松下の企業買収防衛プラン
新株予約権発行時における国税庁の非課税宣言も出たところで、松下の企業買収防衛プラン(ESVプラン)が発表されました。
日経記事です
いわゆる取締役会決議で導入したルールということで、6月の株主総会での承認は不要、ということでしょうか。(中身を読む限り、そのように読めるのですが)すでに新株予約権の発行登録も済ませたとのことです。大量買付企業が現れた際の、取締役会のとるべき方針や、なにをもって企業価値を高めることになるのか、に関する現経営陣の意見表明など、有事における株主の判断を重視する姿勢がよく現れていて、うまく策定されているなあ、というのが実感です。
ただ、ちょっと疑問があります。
もし、買収企業側が、松下のルールに従わず、自らの方法によって松下の一般株主あてに情報を提供しようとした場合、松下の現経営陣はルールに則っていきなり防衛策を発動してしまうのでしょうか。おそらくライツプランだと思いますが、ルールに従わない買収者は企業価値を高めるための買収者ではないと即断して一般株主の判断の余地なし、としてしまうのでしょうか。このルールによるならば、まず買収希望企業は、松下の求める質問に真摯に回答をすることになりますが、もし買収希望企業のほうが、「きちんと誠意をもって回答するので、回答のための資料となるこれこれの質問に回答してほしい、それに回答してもらわなければルールにしたがうことはできない」との交渉方法をとってきた場合、やはり松下はルールにしたがわない買収希望企業と認定して、即時防衛策発動、となってしまうのでしょうか。
松下にとって、このルールが一般株主の保護のためには最良だと思っていても、買収希望企業だって、これとは別の方法による情報公開(価値向上に関する提案公開ルール)が適正であり、一般株主保護のためには別のルールを用いるべきである、と主張する可能性があるでしょう。松下のいうとおり、代替案を松下の現経営陣が発表する、ということであれば、ある程度、企業経営の長期プランを提示するためには「武器対等」のための情報交換も必要でしょうし、そのような機会を一方的に奪っておきながら「これが株主保護のための合理性あるルールです」と言われても、ちょっと(企業価値判定の機会を奪われて、防衛策を発動されてしまった株主にとっては)不満の残るところではないでしょうか。
たんに株主に不満が残るだけならいいのですが、このようなルール自体の合理性が法的に問題となった場合、このルールに則って発動された新株予約権発行自体の違法性にまで発展するとしたら、ちょっとルール自体が厳格に過ぎないだろうか・・・・という疑問が湧いてきます。私は何度も申し上げているとおり、M&A業務を専門とする弁護士でもありませんので、また国際的にみても、まったく異なる見解があるのかもしれませんが、ふと「松下の株を持っている」一般株主の立場で少し考えてみると、上記のような不安というか疑問のようなものが感じられてしまいました。
さて、社外監査役2名を含む4名の監査役も、上記防衛ルールに賛同された、ということですから、そのあたりも十分議論されたうえでのルール公表なんでしょうね。
| 固定リンク
コメント