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2005年6月 8日 (水)

監査役と会計監査

監査業務として、会計監査人との連携問題としては、内部統制構築やその運営状況の監視などが話題になると思うのですが、今日はちょっと気になった別の話題ですが。。。

現商法によれば、大会社の場合でも監査報告の最終責任は会計監査にしても監査役にありますよね。監査役会で会計監査報告書の最終チェックはしなければいけませんし。その会計監査報告なんですが、現状がなにも変わっておらず、また会計基準に変更もないのに、ただ会計監査人の指導方法が変わって業績内容が変わる可能性がある、という場合、監査役はどのような立場に立てばよいのでしょうか。

たとえば昨年まで、長期フラット為替(10年モノ)をヘッジ会計として適用していたところ、会計監査人が「これはヘッジ会計が適用できないことになったから、金融商品の時価評価として損益計上しないといけません」と言われ、もし会計監査人の指示に従わないと限定付適法意見もしくは不適法意見しか出せないとの雰囲気になったら、監査役としてはどうしたらいいのでしょうか。会計監査人が最終判断をするのではなく、会社が判断しなければいけないわけですから、「会計士さんに言われたので、こう変更しました」などと言うわけにもいかず、かといって今までの報告書が不適切でした、というわけにもいかず、でも会計監査人の意見を無視するわけにもいかず、対応に苦慮するのではないでしょうかね。

公認会計士協会関連の公式団体が、フラット為替については指針の解釈として、リスクヘッジではなく、デリバティブ投機であると公表した、したがってヘッジ会計を適用せず金融商品の評価指針にしたがっての評価に切り替えたほうが妥当と考えた、したがってこれまでの報告は不適切とは言えないが、望ましい方向へと変更したものである、とか、ちょっと曖昧な表現で逃げるのが無難かもしれません。しかし、会計基準も実務指針もなんら変更がないにもかかわらず、ただ公認会計士協会の内部組織から出された文書一枚で監査役が変更を決意した、というのは、監査役にとって適法な行動かどうか疑問が残り、会社に対する忠実義務もしくは善管注意義務に違反するおそれがあるようにも思われます。会計士さんと真摯に協議したうえで会計士さんの意見を重視したことの結果である、ということはどっかに書きたいところですが、それを書くと、じゃあ今までの会計士の意見は不適切だったのか??と突っ込まれる気もします。

長期フラット為替予約に関する公認会計士協会の内部組織(正確にはリサーチセンター)による公開文書というものは、指針の解釈なのか、それとも指針の解釈を超えたものであるか、ということが、解釈自体の「誤り」も含めて訴訟の争点となり、東京地裁では今年2月末に公認会計士協会側が勝訴判決を得ております。ただし、この裁判の判決は読んでおりませんが、原告ご自身のHPで読むことができる原告、被告双方の訴訟書類からすると、おそらく東京地裁では、本案にあまり踏み込むことなく、被告である公認会計士協会を勝たせていると思われますので、たとえ控訴されているとしても、もっとも重要な争点への裁判所の判断が下されるかどうかはちょっと疑問です。

内部統制に関する会社側と会計監査人との意見の違いから、「不適法」とされるというのであれば、なんとなく理解できるのですが、なんにも会社側に落ち度がないのに、いきなり会計監査人から会計基準の解釈を変更しないと不適法となりますよ、などといわれる事態というのは会社としても納得いかないでしょうし(解釈の変更なら、たとえ従わなくても「不適法」ではないやろ!といいたくなりますし)、またもっとも責任問題の発生する監査役としては、たいへん対処に困る事態が予想されますが、このあたり実務に詳しい方の意見もお聞きしてみたいものです。

もし、この問題で会社が会計監査人側に文句を言えないとするならば、つぎは長期フラット為替によるリスクヘッジを勧めた銀行サイドへ文句を言うことになるんでしょうか。いずれにせよ、最初の段階で会計士協会と金融機関とで、こういったデリバティブ商品が企業会計上どのように取り扱われるのか、統一見解を検討してほしいところです。

6月 8, 2005 企業会計 |

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受信: 2005年6月11日 (土) 18時35分

コメント

興味深く拝読させて頂きました。

あるオフレコ予算会議にて...
代表執行役副社長「上期の数字は予算通りに仕上げられるの? どういう数字に着地させるかは経理部長の腕前を試されてるんだからね。市場への約束は絶対だよ」

執行役経理部長「必ずきちんと仕上げます。」

残念ながら、こういう価値観が各社さんの実情だと思います。経理部長はヘッジを含めてポケットをたくさん持っているのが普通でしょうし、各事業部毎にポケットがあると思います。

ヘッジ等の個別の会計処理に関する解釈はご指摘の通りと思いますが、各種の監査をされる方には不正に対する責任を負って頂くべきかと感じています。もちろん、各社が誠実な開示をするべきなのですが...うーん。

投稿: 経理部長 | 2005年7月16日 (土) 22時30分

>経理部長さん

貴重なご意見ありがとうございます。私のような社外監査役にとりましては、その執行役経理部長と社長との「やりとり」が把握しきれる自信もなく、それゆえに責任負担ということになりますと、もっと「臭いを嗅ぎ取る能力と人脈」そして監査役と執行部との向き合い方まで検討していかなければ、と感じますね。
具体的な身の処し方など、またエントリーしてみたいと思っています。
できましたら、今後ともフォローのほど、よろしくお願いいたします。

投稿: toshi | 2005年7月17日 (日) 12時36分

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