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2005年8月31日 (水)

債権回収と内部統制システム

ある企業の経理部長さんから、長期滞留債権の管理方法について相談を受けました。財務報告の信頼性評価については、会計監査を担当する会計士さんにおまかせすればいいのでは?と回答したのですが、内部統制システムそのものの構築に関する部分は企業側で責任をもってほしいと会計士さんに言われたそうで、①長期滞留債権として分類するためにはどのような法的手続きをとればよいか②回収可能性をどのような基準で考えればよいか③滞留債権の管理方法をどうすればよいか、法律家に検討してもらうように、と指示されたそうです。

大阪商工会議所での法律講演会などでは、「債権回収と債権保全」といったテーマはもっとも人気のある演題でして、普通は契約書の作成方法から顧問弁護士に依頼するタイミングまでを含めて、企業の総務部や法務部の方向きの話をするケースが多いのですが、内部統制との関連で債権回収の経験が経理部の方向きに参考になることがある、とはあまり想像もつきませんでした。しかしよく考えてみると、債権の分類方法や金銭的な評価方法をその企業独自の基準で定型化したり、長期滞留債権の処理方法を定型化することは財務報告の信頼性確保の目的とともに、リスク管理(業務の有効性と効率性向上)の目的にも資する、ようにも思われます。とりわけ、弁護士の立場で上記の基準を検討する場合に有益なのは、企業の業種によって別々の基準を検討できる、というところでしょうか。どういった手続きを踏めば長期滞留債権と評価すべきか、というのは金融、商社、メーカー、サービス、ITなど、それぞれの業種によって異なることは明らかです。また、債権の管理方法(どの段階で顧問弁護士に回収を依頼すべきか、その費用に見合う回収が可能か、税務処理したほうが得策かなど)についても、これまでの裁判経験や交渉経験からみて、その業界独自の方法があります。そういった企業、業種別のリストアップ方法やリスク管理手法を構築できるのは、ある程度法曹としての実務経験が必要かもしれません。

今回はたまたま個人的な相談事例でしたが、今後はシステム構築にあたって、会計士協会と単位弁護士会での総合的なシステム構築に関する協働作業が必要になってくるように思います。証券取引法などの規制規範だけで「内部統制」が議論されていれば別ですが、新会社法でも内部統制システム構築義務や、取締役会の専権事項として規定されているわけですから、投資家だけでなく、会社債権者を含む一般人の法的評価にも耐えうるものが策定されなければならないと思います。

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2005年8月30日 (火)

製造物責任とCSR損害

有名な洋菓子販売会社が、その販売商品に金属片が混入していたとして190万個の商品を自主回収(なお、金属片が混入していた洋菓子を食べた方は口に軽症)し、原料のバターをドイツから輸入していた日本企業に対して6億円の製造物責任を追及する訴訟を提起したそうです。なお、輸入していた日本企業は、自社輸入原料に金属片が混入していることは認めています。

原料バターに金属片、シャトレーゼが6億円の賠償請求(読売ネット記事)

いわゆるPL法(製造物責任法)における被害者には、一般消費者だけでなく、第三者も含むとされておりますので、拡大損害を被った商品販売会社(この場合は洋菓子製造企業)も輸入業者(これも条文上、製造物責任の対象者に含まれています)に対して製造物責任を問えることになります。この6億円の被害というのは、190万個の商品の原価と失った利益、そして信用失墜にともなう売上の減少分と思われます。

昨今の企業の社会的責任(CSR)論の高揚からすれば、シャトレーゼが販売全品の回収を行い、すばやく公表して一般消費者の生命身体の安全を確保する姿勢は、企業のブランド、信頼を守るためにも当然の対処方法だと考えられます。しかしながら、シャトレーゼのすべての責任を輸入業者に追及するために、無過失責任である製造物責任法を根拠とすることに、すこしばかり疑問も感じます。

たしかに製造物責任法は「生命、身体、財産」に対して「通常有すべき安全性」を具備していない商品によって拡大損害が発生すれば、その賠償義務が発生するわけですから、輸入業者が安全性に問題があったことを認めている以上は形式的に損害賠償義務が発生するようにも思えます。しかし、最新の設備をもって最終消費者に対して安全な商品を提供すべきなのは輸入業者も製造者も販売者も同等であって、中間業者が最初に材料を輸入した業者に対してすべての責任を(消費者と同等の手段で)追及できるというのは、どうも公平ではないような気がします。損害算定にあたっては、公平な分担というものがあてはまるような事案ではないでしょうか。そもそも、「とりやすいところからとる」ことが一般消費者の保護につながるものとして、製造者の範囲を拡大したために「輸入業者」も含まれてきた経緯があると思いますが、そういった趣旨からすれば、販売業者や製造業者が、一般消費者の被害額よりも「とてつもない大きな被害額」をもって輸入業者へ損害補填を求めるのがしっくりきません。たまたまシャトレーゼという企業は、CSR経営を重視する企業として、早期自主回収、早期公表という手段がとられましたが、そういった手段をとることなく、早期にドイツの企業と連絡をとり、調査のうえで金属片混入状況を把握していれば、実際の被害者との和解のみによって解決ができることも予想されますし、はたして自主回収、早期公表が輸入企業にとって予見可能な損害だったかどうかは疑問の余地もあります。また、そういった食品加工製造を行う企業であれば、金属探知機によって事前に予防するのが通常だとすれば(現実に、他の企業では金属探知機を複数使用しているために混入のおそれはない、と公表しているところもあります)被害の拡大防止手段をとっていなかった企業にも「通常の使用法とは異なる使用があった」と主張しうる可能性もあったかもしれません。

