2023年1月30日 (月)

またまた(とりあえず)元気にしております。。。

皆様、ご無沙汰しております。_(._.)_相変わらず某IR・SR系企業の第三者委員会の仕事に没頭しております。こちら、マスコミの皆様より取材申し込みを受けておりますが、当然のことながら(純粋な第三者委員会ということでして)お請けすることはできませんので、悪しからずご了承ください。いや、本当にむずかしい案件です。

今年こそはブログを元気に更新しよう!と思っておりましたが、なかなか時間がとれません。結局、1月はほとんど更新もできずに過ぎてしまいました。とりいそぎ、生存確認のみのコメントとなりました。

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2023年1月 4日 (水)

公認会計士資格の誤記載問題について。

昨年7月に大手監査法人で発覚した「公認会計士資格誤記載問題」ですが、年末のニュースで大手含めて18法人で発覚した、とのこと。たとえば弁護士の場合、単位会に登録せずに弁護士であると名乗るとたいへんなことになりますが、会計士業界では大丈夫なのでしょうか?会計士さんの場合、どちらかというと「誤表記で人を信用させてはならない」という行為規範の面よりも、報告書の信用に関わる開示規範の面での問題(最終的には監査責任者がチェックしているので報告書の有効性には問題ない)と受け止められて弁護士ほど大事には至らない、ということかもしれません。

そうはいっても、なぜこのようなことが起きたのか、きちんと各法人で原因を究明する必要があると思いますが、監査を受けている上場会社側からすると「じゃあ、誤記載の分の報酬は返還されるのだろうか」ということに関心が向きます。会計士の資格者と、そうでない監査補助者とではタイムチャージの単価が異なると考えるのが自然ですよね。もし報酬算定にあたって、資格のない監査補助者を資格者である監査補助者として換算していれば、報酬は高くなっているはず。誤記載を修正するのであれば、監査報酬も見直す必要があり、そこまですることで「信頼回復に向けての自浄能力が発揮された」といえるのではないでしょうか。

かりに表記に誤りがあったにもかかわらず報酬算定は正確に行われていたとすると、それではなぜ資格者であると記載したのか、資格がないことを知りながら資格者であると記載したのではないか、との推測も働きます。本当に「誤記載」であるならば、このあたりは説得力のある理由が必要ですね。

 

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本年もよろしくお願いいたします。

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

お正月早々、朝日新聞デジタル(有料版)に株主名簿に並ぶ見知らぬ名前 会社が一気に乗っ取られる「群狼戦術」なる記事が掲載されておりました。いわゆる「ウルフパック戦術」ですね。いま、まさにこっち系の調査をしておりますので(笑)、他人事ではなく、いろいろと考えるところがございました(もちろん、ここでは個人的な意見すら申し上げられませんが・・・)。

直接記事とは関係ありませんが、ひとつだけ経営者の視点から意見を申し上げるならば、1990年初頭から今日までの日本企業のM&Aを眺めたり、(小さな企業ではありますが)アドバイザリー業務を担当してきた経験からみますと、M&Aでお金儲けをする人たちにとっては成立の時点までが重要だけども、経営者にとっては成立後に組織として統合する、あるいは思い切ってあきらめるまでの時間が重要だということ。

組織理念まで含めて統合に成功した数少ない実例を思い返すと、まずは統合する側が「何をやりたいか」という信念を強く持ち(すなわち、M&Aはたまたま目的を達成するための「選択肢のひとつ」として活用するにすぎない)、経営トップが統合作業に何年もかけて心血を注いでいた会社のみが成功させることができる、つまり「担当役員まかせにしない」ということが成否を分けるキモだと思います。最近、社外取締役として国内外の機関投資家と対話することがありますが、私は投資事業会社の社外役員ではないので「株主の皆様とはPMIを評価する視点が、私は少し違います」とお話するようにしています。

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2022年12月29日 (木)

