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2005年7月31日 (日)

カネボウの粉飾決算と監査役

旧経営陣3名の逮捕や、監査法人への強制捜査など、カネボウの粉飾決算に関する記事が大きく取り上げられています。

いろいろと新聞記事を読んでいて、連結決算から赤字子会社をはずしたり、買戻し条件で取引先に押し付け販売をしたり、激安カネボウ商品を撤収するための架空費用を還流させたりと、さまざまな債務圧縮、裏金工作がなされており、1998年から2000年ころにかけて、こういった異常取引について外部監査人が重点的に監査をできなかったのか、疑問を抱いてしまいます。ただ、全体の数字からみて、こういった異常が発見されたとしても、その金額が小さい場合には財務諸表に及ぼす影響は少ないわけですから精査する必要はなかったのかもしれませんし、使途がわからない金銭がみつかったとしても、その金銭に対価性があって、なんらかの費用性が認められてしまえば、財務諸表の信頼性は損なわれないわけですから、やはり財務の信頼性には問題はなかったと言えるのかもしれませんし、このあたりの会計監査人の責任(期待ギャップ)については、専門家の方々の忌憚のない反論というかご意見をお聞きしてみたいものです。1998年といえば、まだ7年ほど前のことではありますが、この7年で会計監査に関する考え方は大きく変わってきているでしょうし、「1998年」という時代の水準で判断する必要はあると思います。

カネボウでは「取締役会もほとんど機能していなかった」と報道されています。事実上、トップ3名ほどで重要な案件が処理されていたということで、取締役会は名目化していた、とのこと。もちろん、このような名目化は現在でも上場企業にみられるところだと思いますが、こういった場合、果たして監査役会は機能していなかったのでしょうか。

私が社外監査役を務める会社では、この7月、常勤の方含め監査役3名によって、臨時取締役会を招集してもらい、内部監査人出席のもと、代表者以下「取締役会自体の内部統制システム」を検討してもらうことを要望しました。ここ一年での取締役会上程事項に遺漏がないか、本来取締役会でどこまで審議をはかるべきか、審議をはかるべきものを専務会で決めてしまっていないか、そういった問題点を取締役会で審議してもらうことが目的でした。

私自身、取締役会に上程すべき問題について明確な基準を設けることや、上程問題について、実質的な審議が可能となるように問題を整理して上程すること、過度に専務会で結論を出さないことなど、意見を述べさせてもらい、今後の取締役会の意思形成プロセスを公明正大に記録することを納得していただきました。もちろん、当社の代表者は理論家肌の方なので、監査役の意見に対してはかなり強く反論をされました。こちらも具体例を挙げてひとつひとつ説明をして、6割程度の要望については具体化を約束されました。

監査役から臨時役員会の要望があるなど、社長にとっては気の進まない話かもしれません。しかし、各プロジェクト本部長を兼務する取締役の方々と代表者や専務との関係を考慮するならば、こういったシステム監視は監査役しかできない企業も多いと思いますし、カネボウあたりであっても、こういった取締役会の形骸化について、なぜ是正するような行動にでなかったのであろうか、と疑問を抱いてしまいます。もちろん、取締役会が十分機能していれば粉飾を防止できたとまで言うつもりはありません。ただ、内部統制システムの限界として「社内ぐるみの犯罪には無力である」ということが言われます。内部統制が人間の牽制システムに依存するものである以上は、重要な財務情報を取締役会でもっと共有できていれば、たとえイエスマンが多い役員会であったとしても、おそらく牽制機能はもっと働いたのではないか、と推測されます。

西武鉄道、コクドの場合には、やはり社外監査役がキーマンとなりました。一般の不正発見とちがい、トップの絡む不正については今後も監査役が大きな役割をもち続けると思いますし、その企業のコンプライアンスを支えるのは監査役制度の有効性だと再認識した次第です。

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2005年7月29日 (金)

夢真HDの請求却下 東京地裁

日経ネット記事によりますと、夢真の株式分割差止め仮処分申請が却下され、日本技術開発の株式分割を認容する鹿子木決定が出された、とのことです。

第1回審尋期日と第2回期日の間に、M&Aで著名な法律事務所の代理人より追加仮処分が申請されたことや、代表訴訟リスクの高いほうから、容易に不服申立放棄の手続きがとられていることなどから、おおよそ今回の決定予想はつきました。しかし、私は裁判所の要請で双方に不服申立放棄の手続きがとられた以上、鹿子木決定はほかの買収防衛策には極力影響を与えないような理由で申請を却下する、と予想していましたが、どうもそうではないようなネット記事になっていますね。。。ペガサスのぬし さんの予想のほうが的中しているような感じですかね。

さて、今後日本技術開発、夢真の動きが第2ラウンドとして始まるわけですが、ともかく今回の決定についても詳しく検討してみたいので、また早期に決定全文を入手したいと思います。(しかしあいかわらず、夢真さんのリリースは強気ですね。)

(追記です)

まだ決定文も入手しないうちに、いきなり日本技術開発さんのHPに第2ラウンドのリリース(新株予約権発行のお知らせ)が掲載されております。土曜日の朝刊はおそらく、このリリースまでフォローできないんじゃないでしょうか。すでに東京地裁の決定を予測したうえで準備されていたのかもしれません。また、ゆっくり検討してみたいと思います。

ちなみに、厚生年金基金連合会の矢野専務理事のコメント(朝日ネット) や、読売ネット記事によりますと、金融庁が分割株式のTOBを容認したことが今回の決定に重要な事情となった、とのことだそうです。(まだ決定文を読んでおりませんので真偽は定かではありませんが)そのあたりの趣旨は7月22日金曜日のエントリー後半部分にも書かせていただきましたので、もしお時間がございましたら、ご参照ください。

