、意見不表明受領会社1社(合計9社)だったと思われます。リバーエレテックさん(JDQ)、ホッコクさん(JDQ)、ビジネス・ワンHDさん(福岡)、大水さん(大証・・・・・くれぐれも「大木」さんと御間違えないように・・・・)、21LADYさん(名証)、オメガプロジェクトさん(JDQ)、シャルレさん(大証)、デジタルアドベンチャーさん(大証)などなど。なお、オメガプロジェクトさんとシャルレさんの内部統制報告書はなかなか興味深いものがありました。また、プラコーさん(JDQ)については、監査人による意見不表明についての文書受領をリリースされております。なお、ここのところ、重要な欠陥ありとする内部統制報告書の数が多かったため、事業報告での記載や監査役監査報告書での記載がどのようになっているのか、という点については確認しておりません。また、改めて研究してみたいと思います。

なお、すでに監査法人から「意見を表明しない」とする文書を受領されていたゼンテックテクノロジーJAPANさんが、内部統制監査報告書に関する監査意見不表明についての補足」と題するリリースを追加開示しておられます。このリリース後、各方面からいろいろな問い合わせがあり、とくに株主の方々より、「財務諸表に関しても意見が表明されない、ということか?」「意見が表明されないということは上場廃止になるということか?」との質問が相次いだことが記載されております。たしかに内部統制報告制度なるものは、開示制度のひとつとはいえ、一般の投資家の皆様にはわかりにくい制度ですよね。重要な欠陥が残っているので内部統制は有効とはいえない、と開示する場合でも、また監査人から意見をもらえなかった、と開示する場合でも、その際にきちんと株主の方に誤解を生じさせないような表現が必要ですね。

6月 30, 2009 内部統制報告書研究 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年6月29日 (月)

内部統制報告書の検討(その6-西松建設社のケース)

本日(6月29日)も、朝から18社(午後7時現在:東邦グローバルアソシエイツ、日本アンテナ、光ハイツ・ヴェラス、幻冬舎、戸田工業、加藤製作所、インスパイアー、ジェイオー・グループHD、御園座、ウィルソン・ラーニング・ワールドワイド、ブックオフコーポレーション、エーアンドエー・マテリアル、平賀、ユニバーサルソリューションシステム、トラベラー、オープンインターフェース、バーテックスリンク等)ほどの「重要な欠陥あり」とする内部統制報告書が提出されております。また、フタバ産業、ゴンゾ、アルゼの3社において、内部統制監査における「意見不表明」がリリースされておりますので、合計21社について有効性に問題がある、とされる内部統制報告内容となっております。今年1月18日のエントリー(西松建設の内部統制に「重要な欠陥」は認められるか?)でも触れておりました西松建設社(東証)より内部統制報告書が提出されました。結果は、やはり「重要な欠陥があるため、内部統制は有効とは認められない」というものであります。

全社的統制の不備を重要な欠陥であると認識し、評価日までになんとか是正しようと努めてきたが間に合わなかった、評価日以降も是正に向けて尽力しています・・・という内容のものであります。経営トップの裏金作り・・・という企業コンプライアンス上看過しえない問題が「財務報告に係る内部統制」の有効性に影響を与える、とする判断について、今後の参考になるものと思われます。

6月 29, 2009 内部統制報告書研究 | | コメント (1) | トラックバック (0)

架空増資に「偽計取引罪」が適用される理由とは?

ここのところ内部統制報告書研究と高橋氏の新刊「兜町コンフィデンシャル」の話題ばかりで恐縮ですが、きょうも関連エントリーであります。いつも巡回しておりますブログではあまり触れられていないのが先週6月24日に逮捕された投資コンサルタント社長さんの事件であります。旧ペイントハウス社に架空増資をさせた疑いで、某社長さんが逮捕された、ということでありますが、上記「兜町コンフィデンシャル」でも、この事件は後半の山場で紹介されるいるわけでして、著者でいらっしゃる高橋氏は、資金の還流経路を詳細に説明したうえで「証券取引等委員会は、これを偽計取引とにらんだ。」とまで言い切っておられます。あまりに絶妙のタイミングで某社長さんが(しかも偽計取引容疑で)逮捕されたわけで、あらためて本書における調査の深さに感銘いたします。(ちなみに、本件は例の英領バージン諸島トルトラ私書箱957番とも関連いたします。また先日金融庁から業務停止命令を受けた著名な会計士の方々も、この旧ペイントハウスの件に関与されていましたが、今回の投資コンサルタント社長さんの逮捕容疑は、もう少し前の第三者割当増資に関するものであります)

さて、6月25日の日経新聞の解説では「不適切増資について偽計取引罪を初適用」とされておりました。たしかに、過去に架空増資に適用されていたのは、電磁的公正証書原本不実記載罪であり、架空増資に偽計取引罪を適用したことはこれまでなかったようでありまして、証券取引等監視委員会の幹部の方も「不適切な株式取引や増資に対し、偽計取引での摘発は今後大きな武器になる」と答えておられるようです。新聞報道からは、本件でも公正証書不実記載罪での立件も可能だが、そこから一歩進めて、証券取引等監視委員会が積極的に偽計取引罪の適用に動いたように理解されます。しかし果たして本当にそうなのでしょうか?