皆様、よいお年をお迎えください。

全国的にコロナ感染が増加傾向にある中、皆様いかがお過ごしでしょうか。ブログの更新が滞っておりますが、私はあいからわず元気にしております。

今年は1月から10月20日まで、三菱電機のガバナンスレビュー委員会(委員長)の仕事に没頭し、その後は少し休息の時間があり「ブログ再開します!」と申し上げておりましたが、12月8日よりアイ・アールジャパンの第三者委員会(委員長)の仕事が始まり、ふたたび忙しい毎日となりました。年末年始も関係者提出記録の読み込みや報告書に記載すべき論点提起(構想)、フォレンジックやヒアリング方針の検討など、委員会チームの皆さんとがんばっております(この時期にほかの法律事務所の若い先生方に働いてもらうのはちょっと気がひけるのですが・・・)。ただ、社会的に関心の高い事案なので責任重大です。

大仕事と並行して、すこしだけ大規模会社のガバナンス支援の作業をしています。長年、同じ会社(同じ組織?)のガバナンス改革を支援していると、社内のどのような力学によって組織風土が変わり得るのか、ようやく自分なりにわかるようになってきました。様々な抵抗勢力との交渉によって「オトシドコロ」を探り、ときにはイジメられ(還暦を超えたオッサンには結構ツライ)、(会社には申し訳ないが)恥ずかしい失敗を繰り返して初めて理解・体得できることがあります。おそらく来年は(日本企業にとって)ガバナンス改革の正念場に差し掛かるはずなので、またブログの更新ができるようになればお話したいと思います。もちろんあくまでも個人的な意見ですが。

ちなみに「個人的意見」を総論的に述べるならば、この10年の「日本株式会社の価値向上」に向けたガバナンス改革は失敗が見えてくるはずです。ただし、その失敗の経験は個々の企業にとっては「無形資産」になるはずなので※、その無形資産を個々の企業がどのように活用できるか・・・、そこが来年以降の重要課題であり、だからこそガバナンス改革は正念場を迎えることになるだろう、と考えます。

※個々の企業にとって失敗が「無形資産」になりうるためには、これまで「ガバナンス・コード」に熱心に取組めば企業価値は向上する、持続的成長につながると信じて創意工夫してきたこと、あるいは「うちの会社は対応しない」ということでエクスプレインしてきたことが前提です。最初から「なんちゃってコンプライ」ということで、担当役員マターで対応してきた企業にとっては「経費の無駄使い」で終わることになるでしょう。

今年も(チラッとでも)当ブログをお読みいただき、ありがとうございました。諸事情により更新がままならず申し訳ありませんでした。来年もどうか当ブログをよろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください。

12月29日 山口利昭 拝

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2022年12月 9日 (金)

アイ・アールジャパンHDの設置した第三者委員会の委員長に就任いたしました。

11月14日付けにて、株式会社アイ・アールジャパンホールディングスが公表しておりました「第三者委員会設置に関するお知らせ (ダイヤモンド・オンラインの報道を受けた当社元役員に関する追加調査の実施について) 」を受けて、本日設置されました第三者委員会の委員長に就任いたしました。詳細につきましては「開示事項の経過-第三者委員会委員の決定、委嘱事項(調査の対象・範囲)及び調査結果の開示時期に関するお知らせ」をご参照ください。

すでに経済紙で報じられているとおり、当委員会に委嘱された調査はきわめて重い任務であり(日弁連ガイドラインに準拠した委員会活動が必要)、活動期間もそれほど長くないことから、今後はこちらの職務に専心してまいります。 三菱電機の委員会活動が終了して「ようやくブログ再開!」と思っておりましたが、また一時休止となるかもしれません。本日開催された企業会計審議会(内部統制部会)での改訂案のお話など、ブログで書きたいネタはありますが、もう少しお待ちください。

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2022年12月 2日 (金)

内部通報制度のメリットを社長に理解してもらう

改正公益通報者保護法が施行されて、多くの会社で内部通報制度の見直しが行われているようです。私も時々見直しのお手伝いをすることがありますが、経営トップが見直しに積極的というわけではなく、それほど見直しのための人的・物的資源が投資されているようでもなさそうです。

ただ、先日の日本製鋼さんの長年の検査不正も内部通報が端緒だったことが報じられています。「犯人探しされそう」「通報して報復されそう」という社員の意識がなかなか根強いので、通報件数を増やすにも多くの投資が必要です。「ウチの会社ではそもそも不祥事は起きそうにないけど、それって優先順位高い案件なの?」というのが社長のホンネですよね。