おそらく、こういったPL法の使われ方は、平成6年のPL法制定時には予想されなかったところではないかと思われます。もし判決が出されるということであれば責任自体は認められるとしても、その損害の範囲とうものがどのような理由によって、どこまで認められるのか、とりわけ企業の社会的責任論との関係も含めて非常に興味のもたれるところであります。

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2005年8月29日 (月)

東京三菱 10億円着服事件

東京三菱の100%子会社の派遣行員によって12年にわたって10億円の着服があったことで、この派遣行員を告訴、この8月26日に東京三菱銀行は金融庁より業務改善命令を受けた、とのことです。

10億円のうち、2億5000万円ほどは返還を受けた(回収?)とされていますが、告訴事件が業務上横領であれば7年が公訴時効ですから、どこまでの捜査が行われているのか、まだ不明です。また、告訴の場合、被害額が証拠によってハッキリしているものだけに限定するケースが多いので、うっかり被告訴人の名前を公表したりすると、事件の範囲がおそろしく増えてしまうかもしれないので、なかなか公表はできないでしょうね。

労働者派遣に関するコンプライアンス、というのはパート職員と同様、企業にとっては悩ましい問題だと思います。労働者派遣法の規定をそのまま遵守して、たとえば金融商品販売員であれば3年(現在は無制限)経過したところで、そのまま同じ職場で更新するか、正社員になるか協議をすると思われます。正社員になると異動がありますので、そのまま更新したいと希望する人が多いと思われますが、そうなると今回のように同じ職場でずっと担当する、という状態が恒常化してしまうわけです。ただ「お金」を扱う商売である以上、今後は期間を決めていったん派遣解消とするか、更新するにしても一定期間の後、同じ職場内で担当を変えるなど、かなり銀行側にはしんどい処理が行われることになるのでしょうね。

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2005年8月28日 (日)

沖縄の夏

金曜日の早朝から沖縄に家族旅行に来ています。台風で出発できるかどうか、気をもみましたが、こちらに着いてから3日間、ピーカン天気。バナナボートにダイビング、シーカヤック。まっくろに日焼けしまいました。また大阪に帰り次第、ブログ書き込みを再開したいと思います。(やっと、ネット可能な場所におりますので、ちょこっとだけご報告です)

(追記 8月29日)

今回、はじめて首里城に行ってまいりました。1500年ころからの沖縄の歴史を初めて知りましたが、小国としての沖縄の身の処し方というもののムズカシサがあったんですね。沖縄の人のブログを読んでおりまして、いまでも「マリンスポーツ」や「離島めぐり」に興じる私のような人間をたいへん「沖縄にとっておもしろくない人」と考える方がたくさんいらっしゃることが理解できました。真栄田岬まで行く途中、広大なさどうきび畑がありまして、あの「ざわわ」の唄を思い出しました。長いこの沖縄の歴史からみると、いまは「日本」ですが、そのうちまた別の国になるのか、それとも「独立国」となるのか、よくわからなくなりました。現実には「米軍基地」と「観光」が、とりあえず本土(やまとんちゅう)とを結ぶ切り札にはなっていますが、本土がこの島国の文化を受け入れることはあっても、きっとこの美しい島国は日本文化まで受け入れることはないだろうな・・・と思った次第です。

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2005年8月26日 (金)

内部統制の費用対効果

SOX(サーベインズ・オクスリー)法発祥の地であるアメリカにおきましても、内部統制システム構築に要する費用があまりにも高額になりすぎている、ということで見直し論が高まりつつあります。また、日本におきましても、上場企業の代表者が内部統制システムを適正に構築した旨の誓約をしなければならない、ということで、そのシステム構築の外注費や構築状況の監査報酬など、運用における費用問題などが近時議論されています。

そもそも、システムを導入したからっといって業務の効率化を図ることは可能であっても、それ以外の目的、たとえばコンプライアンス経営の執行や、資産保全、財務の信頼性確保などが目に見えて効果が高まり、企業の高収入につながる、というわけではありませんので、企業経営者からは「これだけの費用をかけて、効果はあるのか」と疑問を呈されるのも無理はありません。私も内部統制システムの構築というものは、ちょうど法治国家における「司法の独立」のように、いわば株式会社形態を採用する営利団体の「社会インフラ」であると考えておりますので、これがなければすぐに企業が立ち行かなくなる、というものではありませんが、やはり企業の内外から、こういったシステム構築の目的達成のために企業の内外から信頼を得るためにはどうしても必要なものである、と説明いたします。

