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2005年6月 6日 (月)

証取監査と内部統制

おととい、「会計士さんのお値段(その2)」をエントリーしましたが、東京の会計士の方よりコメントをいただきました。(コメントは「会計士のお値段」のほうに付けていただいております)報酬に関する会計士さん方の意識や、高額報酬をとるためのスキームなど、たいへん示唆に富むお話です。ありがとうございました。すこしだけ紹介させていただくと、

報酬に結びつけるStepについて、彼(注、投稿者の元親方さん)は以下のことをよく言います。
Step1 お客さんのことをよく知る
Step2 その過程で財務に及ぼすリスクを把握する
Step3 そのリスクを経営者に説明する(経営者にとっては耳の痛いこともよくあります)
Step4 その説明を経営者に理解してもらう
Step5 そのリスクを改善する
Step6 その提案・改善した結果を監査報酬に反映させる
彼は、これを繰り返していました。今もそうです。このStep6までいかないと報酬には結びつかないと思います。彼、最近は、年をとったので、Step6の報酬はどうでもいいようですが。私の税務のお客さんも監査法人より監査をうけています。ただ、低報酬の監査法人は、このステップをクリアしていないような気もします。
私は、このStepをクリアできる能力があるかどうかが報酬に結びつくと考えています。

たしかに、このなかでも、ステップ4のあたりがムズカシイのではないか、と私は思います。本当に理解してもらえたのか、表向き理解しているようなフリをしているのか、そのあたりを見極めるためにも、オーナーとのコミュニケーションを大切にするのでしょうね。私なんか、顧問税理士さんから、いろいろとうるさく言われても、税務調査でイタイ思いをしないと、「ああ、やっぱり税理士さんの言ったことを実践しとけばよかった」と認識できないほうなんで、これをイタイ思いをする前にクライアントに認識させるには、本当に人間的信頼感みたいなもんが必要なんではないかな・・・と思います。さらに、このステップ6が報酬と結びつくということは、ある程度改善策を「今」とることが企業にとってお得であることを説明しないといけないでしょうから、そのあたりのタイミングなども重要ではないかな・・とふと「商売人」的発想で考えてしまいました。

この arnase さんの6月5日のエントリーを読んで、一昨日の私の記事とも関連することでおおいに参考になったのは、やはり「会計士の不正発見」という場合の「不正とは何か」をまず議論する必要があるのではないか?という疑問でした。たしかに、これは大きな問題だと思います。財務報告に関連する不正報告ということであれば、まだ不正発見ということについて、「不正の定義」もできるかもしれませんが、会計士協会や金融庁が公認会計士による監査に義務付けようと(有価証券報告書への記載ということで)考えているのは、もっと広い意味で企業の内部統制や内部監査の対象となる「不正」ということを念頭に置いているわけです。そうしますと、ここにいう不正というのは、たとえば私法上で取引が無効となるような違法行為を含むのか、行政上での取締対象行為上における違法行為を含むのか、それとも刑事罰を含むようないわゆる犯罪性のある違法行為に限るのか、など、そのあたりの定義付けが必ず議論されることになりますね。内部統制の目的といっても、コンプライアンス行動の推進やら、企業行動の効率性というものもありますから、広く考えれば私法上での違法行為をなるべく減少させることまでも「不正発見」に含むことが可能なわけですが、でもそうなると会計士さんに法的な解釈まで要求することになり、過剰な負担になることは明らかでしょう。現実論として、今後の議論というのが待たれるところでしょうし、ひょっとするとすでに始まっているのかもしれません。

期待過剰なところから始まって、できないとなると、最初の信頼すら失ってしまう、という危惧を現役の会計士さんが実際に抱いておられるのを読んでみて、会計士さん方の急速な環境変化への期待と不安みたいなものを感じました。

6月 6, 2005 企業会計 |

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コメント

toshiさんこんにちは。

>私法上で取引が無効となるような違法行為を含むのか、行政上での取締対象行為上における違法行為を含むのか、それとも刑事罰を含むようないわゆる犯罪性のある違法行為に限るのか、など、そのあたりの定義付け