そこで、私が考えている「社長に理解してもらう内部通報制度のメリット」を以下に示しておきます。きょうも、某会議において、大きな会社の社長さんからこの説明について関心をもってご質問をいただきました。おそらく一番目のメリットは「不正はかならず起きる」という前提でのメリットですが(これはなかなか社長には響かない)、二番目、三番目のメリットは「不正は起こしてはいけない」という経営トップのコンプライアンス意識に合致するところが大きいのでしょうね。

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もちろん、一番のメリット(通報制度の本来の趣旨)は「不正の早期発見」ですが、これはまず「組織風土改革」が前提となりますので、そんなに簡単に結果が出るものではありません。むしろ内部通報の件数が増えることで効果的なのが二番目と三番目のメリットです。「犯人探しのおそれ」や「不利益処分のおそれ」というのは「不正行為の当事者による通報」が当たり前の時代の産物ですが、私の設計は「通報したことによる心理的不安の少ない第三者(目撃者)による通報の促進」というところに力点を置き、通報件数をとりあえず増やします。

件数が増えるとそれなりに弊害もありますが、(件数急増は)職場にはかなりの衝撃を与えるため、まずは上司・部下のレポートラインが正常化される可能性が高くなります。つまり悪い情報も、ありのままに上司に伝わるということです(これが「レポートラインの健全化」)。

そしてもうひとつが「件数は増えたけど、そもそもたいした案件は増えないよね」という課題です。たしかにそのとおりなのですが、本当に件数が増えると、その「たいしたことがない案件」がある部署に固まって発生していたり、「うわさ程度の案件」があるグループ会社に集中している傾向が読み取れるようになります。これが効率的な監査によって「不正の芽」を発見する、ハラスメントの元凶を特定する、といった結果につながります。あくまでも「不正予防のための健康診断です」という表現が大切です。

このような結果は通報制度を運用する担当者の努力に依拠するところも大きいのですが、まずは社長自身が率先して通報制度の運用に前向きであることを示す必要があり、それは単なる宣言ではなく、予算を伴う見直しでなければ現場は信用しません。ぜひ皆様の会社でも、経営トップを説得する際の参考として活用してみてください。

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2022年11月16日 (水)

不祥事の再発防止は「予防型」か「発見・危機対応型」か-選択に関する若干の私見

最近は大きな会社で不祥事が発覚しますと、調査委員会が設置されて数か月後に委員会報告書が公表されます。不祥事が発生した様々な要因が特定されて、そこから再発防止策が提言されるのですが、その中身については委員会側と会社側で揉めることがありますよね。当然かもしれませんが、不祥事を発生させた会社側としては「また起きることを前提として」というのは「縁起でもない」と思われることでしょう。

ただ先日も、大きな自動車メーカーさんの品質不正案件について、報告書が公表された後に再び同様の不正が発覚して、とても気まずい状況となりました(国交省の信頼を失ったことはきわめて厳しいです)。だから、といってはなんですが、私はやはり予防型よりも発見・危機対応型の再発防止策をお勧めしますね。ということで、全社的リスクマネジメントの視点から、以下のように比較をしてみました(図面をクリックしていただくと、図表の内容が明確にご覧いただけます)。

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結論から申し上げますと、私は「発見、危機対応型」の再発防止策を優先的に提言したいです。法務、総務、経理、監査等の管理部門が失敗をおそれずに声を上げることが組織としてのコンプライアンス体質を向上させますし(失敗も資産となる)、ステークホルダーは不正を起こさないことよりも、起きたときの不正に対する前向きな姿勢にこそ「安心」を求めるからです。また、不正リスクを承知のうえで、あえて重要な新規事業に投資をする際にも、右側のほうがリスクマネジメントのツールとして実効性が高まるものと思います。

ただし、右側だと平時から具体的な不正リスクの発生可能性や発生頻度を議論しますので、いろいろと現場での軋轢が生じます。その軋轢を少しずつ和らげることもまたカルチャーの改革に向けた経営陣の仕事ですね。コアバリューとか、ミッション等、貴社にとって一番大切なものを現場の社員の皆様に理解していただく絶好の機会です。

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2022年11月15日 (火)

無形資産と言われる「組織風土」と「心理的安全性」について考える

企業の持続的な成長を見極めるにあたり、機関投資家の人たちは、なぜ「組織風土」とか「カルチャー」を無形資産として評価対象にしたいのでしょうか。いろいろと考えたのですが、要は経営者の戦略構想とか誠実性が組織全体に伝わるかどうか・・・というところのモノサシになる、ということだと(現時点では)理解しています。しかしどうやって評価するのでしょうかね?

