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2005年5月21日 (土)

法務省と経済産業省が対立!?

以下のような毎日ニュースの記事をみつけました。

買収防衛策:指針づくりで経産省と法務省が対立

この記事を大まかに整理すると、経済産業省は、予定どおり「企業価値研究会の論点公開」の指針に基づいたガイドラインを作成したところ、法務省は社外取締役の行動が「株主総会の承認」に等しいほどの公正性を確保できるものかどうか疑問であり、その関与に法的効果を認めることはできない、として別のガイドラインを作成している模様です。そして、双方の主張は対立したままであり、予定として発表されている「5月末までの公表」が可能かどうか、不明とのことです。この対立を超えて、どのようなガイドラインが公表されるのか、ますます興味深いところとなりました。

これまで私が(勝手に)このブログで提案しておりました敵対的買収に対する防衛策は、明らかに法務省寄りの見解です。どんなに社外取締役が「公正独立の第三者といっても、それは現経営陣が依頼して就任してもらった方なんで、保身目的である」ことは誰の目にも明らかです。したがって、少しでも、この保身目的を希釈して、公正性を担保するために、プランとして提言したとおり、種類株主総会による決議と社外取締役の意見を双方持ち込んだ判断基準が必要ではないかな・・と思います。これであれば、法務省が主張しているような「株主総会の承認」に匹敵する程度の判断基準と(かろうじて)言えるのではないでしょうか。

ただ、法務省が「社外取締役に法的効果を認めない」とする主張にも異議があります。この法務省の見解は、おそらくいままで委員会等設置会社の導入とワンセットとして用いられてきた社外取締役、つまりコーポレートガバナンスのあり方を論じる際の(業務執行の監視者たる)社外取締役を指しているのであって、私がいままで提言しているような企業買収という有事において立ち回りを演じる社外取締役とは意味が異なる、という点を明確にしていないところがあります。もし、経済産業省のガイドラインに「法的効果を左右する社外取締役」が登場したとすれば、その社外取締役に独自の行動指針を付与すればよいと思います。つまり、私の買収防衛プランに記載したとおり、社外取締役が平時においてはどのような業務を尽くし、そして有事においては、どのような企業価値算定のための行動をとるべきか、つまりプランの運用まで含めて法的判断の対象とすれば、「社外取締役に法的効果を認める」ことは可能だと思われます。

以上、またまた勝手な意見を述べていますが、私の職業柄、やはり裁判官、検察官身分を有する人が多い法務省の見解のほうがすんなり頭に入ってしまいました。

最終ガイドラインは、この6月下旬に予定されている株主総会において、防衛策を議題として用意している企業にとっては、たいへん意味のあるものですから、できるだけ早期に公表してほしいものです。

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コメント

こんばんは。私は委員会等設置会社の導入とワンセットの社外取締役についてしか考えていませんで混同がありました。その点反省しています。経済産業省と法務省とではこちらでそのような対立があることを初めて知りました。相変わらずのザッパな印象ですが、「リスク愛好的な経営者を保護する経済産業省」対「リスク回避的な株主を保護する法務省」という感じがいたしました。世間では株主というだけで結構なリスク愛好家なので違和感があります。株主総会でがんばるくらいなら株の銘柄の選定でがんばるというのが一般的な株主の選好なので株主総会を充実させるくらいなら株式市場を充実させて欲しいと思うし、株主総会というのは経営の現場からすれば意味がないほどザッパな議決しかできないのであまり使って欲しくないです。

投稿: bun | 2005年5月21日 (土) 20時08分

どうもコメントありがとうございます。いえいえ、社外取締役にも、いろいろな定義づけがありそうだ、と考えるのは私自身の認識だけかもしれませんので、あまり自信はないんです。でも、最近このあたりの議論が「ビジネス実務法務7月号」とか「商事法務合併号」あたりで議論されはじめているような気がしますので、また改めて記事にしたいと考えてます。

投稿: toshi | 2005年5月23日 (月) 19時31分

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