セカンド・オピニオン
ほぼ毎日更新されているナポリ好きの会計士さんのブログで、「セカンド・オピニオン」の話題が出ておりましたので、私も少しばかりお話させていただきます。
私は最近、仕事で依頼者の方に(私のほうから)セカンド・オピニオンを勧めるようになりました。でも、よく考えてみると、「なぜ別の弁護士さんの意見を聞いてみてください」と申し上げるのか、いくつかのパターンがあることに気づきましたので、整理してみたいと思います。
ひとつめは、「契約関係(信頼関係)の強化」ということですね。いくつかの弁護士の意見を聞いいただき、「やっぱりこの人に任せてみようか」という気持ちを抱いてもらって、正式に委任状をもらう、というとき。ある程度自分の弁護士としての能力に自信がついてくると、心の余裕からか、「いますぐに委任状はいただきません。よく考えて、別の弁護士のご意見も聞いてからご連絡くださいね」と余裕まじりでセカンド・オピニオンを勧めます。ホントに別の弁護士さんのところで意見を聞いて(そっちのほうが安いなあ)と他の弁護士さんに依頼される、ということになってしまうと「あれ?」なんて思うときもありますが、まあこの余裕が「いえいえ、もう先生にご依頼申し上げる気持ちは変わりませんから・・・。先生にご依頼して負けてしまったら納得します」と言っていただける要因となるケースが多いようです。
ふたつめは依頼者に弁護士選びの自己責任の意識を喚起するとき。ただ、このケースでもふたつに分かれると思います。まず実際に経験が浅くて、自信をもってアドバイスできないケースなんですが、(この事件は受任すればオイシイかも・・・)とちょっと色気が出てしまって、なんとか積極的に受任の方向へ持ち込みたい、でも弁護過誤になるのは嫌だから、「どうしても」といわれたら受任しよう・・・といった方向へ持ち込みたい、みたいなヨコシマな気持ちから「他の専門家の意見も聞いてみてください」と探りをいれたりします。つぎに、「この人はいろんな弁護士事務所を渡り歩いてきたな」と直感でわかる方で、弁護士はそもそも金儲けのために動くもんだから、騙されないようにせなあかん、という非常に猜疑心が強い人が依頼者のケースですね。こういった方は、意外と多いんです。受任した後でも、「先生、この準備書面の原稿、ここに誤字がふたつありますよ。本当に私の事件、誠心誠意やる気あるんですか?」と食ってかかる方もときどきいらっしゃいます。さすがに16年も弁護士をしていると、事件途中で「この人とはやってられませんわ」と信頼関係が破壊されるおそれのある方は、相談段階でわかるようになりますんで、リスクは減りましたけど、やはりそんなニオイを放っておられる方がお越しになるとセカンド・オピニオンを勧めて、どっかで責任の所在をまず明確にしてから受任しよう、という外形を整えたくなります。
最後は、やはり「お断り」のサインとして、セカンド・オピニオンを勧めることがありますね。こういった場合は、この方はおそらくどこの事務所へ行っても、サード・オピニオン、フォース・オピニオンと、次から次へと別の意見を聞いてください、と勧められると思います。本当は「あなたのその事件は、どこ行っても断られますよ、勝ち目ないし、弁護士にも受任のメリットないし」とズバっと言ってあげたほうがその人のためになる、と思うのですが、対応の悪さから弁護士会へ懲戒請求される、ということで面倒なことに巻き込まれたくない、という気持ちも働いてしまうので、ついつい責任転嫁のような物言いでソフトにお断りしてしまう、という結果になってしまうわけであります。
そもそもセカンド・オピニオン、というのは、専門家の説明義務、委託者の自己責任原則の徹底、自己決定権の確保などの要請から進展してきた概念のはずですが、依頼者と受託者との人間関係のあり方によって、実際の利用方法はサマザマではないか、と思われます。たいへんみっともない話になりましたが、企業担当者として、また個人として弁護士を利用される場合、「ほかの弁護士の意見も聞いてみてください」などと言われるケースでの参考になればと思い、ストレートに意見を開陳した次第です。
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コメント
TBさせていただきました。
投稿: arnese | 2005年7月 4日 (月) 18時27分
セカンド・オピニオンについておもしろそうな記事がありましたので、ご紹介します。
http://www.h-yamaguchi.net/2005/09/post_3000.html#more
法律事務所内の別の弁護士にセカンド・オピニオンを取るなどということはできるのでしょうかね。
投稿: しば | 2005年9月21日 (水) 11時06分
>しば さん
情報どうも、ありがとうございました。おもしろい記事ですね。すでに「セカンド・オピニオン外来」があるとは。。。もうすこし、調査して、また独立したエントリーにしたいですね。
さっそくこの「山口浩」さんのブログにTBさせていただきました。(なんかムズカシそうな職業やなあ・・・Σ(^^;)゛ )
法律事務所の場合では、同じ事務所でのセカンド・オピニオンというのは、おそらくありえないものと思います。そもそも、経営母体が同じですから、たとえ弁護士が異なっていても、営業目的は同一になります。したがって「セカンド・オピニオンの公正性」が実質的には担保されていません。事件の相手方に同じ事務所のほかの弁護士が就任できない(利益相反行為として懲戒処分の対象となります)ことの延長線上にある議論ではないか、と思います。
投稿: toshi | 2005年9月21日 (水) 18時20分