そういえばCOSO「全社的リスクマネジメント:戦略およびパフォーマンスとの統合」(2017年9月公表)の日本監訳版のなかで、監訳者の方が「日本の『組織風土』と本フレームワークの『カルチャー』とは微妙に意味合いが異なるので、別の日本語には訳さずにそのまま『カルチャー』と記した」との解説がありました。

そもそも心理学者の名著「木を見る西洋人 森を見る東洋人」や「ボスだけを見る欧米人 みんなの顔までみる日本人」でも語られていますが、経営者の思いがどのように組織に伝わるか・・・ということに関心を持つのであれば、その伝わり方は(経営者と従業員との関係において)日本と欧米では異なっていても不思議ではないですね。経営者が変われば「カルチャー」も変わるかもしれませんが、日本の「組織風土」は(経営者が変わっても空気が変わらなければ)変わらないのかもしれません。

そのように考えると、なるほど「組織風土」と「カルチャー」は微妙にニュアンスが違うというのも納得します。日本の経営者は従業員に腹落ちするような言葉で自らの戦略構想を伝えるか、もしくは「忖度」や「現場の空気」を用いて伝えるか、自らの思いを組織に浸透させるためには工夫が必要ではないかと。

同じ文脈で考えると、最近話題の「心理的安全性」なる言葉にも注意が必要だと思います。「心理的安全性」を語るときによく引用されるエイミー・エドモンドソン「恐れのない組織-心理的安全性が学習・イノベーション・成長をもたらす」の中で、心理的安全性とは「安心して喧嘩ができる環境」とあります。でも日本人は「心理的安全性」と聞くと、上司と安心して論争ができる環境と捉えることができるでしょうか。

日本ではどちらかというと「イノベーションのための組織作り」よりも「ハラスメントのない職場環境」という意味で使われていないでしょうかね。どうも日本の組織風土に合わせて都合の良いように言葉が独り歩きするような気がします。

 

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2022年11月13日 (日)

五輪汚職-KADOKAWAになくて講談社にあったもの

11月9日に五輪組織委員会元理事の捜査は終結したことで、10日以降、朝日や読売の特集記事が連載されていました。なかでも11月11日の朝日新聞朝刊記事「五輪汚職 負のレガシー:中)すべてを一強が仕切った 電通に巨額報酬、かばった元理事」は読みごたえがありました。

企業のコンプライアンス経営の視点から、もっとも興味深いのは以下の部分です。少しだけ朝日の記事から引用させていただきますが、

いずれもトップが逮捕された出版大手「KADOKAWA」や広告大手「ADKホールディングス」では、社内で賄賂にあたる可能性が指摘されても、重視されることはなかった。一方、出版大手「講談社」は元理事から、KADOKAWAとセットでのスポンサー就任と手数料の支払いを持ちかけられたが、断った。講談社の関係者は「週刊誌という媒体を持つ嗅覚(きゅうかく)の差が判断を分けたのでは」と振り返る。

とのこと。これ、かなりリアルですよね。この「嗅覚」の差がレピュテーションリスクが顕在化するかどうかの分かれ目になることはよくあります。リクナビ事件のときも、日本の名だたる企業がリクルート社から「内定辞退者予測AIソフト」を購入して社名が公表されましたが、唯一三井住友銀行だけは「なんかおかしい」という判断で購入を見合わせ、行政指導の対象にはならなかったことがありました。

ただ、この嗅覚ですが、「気づくこと」はトレーニングを重ねることで進化させることはできるのですが、「伝えること」は企業の誠実性、いわば「カルチャー」に依拠するところが大きいですね。講談社の場合、Fridayや週刊現代で痛い目にあった経験がまさにカルチャー(組織風土)を形成しているのではないかと。不正予防の大切なところはお金をかけることではなくて、この「嗅覚」を誰が具備するか、というカルチャーの問題です。小さな失敗を繰り返すことは無形資産です。

