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2005年6月10日 (金)

ニレコの新株予約権発行差止異議審

ニレコの防衛策に関する保全異議決定が出ましたね。同じ東京地裁第8民事部の別の裁判官三名によって審理、決定がなされましたが、結論は原審と同様、無担保での差止認容ということだそうで、ニレコは即時、保全抗告を高裁に対して行ったそうです。(6月16日が発行予定日ですから、それまでに抗告審が決着するのでしょうかね?)

明日ころに東京地裁のホームページに異議審の決定全文が出るものと思いますし、まだネット記事程度しか読んでおりませんが、今年3月末現在の株主に対して新株予約権を発行する、というニレコ防衛策特有のスキームの部分について、「株主全般に不測の損害を与える」ということが被保全権利の認定、保全の必要性認定のいずれの場面でも強調されているようですから、一応ほかのライツプランへ与える影響というのは少ないのでは、と思います。というか、特定日における株主への割当、というスキームについてはガイドライン発表当初から相当性に疑問あり、とされていましたから、ちょっとひっくり返る可能性は少ないとは予想していましたが、ただ原審(鹿子木決定)で、スキームの相当性があるといえるためには、(たとえ防衛策の策定に株主総会の意思が反映されていたとしても)独立した第三者の意思決定に拘束された取締役会の判断が「濫用的買収者から一般株主を守るための緊急避難的事態かどうか」という点のみに限られる、というかなり限定的な場合しか発動ができないような趣旨でしたから、そのあたり、(もし株主総会の承認をもってライツプランを導入した場合に)取締役会(もしくは特別委員会などの独立第三者機関)の構成や、発動できる要件の解釈など、緩めの防衛策を肯定できるような趣旨のことが記載されているのかどうか、私個人的には非常に注目をしております。(ネット記事からでは、そのあたりまでは読み取ることができませんでした。ただ、判決や決定というものは、そもそも事案解決に必要な部分でのみ理由を付せば足りるとも言えますので、この裁判官の判断で、「一般株主に不測の損害を与えるような防衛策ということであれば、それだけで相当性なし」と蹴ってしまうこともできるのでありまして、そのほかの論点に言及していない、ということも考えられます。

来年の新会社法が施行されますと、スキームの相当性に問題のある新株予約権を使った防衛策に対しては導入部分から司法判断の対象となりやすい(差止請求+新株予約権発行無効確認訴訟 現行法では無効確認訴訟は不適法との判例がありますが、新会社法案では法案828条に明文化されています)のですが、株主総会の承認を得た形であれば、なんとか乗り切れるのではないでしょうか。ただ、鹿子木決定を前提とするならば、株主総会の承認を得た形であったとしても、有事における防衛策発動の場面において、発動要件が非常に厳格なために、どのような結論となるのかは、不透明だと思われます。(私個人の見解としては、鹿子木決定の要件に加えて、新株予約権の行使できる株主と行使できない株主を差別することが株主平等原則違反になる、ということも見逃せない論点だと思っていますが)

さらに、実際に新株予約権を個々の株主に付与する時点における課税問題についても、現時点では不透明のようですね。とりあえず付与される時点では一般株主は雑所得に対する税金を支払う現金をどこからか用意しなければなりませんし、申し込み時点における株価と行使可能となる時点の株価次第では、価値に見合う以上の余計な税金を支払わなければならない事態になるようです。本当に発動されるような事態というのは、確率としては僅かかもしれませんが、その僅かの確率が現実化した場合、立法的な解決をほどこしていない現状では一般株主に多大な迷惑をかけることも予想されます。

平時のライツプランを検討するにあたっては、リスク回避のために、予備的な防衛策をも検討しておくのが無難かもしれませんし、そもそも司法判断は平時における買収防衛策の導入にどうも否定的な見解が強いように思われますから、司法リスクを考えた場合、株主価値を高める別の方策によって、「副次的に防衛策となりうるような」手段をとる企業も増えるかもしれませんね。恐ろしいのは、買収防衛策を導入すること自体が「現経営者の保身であり、経営に自信のない証拠」と受け取られて、株価が漸次的に下がってしまうことではないでしょうか。

明日あたり、保全異議決定の全文を読んで、すこし意見が変わっていましたら、ゴメンなさいです。。

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