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公認不正検査士(ACFE)会合

第一回のACFE(公認不正検査士)のアドバイザリー・コミッティーに出席するため、東京まで行ってきました。ご縁があって、関西代表みたいな感じで委員に就任させていただいたのですが、金融庁企業会計審議会内部統制部会長の八田教授や、藤沼公認会計士協会会長、「ゴーログ」の木村剛さんをはじめ、よく雑誌や著書などでお名前を拝見する方ばかりで、同業者といえば安富慶応大学教授だけ。懇親会では自民党のセンセイもご挨拶に登場。ん?なんか私だけ「場違い」のような感じもいたしましたが、ここで議論したり、勉強させていただいた知識をなんとか大阪へ持ち帰ろうと思っておりますし、債権者破産申立事件における管財人業務の経験なども、不正検査のお役に立てばと思い、守秘義務に反しない程度でご披露させていただきました。なお、日本における公認不正検査士の試験ですが、本年11月に第一回の試験が開催されます。木村さんあたりも、お話をお聞きしておりますと内部統制、内部監査に関してはたいへん造詣が深く、そういった識者の方々の豊富な不正防止のためのノウハウが今後広く日本に浸透するためにも、東京だけでなく全国に「不正検査士」資格を持った方が増えるといいなあ・・と強く感じた次第です。

「金融庁」と「経済産業省」が同時に出した「内部統制指針」の関係なども、八田教授に直接伺うことができ、たいへん貴重なご意見を頂戴できました。産業界に納得してもらうための方策や、企業規模によって統制システムの構築方法を異にする方策など、かなり実務への浸透度を高めるための苦労というものも、実際にお聞きしてみないとわかりませんね。

(しかし、山手線というのはテレビCMを社内で放映してはるんですね。普段、東京地裁と東京駅をタクシーでしか往復しないもんで、はじめて見てビックリしました。。。)

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2005年7月27日 (水)

夢真HD 地裁が最終判断?

いま日本技術開発のHPに掲載されているのを見たのですが

夢真側が取締役の職務執行停止仮処分申立を取下げ、株式分割差止仮処分事件については、当事者双方が不服申立権を事前に放棄した、とのことです。

取下げの点については、昨日の第2回審尋期日において、裁判所から取下げ要請がなされたようで、決定は8月1日あたりとされています。(毎日ネット)一昨日のエントリーで、裁判所から促されて追加されたのでは・・・と推測しておりましたが、まったく違いました。しかし、この仮処分が認められるとすれば応用範囲が広いと期待していただけに残念です。

ともあれ、鹿子木裁判長の株式分割差止仮処分決定がこの事件の司法における最終判断になるということのようです。一般投資家への影響ということで、早期解決を図る趣旨でしょうか。双方不服申立権の放棄というのは異例ですね。なんか仲裁裁定のようです。

ただ、分割権利付き株式の最終売買日が迫っていること、裁判所の要請で夢真側の取締役職務執行停止申立事件が取下げられたこと、そして(残った株式分割差止め仮処分事件に関して)当事者双方が株主代表訴訟のリスクも勘案したうえで、法律上の権利である「不服申立権」を(誰の要請によるものかは不明ですが)自ら放棄したこと(つまり双方の不服申立放棄に向かってのインセンティブ)などを合わせ考えますと、なんとなく先が見えてきたような気もしますが・・・・

M&Aの素人弁護士がひとつだけ予測するならば、結論がどっちに転ぶにせよ、ほかの防衛策導入企業にもっとも影響の少ない(つまり、本事件固有の争点をもって)決定理由が書かれるものと思います。

今後の報道やりリースを待ちたいと思います。

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ワールドのMBO(その2)

日経ネットニュースに以下のとおり、東証社長のコメントがあります。

東証社長「株式非公開化、一般株主の理解を」

どうやら、上場企業が「退場」する場合には、一般株主へ理解を求めるための説明責任があるという趣旨のコメントのようです。

私は人並み程度の株取引しかしませんし、ファイナンスについてはまったくの素人ですので、ぜひとも教えていただきたいのですが、この東証社長がおっしゃっている「一般株主への説明責任」というものはどんなもんなんでしょうかね?

たしか上場企業が過度の防衛策を導入することは好ましくないということで、そういった防衛策をとる場合は上場廃止もありうる、と警告されていたと思うのですが。つまり、経営者が保身したければ「さっさと退場しろ」ということの趣旨だと考えられるのですが、今度はいざ好調企業がさっさと退場しかけると「ちょっと待て、きちんと株主に退場の理由を説明しろ」とおっしゃるのはよく理解できません。説明責任とありますが、この「責任」はどっからくるのでしょうか。借金を棒引きにして退場するならともかく、きちんと時価の2割増し価格でTOBをかけているわけですから、それ以上になにを説明せよ、というのでしょうか。むしろ今日あたりは普段の9倍の取引高でこれから買いたいと希望している株主の方がたくさんいらっしゃるわけで、退場の理由説明というのがどうもナンセンスに感じられます。もし、この説明責任というものが「いままでお世話になった株主様に対する道義的な責任ってもんがあるでしょ」といった社会道徳的発想のものでしたら、「そんなこと子供でもわかるわよ。あんたに言われる筋合いじゃないでしょ」で終わってしまいそうですし。。

これから公開したいと申請している企業に対して、「もし、退場するときには説明義務がありますよ」と事前に説明をして、その企業から承認を受けているのであればわかります。それが上場企業のルールなんだと認識できますし。しかし、いままでそんな説明をしていなかったのに、いきなり「君には説明責任がある」と警告されても、どうも腑に落ちません。じゃあ、説明するのが嫌なんで保身のための防衛策を認めてくださいませ、と言いたくなりませんかね。

まったく法律論とは無関係ですが、どうも私には理解困難なコメントでしたので、そういった「説明責任」や「退場の際に一般株主の理解を得る」必要性について、やさしい解説がありましたら教えてください。

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2005年7月26日 (火)

夢真HDの株式発行中止命令(続報)

