法の無力
「先生、ほならわしは泣き寝入り、ということでっか??」
弁護士をしていて、依頼者からこのように訴えられることほどつらいものはないです。
でも、やっぱりこの世の中、法の無力を感じるときもあるんですよね。ビジネス法務とはちょっと「違います」が、私のホームページで更新した内容を、こちらでも紹介します。以下は、ホームページからの抜粋です。
ブログのほうでも、以前少し取り上げたが、法律紛争の最先端で働くも
のとして、「法による解決の無力さ、やるせなさ」を痛感するときがあ
る。一般の方々は「裁判に勝つ」イコール「お金が戻ってくる(お金が
もらえる)」と認識されていることが多いが、それは相手が自発的に
「判決による命令は守らなければならない」という誠実な精神を働かせ
ると同時に、支払能力も存在する場合に限られるのである。しかし現実
には、判決が出たからといっても、相手が任意に命令に従わなければ、
判決は「絵に書いた餅」である。この話はまだ、序の口である。
さて、相手が判決に従わなかったらどうするか、これも多くの方はご存
知のとおり動産、不動産、債権などに対して「強制執行」を行い、相手
が嫌だといっても現金化してお金を強制的に回収できるのだ、と認識し
ている。これも一般の方は比較的簡単に回収が可能だと考えておられる
ようである。
しかしながら、この強制執行というものも実に「頼りない」ケースがあ
る。まず、動産についてはよほどの「市場での売買価値」がない限り、
執行の対象とはならない。普通にどこにでもあるような生活用品、たと
えば冷蔵庫、テレビ、家具類など、(生活に不必要なほど複数あれば別
だが)まず執行のための差押対象にはならないと考えておくべきであ
る。
また、不動産の明け渡しについても、その不動産(土地)上に、容易に
移転できないような動産を置かれている場合には、その執行自体に長期
間および多額の執行費用を要すると心得ておかなければならない。(な
お、これは私が明渡を求められたほうの代理人を務めたケースである
が、依頼者は宗教法人であり、明渡対象の土地上に、その宗派の仏像を
建立したところ、執行官も、執行業者もこの仏像の解体、移設を極度に
嫌がったため、執行に2年もの年月を要した。)ニュータウンの広大な
土地が2年にもわたって有効利用ができないということ、および新聞報
道などで「仏像が解体された土地」と広報されたことで誰もその土地を
購入したがらなかった、ということなど、土地価格の毀損もはなはだし
いであろう。
土地の競売にしても、いつまでもその土地を占有したいと思えば(競売
のための入札保証金が流れるのを覚悟していれば)入札を流すこともで
きるし、ほかにも入札自体を適法に流すための要件を悪用すれば、保証
金を積まずともいつまでも競売の実行を阻止することは可能なのであ
る。(もちろん、ここでそのような悪用可能な事例を紹介すべきでなな
いので、差し控えるが)事実、頭のよい方々のなかには、このような制
度を悪用して、いつまでも競売対象物件を有効利用している。
このような事例に出会うときに、「法は無力なり」とやるせない気持ち
になってしまう。なぜそのような事例が出てくるかといえば、法律によ
る規制というものが社会の流れを「後追い」することが宿命であるため
に、法の隙間で適用除外となってしまう事態が発生することを阻止でき
ないことと、もうひとつは裁判所、法務省、弁護士といっても、その数
には限りがあり、違法状態を直ちに是正するだけの社会インフラが到底
整備されていないことにあると思う。法的紛争の最前線にいる弁護士の
役割のひとつとして、この「法の無力」を感じるような事例をなるべく
社会に知らしめて、早期に法整備を検討するように訴えることや、法整
備の時間的余裕のない場合には、すこしでも法の無力を埋めることがで
きるようなアイデアをもって先例を作ることがあるのではないか。
(抜粋終わり)
ビジネス法務とは関係ないことも「ゴチャゴチャ」書いておりますが、
もしお時間と興味がございましたら、
http://www.geocities.jp/yamaguchi_law_office/index.html
のほうも、覗いてやってください。。
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