なお、この点につきまして、アメリカの場合には「社会的インフラ」という抽象的な説明以上に、費用対効果を説明しやすい理由もあります。それは訴訟社会ならではの理由でして、いわゆるディスカバリー制度とも結びついているようです。ご承知のとおり、アメリカの民事訴訟では、実際の裁判手続きにまで至る訴訟事件はごくわずかでありまして、ほとんどがディスカバリー段階で和解終結(取下げを含む)するケースが多いようです。相手方が企業の場合、こちらの代理人弁護士は、その企業が保有する裁判必要文書を事前に開示するよう求めることができ、また企業自身も自発的に証拠を開示することが可能です。こういったケースで、相手方企業は「明確な社内の文書管理規定があるかどうか」「その管理規定に基づいた文書を相手方の指示どおりに編纂して提出できるかどうか」「提出文書に虚偽、もしくは過失による誤謬がないか」の判断によって、文書の信用性に大きな影響を受けます。もし内部統制システムが機能せず、文書管理がずさんだったりしますと、訴訟上のペナルティを受けることになります。(たとえば証拠としての提出を禁止されるとか、もっと厳しい場合には抗弁権放棄が擬制されたりします)。また、文書管理方法が悪いケースなどは、自身企業によって相手方指示の文書提出までの費用を負担しなければなりません。

こういったケースが現実のものですと、民事紛争となった時点での多額の費用負担よりも、日常における文書管理上の費用負担のほうがはるかに安くつく、という判断には至りやすいと思われます。

「内部統制システム構築」そのものが訴訟における費用負担と直ちに結びつかない日本の場合には、やはりまだまだアメリカほどのインセンティブが理解されにくいことが予想されます。昨日のエントリーでも若干触れましたが、日本の場合にも、企業に対する規制法規によって「システムを構築しなければならない」とうたうだけでははく、実際に取締役の法的責任問題のなかで「システム構築に尽力してきた企業にアドバンテージが発生する」といった解釈基準を盛り込む、という検討をしていかなければ、内部統制システム構築が会社におけるインフラとして有効に機能していかないように思われます。

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2005年8月25日 (木)

内部統制構築と経営判断原則

きょうは弁護士という立場から、内部統制理論と関連付けた「取締役の善管注意義務の履行問題」について、すこしばかり考えてみたいと思います。ご承知のとおり、株式会社の取締役は会社に対して善良なる管理者としての注意義務(いわゆる善管注意義務)を負っているわけでして、この義務違反行為というものは裁判上、たとえば株主による代表訴訟や会社債権者による損害賠償請求訴訟で争点となるケースが多いわけです。しかしながら、日本版のビジネスジャッジメントルール(いわゆる経営判断の法理)というものが裁判の原則としては認められておりまして、「(取締役による)企業の経営に関する判断は、専門的、予測的、政策的な判断能力を必要とする総合的判断であるから、取締役に与えられた裁量の幅は広いものであり、たとえ取締役の経営判断が結果的に会社に損害をもたらしたものといえども、それだけで取締役が必要な注意を怠ったと断定することはできない」という法理が一般的に適用されます。この法理が一般的に適用されるケースが多いため、なかなか取締役の責任を追及することは(立証責任の問題とも重ね合わせますと)困難な場合が多いようです。

ただ、こういった経営判断法理というものも、近年議論の高まっている「取締役の内部統制システムの構築義務」と考え合わせますと、もはや(今後の裁判において)取締役にとっての万能の武器とは言えないのではないかな・・と推測しています。といいますのも、裁判所は一般的に「経営判断原則」を取締役責任訴訟における基準にしてはおりますが、一方においては、企業経営に関する判断事項をまったく司法判断の枠外に置いているわけではなく、経営判断の前提となった事実の認識について不注意な誤解がなかったかどうか、またその事実に基づく意思決定の過程が通常の企業人として著しく不合理なものでなかったかどうか、という点については少なくとも判断は及ぶと考えているからです。

したがいまして、ここに「取締役会レベルにおける内部統制システム構築の議論」を適用できる余地があります。いわゆる「リスクアプローチ」の法律判断への応用になろうかと思われます。リスクアプローチといいますのは、①判断の対象となる経営事項のリスクを洗い出すこと②いくつかのリスクを洗い出したら、各リスクがどの程度将来の企業経営に影響を及ぼすかという評価を行うこと③リスク評価を終えたら、そのリスクをとりにいくのか(リスクを承知でビジネスを遂行するのか)、リスクを回避するのか、それとも代替手段を確保(保証を付けるなど)するのか、合理的意思決定を行うこと、であります。つまり、取締役の善管注意義務違反が問題となるケースにおいて、その取締役の責任を追及する側としては、取締役側が裁判上「経営判断法理」を防御方法として持ち出した場合、その取締役(もしくは取締役会)の判断に至った過程について、そのリスクアプローチに関する釈明を求めるわけです。この方法であれば、現在の裁判で通説とされている経営判断法理とも矛盾なく争点を深化させることができ、「内部統制理論」の議論発展のために司法判断を活用することも可能になってくるのではないか、さらに経営判断の法理自体の議論も深化するのではないか、と考えています。もちろん、監査役が取締役会における意思決定過程を監視する義務というものも問題になりえますので、監査役の立場で監視義務を尽くしたかどうか、その判断にも、上記のリスクアプローチの方法が採用されるべきだと思います。

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2005年8月24日 (水)

