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2005年6月14日 (火)

ニレコ保全異議決定全文を読んで

総会リハーサルのため時間がありませんし、明日にでも抗告審決定が出るんじゃないか、という段階ですから、深い検討はできませんが、やっぱり一言エントリーしときます。

私は決定理由よりも、まず第一に「債務者側代理人がどこに力点を置いて保全異議を申し立てたのか」そこが一番知りたかったところです。残念ながら「総花的」な主張となっており、いずれの論点も、債権者側代理人から余裕をもって反論されてしまった、という印象です。(決定文にまとめられた債権者の主張、債務者の主張からの印象ですので、誤解があれば訂正いたします)とくに、保全の必要性に関する鹿子木決定批判の部分では、初歩的なミスもあったりして、短時間で異議申し立てをしなければならない債務者代理人側の苦労がたいへんなことがうかがわれました。「逆転」という実をとることを最重要課題とするのであれば、市村決定が理由部分でもっとも逡巡していた部分、つまり保全の必要性に関する論点のうち、最高裁判決との整合性の部分にエネルギーを集中してもよかったのではないかな・・・と思ったりしました。ただ、そのような方法ですと、せっかくの保全異議が、ほかのライツプランに影響を与える論点について(鹿子木決定の修正は)無視せざるをえない、ということになりそうですが。

さて、この決定理由を全文読みまして、通常の信託型ライツプランへの司法判断の影響というものが、ほぼ理解できましたでしょうか。平時に株主総会の決議を得て、有事にライツを消却しない、という判断を取締役会(もしくは特別委員会)が決議する、というスキームを採用している場合、新株予約権の発行もしくは有事の新株の発行自体、差止の対象となりますでしょうか。数日前のエントリーで紹介いたしましたとおり、西濃運輸さんは、明確に「差止はされない」と株主様に説明しておりますし、私は「差止の可能性大」と述べました。

西濃運輸さんの説明では、このニレコの事例は「取締役会決議で平時に導入したものだから、有事発動の条件がきわめて厳しいが、平時に株主総会決議で導入すればもっと有事発動の条件は緩和される」という論理が前提となりますが、この保全異議決定を読んで、その論理が確認されたとは思えません。むしろ、裁判所は「平時において、取締役会が株主総会より有事の際の企業価値破壊者からの防御のために、緊急避難的防衛措置の委任を受けることはあったとしても、それ以上に企業価値の大小を比較検討するところまでの委任はできない。企業価値の比較、どちらが経営者としてふさわしいか、ということは本来的に株主が決めることである」と考えているように解釈するのが素直だと思います。かりに一歩譲って、平時に株主総会での決議で導入することで、有事発動条件が緩和される(なぜ株主総会の決議だと緩和されるのか、ちょっと私には理解困難ですが)としても、取締役会が恣意的な判断ができないほどに条件が明確でなければならないわけですが、西濃さんのスキームの場合①社外第三者による取締役会判断への拘束性②行使条件の明確性、いずれの面においても東京地裁決定を前提とする場合、手段の相当性に問題があると思われます。

また、抗告審の判断が待たれるところです。

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