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2005年7月 7日 (木)

公認会計士の日

なぜ7月6日が「公認会計士の日」なのかはわかりませんが、私が社外監査役になってから、はじめて会計士さん方とお知り合いになりましたので、ちょっとだけ会計士さんネタについて。

 きょうの報道でも「金融庁が上場企業による粉飾や有価証券報告書の虚偽記載などの会計不正を防ぐために、経営トップが内部の業務管理を評価する報告書を作って、それを公認会計士が監査する新制度の骨格をまとめた。アメリカの企業改革法などを参考とした仕組み。」との報道がされています。公認会計士さんのブログもたくさんエントリーされていますので、よく拝読させていただいているのですが、この不正発見、というお仕事はこれまでの会計士さんのお仕事と「なじむ」ものなのでしょうか。

 不正防止、という意味ともからんでくると思うのですが、「なんかおかしい」と思ったときに「適正意見を表明できない」ということで足りるのか、それとも「これはおかしい、粉飾だから摘発します」ということまで積極的に糾弾すべきなのか、そのあたり会計士さんかたはどのように考えておられるのか、すこし興味があります。といいますのも、新会社法が施行されますと、大きな会社の会計監査をされる方は、外部委託者ではなく会社の機関となるわけで、これまでとは企業経営者との「距離感」が変わってきますよね。そうすると嫌でも株主様方との距離も近くなるわけでして、「なぜ意見表明できないのか、説明しろ」という株主様からの主張も出てくる可能性があるんじゃないかな・・・と思ったりします。いままででしたら、監査人の「意見不表明」は証券取引所の「上場廃止」という措置と連関して、上場企業にとってはどうしても回避しなければならないものですから、それで防止策としては十分だったように思うのですが、会社の機関となると金融庁や経営者だけに目をやるだけでは済まされず、株主に対して「責任ある行動」が要求されるのではないかな、と。つまり、会社の表明している数字や、その算定根拠、監査証拠の信用性、そして事業の将来見込みなど、どんな根拠から「適正とは表明できない」と考えたのか、その理由を根拠立てて(素人にわかりやすく)説明する必要が出てくるのではないでしょうか。とりわけ、監査役会と会計監査人とが並存するような機関設計を採用した場合、おそらく建前上は「協調体制の構築」とかいいますけど、どっちも株主代表訴訟のリスクを負担するわけですから、不正監査というのが双方に共通の監査対象となってしまったら、なるべく監査上の最終責任は相手方にもっていっちゃおうと考えますよね。証券取引法や証券取引所の自主規制条項、そして公認会計士協会基準などを遵守して監査にあたっていた場合と大きく異なり、新会社法が施行されて、機関としての会計監査人が誕生した場合には、監査役会と一般株主という、これまでとは違う視線で会計監査人を見つめる目がそこにあることを、一度真剣にお考えいただくことがよろしいのではないか、と思った次第です。

 不正監査の摘発、防止というものを会計士さんの業務に期待するということは、なにか弁護士法1条にあるような「社会的正義の実現」みたいな、会計士さんの職業目的を追加しなければならないのではないか、と思ったりします。会計について素人の疑問なんで、またご意見などいただければ幸いです。

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コメント

投稿: HardWave | 2005年7月 7日 (木) 06時51分

HardWaveさん、いつもご指摘ありがとうございます。私も日本版SOX法、で検索してみたら、いままで知らなかった会計士さん、税理士さんのブログをいくつか見つけました。やっぱり「きょうは公認会計士の日です。」みたいなブログもありました。
旬刊経理情報の最新7月10日号に、すこしエントリーの関連記事が掲載されているようです。(内部監査・内部統制のポイント)

投稿: toshi | 2005年7月 7日 (木) 16時35分

TBありがとうございました。

この不正会計の摘発、内部統制の評価コメント、会社法改正での会計士への影響など、私自身、まだ考え中です。あと、私の師匠とも議論中。

少し会計士の役割に変化があるかもしれません。ただ、私の事務所は、改正しようとする方向性で今まで仕事をしてきた面もあります。

不正については、以前、toshiさんの「2005年6月 6日 (月)証取監査と内部統制」で引用していただきました私のエントリーが今現在の私見です。

投稿: arnese | 2005年7月 8日 (金) 00時25分

どうも、けやきの管理人です。

いつもご愛読していただきありがとうございます。

とりあえず私見ですがトラックバックさせていただきました。

ちなみに、私が、この”監査”というのがどうも性に合わず、独立後の監査の仕事はとりあえず考えていません。

ということで、「監査を廃業した会計士」です。
(^_^;)

投稿: kuni0 | 2005年7月 8日 (金) 01時58分

arneseさん、いつもありがとうございます。会計監査と新会社法という関係では、おそらくこれからいろいろなところで講演会や研究会、研修会などが開催されると思うんですけど、通り一遍の研修では、監査役、内部監査人そして株主との関係など、あまり意識されないんではないかな・・と思ったりしています。そのあたりは協会や団体のガイドラインのようなものが今後詳細に示されるのかもしれません。

投稿: toshi | 2005年7月 8日 (金) 21時39分

kuni0さん、わざわざこちらまでコメントつけていただき、申し訳ありません。いつも素人疑問に真正面から回答いただき、たいへん参考になります。
私事になりますが、この7月末に、東京のある会合で、企業会計審議会の審議委員の方とお話をする機会があります。「監査」のことだけでなく、いろいろな会計ネタをお聞かせいただこうかと思っていますので、またぜひ遊びに来てください。

投稿: toshi | 2005年7月 8日 (金) 21時44分

こんばんは。私は税理士でも会計士でもありませんが、ご意見に全て賛成です。ここで安易に不正の摘発もすると言わないでいるのは、会計士さんのすべき仕事や地位を考えても、大変重要なのではないかと思います。「不正発見にノー」というのは確かに言いにくいですし、会計士の仕事について手っ取り早い理解が欲しければ不正発見というのは大変魅力的な説明なのはわかります。しかしだからこそ、なおさらしっかりと、それは違うんです、と言っていただきたいと思っています。

私が不思議に思うのは、例えば税務署は「脱税を根絶します」と言ってはいけない、ですよね。そんなことに力を入れてお金をかけるのは大変な税金の無駄遣いだからです。完全に根絶しようと思うと、集めた税金以上のお金と一年以上の期間が必要かもしれません。税務署ですらそうなのに、会計士さんがなぜ不正を発見します!と言わなければならないのか、理解に苦しむのでした。確かに巷ではまだまだ会計士さんの仕事に対する理解は進んでいませんが、それは会計士さんの努力不足というよりは、直接金融のインフラが不十分だったこれまでの日本経済の性格によるところが大きいのですから、丁寧な説明を繰り返して、不正発見が第一義の仕事ではないという点について、理解を得て行かれた方がいいのではないかと思っています。頑張ってください。

投稿: bun | 2005年7月11日 (月) 01時34分

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