過去に架空増資に関係して電磁的公正証書原本等不実記載罪が適用されたのは駿河屋事件がありますが、そこでは架空増資を行う企業の代表者の方々の積極的な関与があったわけで、(増資を行うことで、なんとしてでも上場廃止を食い止めたいといった)架空増資を行うための動機が明らかに存在するわけであります。だからこそ、架空増資を行った社長さんと、その協力者がともに逮捕されるわけですよね。しかし、このたびのペイントハウス事件の場合、架空増資に絡んで逮捕されたのは架空増資を行った会社の役員ではなく、協力者的立場にあった投資コンサルタント社長だけのようであります。(私は日経の記事しか読んでおりませんので、もし間違っておりましたら訂正しますが)そうしますと、そもそも本件では旧ペイントハウスの代表者に果たして電磁的公正証書原本等不実記載罪が成立するものであったのかどうか、すこし疑問が残るのではないでしょうか。つまり、本当はこれまでの慣例どおり公正証書不実記載罪(の共犯)として立件したかったのだけれども、架空増資を行った会社の経営者に公正証書不実記載罪で立件できない以上は、別の形で立件しなければならないのであって、その結果として「偽計取引罪」を適用することになった、ということは考えられないでしょうか。

偽計取引とは、一般には「自分または自社に有利な状況を作出するため、虚偽の情報や事実に基づかない情報で他人を欺き、株式相場の変動をもくろむ手段」と説明されます。要は架空増資にこれをあてはめますと、増資をする側の対象者がどのような認識をもっていても、(つまり真に資金調達目的を有していても)そういった「ハコ企業」を自らの私利私欲のために活用しようとして近づいてくる第三者の目的や意図からして、「虚偽の情報」を公表した、と評価できる場合には犯罪が成立する、ということなんでしょうかね。(これはずいぶんと間接事実を積み上げる必要があるのではないでしょうか)上記「兜町コンフィデンシャル」にも、このあたりの取引実態に関する説明がなされておりますが、この投資会社社長さんが主張しているように「取引実態があった」とされるのか、それとも検察庁は書証等によって「取引実態はなかった」と立件されるのか、今後おそらく裁判になると思われますので注目していきたいと思っております。

6月 29, 2009 刑事系 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年6月26日 (金)

内部統制報告書の検討(その5-補完統制を評価した事例)

(追記;すごいアクセス数・・・。ブログの名前を「ググっては投げ」に変えたほうがいいかもしれません・・・わかる人だけにウケていただければ結構です。本当は、各社の事業報告や、監査役監査報告において、この評価結果をどのように受け止めているか、という点にもっとも興味があるのですが、とりあえず特色のある報告書を拾い出すだけで精一杯になってしまいました。後日の検討材料といたします。)

総会ピーク日ですが、私は昨日でほぼ関連の業務は終了しましたので、本日(6月26日)はひさしぶりに事務所で仕事をしております。まだ午後2時半過ぎですが、すでに本日は「内部統制は有効ではない」とする報告書が10件以上出ておりますね。まだまだ増えそうですね。ちなみに、(内部統制は有効ではない、とする報告書についての)本日提出分は以下のとおりです。←午後6時20分現在21社(意見不表明を合わせると23社)ですね。

カラカミ観光さん(JDQ)、ビーアールHDさん(東証)、バルクHDさん(名証)、横浜丸魚さん(JDQ)、コタさん(大証)、ソリトンシステムズさん(JDQ)、岩崎通信機さん(東証)、サハ・ダイヤモンドさん(JDQ)、アールビバンさん(JDQ)、葵プロモーションさん(東証)、フォスター電機さん(東証)、日本ケミコンさん(東証)、滝沢ハムさん(JDQ)、ヤマシナさん(大証)、ミツウロコさん(東証)、KFE JAPANさん(名証)、アークさん(JDQ)、市光工業さん(東証)、東京美装興業さん(東証)などなど。そしてなんと!  あのダボス会議で持続的成長を遂げる世界の100社に選出されたダイキン工業さん(東証、大証)が「重要な欠陥があり、内部統制は有効とは認められない」と! ・・・・(感動モノ・・・いろいろな意味で今後話題になるでしょうね・・・)←例の過年度決算修正の関係でしょうね。またセントラル硝子さん(東証・大証)もかなり詳細な開示をもって「有効ではないと評価した」と報告されています。

