鋼鉄製橋梁談合事件
カルテルによる損害額760億円という、国発注にかかる橋梁談合事件が、いよいよ関連企業47社のうち8社に絞られて公正取引委員会から検察庁へバトンが移されるようです。対象となるのは談合の幹事、副幹事会社ですから、どこも日本のトップ企業ばかりのようです。1月24日の公取委での審判では「談合の事実は一切ない」「公取委の主張は曖昧であり、当社の反論すべき具体性がない」とすべての会社が否認していたにもかかわらず、公取告発事件としては最大級の20名以上の検察官投入という報道がなされ、立証資料の具体的な説明が公表されるや、一転して「談合の事実は認める」とのこと。なんともやりきれない気持ちになります。
どこもやってるから、うちもやる。談合の会合に参加しなければ、それこそ仕事が回ってこない。もし談合するなら、担当部署が独断でやった、という段取りで行う。談合交渉のゴルフのスコアカードも廃棄しておく。今後は検察庁の捜査は、この8社において、個々の発注談合にトップの関与があった、というところまで立証できるかどうか、ということでしょうから、担当者レベルでの取り調べは相当厳しいものとなるのではないでしょうか。(いや、ひょっとするとすでにトップへつながる証拠書類はそろっているのかもしれません)早い段階で真実をきちんと供述しないと、大型共犯事件ですので、身柄拘束は相当長期化されることが予想されます。
公取委の審判では一律否認し、検察庁の捜査開始時点では一転してみんな事実を認める、ということなら、これこそ「談合」のようなものです。各社の顧問弁護士の方たちなどはかなり苦しい選択を迫られるのでしょう。ある程度事実を認識したうえで「とりあえず、公取委の主張は不明確だから、具体的な主張があるまでは否認しときましょう」という指示はマズイと思いますし、かといって「御社はなにがあろうと、真実を述べ、ほかの会社とは一線画してコンプライアンス経営を貫くべきだ」と説得しようものなら明くる日には解任されるかもしれません。「きれいごとばっかり言って、役に立たない弁護士だな」と言われて終わり。。。弁護士の立ち回り方法としては、トップとだけ話をして「本当にこの時点では談合には参画していなかった」とか「会合には参加していたが、個々具体的な発注における連絡には参加していなかった」などそれなりに確認だけしておいて、先の審判時点における主張に至る、というところでしょうか。いずれにしても、依頼者の役に立つため、依頼者との「そこそこの」距離感を保つことが必要になるんじゃないでしょうか。(まあ、ここはご批判を受けることを覚悟のうえで現実論を述べたまで、と解釈してください)他の会社の弁護士さんとのやりとりも、ひとつ間違えると「証拠隠滅」被疑事件となってしまう恐れがあるので、気をつかいます。
独禁法が改正されて、今後ますます公取委が公正競争のルール作りに大きな位置を占めることが予想されますので、どうしても今回の事件は公取委のパフォーマンスを世間に示すための機会になります。今年の経済事件の目玉になるものと思います。
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