無形資産と知的財産

日経新聞に連載されています伊藤教授の「無形資産の時代」を読んだり、「ビジネス法務10月号」の日本政策投資銀行の部長さんや久保利弁護士の知的財産に関する特集記事を読んでおりますと、「無形資産」や「知的財産」「知的資産」など、用いられている言葉が少しずつ異なることに気づきました。また、これらの言葉に込められる論者の思いも少しずつ異なるんですね。ある人は中小企業の金融に役立ってほしいと願い、ある人はM&Aの円滑な実現に貢献することを願い、そしてある人は少子化が進む日本の世界戦略となるように願ったりします。

知的資産に対する各人の期待は異なっていても、企業における管理の重要性を説く姿勢は共通しているようです。知的資産の運用方法を工夫したり、機密としての重要性を社員に浸透させたり、また他社との共有を図ったり、およそこれから各企業において体得すべき管理上の問題点というものが識者によって議論されていくものと思われます。

ただ、企業における知的資産(無形資産という言葉のほうがしっくりくるかもしれませんが)というのはどこまでのものを含むのか、私には疑問があります。もちろん、特許権、著作権のように法律によって保護範囲が特定できるものであればそれほど問題はありませんが、たとえば企業ブランドや企業ノウハウ、ビジネスモデル(特許対象ではない)など、これらも無形資産に含まれることは明らかでしょうが、これだけが独立して「企業価値」の一部を構成するものなのでしょうか。たとえば、私は外食産業の上場企業で監査役をしていますが、ここは「大阪通天閣の食堂屋さん」から始まった企業ということで味には定評がありますが、どうも店舗作りを含めた「営業力」がいまひとつでありまして、ある店舗の近くに東京資本の同業他社さんのレストランが登場するとすぐに集客力が落ちてしまう。ところが、半年ほどすると、またお客さんが帰ってくる、ということの繰り返しです。明らかにこの会社にはビジネスノウハウを含めた美食部隊という無形資産があるのですが、これは独立の資産としてはなんらの価値を持たないようです。この無形資産に光があたるのは、「優良食品仕入れ部隊」という別のノウハウと「他社よりも美味しいものを出す店であることを表現する部隊」とが合体することではじめて「無形資産としての価値」を実現できるのです。こういった無形資産の評価というものは、おそらく他の企業でもありうる話だと確信しています。そうであるなら、いったい無形資産の価値というものは果たして独立客観的に評価することができるものなのか、という非常に基本的な疑問が湧いてくるわけです。逆に申しますと、特許権、著作権などを含む無形資産というものは、社内の管理部などを設けて、そこで一元的に保護管理運用を行えば足りるような問題ではなく、無形資産を企業価値を高める資産として輝かせるには「全社的取り組み」がないとムズカシイのではないか、と思うわけです。もし、その企業において「無形資産」に大きな価値があると評価されるのであれば、それは無形のモノ自体の評価というよりも、そのモノを輝かせている企業全体のビジネスモデルへの評価であろうと考えるわけです。もし私がどこかの企業の社外取締役として、株主を代表して企業価値を把握したり、他者のものと比較をするならば、おそらく企業の有するブランドイメージや企業ノウハウ、ビジネスモデル、情報システムなどの無形資産は、むずかしいDCF法による算定は参考程度にとどめることにして、それよりもむしろその企業が推奨する無形資産をその企業がどのように輝かしているのか、そっちの取り組みのほうを重視するでしょうね。

こんなこと言っておりますと、無形資産の価値評価を一生懸命研究されていらっしゃる方には叱られるかもしれませんが、無形資産の市場的評価というものは果たして実現するのかどうか疑わしく、またもしその無形資産の客観的な市場価格は算定できる、ということであるならば、それはすでにその無形資産が「資産としての魅力」を失った頃ではないかな・・・と推測してしまうのです。いずれにせよ、この知的資産、無形資産の戦略的管理運用の問題は会計、法務の問題を飛び越えて企業全社あげての取り組みを必要とする積極的な企業展開の一環であると認識すべきだと思います。

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2005年8月23日 (火)

夢真による会計帳簿閲覧権の行使

8月22日付けで、夢真による会計帳簿閲覧権行使に関する日本技術開発側の意見がリリースされています。

日本技術開発HP8月22日付けリリース

日本技術開発側は、8月8日付けの夢真による会計帳簿等閲覧請求に対して、その形式の不備を主張して開示を拒否している、というものです。日本技術開発側が「最高裁判例に基づいて夢真側に対応している」とする根拠判例は次のものと思われます。

H16.07.01 第一小法廷・判決 平成15(受)1104 会計帳簿閲覧謄写,株主総会議事録等閲覧謄写,社員総会議事録等閲覧謄写請求事件

夢真側が明確に、少数株主権としての会計帳簿等閲覧請求権を行使すると述べているようですから、この判例を日本技術開発側が基礎とすることは合理的なものでしょう。したがいまして、夢真側としましては、会計帳簿等閲覧請求が、どのような株主権を行使する目的でどのような内容の権利主張をしたいのか、具体的な説明が必要になりそうです。株主の立場から、企業価値を把握して、社外取締役選任の株主提案権を行使する目的であれば、相当抽象的な理由でも閲覧請求が可能のようにも思われますが、ただ定時総会までの間に夢真の1%以上の株保有期間が6ヶ月に満たない場合には行使できないことになるため、今回はムズカシイようです。この商法293条ノ6を用いた帳簿閲覧権を行使するには、夢真側がどのような株主権を主張したいのか、いまひとつ特定できないように思われます。

