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2005年5月 5日 (木)

アメリカにおける裁判例の重要性

このGW中に、すこし「社外取締役、社外監査役」に関する書物などを読んでみたのですが、なぜ近年、にわかに社外取締役の重要性などが話題となってきたのか、そのあたりをうまく解説している書物というのがあまりないようでした。もちろん、企業統治(コーポレートガバナンス)にとって有用性があるから、というフレーズはどこにでも書かれているのですが、どのような経緯で社外に取締役を求める、という理論が浮上したのか、よくわからないのです。

いろいろと報道資料なども読んでいると、結局のところ、1993年の宮沢・クリントン会談の際の日米包括経済協議(日米構造協議)によるアメリカ側からの経済開放政策あたりから、ということになるんでしょうね。このときに、監査役の独立性、社外取締役の採用、株主代表訴訟の活性化(そのほか弁護士資格の規制緩和なども)など、いわゆる外資が日本経済に参入しやすい体制を日本が早急に構築するよう、強く求められたことに起因する、ということだと思います。

そうすると、アメリカでは普通に採用されているような制度であっても、それまでの日本の商法で「当たり前」とされてきた制度との衝突なども、当然にあるでしょうし、現に株主代表訴訟については、原告である株主と被告である取締役との間における和解の効力問題などのように、どうみても実務の取扱が現商法の規定と矛盾するような場面が出てくるわけです。(なお、一部この点については、平成18年施行の新会社法では矛盾点が出ないように法制度化されますが、それでも株主と取締役が和解した場合に、取締役が和解条項を履行しない場合の強制執行をどうするのか、などまだまだ不明な点が残っていますが)

そこで、社外取締役の行動についての適法性(コンプライアンス)を論じるにあたっても、日本におけるこれまでの商法の考え方と、アメリカの先例とを総合的に比較参照しなければならないように思います。日本の裁判官も、もし今後、会社買収時の防衛策の是非を判断したり、代表訴訟における被告である社外取締役の責任の是非を判断するにあたっては、日本に先例があればいいけれども、適応可能な先例がない場合には、社外取締役や独立監査役に関するアメリカの判例なり学説を参照して、それが文化の違いや法制度の違いに起因するならばともかく、法解釈として日本でも妥当する理論が存在するのであれば、それを日本の司法判断にも適用すると思われるからです。

私は、アメリカ法を勉強した経験はないのですが、外圧(企業会計問題も含めて)によって商法の変容を受けている現実を前にすれば、実務家はやむをえず、米国判例事情についてもある程度精通しなければ、対応できないのではないかな・・・と思ったりしています。

(つづく)

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