私の文章では言葉が足りませんでこの文言に胸のつっかえがスッとおりる気が致しました。経営者の多くは「違法行為」といえば「犯罪性のある違法行為とその他」という区別しかしていないという印象があります。監査する側とされる側がそれぞれ把握している「違法行為」の定義のズレがコミュニケーション不全を生むことがよくあります。経営者側の更に悪質度の高い過剰防衛をよぶことも。

投稿: bun | 2005年6月 6日 (月) 09時32分

toshiさん>
コメントありがとうございました。
報酬の件ですが、これは、私のやり方ですので(親方のやり方を引き継いでおりますが)。
ただ、どの額が適正かというとわかりません。サービスなので、それを受ける側の気持ち次第ということになります。レベルの低い話ですが。
監査の場合は、法律で強制されるから仕方なしという消極的な受け手、監査を通じて、リスクを低減したいという積極的な受け手と様々です。
toshiさんのエントリーにもありますが、「人間的信頼感みたいなもんが必要なんではないかな・・・」に尽きます。
監査する会計士も、この会社をよくしたい、受ける側も監査を通じて改善をしたいと相互に認識することが重要と思います。
そうなれば、会計士にとっても満足のいく報酬が受取れるのではと思います。
偉そうに、Stepで報酬への反映過程を書きました。でも、うまくいかないことも多々あります。お金目当てではありませんが、このStepで努力し、監査する側、される側とでいい関係が築ければこれに越したことはないと思っています。
情緒的な文章になり申し訳ございません。

投稿: arnese | 2005年6月 6日 (月) 12時41分

>bunさん
どうもコメントありがとうです。いえいえ、最初に言いたいことをおっしゃっていただいたのはbunさんなんで、このあたりの感覚は実際に経営者とのおつきあいの多いbunさんの意見をもうすこし詳しく聞いてみたいものです。続編を期待しています。
>arnaseさん
アメリカでの内部統制制度見直しの報告会でも経営者と監査人との接触は「内部統制と財務報告の改善にとって有益であり、監査人の独立性規定違反とはならない」ということが確認されているようですが、これも人間的信頼というか、企業価値の定性分析のためには不可欠というか、なんか「基本に立ち返る」みたいなとこがありますよね。アメリカの制度の反省点を先取りしたような制度構築を目指すべきではないでしょうかね。

投稿: toshi | 2005年6月 6日 (月) 18時13分

>toshiさん
toshiさんのプロフィール拝見させていただきました。実は、私も同じ大学出身です。経済学部ですが。
もともと大阪に住んでいましたが、親方の誘いで東京へ。東京出身の奥さんと結婚しました。
彼女、大阪ののりがあわないようで、私もずっと東京での生活になりそうです。
でも私、大阪弁が抜けず、東京の人には、まじめな話をしていても、たまに笑いが・・・
エントリーに関係ないコメントお許しください。

投稿: arnese | 2005年6月 6日 (月) 22時53分

いえいえエントリーに関係のないコメントでも大歓迎です。
私の妻も東京出身ですが、コテコテの堺の人間になってしまいました。(笑)
でも自宅では彼女が絶対者なんで、私も子供たちもみな「標準語」です。したがって、彼女以外は家族全員バイリンガルです。

投稿: toshi | 2005年6月 8日 (水) 02時42分

>このあたりの感覚は実際に経営者とのおつきあいの多いbunさんの意見をもうすこし詳しく聞いてみたいものです。続編を期待しています。

ありがとうございます。心強くて仕方がありません。私はエラそうで大変恐縮なのですがプロとは世間で何となくイメージされているような何でもできる人のことでは全くなくて、逆に何が絶対にできないかを峻別できる人のことだと思っていますし、何ができないかがきれいにわかっていてそこを絶対に譲らない人でないといい制度やルールは作れないとつくづく思っています。これ、プログラムを書くことにもそのまま当てはまるのです。いいプログラマは自分には、そしてコンピュータには何ができないかを完璧にわかっていてできるだけ「できない」ということを言わないように心がけてはいてもできないことをできるとは絶対に言いません。

ですから今回会計士協会が、「できる」ということを(政治的に譲ってみせる素振りにすぎないにしても)言い出したことが深刻な後退である可能性を心より憂慮していて残念で残念で残念で仕方がなかったのでした。これができないということが広く認知されるまで言い続けたいしそう動きたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

投稿: bun | 2005年6月 8日 (水) 13時04分

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