いっそのこと、夢真側としては、事前警告型の大規模買付ルールにしたがって、日本技術開発側の会計帳簿等開示請求を検討できないのでしょうか。大規模買付ルールにつきましては、買収をかけられる企業が一方的にルールを決めてしまうわけですから、そのルールの合理性というのはなんら担保されていないわけです。したがって、日本技術開発側より夢真の事業内容を把握するために会計帳簿等の開示を求めることになりますが、その一方で夢真としても、日本技術開発側の情報がなければ、比較可能な企業価値向上プランを日本技術開発側の株主に対して提示できないことになるでしょうから、公正さを保つためにも、ある程度の企業情報については、買付希望者に対して事前に開示する必要があると思われます。この会計帳簿等請求は、現商法293条の6に基づくものではなく、被買収企業が事前に策定したルールに基づくものであります。このあたりは、旧ブログに今年4月ころ書きましたとおり、以前から事前警告型の買収防衛策の弱点だと思っておりますので、夢真側からなんらかの帳簿開示に関する法的対処を期待しているところです。この22日付けリリースに対して、夢真側がどのような反応を示すのか、また興味深いところです。

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2005年8月22日 (月)

企業不祥事と犯罪環境学

「犯罪」を考える学問として、私が司法試験を受験していました20年ほど前は、「刑事政策」というものが盛んでありまして、司法試験の科目のひとつとなっておりました。ドイツの学術研究が基本となっていたそうですが、最近は「犯罪社会学」(犯罪環境学)というものが犯罪自体の予防や犯罪者自体の研究を行う学問として盛んになっているようです。(これは英米で発達した学問だそうです)

こういった犯罪環境学もしくは犯罪社会学というものについては、私はまったく知識を有しておりませんが、最近光文社新書から出版されました 小宮信夫教授「犯罪は『この場所』で起こる」はたいへん読みやすく、興味深い本でした。人が犯罪に走りたくなる環境、人が犯罪をあきらめる環境というものが、物的環境面においても人的環境面においても存在する、という仮説を立てて、その真実性を検証していくものです。「割れ窓理論」というのも、言葉としては聞いたことがあったのですが、その実際の研究や実務応用などを把握したのは今回が初めてです。一枚の窓が割れて放置されている建物は、誰かによって全部の窓が割られてしまう、というのは、道路沿いのごみ放置などにもみられる行為だと思います。

犯罪を犯した人間自体にスポットを当てて、どうすれば再犯を防止できるか、という議論は抽象論で終わってしまうことが多いのですが、この犯罪環境学という問題は、対策が非常に具体的ですし、環境作りのために地域住民がどのような日常行動をとればよいのか、きわめて明解な試論が出されています。企業不祥事防止、とりわけ業務上の不祥事と財務上の不正との関係においても、この犯罪環境学は応用できる、と予想して、この本を読んでみようと思いました。私の破産管財人業務の経験などから、業務上の不祥事が発生しやすい環境をそのまま放置しておくことが、企業の不正支出や金銭横領などの財務不祥事問題に発展する土壌となっているケースが多いと感じたからです。「この仕事仲間の人達と、この部署でともに働いているかぎり」悪いことはできない、と社員が認識できる環境作り、こういった問題というのが、この本を読むまでは私自身、かなり「後ろ向きの暗いテーマだと思っていましたが、これが結構明るい協働作業によって作ることが可能であることが理解できて、非常に参考になりました。(まあ、その効果のほどは、これから先長い年月にわたって検証作業を続けていく必要はありそうですが)効果について頭で考えて懐疑的になるだけでなく、ともかく企業全体で環境作りを実践して、コンプライアンス経営の試みとすることも必要だと思いますね。

750円程度の新書版ですし、写真や図表などもふんだんに使われている、読みやすい書物ですので、興味をお持ちの方にはおすすめの一冊です。

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2005年8月20日 (土)

杉田かおるさんの攻撃

私のブログは、土日になるとアクセス数が極端に落ちます・・・・・(^_^?)ハテ?

ということで、週末ですし、ビジネス法務以外のお話でも。。。

8月11日に杉田かおる さんと、鮎川純太氏との協議離婚が成立したということで、その後は杉田さんの口撃がヒートアップしてしまい、鮎川氏側も名誉毀損で民事、刑事上の法的措置に出る、ということだそうです。

協議離婚成立後に杉田さん側が、口撃するのは当然予想されるところです。なぜなら、協議離婚成立までは、杉田さん側の代理人弁護士が杉田さんに「事件に関することはしゃべらないでくださいね。しゃべると辞任しますから」と念押ししていたことは想像に難くありません。双方に弁護士が就任している以上は、代理人どおしでの協議が当然でして、それを当事者が破ってしまうと代理人の信用が丸潰れになってしまいます。

協議離婚が成立すれば、そこでいちおう杉田さんと代理人との契約は解消されますので、あとは「本人のお好きにどうぞ」ということになるわけです。杉田さんが提訴されて、また代理人に就くかどうかは、また杉田さんとの話し合いによって決まることになります。