7月25日の夢真リリースによりますと、新株発行差止仮処分とは別に(追加して、ということだろうと思いますが)取締役職務執行停止の仮処分命令を申し立てた、そうです。

私は最初から「こっちかな??」と推測しておりましたが自信がありませんでしたので、4日ほど前のエントリー題名にも「株式分割中止命令」と記しておりました。被保全権利が新株発行差止請求権ならば、以前の「発行差止仮処分」との関係もすっきりしていましたが、どうも(株主もしくは買付希望者による)「株式分割決議無効確認請求権」ということであれば、取締役による株式分割手続きの執行中止命令のほうがしっくりきます。おそらく裁判所から事前連絡があって、「補正もしくは追加申請されたらどうでしょうか」と打診があったのではないでしょうか。私はけっこう仮処分申立が好きなほうなんで、命令内容を自分なりに自由に創作して申立たりするんですが、あとから担当裁判官から連絡がはいって、修正要請に応じたりしますね。

さて、この取締役の職務執行停止命令ですが、こうなると私も俄然、司法判断の帰趨に注目します。といいますのも、このような取締役の職務執行停止命令がもし発動されるとしたら、その応用範囲というものが広がるからです。今後、敵対的買収事例において、社外取締役や社外監査役が防衛策発動の際に「取締役会」や「特別委員会」で活躍する場面が想定されておりますが、そういった委員会に、それまで何もしてこなかった「社外取締役」らの出席をとめたり、そのような役員が参加して決議された手続きを中止させる手段となりうるからです。私の予想では今後、防衛策発動場面における司法の関与はプロセス審査に限られるものと思いますので、そういった社外取締役、社外監査役が企業価値判断を行う場面において、その職務を止める手段がないか、と考えておりました。

この夢真の事例では、いったいどのような利害関係人が取締役の職務執行停止を求めることができるのか、また取締役会決議の効力をどのような事実認定方法で審査するのか、その判断手法が気になります。今後、司法判断をフォローしていくうえでたいへん興味のあるところです。

(追記 7月26日)

日本技術開発からの本日付けリリースによると、

分割株式の発行差止め仮処分とは別に(追加して)、取締役6名と会社そのものを債務者(相手方)として分割手続きの執行停止仮処分を(夢真側が)申し立てたそうです。

また、夢真は(今回も)株主としての立場で仮処分申立を行っている、とのことですから、被保全権利は商法272条の「6ヶ月前から株を保有している株主による取締役の違法行為差止請求権」と考えるのが確実ですね。無効な株式分割決議に基づく分割手続きは違法であるから、その職務執行を停止させる、というものでしょうか。ただそうなると「会社に回復すべからざる損害」というのは、いったい何でしょうかね?買収防衛策としての株式分割でしょうから、夢真側の「損害」というのはまだわかる気がするのですが、日本技術開発における株主の「回復困難な損害」というもののイメージがわきません。

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2005年7月25日 (月)

ワールド 株式非公開へ

日経の夕刊一面に「ワールド、株式非公開に 経営陣がMBO」なる記事が掲載されていました。東京、大阪の両証券取引所に上場しているワールドとしては経営が絶好調で、とりわけ当面の資金調達の必要性もないために「株式を上場している意味がない」として、受け皿会社を利用したTOBによる上場廃止の道を選択されるそうです。

株式の非公開化は「究極の敵対的買収への防衛策」と説明されておりますが、いまホットな話題である「M&A防衛策」と「内部統制」の行き着く先は、ゴーイングプライベートだと私は考えておりますので、今回のワールドの決断はどっちかというと「敵対的防衛策としての戦略」というよりも、ユニクロなどへの対抗策としての「スピード経営戦略」のほうが重視されているのではないか・・・と勝手に推測しています。

内部統制の目的というのは、経営の効率性向上やリスク管理というものが重要なカテゴリーでありますので、これだけ「敵対的M&A防衛策」やら「モノ言う株主の存在」やら、「上場企業の社外取締役導入の義務化」などが叫ばれますと、現経営陣の経営判断に自信のある企業にとっては、どうしても買収リスクや代表訴訟リスクなどは、企業の収益向上の妨げとなりますから、これらのリスク回避は検討に値しますし、また経営判断などに社外役員を導入すれば経営のスピードが下がる、ということであれば効率性を向上させるためには、そういった金融庁の指導を回避することも「経営の効率性」という内部統制の重要な目的に適う、という解釈も成り立ちます。理論的には、新会社法のもとでは非公開会社にすれば、大会社であっても取締役会さえ不要なわけです。したがいまして、公開企業にあっての「内部統制システムの究極化」は企業の非公開化といっても過言ではないと考えられます。(一般投資家という存在がないわけですから、「内部統制システムの構築義務」といったものがあるとしても、それは企業自身や企業債権者、消費者などのステークホルダー向けのものであればいいわけでして、法的義務といっても非常にスリム化されますよね)

もちろん、非公開化というだけでは、たんに「上場が廃止される」というだけですから、さらに有価証券報告書などの提出免除のための「継続開示義務の消滅化手続き」も必要となり、これがけっこうムズカシイものと思われますが、本当の意味のゴーイングプライベートは、この「非公開化」プラス「継続開示義務の中断」まで完了することでして、ここに至って初めて「究極の内部統制システム実現のための礎」が築かれることになると思われます。資金調達については子会社だけを公開すれば足りるでしょうし、また非公開化した企業の再公開化もそれほど困難とは言われていませんし。

結果の当否は将来の課題でしょうが、先日のユニクロ社長交代劇をみていて、あれだけ大きな企業であっても、大株主でありかつ経営責任者の存在する企業というものの経営判断の迅速性というものには本当に驚きました。今後、新会社法のもとでは、非公開企業であれば、株主総会の決定権限が限定されないことと、定款による機関権限分配の裁量が広く認められるわけですから、経営判断にスピードを要求される業種においてはかなり魅力的な選択です。企業防衛という視点からだけでなく、経営の効率性、内部統制に伴う費用負担の低減、企業のリスク管理という面からも、MBOの条件が整う場合には、非公開化の道を検討する公開企業はほかにも出てくるのように推測します。