また、ゼンテック・テクノロジー・ジャパンさん(大証ヘラ)、ユニオンHDさん(東証2部)について、監査法人による意見不表明文書受領に関するリリースが出されております。

なお、財務報告に係る内部統制は評価結果としては有効とされているものの、おもしろいのが三谷セキサンさんとニッカトーさん(東証)であります。とくにニッカトーさんの報告書によると、内部統制については一部評価できなかった部分があるが、補完統制が効いているために、全体としてみれば重要な欠陥には該当しない、とのことであります。これはよく昨年あたりのセミナーで、「こうすれば重要な欠陥が残らないのでは?」とご提案されていたパターンのひとつでして、「重要な欠陥」は評価の問題なので監査人と十分協議すれば補完統制が認められる場合もあるのではないか、と考えられていたところであります。自社に補完統制が認められるかどうかを真剣に検討すること自体が、(お金をかけることなく)財務報告体制の効率化や不正発見のために有効であると思われます。本件がどのような経緯で、こういった記述となったのかはわかりませんが、検討すべき報告書のひとつとして挙げておきたいと思います。(ほかにもルネサスイーストンさん、スカパーJSATHDさんの内部統制報告書も特色がありますよ)

その他、三菱UFJフィナンシャルさん(東証ほか)は、特記事項(米国SOX準拠+情報開示委員会による評価)に特色があるようです。

6月 26, 2009 内部統制報告書研究 | | コメント (4) | トラックバック (0)

株主総会における退場命令に関する一考察

どこの会社とは申しませんが、株主総会の議長(定款の定めにより社長)が株主総会におきまして、株主に対して退場命令を出す場面に初めて立会いましたので、今後のためにも若干の考察を記しておくことにします。ちなみに2008年版株主総会白書(商事法務1850号89頁以下)によりますと、「退場命令等の有無」について回答のあった1962社のうち、昨年の総会で(議長が)退場命令を発したのはわずか6件だそうであります。ちなみにマイクを取り上げたとかマイクのスイッチを切った、という事実上株主の発言を制止させたものは9件あったそうですが、会社法315条2項に基づいて退場命令を発したのは6件のみ、ということのようで、意外と少ないんですね。(それだけ総会のイメージも変わってきた・・・ということなんでしょうか?)

このたびの退場命令は、総会屋関係というものではなく、いわゆる「苦情申出」タイプの個人株主さんに対するものでして、昨年もかなりハードでしたが、特に発言を制止することはありませんでした。会社と株主さんとの個人的な紛争を総会に持ち出して来られて、ほかの株主さんもかなり困惑されていました。今年は昨年にも増して、かなりハードに立ち回っておられました。議長も最初は冷静に「そのことはすでに会社としても対応済みですし、この総会の報告事項や審議事項とは関係のない話ですので、おやめください」と対応しておりましたが、3分ほども大きな声を張り上げて当該株主さんがどなり続けるため、他の株主さん方も「どうも総会の報告事項とは関係なさそうだ」といったことが理解できたようでした。

その株主さんが、制止を無視して、次々と会社の対応の悪さを並べ立てるものですから、遂に警告の末、議長は「即刻退場」と明確に発しました。私が驚いたのは、議長が退場を命じたその時、会場を埋め尽くした個人株主の方々から一斉に拍手が起こり、数名の株主の方が「はよ出ていけ!」とヤジを飛ばしたことでした。(後で「なんでもっと議長は早く退場命令を出さなかったのか」と苦情を述べる株主の方もおられました)退場命令の直後、その株主のところへ会場整理係がやってきて、他の個人株主の拍手やヤジの中、当該株主は退場されました。(おそらく)例年社長(議長)の穏やかな説明風景しかみたことのなかった一般株主の方々は、株主を睨みつけ、毅然とした態度で退場を命じた社長の姿にビックリして、逆にリーダーとしての威厳がまるでIRであるかのように印象付けられたことは間違いなかったようです。(それが良いのか悪いのかは別として)

さて、上記「総会白書2008」におきましても、退場命令は6件しかなかった、とのことですが、その6件がいずれも「警告を発したうえで退場命令を出した」とのことです。会社法315条2項は、総会の秩序を乱した者、または議長の命令に反した者について、議長が退場させることができる、としています。この文面からしますと、特に警告を発しなくても、議長の権限で退場命令を出すことも法律上は可能だと思われます。ただ、議長の命令が正当な目的で出されたとか、株主の発言が総会運営に支障の出る言動であったということは、やはり明らかにしておく必要があるでしょうし、また退場命令を発しますと、その株主の議決権行使を制限することにもなりますので、「円滑な議事進行上他に手段がなく、やむをえない場合」に限定して発することが必要であります。そうしますと、差し迫った有形力行使の危険があるなどの場合を除き、退場命令については、「これ以上、同様の発言を繰り返されますと、退場命令を出しますよ」と一度警告を発しておくほうがいいのではないかと思います。また、その方が退場命令を出された場合の会場整理係の準備なども整いやすいのではないでしょうか。

