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2005年5月 4日 (水)

企業価値研究会の論点公開(前ログ引用の2)

企業価値研究会の論点公開(4)

気がついたら、毎日たくさんのアクセスをいただくようになり、ホンマにありがたい、と思ってはいるのですが、いかんせん私は「市井の弁護士、ごく普通に一般民事を扱っている弁護士」ですので、そこのところ、ご理解ください。冒頭にもありますように、このブログは私自身が今後の職業人としての対応の参考にするためのものでして、「備忘録」の域を脱してはおりませんので、誤解や独断、偏見もあろうかと思います。どうかご容赦ください。

さて、昨日の続きになりますが、この企業価値研究会の論点公開によって掲げられている「企業価値」の手続き的意味についてすこし論じてみたいと思います。企業価値を実体として議論することが、現行法でも企業買収への防衛策をとりうる法的な根拠を示すうえで重要であること、その実体的定義があいまいであるがゆえに(というよりもあいまいなものであると定義付けたことによって)、買収者と現経営者の企業価値向上のための提案について、「比較的な手法」を用いることが得策であることを根拠付けたことに意義があることは昨日述べました。

したがって、一般株主からみて、買収者と現経営者のどちらに経営を委ねたほうが、将来的な収益向上、つまり「企業価値」の向上に資するかという点は、株主ができるかぎり適正な判断をなしうる「手続きの確保」に重点が置かれてくることになります。一般株主が企業価値の高低を判断する最終責任者とすれば、その判断のための手続きが適正であれば「より、実体としての企業価値算定の正確さ」へ近づくことが可能となるために、防衛策の合理性も担保される、ということになります。
そして、どのような適正手続き確保の手段があるか、といえば、新聞でも報道されているとおり、ライツプランを中心として、取締役会で導入して独立第三者機関が発動を審査する方法や、導入時に株主総会で授権承認して、取締役会で発動する方法などが検討されることになります。どのような企業価値判断のための手続きを確保すべきかは、それぞれの企業の特色にあわせて選択することが適当だと思われますし、また提示されている3つの方策にとらわれず、それぞれの利点を組み合わせてさらに合理性のあるものを策定してもかまわないのではないでしょうか。
ただ、企業価値算定のための手続きが有効に機能するためには、まずどのような方策をたえるにせよ、一般株主に企業価値算定のために必要十分な情報が平時より開示されていなければなりません。そうでなければ、どちらが企業価値向上に資するかという判断自体がなしえないこととなります。したがいまして、現経営者としては、どのような防衛策を講じるものとしても、その発動が法的に有効とされる大前提として、平時における株主への情報開示がたいへん重要なファクターとなるものと思います。

さて、上記のように「企業価値」の内容を検討してきましたが、それではこのように企業価値判断を中心とした防衛策を平時に導入するとして、株式上場企業にとってたいへん重要な役割を果たすと思われる「社外取締役」「社外監査役」ですね。よく考えると、このさき社外取締役、社外監査役はたいへん「骨の折れる」仕事ではないかな・・・と思われます。この「一般株主の代表者」たる役員の平時からの仕事、有事における判断が、その後の防衛策の発動の適法性(違法性)に大きな影響を与えることになりそうだからです。
そこで、これからは「企業価値委員会の論点公開」を前提とした、上場企業における今後の社外取締役の役割について自分なりに分析したいと思います。(つづきはまた・・)

企業価値研究会の論点公開について(5)

前回は、この論点公開に記載されているような企業防衛策を採用した場合には、今後社外取締役や社外監査役の方々は、たいへん骨の折れる仕事になるのではないか・・・ということを書きました。
ともかく、私も社外監査役を務めておりますが、たとえ「社外」の人間であっても、役員会や戦略会議には出席しないといけませんし、株主総会への準備だってしておかなければいけません。その職責にあった役割を担うためには、けっこうその業界やその企業のことについて勉強しておかないといけませんが、そこに「防衛策における合理性担保の手段」として社外取締役らが期待されているわけですから、仕事の量は格段に増えるのではないでしょうか。
今後も上場企業が社外取締役や社外監査役を採用するにあたっては、いままでどおり「経営の神様的存在」や「官公庁出身者」を起用して、「このひとのいうことだったら、真摯に受けざるをえいない」雰囲気の方が登場することが多いと思います。しかし今後は実際に「額に汗して」企業価値判断のための資料作成のできる実務的戦略的な社外取締役、社外監査役も選任していく必要性がある思われます。そのあたり複数の社外取締役を選任することも多くなると思いますが、大目付役の取締役から、企業価値の向上、毀損の判断をなしうるような実務処理に詳しい取締役まで、いろんな方々にバランスよく就任していただくことが必要になりそうです。
たとえば、企業価値研究会が公開した論点のなかで紹介されている「合理性のある防衛策」として、株主総会授権型のライツプランがあります。このプランを株主総会で導入するにしても、現経営者は企業の特質などから、どのようなことがあれば企業価値を高めることができるとか、株主価値への考え方、ステークホルダーの存在が企業価値向上へどのように関係するのかなど、企業の今後の経営方針をきちんと株主に説明する必要があり、そのためには平時から社外取締役などが「一般株主の代表者」として、この企業の価値を高めるものは何か、その検討に真剣に取り組まなければなりません。(つづく)

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