(追記です)

ワールドから公開買付に関するリリースが出ています。

公開買付の賛同に関するお知らせ

現社長個人が100%出資する受け皿会社が全株取得を目指すそうです。受け皿会社が産活法の認可を受けているのでTOB終了後も現会社法のもとでも、現金対価での株式取得ができるようです。本来ならば残り株も公開買付によらなければならないところですが、50%を超える株式を取得している株主が、一社のみにて残り株を買い進める場合には、例外的措置として公開買付によらずとも相対取引にて株を取得することが可能ですので、そういったスキームを用いているものと思われます。また、株主が25名以下になるまで買い進めないと上場が廃止されても継続開示義務免除の効果が得られませんので、業務の効率化を進めるためにも現金対価での買取は必須でしょうね。

それと、このMBOには佐山さんの会社が動いていらっしゃるんですね。新しいファンドの手法になるのかもしれません。そういった意味でも注目しておく必要がありそうです。

(さらに追記です・・・)

今朝の日経の社長記者会見記事を読んでおりますと、どうも私のエントリーに欠落していた視点があったようです。単に企業情報開示義務の免除というものを、会社の経費負担軽減、と捉えておりましたが、「株主へ企業価値判断のために企業情報を開示してしまうと、大切な企業戦略が漏洩してしまうおそれが出てくるので、これを防止するため」という視点も重要なポイントのようです。なるほど、こういった企業戦略の考え方もあるんですね。

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2005年7月23日 (土)

内部統制監査に産業界が反発?

いつも勉強させていただいている 法務の国ろじゃあさんのブログに、新会社法解説雑誌のことがエントリーされておりまして、この久保利さんの記事は是非読んでおきたい、と思っておりますが、同時に粉飾列島ー会計はアートかー さんのブログで「日経金融新聞」の気になる記事をみつけました。

この「内部統制監査」の問題は、金融庁が投資家保護を目的に、財務信頼性に関する監査を中心として会計監査人へ大きな働きを期待するシステムを作り、経済産業省がいわゆるコンプライアンス経営、企業債権者のための資産保全を目的に、会計監査人と監査役、内部監査人との協働に期待するシステムを作るといった「棲み分け」が成り立っているものと私は認識しておりました。

ところが、どうもこの日経金融の記事からしますと、内部統制監査に要する費用が膨大になることを懸念した産業界から批判が出て、内部統制全般の監査について、「監査役」監査が前面に出るような案を経済産業省が持ち出した、とありますから、「棲み分け」ということでもないようですし、金融庁と二人三脚で頑張ってきた会計士協会としても、ワーキンググループから脱退する気持ちもわかります。報酬を獲得する機会を失ううえに、新会社法のもとでは機関としての責任だけは真正面から受ける立場になるわけですし、たまったものではありませんね。

久保利さんが述べているように、「コンプライアンス経営、リスク管理にはコストがかかる、いやコストをかけよ」という認識が、まだまだ日本の企業トップの間では概ね低いものと思います。私自身、それほど大きな規模ではない上場企業2社だけですが、社外監査役、コンプライアンス委員会委員という仕事をしておりましても、内部統制システムへの提案というのが取締役会で前向きに議論されることがあまり多くありませんし、議題としても後回しになってしまいます。(おそらくどこでも同じではないでしょうか?)いや、語弊があるかもしれませんが、内部統制システムへお金をかけるかどうかは、トップの一存にあると言っても過言ではないと思います。

たとえ常勤の監査役さんでも、自社のITによる情報伝達システムの仕組みから試査の重点項目を割り出したり、知的財産(企業機密)の保管リスクを評価することはかなり難しく、監査役が責任をもって「外部委託」すれば足りる、という問題ではないと思います。

アメリカでも、最近2003年のサーベンス・オクスレー法(企業改革法)について、「あれは企業に過度の負担を強いるものであり、見直しが必要だ」とオクスレー下院議員自身が認めているように、企業負担とコンプアイアンス経営との「バランス」を模索する必要はあろうかと思いますが、現実社会の「監査役」と「会計監査人」との役割分担を考えた場合、内部統制システム監視の担い手を「監査役」に大きく依存することは現実的ではないと思います。

日経金融新聞は普段読んでおりませんので、気をつけておりませんでしたが、おそらくこの問題は企業会計審議会や経済産業省の審議会あたりの動向とも絡んで大きな話題になっていくものと推測します。

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2005年7月22日 (金)

ヤメ検弁護士さんも超高額所得者の時代到来?

今年10月1日から、裁判員制度の施行を見越して、検察庁では「裁判員制度」専門部を設立するそうです。

捜査から公判まで一貫してこの「専門部」が担当する、ということですから、いわば裁判員制度を導入する刑事裁判のスペシャリストを養成するというわけですね。これはいままでのどんなヤメ検さんの肩書きよりも威力がありますね。いままででしたら「元特捜検事」とか「元○○高検検事長」などというのがけっこう迫力がありましたが、捜査から公判までを「裁判員制度」に向けての専門技能を体得するわけですから、もし重要事件で弁護人にしたいのは、こういった専門部に在籍しておられた「ヤメ検」さんでしょう。超高額の報酬を払ってでも、こんな弁護士さんに依頼したいと考える方や企業も多いんじゃないでしょうか。

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夢真HD、株式分割中止命令申立へ

夢真が、7月21日の夕方、東京地裁第8民事部(もう、おなじみの商事専門部です)に日本技術開発による株式分割に対して、その手続き差止の仮処分命令を申請した、とのことです。(夢真のWEBページに掲載されていた「申立の趣旨、申立理由骨子」だけの情報しかないので、またなにか勘違いがありましたら、お許しください。)