つぎに、今回のケースでは当該株主さんは、事業報告に対する質問の時間に登場したわけでありまして、議長の総会運営上の指揮権が発揮できる場面でありました。しかしながら、こういった苦情申出型の個人株主さんは、必ずしも「株主総会」で発言するとは限らず、株主総会の前後に開催される「株主懇談会」もしくは「部門報告会」でも登場することが考えられます。(ちなみに、先ほどの2008年総会白書によると、株主総会とともに「株主懇談会」や「部門報告会」を開催する上場会社は約3割存在するそうです)このような懇談会や報告会は、法的には株主総会とは違いますので、(円滑な議事進行のために認められる)議長の議事運営における指揮権というものは行使できないはずであります。(株主総会と一体となった会議体なので議事運営上の権利を行使しうる、という見解もあるかもしれませんが、ちょっと乱暴なような気がします。まちがっておりましたらご指摘ください)しかしながら、会議場の雰囲気は総会と変わりありませんので、こういった場面で当該株主さんが登場された場合にはどうしたらよいのでしょうか?これは私の思いつきであり、私見にすぎませんが、株主総会と同様、警告を発したうえで退場を命じ、会場整理係によって排除してもいいのではないでしょうか。刑法130条の不退去罪は、そもそも他人の管理する場所に入ることについて正当な権限を有する者について成立するわけで、その管理者より正当な目的で退去を要求されたにもかかわらず退去しない、ということですから、正当な退場命令が発せられれば株主さんにも成り立つ犯罪ではないでしょうか。(東京高裁昭和45年10月2日判決参照)また、株主懇談会も、会社の重要な業務ですから、退場命令に反して退去しないことは威力業務妨害罪にも該当する可能性があると思われます。ただし、会社法315条2項の要件とは別に退場命令が正当な権限の基に発せられたことが条件ですから、やはり当該株主さんの言動を慎重に見極めたうえで、株主懇談会等の業務の平穏が害されるおそれがあると判断した場合に(業務遂行上の管理者の権限として)限定されるものと思われます。なお、こういった退場命令というものは、あまりゴチャゴチャと理由を言わないほうがいいと思います。理由を説明すると、またその根拠あたりでゴチャゴチャと論争になるので、短く明確に「退場ください」でいいと思います。

こういった退場命令の要件を満たしているかどうか、という点など、総会の現場で支援するのはやはり弁護士がいいと思います。総会リハーサルであれば、法律事務の事件性の要件を満たさないため、証券代行さんに支援いただくのも問題ないと思いますが、総会当日に紛糾した場面では、おそらく「総会決議の取消事由(決議方法の不公正)」とか「議長の違法な議事運営権行使による株主への損害賠償」といった「事件性」を満たす可能性があり、そうなりますと事件性を有する法律事務として、これを弁護士以外の者が業務として担当しますと弁護士法第72条違反(刑事犯罪が成立)の可能性があります。ということで、総会当日に演題事務局のところで待機して、有事に議長の支援を行う外部委託者ということでは、やはり企業法務に精通された弁護士に任せるべきではないでしょうかね。(このあたりは、あまりこれまで議論されてこなかったところだと思いますし、単なる私見でありますので、正確なところは顧問弁護士の方と相談されてみてはいかがでしょうか)

6月 26, 2009 株主総会関連 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年6月25日 (木)

内部統制報告書の検討(その4-「重要な欠陥」が治癒された事例)

本日(6月25日)は、東証一部のセイコーエプソンさん、JASDAQの日本興業さん、広島ガスさんの内部統制報告書において「重要な欠陥が評価日に認められるため、財務報告に係る内部統制は有効とは認められない」とされております。セイコーエプソンさんのケースでは、海外連結子会社において、今年度も含め、過去数年間にわたって不適切な会計処理がなされていたことが大きな要因のようであります。(事業報告書で「財務報告が有効でない可能性がある」と表記されており、また監査役会監査報告におきましても、「内部統制が有効でない可能性があると取締役が評価しているが、監査役会としては、その後取締役が一生懸命取り組んでいるために、その職務の執行について指摘すべき事項はない」「会計監査人である新日本有限責任監査法人から、内部統制が有効ではない可能性を示している事項があることを踏まえたうえで、会計監査を行った旨の報告を受けている」と記載されております。5月上旬の時点で、会計監査人と監査役間において、財務報告内部統制についての評価につき協議されていたものと思われます。)