マスコミ報道だけを読んでおりますと、鮎川氏側が、なんかうまく杉田さんの挑発に乗ってしまったような気がしますね。どんなに鮎川氏本人のことを口撃しても、鮎川氏は黙殺できたでしょうが、「あの友達が腐っているから、あいつも腐った」などと、鮎川氏の尊敬する第三者を巻き込んでくれば黙っていられないでしょうね。男にとって、ビジネスの世界の仁義にまで影響の及ぶことは、なんらかの対策が必要になってくるのかもしれません。そのあたりが(不謹慎ですが)杉田さんのうまいところですね。訴訟を起す、刑事告訴をする、という手段は、鮎川氏と関係者の名誉を回復する、という目的もありますが、今回の件では「とりあえずあいつを黙らせる」という目的のほうが極めて大きいものと思います。代理人が就いてくれれば、また杉田さんが弁護士との信頼関係から、「ダンマリ」を強要されることとなりますから。したがって、事件を長期化させて、風化させてしまう作戦が効果的かもしれません。

しかし、4歳からテレビなどのマスコミに親しんできた女性を敵に回しての紛争は、アウェー戦を強いられるような状況でしょう。ゴージャス松野さん(松野行秀さん)がとったような作戦を鮎川氏が採用できれば、杉田さんのほうから(私の人生で消し去りたい時期があった)と思って無視される、という結果を勝ち取ることも可能でしょうが、社会的信用のある立場の方でしょうから、それはムズカシイかもしれません。

鮎川氏はたいへんM&Aに造詣が深い方ということで、中小企業庁の審議会委員なども歴任されているそうですが、杉田さんに対するリスクアプローチはどれほど対応されていたのか、つい疑問を抱いてしまいます。経済的合理性では決してはかることのできないところに、男女関係の面白さ、奥深さを痛感します。

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2005年8月19日 (金)

敵対的企業買収は誰のためのものか

昨日も紹介しました「商事法務」8月5日・15日合併号の巻末コラム「スクランブル」に、題名のようなコラムが掲載されております。今年のM&A事例をいろいろとみてきて、経営者の方が心の中では思っていても、なかなか口に出していえなかったようなことを、一気に表明してくれたような爽快感があります。学説も、裁判所も、弁護士もみな新古典主義経済学者のようであって、アメリカ型株主主権主義をそのまま持ち込んで賛辞する、という態度への批判、経営者への過大な負担とリスクの要求が最終的には株主の利益にはならない、という提言は、これを読んだ方が思わず納得、言いえて妙、と感じられたのではないでしょうか。最後の締めの言葉も「企業は何のために上場するのか考えろ、ではなく、市場こそ、どうすれば上場してくれるのか、を考えるべきである」というあたりは、私もそのとおりだと思います。そろそろ「株主権の内在的制約」理論というものがあるのか、ないのか、あるとしたらどういったときに株主権に合理的な制限が加えられるのか、株主平等原則に合理的な制限が認められるのか、そういった問題にスポットをあてるべきではないか、と思うのであります。

このブログも「企業価値」とは何か・・・というものへの自問自答から始まりました。そろそろ企業価値論についても議論の進化が薄れ始めてきたのではないかと感じています。今後はおそらく「社外取締役」が具体的に活躍する場面において「企業価値」をどのように検討したか、等もうすこし具体的なモノサシをあてることで議論が進化していくのではないか、と予想しています。いまのところは、おおよそ株主の将来における価値の最大化を図ることこそ、企業価値の実現であるという言い方さえすれば間違いではなさそうです。今後は、ぎゃくに「株主の権利」というものは、多数株主の「共同利益」のために制約を受けるのか、とか「企業の社会的責任」によって制約を受けるのか、といったあたりの議論に期待しています。そういった議論は直接的に株主の法的権利にもつながっていくように思われるからです。日本の文化や伝統、慣習によって影響を受ける「株主権」を認めるのかどうか、グローバルスタンダードを重視して、新会社法のもとでの「株主の権利」は万能なものと解釈されるものなのか、そのあたりと見極めていきたいと思います。

いずれにせよ、関西の経済団体での会合においても、この「スクランブル」のコラムで書かれている立場というのが経営者のホンネの部分だと確信します。これは私が専門的に勉強している内部統制の議論でも同じです。過大な負担を経営者に押し付けて、本当に見合うだけの効果があるのかどうか、単にアメリカの議論を持ち込んできたにすぎないのではないか、という疑念はぬぐいきれません。防衛策にせよ、内部統制にせよ、大きな視点から、その拠るべき根拠を示す必要があると思います。

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条件決議型ワクチン・プラン

商事法務1739号(8月5日、15日合併号)に新会社法・買収防衛指針を踏まえた買収防衛策の一標準形として「条件決議型ワクチン・プラン」なる防衛策の設計書が掲載されております。「上」となっておりますので「下」まで読まないとはっきりとした感想は申し上げられないのかもしれませんが、取締役会(もしくは定時株主総会)において、敵対的買収者が現れることを「停止条件」として、差別行使条件付きの新株予約権の無償割当(新会社法277条)を行うことを決議する、という斬新なスタイルです。これまで、いろいろと不具合を指摘されてきた買収防衛策の短所を補完し、経済産業省、法務省からすでに出されております指針にも合致するものとしてかなり評価は高いものと思われます。