まず、仮処分命令申立ですから、夢真側に「被保全権利(仮処分命令によって、守られるべき夢真側の利益)」がないといけないわけですが、これは「株主による商法上の不公正発行に対する差止請求権」ということなんでしょうか、それとも「取締役会決議無効確認請求権」ということなんでしょうか。後日、取締役会決議無効確認の訴えを提起する予定である、と述べておられますから、おそらく無効確認請求のようなものかな、と考えておりますが、日経の記事には「不公正発行を禁じる商法の規定を類推適用して」などと書かれているので、なんとなく自信がありません。いずれにしましても、私は以前のエントリーで「110円に買付価格を下げて、どうして仮処分申立ができるんだろう、との疑問を記しておりましたが、申立側(債権者といいます)の工夫があるようです。

「保全の必要性」という点については、無効確認訴訟の判決を待っていては、夢真に救済困難な損害が発生するおそれがある、ということで損害拡大を防止するための緊急措置が認められるべきである、というものでしょう。

ともかく、本当に司法の場に持ち込まれてしまいましたね。また、ライブドア、ニレコに続く商事部裁判官による短期決戦の決定内容に関心が集まることになりそうです。

(「続き」の下のほうに、7月22日午後 追記 があります・・・・)

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2005年7月21日 (木)

新しい監査方針とコーポレートガバナンス

7月20日、金融庁の企業会計審議会監査部会より

監査基準及び中間監査基準の改訂並びに監査に関する品質管理基準の設定について(公開草案)  が発表されました。

いままでのリスクアプローチの方法では、昨今の粉飾決算や不正経理などの大型かつ悪質な経理操作を監査人が発見できない、ということから、新たな監査基準を導入する、というもののようです。よく拝読させていただいている何名かの会計士さんのブログで、以前よく質問させていただいたのですが、不正発見のための監査を導入すると言っても、別にこれまでのような財務情報に関わる監査(内部統制システム運用状況の監査を含めて)以外の画期的な「不正発見」方法を採り入れる、というものではなく、監査人の品質保証(つまり、担当監査人の監査が適正なものかどうか、を別の監査人や監査法人もしくは金融庁が監査する)を通じて、不正リスク発見の可能性を高めることが主たる目的のようです。

内部統制や内部監査の勉強をしておりますと、「内部統制および監査の限界」というものがかならず解説されており、「結局のところ、会社ぐるみで不正を隠蔽されてしまうと、内部統制、内部監査の機能は限界となり、発見がむずかしくなる」とされています。「人間はひとりだと悪さをする弱い動物だが、二人以上で仕事をすれば、かならずひとりは咎める人もいるだろうし、また自己抑制心も働く」という性悪説と性善説の折衷案に立脚した統制システムでしょうから、二人以上がみんなグルになってしまうと、このシステムは成り立たないわけです。そして昨今の不正経理問題というのは、ほとんどのケースがトップから主たる経営陣すべてが隠蔽工作に絡んでいる、というものでして、そういったケースで会計監査人の見逃し、ということを非難するのも、先の内部統制システムの限界論からすると、少し同情的になってしまいます。どうも、最近の世間の風潮は不正経理が発覚すると、担当した会計監査人が結果責任を問われるようなイメージに思えるのですが、実はリスクアプローチを基本とした実証手続きの流れをみますと、ある程度の努力義務を尽くせば会計監査人の責任は回避される、というのが適切な表現ではないかな・・・と思うのであります。(もし結果責任を問うのが適切だとするならば、企業は会計監査人を常駐させ、監査法人に莫大な報酬を支払わなければならないでしょう)

そこで、これは私の試論でありますが、こういったリスクアプローチによる不正発覚防止措置の実効性を高めるためにも、社外取締役、社外監査役は今後重要な役割を付与されるのではないでしょうか。会社の戦略面、経営面における重要な助言を社外役員に期待するというだけでなく、また単なる独断社長の「お目付け役」というものでもなく、「役員レベルでの悪事隠蔽のおそれのないことを担保する」役割です。おそらく社外取締役、社外監査役のなかには、今後経理や監査に精通した人に就任してもらう機会も多くなると思います。こういった社外役員を利用して、会社ぐるみでの不正経理情報や企業継続に関する情報を会計監査人が入手しうる可能性を確保しておくことも、一考に値するのではないでしょうか。

たしかに、社外役員に不正経理操作や企業継続関連情報が行き届かない、というリスクもあるでしょうが、だからこそ監査に関する知識と経験を有する社外役員の就任が期待されるところでありますし、そういった隠蔽を防止するためのコーポレートガバナンスということが、内部統制システム評価として非常に高い得点を獲得することができ、結果としては監査に要する費用の低減や、投資家に対するガバナンス評価も高まるものと思います。

この監査人の品質保証問題は、各論として「いったい誰が粉飾決算を見逃した責任を負担するのか」とか「会社の機密情報がこれまで以上に漏洩する可能性が高まるのではないか」など面白いテーマがたくさんあるのですが、きょうは総論までとさせていただきます。

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2005年7月20日 (水)

夢真HDのTOB実施(その3)

夢真HDより、7月20日開始予定のTOB(被対象会社は日本技術開発)に関する条件と、日本技術開発の買収防衛策(株式分割と発行予定株数の増加)に対する対応について7月19日、リリースされています。予想どおり、19日までに金融庁(関東財務局)からは、当初夢真が希望していた条件付買付価格、条件付撤回の是非に関する回答はなかったようで、ただし強行突破はせずに、買付予定株式総数はそのままにしておいて、とりあえず一株110円として買付を開始するそうです。買付条件の変更といっても、途中での引き下げは原則としてできませんが、引き上げについては(応募株主全員に同じ条件ということであれば)認められます。7月19日現在の日本技術開発の株価が550円前後ですが、こういったケースだと株価にはどのような影響が出るんでしょうかね?日本技術開発が株式分割を撤回すれば550円に買付価格を引き上げるし、株式分割が実施された場合には、買付予定株数を5倍まで引き上げて応募者全員に応募株数の5倍まで買取を保証する、というものらしいので、それほど影響はないのでしょうかね?(よくわかりません・・・)

