東証社外取締役、1人除き独立性疑問・金融庁
金融庁は以前から上場企業に「社外取締役」を多数導入することに積極的ですから、このNYSEへの照会とその回答に基づく意見表明は、最近のゴタゴタとはそれほど関係ないものと思います。今後、独立性の強い社外取締役の導入を推進するにあたって、監督する立場にある取引所自身が「社外性」に問題を抱えていてはマズイ・・・というところからの表明だと思われます。
東証では、10名の取締役のうち、5名が(商法188条の定義にあてはまる)社外取締役ですが、そのうち2名が取引先(上場企業)の取締役であり、1名が株主企業のトップであり、1名が元々の法律顧問(前田教授)ということで、これらの方がたはNYSE基準によれば独立性に問題がある、とのことです。
以前から、法律実務家や法学者の論文などでは、この「社外取締役」と「独立取締役」とは異なるものである、という研究成果が出されておりましたが、実社会の出来事としてはっきりと問題になったのは今回が初めてではないでしょうか。(機関投資家や運用基金あたりの議決権行使基準などでも、まだここまで区別して意見表明はされていないのではないでしょうかね?私の無知でしたらゴメンなさいですが・・)比較的手に入りやすいところでは、「ビジネス法務7月号」の山田教授の論稿などが、もっともわかりやすく「社外取締役」と「独立取締役」の概念を解説されておられるようです。
日本のビジネス社会で、商法188条の定義する「社外取締役」の適任者を見つけること自体苦労するのに、ましてやアメリカ流の「独立取締役」を導入するというのも、ちょっと無理かなあ・・・というのが今の私見なんですけど、ただ以前から申し上げておりますとおり、社外性に加えて独立性を強化することは、裁判所におけるプロセス審理に影響を及ぼす原因にはなるのでは・・と考えております。経営判断法理の適用場面とか、内部統制システムの構築義務の履行状況とか、最近問題となりました企業買収防衛策の発動場面の判断など、裁判所が実質的な経営活動の妥当性までは踏み込まないけれども、その妥当性を推認するためのプロセスまでは判断する、という場面において、「独立取締役」が関与していたことが会社側に有利な事情として考慮されるのではないかな・・・と考えています。
(追記)HardWaveさんのエントリーより抜粋
厚生年金基金連合会は株主議決権行使基準において独自の社外取締役の独立性に関する判断基準を定められています。その中には、NY証券取引所規則のようなものに加え、大株主や主要取引先なども独立性はないと判断するとしています。
とのことです。ご指摘ありがとうございました。
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コメント
差し出がましい真似をいたしまして申し訳ございません。
差し出がましいついでに「株主議決権行使基準における社外取締役の独立性に関する判断基準」をご紹介いたします。
僕の文章より、原文を読んでいただく方が間違いないかと思いますので。
投稿: HardWave | 2005年6月18日 (土) 15時06分