あと、これはどなたも意見として述べておられませんが、収賄側も贈賄側も、そして電通さんも、なんとなく「これって違法ではないのか」といった意識を仮に持っていたとしても、これを正当化する理由があったのではないかと想像します。「国民の負担は1円でも減らさねばならない、我々は国民のためにできるだけ多くのスポンサー料を獲得するのだ」という使命感です。多少グレーな部分があったとしても、自分たちは国民のために頑張っているのだから批判される筋合いではないのだ、という意識がコンプライアンスを秤にかけてしまった原因ではないでしょうか。かつて「正義のため」に債権回収に躍起になっていた整理回収機構を某生命保険会社が厳しく追及した事件がありましたが、その構図に似ているように思いました。

万博はじめ、これから開催される国家的行事に税金が投入されるかぎり、関係者が「国民の負担を減らすことが我々の使命」と認識してしまいますと、どんなにプロセスの透明性を確保しても再発防止は困難です。不正行為の正当化根拠は存在することになり、同様の不正行為が起きる可能性は高いように思います。たとえ有罪立証に100%の自信がないとしても、司法当局が厳罰をもって事後規制手法(刑事罰)を機能させなければならない、ということになるのでしょう。

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2022年11月11日 (金)

全社的リスクマネジメントと企業統治改革

090034 ここ10年ほど「健全なリスクテイク」「攻めのガバナンス」といったフレーズが流行っていますが、リスクテイクが健全というのはどんな状況なのか、いまだによくわからないところがあります。とりあえず、私はcoso-ERMに沿った「全社的リスクマネジメント」がひとつの解ではないかと考えております。

ところで、グーグルで「リスクマップ」を検索してその図表をいろいろと検討しましたが、全社的リスクマネジメントを一番言い当てていると思われるのは東京ガスの吉野太郎氏(現在、私と企業会計審議会の臨時委員をご一緒している方です)のご著書「全社的リスクマネジメント」(2017年中央経済社)で示しておられる上図ではないかと思います(ご著書の中からそっくりではありませんが、ほぼ同じ図を借用させていただきました)。

重要な戦略の実行を決定するにあたり、リスクAにあたるリスクはリスクBの領域にまで低減するか、もしくは実行しないという判断が必要ですが、リスクCにあたるリスクは(過剰なリスク評価によって)機会損失をもたらす可能性が高いので、戦略の実行にあたって資源配分を見直すということも検討すべきです。たとえば法令違反リスクについて、個々の事業遂行の中でリスクが顕在化したとしても、修正が可能なものについては戦略の実行には影響しないかもしれません。しかし、法令違反が企業全体のレピュテーションを毀損するようなリスクであれば、これはAの領域なので、リスクの低減か、回避か、転嫁か、これは経営判断として重要です。

近時の東京オリパラ贈賄疑惑において、贈賄側の複数企業の法務部が「これは贈賄にあたる可能性がある」との意見が出されていた、ということのようですが、なぜ、そのような可能性が示されたにもかかわらず実行に及んだのでしょうか。「創業者(オーナー家)の意見にはさからえない」という「監督機能の不全」を語るのは簡単ですが、果たしてそれだけでしょうか。創業者(オーナー家)やカリスマ経営者であったとしても、きちんとリスクの大きさと顕在化の可能性を説明すれば実行を断念する、あるいは代替案を実行する余地はあったのではないでしょうか。

これまでのリスクマネジメントは「守りのガバナンス」に資するものとして、実行された戦術から発生する「負のリスク」を管理担当部門が担うということでした。しかし全社的リスクマネジメントとなりますと、戦略の実行前から経営企画と管理部門が協働で行う「攻めのガバナンス」に資する(というか不可欠な)重要な職務です。OECDの新しいガバナンスコードにおいて「取締役会におけるリスクマネジメント委員会の設置」が推奨されるに至ったのはこの流れです。CEOの誠実性を引き出すようなリスクマネジメント能力を具備することが、今後の企業統治改革で求められるはずです。

なお、法律的な視点からみると、ガバナンスコードの改訂等によって「全社的リスクマネジメント」があたりまえになった場合、いわゆる「経営判断原則と取締役の善管注意義務との関係」に実務上の影響が出てくるのではないか・・・との疑問がわいてきます。そのあたりは別途検討したいと思います。

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