また、日本興業さんのケースでは、評価日時点においては「重要な欠陥」が残るものの、付記事項において、提出日現在では内部統制は有効である旨の記載がなされております。重要な欠陥と評価される不備の内容については、売上高計上方法の運用面に問題があったことが示されております。重要な修正を行うことになった、とのこと。ところで、日本興業さんのケースでは、5月18日時点の監査役会監査報告書におきまして「なお、財務報告に係る内部統制については、本監査報告書の作成時点において重要な欠陥は認識していない旨の報告を取締役会及び監査法人トーマツより受けております」と記載されていることから、社内で内部統制の有効性に問題が生じたのは、この5月18日以降、ということになりそうです。わずか1カ月余りの間に、重要な欠陥にあたるかどうかの評価、重要な欠陥と認められる「不備」を是正するための体制の整備、そしてその運用の評価、といった全ての過程が十分に検証されるのか否か、若干疑問が残るところであります。

もう一社気になりましたのが、フォーバルさんの内部統制報告書であります。(会計不正事件が生じていたために、ここの内部統制報告書はひそかに注目しておりました)結果からしますと「有効」と評価されておりますが、内容はとても興味深い。報告書によりますと、複数の社員による不正行為が行われていたことが判明し、全社的統制におけるコンプライアンスに関する認識の欠如および業務プロセスにおける社内牽制体制の不備、特に受注の承認及び確認体制が十分に機能していなかったなどの重要な欠陥が識別された、とのこと。そして、識別された重要な欠陥に対し、新たにコンプライアンスに関する認識を徹底するための再教育の実施及び社内牽制体制の強化、特に受注の承認及び確認体制の強化などの是正措置を行い、これらの期末日における整備状況、運用状況を評価した結果、重要な欠陥は期末日までに治癒されていると判断した、と記載されております。また監査役会報告書では、内部統制報告書における評価見込みについては一切触れておらず、ただし「期中に従業員による不法行為が発覚しましたが、適切な調査を行い、取締役による再発防止策の策定とその徹底を進めていることを確認しております」とだけ記載されております。さて、期中に会計不正事件が発覚した企業において、このフォーバルさんのような記載が求められるとするならば、(会計不正事件を発生させた企業について)そもそも財務報告に係る内部統制に重要な欠陥が認められたけれども治癒されたのか、それとも不正の発生原因たる体制上の「不備」はそもそも重要な欠陥と認められるほどではなかったのか、そのあたりが取締役の職務執行の適法性を判断すべき監査役の立場からみると関心を持つところであります。

PS 昨日、しっかり調査したと思っていましたが、広島ガスさんの内部統制報告書をチェックしておりませんでした(26日の日経朝刊をみて知りましたので、追加しております)

6月 25, 2009 内部統制報告書研究 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年6月24日 (水)

内部統制報告書の検討(その3-重要な欠陥ありとする適時開示事例)

総会集中日が近づくにつれ、特色のある内部統制報告書も出てくるようになりました。本日(6月24日)は、JASDAQの細谷火工さん、遠州トラックさんの内部統制報告書において、「評価日において重要な欠陥があり、当社の内部統制は有効とは認められない」との評価結果が出ております。とくに遠州トラックさんのケースでは、「統制環境に問題があった」とするもので、今後の同種事例の参考になるものと思われます。

また、東証1部の岩崎通信機さんが、「財務報告に係る内部統制の一部に不備があり、当社としては、重要な欠陥があるものとして報告書に記載することを(取締役会で)決議しました」とするリリース(適時開示情報)をされております。いったん内部統制報告書を提出した翌日に内部統制を有効ではないとした理由を開示した例(BB太田昭和さん)はありましたが、財務報告に係る内部統制が有効ではない、とする評価結果を適時開示としてリリースする上場企業は初めてではないでしょうか。詳細については、また夜にでも検討してみたいと思います。

当ブログのコメント欄で話題になっておりましたダイオーズさんの「内部統制監査報告書」ですが、やはり予想どおり訂正報告書が出ましたね。付記事項の追記も出ております。なお、これは内部統制が有効ではない、とする事例ではございませんが、名証の三谷産業さんの内部統制報告書は個人的には好みですね。おそらくご異論もあろうかとは思いますが、こういった報告書がもっと出てきてもいいのではないでしょうかね。(お時間がございましたら、一度閲覧してみてください。とりいそぎ、備忘録程度で失礼いたします)

6月 24, 2009 内部統制報告書研究 | | コメント (19) | トラックバック (0)

