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2005年6月 1日 (水)

社外監査役からみた企業防衛策

ということで、まだまだこのテーマについては、興味が尽きないわけでありますが、本当は社外監査役として、もっと間近に迫った総会での監査報告のほうへ留意しなければいけない身分であるにもかかわらず、「丸三証券の濫用的買収者に対する防衛プラン」など発表されますと、そちらについ目が行ってしまうわけであります。(常勤の皆様、申し訳ありません。あと少ししたら、レジメ完成しますので・・)

丸三証券さんのプランは株式分割型になっています。これはTBSと同じプランですね。濫用的買収者と認定した場合に、TOBをかけてくることを条件として第三者機関(とされている委員会)の意見を聞いた取締役会が5倍までの株式分割を行い、一気に買収者の買付費用を増加させてしまう、というもののようです。ほかにも、分割による事務的な手続きによる時間稼ぎによって、ゆっくりと交渉の機会を確保する、という効果があるのかもしれません。おそらくそのような効果を狙ったプランだと思うのですが、株主向けの「お知らせ」を読んでも、いったいこのプランがどのような効果を買収対象者に与えて、それが一般株主になぜ悪い影響を及ぼさないのか、説明がないのでわかりません。買収予防策としての相当性があるのか、ないのか判断しづらいプランのように思えます。相当性という点で、もうひとつ気になったのが分割決議を行うことができない要件、というところに「当社の総株主の議決権の2分の1以上を有する株主(ただし買収者を除く)が公開買付の応じる意思を表明した場合」とあります。しかし、これは何時の時点で2分の1を算定するのか不明瞭な気がします。買収者が買い進めれば進めるほど、ぎゃくに応じる意思のない株主が少なくても分割決議を行う方向へ(つまり少数株主の意向によって分割決議を開始できる方向へ)もっていけるわけですから、現経営陣の裁量によって要件該当性を判断できるのではないか、と思われますが、そうだとすればこのプラン自体の相当性に疑問を抱いてしまいます。

あまり評論家風に偉そうにも言えませんが、ここ2~3ヶ月のいろいろな論文や座談会記事を読んでの感想は、アメリカで本当にM&Aの実務に触れた人とそうでない人との間に「いい買収」と「悪い買収」というものが本当にあるんだ、という認識に大きな差があることが印象的でした。私のような典型的日本人は「友好的買収」と「敵対的買収」という差については、理解できても、「いい買収」と「悪い買収」の差というものが心からは理解できないように思います。これを理解できるかどうかは、今後の「社外取締役」の役割を考えるうえで、たいそう大きい問題だなあ、と認識しました。この差が体で理解している人が「社外取締役」や「社外監査役」に就任すれば、たしかに中立公正な第三者としての評価を受けることができるかもしれませんが、頭でしか認識できていないような人だと、本当に「いい買収」というものを受け入れる思考がもともとないのではないだろうか・・・とわが身を振り返っても、そのような不安がよぎるのです。

まだまだ、法務面だけでなく、税務面や株価に与える影響、企業の規模や歴史など、企業をとりまくさまざまな諸条件との兼ね合いから、防衛策の選択が行われる必要があることや、今後の証券取引法改正、証券取引所規則や自主ルールの改正、新会社法の施行、自民党企業統治委員会の新法動向などにも影響されかねないことなど、いろんな感想を書きたいのですが、明日はちょっとまた午前中から証人尋問なんで、きょうはこのへんで「つづき」とさせていただきます。

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