(7月20日午前11時 追記あり)

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2005年7月19日 (火)

社外監査役とゲーム理論

内部統制システム構築の目的のひとつに「企業のリスク管理」というものがありますが、社内もしくは社外で発生しうるリスクを低減もしくは回避させるために、最適効用を発生させる意思行動はなにか、ということ模索するについて、「ゲーム理論」の導入を検討しています。

ゲーム理論といいましても、ミクロ経済学の素人である法律家が考えられる範囲のことですから、ほんの基本的なところでありますが、究極の目的は「内部統制システム構築義務を尽くしているかどうか」を裁判所に立証できる程度のものであることを念頭に置いていますので、そもそも裁判官に理解可能な範囲でのゲーム理論であればいいと思っています。監査役は構築されたシステムの監視が目的ということなので、本来的には取締役会が、構築すべきだとは思いますが。

管理項目ごとに、非協力ゲームの標準型もしくは展開型で利得行列や展開図を作っていくわけですが、利得項目として何を採用するか、効用関数をどのように設定するか、こちらと相手の情報共有状態は「完備か不完備か」などという点については、これはもう各企業の常勤取締役、常勤監査役さん方の経験と勘を情報とせざるをえないわけで、社外役員と社内役員との役割分担がはっきりしている「共同作業」となります。ただ、このゲーム理論というのはトリガー戦略や繰り返し戦略など、「人間臭い」部分も取り入れられていますが、基本にあるのは「常に合理的な行動をとる人間」が前提となっているようで、現実には最適とされる行動が現実の世界でももっとも適切な行動となる結果は期待できないでしょうし、ゲームと現実を錯覚してしまってもいけませんね。ただ、与えられた諸条件のなかで、会社の意思決定の合理性を担保するためのひとつの「手段」にはなりうるだろうし、また効用関数の設定計算式以外は、あまり細かい経済数学の知識も必要ではないと(すくなくとも監査役に必要なレベルでは)思われますので、アレンジ次第では善管注意義務履行の立証方法としては利用可能だと思います。

いまは社外監査役のリスク管理業務への応用としての検討ですが、JV決定判断や企業買収防衛時の防衛策発動判断、企業再編などの重要な経営リスクの検討にあたって、社外取締役と社内取締役とが共同で判断決定プロセスのための道具として利用すれば、会社法上の「経営判断の原則」を立証するための証拠としても使えるのではないでしょうか。もちろん、重要な意思決定は取締役会でのさまざまな議論のうえで成り立つものですから、サイコロを振るようにゲーム理論上のシステムで決めるというわけでもないでしょうが、ひとつの「確かめ算」的な使用には一考の価値があると思います。判断過程の適正性が司法審査の対象になる、ということであれば、なおさらこういったアプローチを取締役が共有することは「社外取締役が何をした、常勤取締役が何をした」とはっきり判断プロセスを具体的に主張することができますし、けっこう重要な気がします。

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2005年7月17日 (日)

夢真HDのTOB実施(その2)

株式会社夢真ホールディングスが、日本技術開発株式会社を対象者とする株式公開買付(いわゆるTOB)を行うこのとの是非(もしくは可否)という問題が、「敵対的買収と買収防衛策」の話題として採り上げられつつあります。

司法判断突入か?といった見出しでいろいろとニュースになっておりますが、司法判断突入のまえに問題となりそうなのが、関東財務局(もしくは事務委託元の金融庁)がなんらかの見解を出すか?ということのようです。夢真HDは7月20日に公開買付を開始する予定だそうですが(16日の日経朝刊)、夢真側の法律顧問の弁護士さんより、関東財務局宛に「7月15日付け上申書」が提出されており、(私がブログを興味深く拝読させていただいている弁護士さんのお名前もありますが、あまり気にしないで話を進めます・・・)当局側の公式見解をなんとか20日までに引き出して有利に展開したい、もしそれが無理であっても、そのままスッと受理していただきたい、との意向があるようです。したがいまして、まず夢真側の思惑通り、買付対象会社によって「株式分割」がTOB期間中になされることを条件とする買付価格の期間中変更(希釈化防止規定)、および買付期間中の買付撤回の可否に関する当局の見解が出されるかどうか、がまず週明けの争点になりそうです。今日は、この夢真HDの法律顧問弁護士の方の法律判断に対する私の(専門外弁護士としての)感想だけを述べたいと思います。

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2005年7月16日 (土)

内部統制構築と監査役とのかかわり

7月13日に経済産業省と金融庁(企業会計審議会内部統制部会)より、同時に内部統制構築に関連する「指針」が発表されました。

経産省、企業内部統制に指針案 監査強化など7項目(朝日ネット記事)

企業統治の監査、文書化の対象範囲縮小 金融庁ルール(日経ネット記事)

金融庁の指針はけっこう「あっさり」していますが、ルールとしての具体性はあります。経済産業省の指針は企業統治と内部統制との関連などにも言及され、また個別具体的な企業例などを詳細に調査比較しており、読み物としては面白いのですが、「じゃあ、どうしたらいいの?」と考え込んでしまうほど、具体的なルールが示されているわけではありません。それぞれの企業にあったシステムを検討しましょう、という感じです。

監査役設置会社における監査役としては、この内部統制に関する二つの指針をどのように整理したらいいのでしょうかね。

(7月17日追記あります)

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2005年7月15日 (金)

投資サービス法「中間整理」について(4)

