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2005年6月 7日 (火)

社外取締役の人数と司法判断への影響

6月6日の日経「スイッチオンマンデー法務」特集記事では、社外取締役の経営重要局面での行動を過去の事件から拾い出して、「独立性を保ちつつも(社外取締役の)数も重要である」との意見が書かれていました。

ライブドア・ニッポン放送の事件の場合、ニッポン放送の社外取締役全員がフジテレビに対する新株予約権発行議案に賛成した、ということで、社外取締役制度が機能しなかったと評論されています。この事件の場合、ニッポン放送の取締役は19名で、うち社外は4名でした。一方、三菱東京フィナンシャルグループとUFJホールディングスとの統合の際における三井住友フィナンシャルグループによる敵対的買収事案の際においては、UFJHDの取締役会構成は取締役7名で、うち社外が3名でした。

この両事件はよく報道などで比較されていますが、UFJHDの判断はおおむね適法性、合理性において問題はないと評価されており、SMFGの買収提案を採用しなかったことについて専門家などから詳細なアドバイスを受けて、十分な時間をかけて株主価値を検討した、とされています。

たしかに、今朝の日経特集記事を読んで、やはり社外取締役の人数というものもかなり重要である、ということは否定できないように思います。というのも、私もUFJHDの場合は十分な検討が行われたという認識を持っていますが、それはやはり取締役会での「4対3」というクロスマジョリティーがあったからこそ、取締役会で十分な審理への方向が決まったものと推測されるからです。もし、ニッポン放送取締役会においても、19名のうち、倍の8名程度が社外取締役で占められていたとするならば、有事導入防衛策でも司法判断において適法とされる可能性の高かった「グリーンメーラー」であったかどうか、という点まで慎重な調査がなされたかもしれません。15対4という現実の取締役比率では、どんなに反対してみても、結論を左右できるほどのものではなく、11対8程度の意見分立ということであれば、買収希望者自身への調査や、どちらが経営するほうが株主価値向上に資するかなど、徹底した調査への動機付けとなったかもしれません。たとえば、今後買収防衛策の発動時の企業行動が司法判断の対象となるならば、どのようなプロセスによって発動に至ったかという争点において、この社外取締役の人数比率というものも、「公正中立の第三者」なる要件該当性を判断するときの一つの指針になろうかと思われます。

ただ、そうは言いましても、著名な大企業であればともかく、通常の上場企業が、ふさわしい社外取締役を何人も招聘することは物理的にも、費用的にも至難の業だと思います。したがって、社外取締役の人数に代わる具体的な評価方法を考える必要があると思いますし、それは社外取締役の平時における株主やステークホルダーとの緊密なコミニュケーションに尽きるものと思います。内部の取締役と数的に拮抗している社外取締役が存在するということであれば、その有事のおける判断のみでも「独立第三者」としての機能が果たされたと司法で評価されることもあろうかと思いますが、もし人数が少ない場合であれば、その社外取締役の通常の行動自体から、「独立、公正な第三者であり」かつ「適正に株主の立場で株主価値を評価できる」と判断してもらうしかない、と思いますね。社内取締役と社外取締役との数的比率に起因するハンディを克服するためには、ともかくまずは社外取締役の平時におけるプロセスと、そしてその判断をトップが尊重せざるをえないような客観的な要件、これに尽きるものです。

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