2009年6月23日 (火)

内部統制報告書の検討(その2-監査役会報告書での取扱)

本日(6月23日)は、フリードさんが「重要な欠陥あり」として内部統制は評価日現在では有効とは認められない、との報告書を提出しているようです。(やむをえない事情があったケースのひとつとして参考になるかもしれません)

ところで、BB太田昭和さんの場合は、監査役会報告書で「重要な欠陥」についての開示がなされ、これがモデルケースになるのでしょうか?と申し上げましたが、紀州製紙さん、フリードさんでは、事業報告のなかでも、また監査役会報告書のなかでも触れておられないようです。(つまり開示されていない、ということ)また、ダイオーズさんの場合には、「なお、財務報告に係る内部統制の評価および監査は未了です」と書かれております。したがいまして、監査役会報告書における「重要な欠陥」の取扱いにつきましては、もうすこし提出書類の様子をみてから意見を述べたいと思います。

6月 23, 2009 内部統制報告書研究 | | コメント (0) | トラックバック (1)

英領バージン諸島トルトラP.O.box957

内部統制関連のエントリーには、ある監査法人の会計士さんや、とも先生、そして公取委関連のエントリーにはDMORIさんやchikaraさんなど、ご紹介したいコメントがいろいろあるにもかかわらず、お返事すらできずにたいへん申し訳ございませんm(__)m 管理人の力不足の点につきましては、ぜひぜひ有益なコメントをご参照いただきたく存じます。(とも先生のブログでは、かなり力のこもった内部統制報告書分析がなされておりますよ)また、トラックバックをいただいている公認会計士の武田先生のブログによりますと、本日新たに紀州製紙さんとダイオーズさんの内部統制報告書において、「重要な欠陥あり」とする内容が記されている、とのことであります。(さすが武田先生、よく調べているなぁ)また、大木さんに続いて、石垣食品さんも「意見不表明」とされたことを開示しています。さらに、BB太田昭和さんは、重要な欠陥があるとする内部統制報告書を提出したこと、およびその理由等を適時開示としてリリースされています。

決してブログを書く時間がない、というわけではございませんが、夜に仕事が終わりますと、ついつい例の「兜町コンフィデンシャル」を読みふけっております。私の手元にございます「魑魅魍魎マップ」(※1)を参照しながら、あちこちに線を引きながら読んでおりますので、なかなか先に進まないのであります。たとえば、何カ月か前に、SESC(証券取引等監視委員会)の佐々木氏の講演が会計士さん方のブログで話題になっておりました。そこで登場した「私書箱957に登記されているBVI法人は8割方怪しい」というお話、この本を読みますと、なぜ怪しいのか?という理由が概ね判明いたしますね。(もう読了された方はおわかりかと思いますが)また不公正なファイナンス手法に登場してくる怪しい法人の登記所在地は私書箱957だけでなく、「3○52」という、他のナンバーもあるようです。要は香港の会計事務所経由でいとも簡単にBVI法人が設立でき、さらに銀行口座開設にあたって、審査がたいへん甘い金融機関がある(つまり、その金融機関に顔のきく会計事務所を活用すれば、同じような私書箱になる・・・)ということなんでしょうね。しかし、ご自身で、香港の会計事務所に赴き、本人確認審査の甘い金融機関を通じて(いわくつきの私書箱の)法人を開設した高橋氏の執念は(やっぱり)すごい・・・(^^;;

※1・・・・・上記「兜町コンフィデンシャル」に魑魅魍魎マップが添付されているのではなく、これはあくまでも私が以前入手したものであります。最近はあちこちでこういったマップの存在が語られております。

この本には、例の海外失踪してしまった(六本木ヒルズに事務所を構える)弁護士も登場いたしますし、いたるところで「不振企業の経営者」と「裏で活躍する紳士たち」との仲介者として弁護士が登場するわけでありますが(・・・すごいですなぁ・・・・・)。  5年くらい経って、改訂版「魑魅魍魎マップ」を記者さんからもらったりして「山口利昭法律事務所」とか書かれていたらシャレにならないですよね(^^;; 高橋氏の新刊書に名前が登場しないようにこれからも気を引き締めて精進したいと思います。m(__)m・・・・

6月 23, 2009 本のご紹介 | | コメント (6) | トラックバック (1)

2009年6月22日 (月)