ただ、防衛策導入を検討する「一監査役」としての立場から、すこしばかり疑問があります。これまでの民法上で定義されてきた「停止条件」と上記防衛策の「停止条件」とは同じものなのかどうか。

まず第一に、取締役会決議や株主総会の決議の効力が「停止条件付き」ということですと、はたしてそのような団体法上の行為について、民法上の「停止条件」というものを付すことが法律的に可能かどうか、という問題です。「月刊監査役平成15年6月号」によりますと、補欠監査役の予備選問題について、法務省民事局商事課の公式見解が掲載されており、株主総会の決議に条件または期限を付すことも否定されているものではなく、決議に期限等を付さなければならないとする合理的な理由がある場合には、合理的な範囲内で条件または期限を付すことができると述べられています。そこで、本件のように敵対的な買収者が出現することを決議の効力発生条件とすることが、はたして条件を付す合理的な理由がある場合と言えるかどうか。(特別に、停止条件を付さなくても買収効果が上がるのではないか、という疑問)

そして、もうひとつは、かりに取締役会決議で「停止条件」つきで導入した買収防衛策については、たとえ取締役会決議そのものが「団体法上の行為」だとしても、それは会社・株主間の法律行為の効果を一方的に決定する性質(新株予約権の株主割当は取締役会で一方的に決めることが可能です)を有するものですし、だからこそ「撤回、廃止が取締役会で容易に決めることができる」とされていると思われますが、そうであるならば、この無償割当を決議する取締役会決議は法律上の「単独行為」としての性質を有するものですから、そもそも「停止条件」は付し得ないのではないか、という疑問。私の手元には司法試験受験時代の四宮先生の「民法総則」がありますが、そのなかで、単独行為については民法506条などからも明らかなとおり、停止条件は付し得ないものとされています。したがいまして、はたして新株予約権の株主無償割当に関する取締役決議には、そもそも停止条件を付すことができるのかどうか、ということについて合理的な説明が必要になってくるのではないでしょうか。大阪の零細法律事務所の弁護士の立場として、この日本を代表する法律事務所の先生方が設計された買収防衛策を論難するだけの能力は毛頭ございませんが、「導入したいと考える企業の役員」としての立場からみると、上記の点、法的安定性という面からみて、すこしばかり疑問が湧いてまいります。ひょっとすると、決議そのものに「停止条件」がつく、というのではなく、割当という会社と株主との当事者間における法律行為自体に「停止条件」がつく、という意味かもしれませんが、そうであっても、上記と同様に「停止条件」そのものの性質からくる疑問が湧いてくるのは同様であります。

この「商事法務」には、「スクランブル」という末尾のコラムがあり、そこにたいへん面白い記事が掲載されています。また、この記事については明日にでもエントリーしてみたいと思います。

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2005年8月18日 (木)

社外取締役と株主価値

金融庁における審問で、MACの村上氏は大証の株を20%超保有することで「大証の経営健全化のために社外取締役の選任を求めたい」と金融庁側に回答しています。また、夢真ホールディングスは、公開買付後の日本技術開発への対応として、10%超の株を保有する筆頭株主として、「社外取締役の選任を要請する」とリリースしています。株主の意思を適正に企業経営に反映させることがコーポレートガバナンスの目的とされていますので、大株主や機関投資家の意向によって社外取締役制度を導入することには異議はありません。ただ、こういった要望があった場合に、いったい誰が特定の社外取締役を推薦するのでしょうか。要望している株主でしょうか、それとも要望を受けた現経営陣でしょうか。私にはそういった基礎的な部分がよくわかっていないようです。

どのような推薦で選任されるにせよ、もし社外取締役が一部の株主の利益だけを代弁するような行動に出た場合には、取締役としての職務行為としては適正とは言えないのではないでしょうか。このあたりが、以前からたいへん疑問を抱いているところでして、株主価値の実現といっても、短期利益を目的とする株主もいれば、中長期保有による企業価値向上に期待する株主もいるわけで、従業員株主もいれば銀行もいる、といった状況で、社外取締役の職務としては総体としての「株主利益の向上」を果たす必要があるのではないか、と考えるのが筋ではないでしょうか。

以前、ニッポン放送の社外取締役4名が同時に辞任されたとき、(社外取締役のひとりでいらっしゃった)久保利弁護士は「代弁すべき少数株主が存在しなくなったから」と辞任理由を述べておられました。この久保利さんのおっしゃった「少数株主」というのは、たとえば村上さんや夢真の立場の株主のことを指すのでしょうか、それとももっと小さな株主、いわゆる一般投資家の方を指すのでしょうか。でも一般投資家と言っても先ほど述べたように短期利益目的の人と長期保有目的の人とは「企業価値」の考え方が異なるのは当然だと思いますし、どうも社外取締役の経営判断において、特定層の株主の利益を考慮することとは直接には結びつかないように思います。

結局、「社内」であれ「社外」であれ、いったん取締役に就任した以上は、その考えるべき株主価値の実現というのは、株主の総意思を考慮したうえでの実現であって、特定層の株主の意見を代弁する、というのは「総意思」との乖離を生むものであって忠実義務違反になるのではないかな・・・と考えます。もちろん、社内取締役と社外取締役が「株主価値の向上」を同様に図るといいましても、おそらく判断として重視すべき基準が異なりますから、うまく機能すれば、さまざまな株主の意見を経営判断に取り入れることが可能になると思います。そういった意味で「企業価値」と並んで「株主価値」という用語が利用されるケースが多いようですが、そこに言う「株主の利益」の多様性というものは十分認識したほうがいいのであって、特定の株主が、「株主の利益に反する」と主張している場合には、それが本当に総体としての株主の意思を実現するものであるかどうか、疑ってかかるほうが適切ではないかと思う次第であります。