「たぐいまれな頭脳明晰さ」と座談会での「ゆーもあ」たっぷりのお話で、私がたいへん尊敬いたします神田秀樹教授の責任編集による「投資サービス法への構想」(だったかな?)という新刊を紀伊国屋WEBで購入いたしましたが、まだ手元に配本されておりません。たいへん楽しみにしているのですが、神田教授ご自身がお持ちの「構想」というものを推測いたしますと、金融商品を扱う業者に広くサービス法の精神が普及し、ルールを守らないアコギな業者は自然と淘汰され、「国民の資金運用を誠意をもって取り扱いたい」という真摯な目的を有する企業には、どんどん垣根を低くして融資仲介や投資販売業に参加させて、そのような世界が出来上がるなかで一般投資家が保護されていけばいいのでは・・・と、そんな感じのイメージを抱いておられるのではないでしょうか。

証券取引事故の原告側(顧客側)代理人としての弁護士の経験からいたしますと、この投資サービス法が出来上がって、「さて、なにがなんでも顧客救済の精神で!」解釈したくなる気持ちもあるんですけども、第一に保険業法や信託業法などと同じ組織法、行為規制法的なイメージの法律でしょうから、この法律は一面において投資家へ顔を向けているけれども、もう一面では、まじめに頑張る金融業者を応援する、という意味も強く意識されたものになる、ということを忘れてはいけないと思ったりいたします。

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2005年7月14日 (木)

投資サービス法「中間整理」について(3)

関西の中小の証券会社では、合同で「事業研究会」を発足させ、今後大きな経営問題となる「投資サービス法」施行時における証券取引についての研究活動を開始するそうです。

きょうは専門家訴訟における「説明義務」の功罪について、少しだけ自論をお話いたします。すでに(1)、(2)でお話したとおり、私は主に、金融事故では原告側、医療事故では病院側、建築紛争では原告側の代理人をしている関係から、それぞれ意見や知識が片面的になってしまうかもしれませんが、そのあたりはご容赦ください。

まず、説明義務というのは、弁護士にとってはたいへん便利な法的根拠です。さまざまな専門的判断自体の是非を問うだけの知識、能力に欠けている法律家にとって、この「説明義務」というのは、判断の是非を問うのではなく、事実の有無を問う問題に「すりかえる」わけですから、専門家を裁判所の土俵の上に上げる、つまりサッカーの試合で例えるならば、「アウェー」から「ホーム」へ帰って試合をしているのと同じくらいに御しやすい争い方であります。ただし、裁判所に対して、被告である専門家に法的な説明義務がある、と説得しなければなりませんから、少なくとも丁寧に事実を分析しなければならず、その事実分析に必要な範囲での専門的な実務の勉強はしなければなりません。

(なお、7月14日追記あります)

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2005年7月13日 (水)

国際私法要綱案

日経ネット記事に、国際私法要綱案が法制審議会で採択された、との報道されています。

もともと日本には国際私法という法典はなく、国際私法的な法律は「法例」という1800年代に定められた法律を適用していたわけですが、このたび国際法律紛争の「日本国としての処理方針」ともいうべき法律が誕生することになりそうです。

普通のビジネスの社会では、国際紛争が発生した場合、管轄合意(どこの裁判所で裁判をするか)、準拠法合意(どこの国の法律にしたがって紛争を解決するか)、仲裁合意(裁判所を使わないで、特定の仲裁人に紛争解決を預けるか)、ADR合意(裁判の前に、裁判所以外で調停手続きのようなもの利用するか)など、きっちり合意するケースが多いので、それほど裁判でこの国際私法が解釈適用される場面が多いようには思えません。したがいまして、この国際私法が活躍しそうな場面としましては、不法行為のような契約関係に基づかない紛争(具体的には製造物責任など)や、遠隔地間における消費者契約(具体的にはネット決済などの通信販売)、そして最近もっとも悩ましい国際離婚問題などに大きな影響が出るものと予想されます。

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2005年7月12日 (火)

夢真HDのTOB実施(予定)

建設施行管理請負の株式会社夢真ホールディングス(大証ヘラクレス)が、日本技術開発株式会社(JASDAC)に対して株式公開買付を実施する(予定である)との発表があり、今朝の新聞や昨日のネットニュースでも取り上げられているようです。

 7月11日の毎日新聞ニュースです。

新聞やニュースでは「事前警告型の買収防衛策が導入された企業に対して、初めてのTOB」という見出しや記事が出ていますが、これって本当に「事前警告型が導入された企業」に対するものなんでしょうかね。平時に導入されたものじゃなくて、話し合いが決裂してから導入したものであるなら、「事前警告」はなかったように思いますが。つまり平時導入型ではなくて、「有事に取締役会で導入した型」に属するものと捉えるべきではないでしょうか。

(なお、7月14日追記あります)

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2005年7月11日 (月)

投資サービス法「中間整理」について(2)

大阪のFP(フィナンシャルプランナー)さんのブログで、明治安田生命の保険金不当支払に関する問題を絡めた「保険勧誘におけるわかりやすい説明」に関する金融庁の有識者検討会議事の報道内容が掲載されています。

 保険 不利益情報も説明 金融庁検討会中間報告 販売・勧誘に改善策

 金融庁の有識者検討会「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」(座長・野村修也中央大大学院教授)は八日、保険会社に対して、保険商品の販売・勧誘時に消費者にとって不利益な情報もわかりやすく説明するよう求める中間報告をまとめた。明治安田生命保険の違法営業などを踏まえ、不適切な保険の販売・勧誘による消費者の被害防止を図ることが狙いだ。
 報告では、保険商品をめぐって、消費者に提供される情報量が過大になっていることから、消費者の理解が妨げられていると指摘。これを改善するためには、最低限の重要事項を整理して消費者に説明することが有効と明記した。重要事項の具体例としては、商品の仕組みや担保内容、解約・解約返戻金などを提示。明治安田が違法営業で乱用した「告知義務」など消費者にとって不利益な情報も重要事項に盛り込むよう求めている。
 今回の報告を受け、金融庁では年内に保険業法の施行規則や監督指針を改正する方針。 (産経 2005/07/09)

なお、同様の記事は読売ネットなどにも掲載されています。

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2005年7月 9日 (土)