内部統制報告書「重要な欠陥」と監査役監査報告書での開示

6月18日に会計士協会さんの研修で、浜田康先生が「会計不正の議論」と題するご講演をされたそうであります。(土曜日に、ある会計士の方から資料を見せていただきました)このブログでもとりあげました某上場企業における会計不正事件に係る裁判(判決書)と、社外調査委員会報告書における「事実認定」と「不正認定に至る判断過程」を比較して、「粉飾」にはふたつの意味があるのではないか?との疑問を呈しておられます。まさに法律家と会計専門家との間における問題の捉え方の差異に着目しておられ、共感するところも多く、示唆に富む講演内容のようであります。また企業会計7月号(中央経済社)では、「日本の会計法規の体系とIFRS」なる座談会が開催され、ここでも主に会計専門家の方々より、会社法とIFRSとの関係について議論がなされておりますが、今後こういった論点を、法律家と会計専門家の間で意見交換をする機会が増えればいいのになぁ・・・と痛感する次第です。(これはまた、別の機会に是非、私見を述べさせていただきたいところであります)

さて、金曜日のエントリーには、辰のお年ごさん、機野さん、迷える会計士さんなど、常連の皆様方よりコメントいただき、ありがとうございました。金融庁自身が「ベターレギュレーションの一環」として、内部統制報告制度を「プリンシプルベースによる規制のひとつ」と捉えている以上、この制度における各企業の取り組みは、監査法人との協働によって、一般に公正妥当と認められる経営者評価の基準をどのように自社に組み込んだのか、という点を中心にとても関心を抱くところであります。今週は内部統制報告書が大量にリリースされるでしょうから、フォローするのも限界がありますが、気がついた点はまたエントリーの中で触れていきたいと思っております。ところで、日経新聞(土曜日朝刊)でも記事になっておりましたBB太田昭和さんの「内部統制に重要な欠陥」表明第一号について、感想めいたものを二点ほど述べさせていただきます。

ひとつめは、BB太田昭和さんの株主総会招集通知に添付された事業報告「対処すべき課題」において、「決算財務報告プロセスでの繰延税金資産の計算において、重要な欠陥があり、内部統制が有効に機能しておりませんでした。」と表示されていることであります。つまり、一般の株主の方々には、(WEB開示がなされていれば一般の投資家の方々にも)すでに6月2日の時点において「BB太田昭和社の内部統制は有効ではないようだ」ということが認識できたようであります。また、5月20日付けの監査役会作成に係る「監査報告書」においても、「事業報告等の監査結果」のなかで、「事業報告に記載のとおり、財務報告に係る内部統制について重要な欠陥があり、有効に機能していない部分がありましたが、取締役はその改善に取り組んでおり、また当期の計算書類及びその附属明細書ならびに連結計算書類の適正性に影響は生じておらず、取締役の善管注意義務に違反する重大な事実は認められません」と報告されておりまして、有価証券報告書の提出に先立って、株主総会報告事項のひとつとして、「財務報告に係る内部統制評価」および「財務報告内部統制に係る監査役監査の結果」を株主に説明されています。監査役にとって、この財務報告内部統制に関する監査結果の表明をいつ行うか?という点については少し議論になっていたと思いますが、このBB太田昭和さんのケースは、今後のモデルケースになるのかもしれません。

そしてもうひとつは、(金曜日のエントリーでも少し触れましたが)内部統制監査人による意見不表明だけが適時開示の対象となり、企業自身が「有効に機能していない」と報告する場合には適時開示の対象にならないことは、実務上問題がないか?という点であります。内部統制の有効性を評価する日(期末日)に「重要な欠陥」が残っていたことは同じであっても、監査人による指摘に忠実に従って「内部統制は有効とはいえない」と報告した企業は(BB太田昭和さんのように、内部統制監査においては適正意見が出ますので)適時開示をする必要がなく、監査人と意見を異にして「内部統制は有効」と報告した企業については適時開示の必要がある、ということになりますが、投資家からみて、これは果たして適切な開示といえるのでしょうか?むしろ内部統制が有効とはいえないと評価した場合も適時開示の対象とするか、もしくはいずれの場合も適時開示の対象としないとするか、整合性を確保したほうが投資家の視点からは妥当ではないかと思いますが、いかがなものでしょうか。(まあ諸々の事情があって、現時点での開示ルールに収まっていることは認識しているのでありますが・・・)

PS 世の中「1Q84」ブームでありますが、先日ご紹介した「兜町コンフィデンシャル」、ホンマにおもろいですよ。。。ひょっとすると、私がこのようなブログの管理人で、いろんなブログのネタが、この高橋篤史氏の著書によってパズルの穴が埋められていくような感覚を覚えるからかもしれませんが。(初版なんでやむをえませんが、中盤以降、誤字脱字や乱丁が散見されますので、若干気になりますね。なお、プロフィールを拝見しておりますと、現在はフリージャーナリスト、と表記されておりますので、前エントリーの記載も「高橋記者」→「高橋氏」と改めました。)

6月 22, 2009 内部統制報告書研究 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2009年6月19日 (金)

