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2005年5月 9日 (月)

商法監査の立会

3月決算の企業の社外監査役をしている関係から、この週末、監査法人の商法監査の立会いをしておりました。大手の監査法人の方は、ゴールデンウィークというものは季節柄、「精勤期間」ということで、ほとんどお休みをとらないんですね。

細かい実査手続きについては、ここでは申し上げませんが、会計監査の素人としての感想を述べますと、内部統制リスクの判断というものも、昨今の情報処理システムの導入次第というところでしょうか。お金の流れについて、どれだけ当該企業がコンピューター化、IT化をはかっているかによって、会計士さん方の統制リスクへの配慮も変わってきますし、ぎゃくに言うと、監査法人の代表社員の方でも、相当の情報処理システムへの知識がないと、内部統制リスクに関するポイントを判断できないのではないか、と思いました。

会計士さん方と話をしているなかで、一時問題となっていた「繰り延べ税金資産」や、この4月から導入された「固定資産の減損会計処理」などにおいては、(誤解をおそれずに言いますと)その企業の将来の収益見込みのようなものを、推測しながら算定しなければならない、という部分もある、ということをお聞きしました。そもそも、監査の本質は、その企業がきちんと帳簿をつけているかどうか、それを正しく公表しようとしているかどうか、を検証するところでしょうから、その企業の信用が将来どうなるか、ということを判定する作業ではないはずです。しかしながら、実際の監査を拝見しておりますと、どうも「この企業の将来見込みはこうだ」という前提がないとバランスシートの数字が決まらないことがあるんですね。ということは、実際、企業価値の算定などにおいても、会計士さん方の調査内容へ「ツッコミどころ」みたいなところがあって、もし弁護士などが収益見込み算定根拠などを執拗に質問した場合にはどのように回答するんだろうか、と考えたりしておりました。

最近、このブログでも「企業価値研究」ということをよくテーマにあげていますが、もし社外取締役が一般株主に説明すべき「企業価値」を算定する場合、おそらくバランスシートをみてもすぐにはわからないような価値の算定をしなければいけない、と推測されます。たとえば企業ブランドとか商品ブランドとか、ノウハウ、優秀な従業員、労組と経営者との関係、研究開発の蓄積、取引先の信頼、コーポレートガバナンスの仕組みなどなど、数え上げたらきりがないほどです。社外取締役が外部委託した上での報告書に頼っていたのでは、おそらく株主に責任をもって報告することはできないはずです。自社と買収希望企業との比較ということですから、算定の基準となる項目の選択も含めて、その社外取締役独自のルールをまず作成して、ある程度合理性のある算定根拠を自ら検討しなければならないような気がします。なにせ、先に述べたとおり、専門家の会計士の方々でも、「見込み」で判断しなければならない分野が存在するわけですから。

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