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2005年6月 4日 (土)

会計士のお値段(その2)

先日、会計士は普通に企業から「100点の仕事」を要求されるので、能力による報酬変動の評価はむずかしいのではないか、という話を書きました。そんな話をしているうちに、6月2日の日経を読んでおりますと「企業統治 チェック厳しく 金融庁3年度にも新ルール」なる記事が出ておりました。会計士協会も、不正発見のための新たなルール作りを模索しており、今後の監査法人の企業統治への関与が重視されていることが期待されているようです。

そんな中でbunさんの会計監査不正発見に重点?ほんとうにそれでいいのでしょうかを読んで、私も同じ問題意識を持つようになりました。

実際に、私が内部統制システムにある程度関与しているのは、上場企業でも2、3社にすぎませんが、どう考えても、社長もしくは専務クラスが自白しなければ発覚しないなあ、と考えられるシステムが本店、支店含めても数多く散見されるのです。(もちろん、これは現に隠匿しているという意味ではなく、もしその気になったら、なんぼでも隠せるなあ・・という意味であります、念のため)ある問題は情報処理システムからであり、またある問題は人間関係からであり、また別の問題は業界独自の慣行からだったりします。お金の流れにからんでいれば、会計士さんも「?」と感じ取ることができるでしょうが、「不正一般」という意味からすれば、会計士さんも普段の期中監査などでもわからないものが一杯あります。どんなに企業側がコストをかけたとしても、会計士さんにその発見を強く要求することは無理があるなあ・・・と私は実感しています。むしろ、会計士さんの能力の差が明確になるとすれば、このような「不正一般」への嗅覚というか、些細な情報から不正のニオイを嗅ぎ取る能力のようなものが今後必要とされるのであれば、そういった能力の差が認識できるかもしれません。でも、考えてみると、そんな能力がある人が企業にとって歓迎されるかというとこれも現実の社会では逆の結果になってしまうようにも思えます。ここまでは「グレーゾーン」でこっからは「クロ」と指導してもらえる会計士さんをコンサルタントとして迎える、というのもあるかもしれませんが、これも会計士さんの責任との兼ね合いからすると、本当に能力のある人がそんなことするかなあ・・と疑問を抱いてしまいますし。監査法人にとってみれば、報酬アップの要因になるでしょうから、歓迎すべきことかもしれませんが、そのしょって立つ責任の重さを考えると導入には相当慎重な議論が必要ではないでしょうか。

最近は、アメリカのCOSOレポートを中心としたリスクコントロールシステムを取り入れる企業も多いと思うのですが、あそこに出てくる人間像というのは、「99パーセントの合理的理性人」と1パーセントの「常識逸脱人間」がいて、その逸脱人間の行動をどうやって合理的に排除していくか、みたいな前提があるようです。しかしこの考え方は、99パーセントの合理的理性人が常識逸脱人と交わっても変わらないということでしょうが、実際の会社では99パーセントが1パーセントにひきずりこまれちゃうことはたくさんあるわけで、「悪いことを共有したり」「かばってあげたり」「楽だからそっちに部署ごと合わせたり」、そこまで防止することはほぼ絶望的に不可能なわけで。。。

そういったところを十分認識しておかないと、bunさんのおっしゃるとおり、できないことをできるように思って進めると、もっと悪い方向へ向かうような、そんな事態になってしまうことを危惧してしまいます。(おそらく、こんな議論がこれからたくさん、なされないと不自然ですよね?)

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コメント

toshiさんトラックバックありがとうございます。私以外にも名古屋のA監査法人にいる会計士が同じ危惧を共有していましておっしゃるとおり報酬をくれる人を斬らなければならない平家物語的な悲劇があるし、仕事をする上でそれが気持ちの悪い足かせになっていると聞きます。優秀な人が多く集まる業界ですのでその能力が深い意味でも健全な企業社会に活かせる業界であって欲しいと思います。

投稿: bun | 2005年6月 4日 (土) 19時49分

ではそもそも、内部統制の監査をどう導入すべきなのか、といったことまで含めて再考/検討すべき気もします。
私が最近納得してしまった参考資料リンクです。

http://www.iiajapan.com/Forum4D2.pdf

投稿: Amanojack | 2006年12月26日 (火) 01時41分

>Amanojackさん

情報どうもありがとうございます。最近、本業の裁判のほうで、(私としては)ちょっと大きな事件に関与しているものですから、内部統制に関連する資料へのアクセスに限界を感じているところでした。こういった資料をお教えいただくとありがたいです。
眞田さんの意見、私も以前から非常に関心を持っております。たしか、1ヶ月か2ヶ月ほど前に「旬刊経理情報」に中小公開企業の内部統制評価報告制度をどのように構築するか、というテーマで論稿を出されていたと思いますが、あれは非常に参考になりました。この意見書も、内部統制部会ワールドへ、真正面から切り込むもので、おもしろそうですね。

投稿: toshi | 2006年12月26日 (火) 01時58分

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