遂にでましたね「内部統制に重要な欠陥」および「意見不表明」

揶揄するつもりは毛頭ございませんが、BB太田昭和さん→「当社の内部統制には重要な欠陥があり、有効とは評価できなかった」  大木さん→「内部統制監査において意見を表明できないと言われた」

本日現在151社の内部統制報告書が出ましたが、太田昭和さんが、重要な欠陥第1号、大木さんが内部統制監査意見不表明第1号ということになりそうですね。とりあえず、冷静に内部統制報告書と株価への影響を研究してみたいと思います。しかし、適時開示ルールによって、監査法人さんの意見不表明に関する文書受領の場合には開示の対象となり、自社で「重要な欠陥あり」と報告する場合には「探さないとわからない」というのも、やっぱりちょっと違和感があるかもしれません。。。(もちろん、BB太田昭和さんのWEBにも、公告されているわけではありません)とりいそぎ、速報版としてアップしておきます。

6月 19, 2009 内部統制報告書研究 | | コメント (10) | トラックバック (0)

兜町コンフィデンシャル(株式市場の裏側で何が起きているのか)

Kabutochokon 当ブログで最初に「粉飾の論理」をご紹介しましたのは、もう2年半以上前のことでありました(カネボウ事件と内部統制構築論)あれから、何度も上記書籍を引用したり、改めて読み直したりしておりますが、著者でいらっしゃる高橋篤史氏の待望の新刊!ということで、やっと読む時間がとれました。ちなみに「粉飾の論理」を出版したことで、高橋記者は出版社とともに二件の民事事件の被告となり(損害賠償請求額は合計6億円とのこと)、そのうち1件につきましては、不本意ながら裁判上の和解による決着をされた、とのことであります。(本書「あとがき」より)

「兜町コンフィデンシャル(株式市場の裏側で何が起きているのか?)」(高橋篤史著 東洋経済新報社)

まだ半分程度しか読めておりませんが、やはり期待どおり、実におもしろい。 (取材および調査の精緻さには感服いたします)高橋氏の作品の面白さは、株式市場の裏側を紹介するための事実調査の正確性、精密性にもありますが、なんといっても裏社会が点と線でつながっている様子をいくつかの事件紹介を通して表現している点であります。目次をご覧になるとおわかりのとおり、10個ほどのテーマ(実は一つのテーマのなかにも、複数の事件が紹介されておりますので、もっと多くの事件数ですが)の項目だけをツラーっと眺めますと、それぞれが別個のストーリーではないか、との印象を持つわけであります。しかしながら、読み進めていきますと、それぞれのテーマに登場する人物が、またどっかでつながってくるのでありまして、この「裏社会のつながり」というものも、この新刊書における重要なテーマのひとつではないかと思います。

しかし前半のクレイフィッシュ社(および親会社たる光通信社)の株券紛失事件の顛末は実に興味深いものであります。親子上場の「おそろしさ」を背筋が凍るほどに堪能することができます。また、こういった華々しくデビューする新興企業にトラブルが発生するなかで、監査役会(弁護士や大学の先生など5名も監査役さんがいらっしゃったのですね)が若き社長や取締役会、そして顧問弁護士との対立を深めていき、社長解任動議が僅差で否決されるや、その場で5名とも辞表を提出する場面などは、いろいろと監査役制度の実効性が言われるなかで、やはり監査役としての有事の対応が水面下では果たされていることを知らされました。(少しうれしくなりました)

春日電機社の先日のリリースでも、経営権交代に絡むグレーな世界が表現されておりましたし、金融庁スタディグループにおける報告書のなかにおきましても、悪質な第三者割当増資への対応が喫緊の課題であることが強調されておりました。この本を読み、「経営者のほんの少しのスキ」から生じるリスクの大きさを考えますと、裏社会とのつながり、というものは、ある特殊な企業だけのリスクではなく、上場企業であればどこの会社でも、「隣り合わせのリスク」であることが認識できるはずであります。高橋氏の言葉を借りれば、「以前、株式市場で暗躍していた人たちは、相場師であり投機家であった。それはまだ市場の潤滑油として許容されていた人たちだった。しかし現在暗躍している人たちは、市場参加者を食いちぎる人たちであり、企業そのものを侵蝕する人たち」であります。企業として「リスクと真正面から向き合う」姿勢は従来にもまして不可欠であることが認識されるところであります。また、6月11日のエントリーでは、金商法157条と課徴金制度との親和性について検討いたしましたが、こういった事例に触れますと、包括条項を適切に運用する必要性というものも、ちょっと前向きに検討したくなりました。(後半部分は、また明日でも読もうかと思っております)

6月 19, 2009 本のご紹介 | | コメント (0) | トラックバック (1)