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2005年5月18日 (水)

社外取締役と種類株主(その3 最終回)

きょうもTBSなどから買収防衛プランが発表されたりして、防衛策を打ち出す企業もすこしずつ増えてきましたね。私の防衛プランの提案シリーズも、いよいよ最終回となりました。

前回にもお断りしましたが、このプランは新会社法施行後に適用されるもの、ということでお考えください。また、私のモットーとしては、「どんなに著名な人が集まって策を弄し、どんな英知をもって対抗したとしても、平時には額に汗して株主と向き合い、有事には額に汗して買収者と真摯に向き合う企業にはかなわない」というシンプルな理念です。「努力した企業が報われる」防衛策でないと社会に受け入れられないし、裁判官を説得することは困難だと思います。

①買収者との交渉の時間をきちんと確保するため、信託型ライツ・プランを導入します。
おそらく、この信託型がポイズンピル導入にあたっては、課税上の問題もクリアしており、最もオーソドックスな形ではないかな、と私も思います。新株予約権付与の相手方(受益者)は特定目的会社を委託者、金融機関を受託者として、買収希望会社以外の株主に一定条件のもとで付与します。
②特定目的会社が信託している権利を株主に付与すべきか、システムを解除すべきかは、定款自治によて定められた譲渡制限付き株主による「種類株主総会」の判断によるもの(いわゆる現行法222条9項を利用した拒否権型ポイズンピルの応用です)とします。もちろん、この種類株主総会の決議要件を加重したり、社外取締役の参加要件を加味したり、種類株主総会の決議を尊重して社外取締役が最終判断するとしてもよいと思います。なお、譲渡制限付きの株主の選定ですが、これはその企業の規模や、ステークホルダー構成、株主構成次第だと思います。従業員持ち株会や機関投資家、外国株主、メインバンクそして一般株主など、ある程度その企業の持ち株比率を反映した株主を選定して、平時より社外取締役との間で企業価値向上のための施策などを検討していただくものとします。もちろん、プランが解除されれば、その後委任状獲得競争の余地は残します。

③信託型ライツ・プランの導入、種類株式の発行、種類株主総会の決議要件などについては定時総会における承認を必要とします。

プランだけ作っておいて、平時はほったらかしにして、有事にだけ効を奏する、というのは幻影にすぎないでしょうし、将来の考えうるリスクを常にチェックし、そのリスクへの最適なパフォーマンスを得られる方策を打ち出すという昨今の企業リスクマネジメントの思想にも合致しないと思います。そもそも、どんなプランを作ってみても、常識的にみればそのプランは「現経営者の保身目的」とみなされることは否定できないはずです。(だって、現経営者が作ったんですから)そうであるならば、普段から、企業は企業価値向上へ向けた情報を常に株主に開示し、利害の一致しない株主の意見を集約し、社外取締役はその企業の株主価値、企業価値向上のための算定基準を自ら模索する努力をしてこそ、有事には株主による企業価値判断、社外取締役による企業価値判断が合理性を有する、といえるのではないでしょうか。また、この案ですと「どちらが企業価値を高めるか、株主が判断した」という手続き的な合理性を担保しており、現実の社外取締役の姿をもっとも素直に見つめているという点でメリットがあると思います。

もちろん、この案には敵対的買収希望社側から種類株主への圧力の可能性とか、平時における種類株主の不満自体が敵対的買収を誘引する情報になりうるなど、補強を要する弱点もあるかもしれません。しかし信託型ライツプランだけですと、最終判断に「社外取締役」の責任が重大すぎて、本当にこれからこのような重大な責務を公正な第三者として全うできる社外取締役が多数出現するかといえば、現実にはかなり悲観的です。以前にも申し上げたとおり、いままで議論されてきた「委員会等設置会社」とセットになった企業統治論(業務執行の適法性の確保)における社外取締役の責務と、この企業買収時における防衛策適法性審査のための責務とはまったく異質です。一歩まちがえると忠実義務違反による民事責任、仮処分の差し止め対象になりかねないと思われます。(そこまでまだ議論されていないと思いますが)
細かなところを含めて、いろいろと初歩的なミスの多い防衛策かもしれまんせんが、普段の企業価値向上の汗と努力が、そのまま司法判断にも反映するような、「社外取締役と一般株主に優しい」、そんな防衛策を(もっと頭のいい人たちが)考えてほしい、と願っています。

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