社外取締役と種類株主(その2)
企業防衛策のマイプランの続きを「明日書く」といいながら、別の話題になってしまって、進んでおりませんでした。この2、3日にもイーアクセス社の買収防衛策が発表されたり、東芝の対処方針が出されており、どちらも平時導入ライツプランを基本とされているものと思われます。(株主総会での承認の有無については分かれているようですが)いずれのプランも、防衛策発動のための判断には、社外取締役がたいへん重要な役割を占めていることが明らかでして、たんなる「企業統治」のシステムのあり方を論じるだけではなく、おそらく司法判断の中身に「社外取締役」の行動そのものが反映する場面が出てくることは間違いないと思われます。
その理由は、すでに私が「企業価値論と社外取締役」のなかで述べたとおりです。(引越し前のブログから、この部分だけは載せ換えしました)つまり、企業価値の向上、毀損という判断は、そもそも絶対値において誰も測量することができないのですから、司法判断も「企業価値とは」のようなモノサシを持ち込むことはないと予想されます。今回の企業価値研究会の論点公開の趣旨と同じく、実体としての企業価値というものはよくわからないけど、主役がふたり登場してきた場合に、「こっち」と「あっち」のどっちが(一般株主からみて)これからの企業の価値を向上させるに適しているか、ということを株主が比較する「材料」くらいは、探求すれば見つかりますよ、というのが裁判所の示す基本ルールだと思います。そして、この比較する「材料」というのが、つまり司法お得意の「デュー・プロセス論」による判断だと思われます。
新株予約権発行等、防衛策発動の適法性が問題となる場面において、仮処分命令事件のように比較的短期に審理の結論を出すわけですから、防衛策を発動することが企業価値向上に資するかどうか、ということは手続きの適正性の有無を審理することで、「企業価値の向上、毀損の比較」判断を行うしか方法がありませんし、そのためには、おそらく社外取締役が平時から、企業価値を最大化するための企業活動をどれだけ調査してきたか、ステークホルダーと企業の関係、関連子会社との関係、とても利益が一致するとは思われない多彩な株主の総意の汲み取り方などを、どのように工夫して把握してきたか、その結果、このたびの買収希望企業の提案とどこが違い、どの程度の差があるのか、明確に報告できることが防衛策発動の適法性を維持するうえで必要ではないでしょうか。
もし、そうでなければ、社外取締役は、(ほかにもこれまでに、コーポレートガバナンス論の主役として、社外取締役に期待されてきたさまざまな仕事もあるでしょうが)少なくとも企業買収防衛策の判断者としては「なにもしていない」ことになり、防衛策発動が差し止められるばかりか、会社に対する忠実義務違反の民事責任を問われることとなり、さらに現商法272条による仮処分の対象(当該社外取締役が買収防衛策の発動に関する調査委員会に出席することを差し止める)になってしまうことも考えられます。このような事態だけは、現経営陣が避けなければならない問題だと思います。もちろん、社外取締役が本当に公正な立場において、発動策は解除する、という結論に至れば社外取締役の法的問題はあまり議論する余地はありませんし、むしろ「解除する」という判断が増えるということは、それこそいまコーポレートガバナンス論として期待されている「社外取締役」の本来の姿に近づいているものと評価してもいいのかもしれません。しかし、そこまで社外取締役というものが、この日本の企業に「根付く」ということにはまだ私は懐疑的なんです(と、また中締めでつづく )
すいません、まだ終らなくて。。。。
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