投資サービス法「中間整理」について(1)

7月7日に金融審議会のHPに「投資サービス法中間整理」が掲載されておりましたので、最後までひととおり目を通してみました。日経新聞では「サービス法の概要がまとまった」と報道されていますが、実際に読んでみると、たしかに包括される金融商品の範囲などについては理解できますが、中身はまだまだなにも決まっていませんね。もちろん、商品の説明を怠らないように、また受託業者が利益相反行為を行わないように、どうやって実効性を担保するのか、ということもよくわかりません。おそらく、この法律を十分理解するためには、法務、税務、会計、ファンドほか金融商品などの知識が必要だと思われますが、残念ながら私は法務面しか理解できないため、片面的な見方、考え方になることをご了承ください。

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2005年7月 7日 (木)

公認会計士の日

なぜ7月6日が「公認会計士の日」なのかはわかりませんが、私が社外監査役になってから、はじめて会計士さん方とお知り合いになりましたので、ちょっとだけ会計士さんネタについて。

 きょうの報道でも「金融庁が上場企業による粉飾や有価証券報告書の虚偽記載などの会計不正を防ぐために、経営トップが内部の業務管理を評価する報告書を作って、それを公認会計士が監査する新制度の骨格をまとめた。アメリカの企業改革法などを参考とした仕組み。」との報道がされています。公認会計士さんのブログもたくさんエントリーされていますので、よく拝読させていただいているのですが、この不正発見、というお仕事はこれまでの会計士さんのお仕事と「なじむ」ものなのでしょうか。

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2005年7月 5日 (火)

税理士の妻への報酬、「経費と認めず」

最高裁で、弁護士の夫が税理士の妻へ相談料を支払っていたものについて、必要経費としての算入が否認されてしまいました。所得税法56条を広く解釈して、「生計を同じくする人が同じ業務に従事している場合には、これを経費として認めない」というものです。

昨年11月2日に、「夫が弁護士、妻も弁護士、ふたりとも別々の事務所で独立して経営している」というケースにおいても、最高裁(同じ裁判長)は、やはり600万円近くの妻の夫に対する報酬金について、この所得税法56条を根拠として、夫の収益における「必要経費」性を否認していましたので、結論的にはほぼ予想されていたところでした。

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2005年7月 4日 (月)

第17回ビジネス実務法務検定2級問題

昨日(7月3日)、全国の商工会議所で開催された「第17回ビジネス実務法務検定」の速報です。(といっても2級だけですが)このブログが「ビジネス法務の部屋」という題名でもあり、すこし解説をしてみたいと思います。現実の企業法務の世界で、いまどのような法律制度に対して興味がもたれているのか、認識したいと思いました。

5択マークシート40問(前半20問各3点、後半20問各2点 合計100点 合格点70点)というものですが、ザッと眺めた印象としましては、これを70点でクリアするのはかなり勉強をしていないと無理だと思いました。

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2005年7月 2日 (土)

弁護士も「派遣さん」になる日が来る?

 (以下はあくまでも私個人の意見でありまして、弁護士会や法曹団体の意見ではないことをまず申し上げます。)

 新聞でも報道されましたが、弁護士や会計士、税理士などのいわゆる「士業」専門の仲介業が解禁されるのではないか、という話題が持ち上がっています。現に人材派遣大手の企業では、この士業専門の紹介、仲介法人を設立し、今日から営業を開始されたそうです。政府の構造改革特区に関する有識者会議でもこの7月8日、士業の労働者派遣問題に関するヒアリングが行われます。

 「弁護士の派遣」ということに限った議論になりますが、弁護士を対象とする派遣業ということになりますと、弁護士法72条との抵触ということが最も大きな壁になります。他人の法律業務を、有償で取り扱うことができるのは弁護士資格を有する者に限る、とされておりますが、もし弁護士派遣業を認めるとすれば、派遣業者はこの弁護士への雇用関係上の指揮監督により、派遣業者自身が他人の法律業務を取り扱うことになる、という問題です。法務省は、以前からこの派遣業については「弁護士法72条に抵触するおそれがある」として弁護士の派遣業については強く反対しています。この弁護士法72条というのは、よく新聞でも報道されるように「非弁活動」として犯罪構成要件として利用(違法行為は刑事罰の対象)されるために、その解釈はなるべく厳格かつ明確になされることが望ましいわけでして、(解釈する人によって、対象者が逮捕されたり、しなかったりというのは困るわけでして)法務省は法律を公式に解釈する立場にはないわけですから、「72条に抵触するおそれあり」としか言えないわけです。

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2005年7月 1日 (金)

私的独占と民事訴訟

 日本AMDがインテル株式会社を被告として、2件の損害賠償請求訴訟を提起しました。独占禁止法違反の事件に関する民事訴訟というのは、かなり件数が少ないので私的にはたいへん注目している裁判です。(アメリカではAMDとインテルの訴訟の歴史はけっこう古いですけど、日本の民事訴訟制度を利用するところの紛争としてみると新鮮ですね)

2件といいますのは、審決前置主義を採用している東京高裁専属管轄の独禁法25条訴訟と通常の民法709条による東京地裁への不法行為による損害賠償請求訴訟です。なぜ2件かといいますと、25条訴訟というのが、公取委で審決の対象となった事実に基づく損害だけを特別に審理する(そのかわり被害者側にかなり有利な立証上のシステムが適用される)というもので、ほかにも審決の対象とされなかった不正行為によって損害が発生したという場合には、通常の民事訴訟を利用せざるをえないからです。読売ネットの記事では「合計115億円訴訟」とありますが、「55億円」と「60億円」の中身が重複していますので、合計「60億円」が正しいと思います。(ちなみに、日本AMDの代理人は今年も高額納税弁護士ベスト10に名を連ねている著名な弁護士さんですね。さすがですね・・お金というのは寂しがりやなんで、「集まるところに集まる」みたいで)

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