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2005年8月17日 (水)

内部統制理論と会計監査人の法的義務

きょうも、カネボウの元役員の方々が証券取引等監視委員会より告発をされた、との報道がありました。不正経理に関する具体的な会計監査人の責任、ということをいろいろなブログで読みますが、「不正」報告義務が会計監査人に課される時代になったとしても、その法的義務についてはどう考えるべきか、今後の重要な課題となるのではないでしょうか。

内部統制理論などを勉強しておりますと、公認会計士や外部委託された不正監査士など、企業情報の信頼性やリスクマネジメントを評価する場合には、「プロセス」自体の適正性を合理的に保証する、というのが基本です。この「プロセス」というのは、リスク管理のための組織やシステム、業務の効率性を高めるための組織など、具体的な企業の体系だけでなく、その体系で日々機能する社員の動き、というものも含まれる概念です。したがいまして、システムを動かしている「人」が変わればプロセスも変わる可能性が出てくるわけです。そういったことから、会計士や監査士が「財務情報に不正はない」とか「業務遂行において不正はない」と合理的保証をしたとしても、それはある時点、もしくはある期間におけるプロセスを前提としているものであって、将来長期間においても「合理的な保証」を行えるものではないわけです。したがいまして、今後日本の企業においてCOSO報告に基づく内部統制システムが構築されていくにしたがって、その監査責任者の法的責任というものも、ある時点における法的責任、もしくはある期間における法的責任という時間的制約で限定されていくのではないだろうか、と私は考えています。もちろん企業から得られた資料などによって不正を発見すべきであった、というケースであれば違った法的責任も考えられるかと思いますが、ある程度信頼しうる内部統制システム自体が企業に浸透してきたようなケースにおいては、この「人の問題(システムを軽視していないか、不正見逃しの共謀はないか、最初の作ったときと同じ労力で監視しているかなど)」にこそ「不正発見」のポイントがあり、そこに焦点をあてないと実際には発見が困難なケースが多いのはこれまでの不祥事事件の具体的な検証からも明らかだと思います。また、こういった限定責任を検討しておきませんと、監査を担当する人達が無限の損害賠償責任を負担させられる可能性が出てしまい、その積極的な監査活動を萎縮させてしまうことも考えられますので、政策的にも意味がある考え方だと思います。内部統制理論と会計監査人の法的責任につきましては、もうひとつ、監査人の報酬と監査活動との関係からも導かれるものがあるように思いますが、それはまた次の機会にエントリーしたいと思います。

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2005年8月16日 (火)

無形資産の時代

経済産業省の「企業行動の開示・評価に関する研究会」で座長を務めていらっしゃる伊藤邦雄教授(一橋大学副学長)が、きょうから日経新聞の「やさしい経済学」欄で「無形資産の時代」と題する論稿を出されています。(連載モノ)

企業価値を決めるモノとして、1990年代以降は無形資産が大きな影響を与えていること、そしてバランスシートに表示されない無形資産によって同年代以降、会計情報の有用性低下が著しいことが各種調査によって証明されている、ということだそうです。評価方法の発達していない無形資産を表示しない現行会計はもはや「アンチーク」とさえ言われているとか。

そういえば、今朝のニュースでも「京都大学と大和証券が無形資産・知的財産の評価システムを共同研究」というのがありました。(私あまり詳しくないんですが、「無形資産」と「知的財産」とは意識して区別使用されているんでしょうか。)関西では弁理士、公認会計士、弁護士などが「知財ネット」を発足させたのも、この無形資産の評価に関する共同研究を目的としているものと思われます。

無形資産が企業価値に影響を与える、ということであれば昨今言われるように企業「法務部」だけの問題ではなく、全社的取組が必要になってきますね。おそらく価値を評価するのであれば、「無形資産」の範囲や、その無形資産のリスクマネージメントなども評価対象になるんでしょうね。

それにしても、財務の信頼性という視点からとらえた場合、もしこの「無形資産」を企業価値の分析対象に加えた場合、その評価の正確性、合理性をどのように担保するんでしょうかね。いろんな分析方法が可能であるならば、また企業経営者やCFOにとっては決算の数字について、裁量の幅を広げることになるように思えるのですが。

この伊藤先生の連載モノ、楽しみです。

(8月17日 追記)

無形資産の定義・・・物的な実体を伴わない将来の便益(利益)の請求権。定義はさまざまだが、いちおう技術やソフトウエア、ブランド、ビジネスモデルなどを想起されたい、とのこと。

重要なのは無形資産のマネジメントが、有形資産と比較してはるかに難しいこと。オンバランス化を阻む無形資産の特性が3つある。同時、多重利用の可能性、便益の不確実性(リスク)の高さ、市場の不存在という3つの特性が要因とのことです。

なるほど。でも3つめの市場不存在、という特性は、1つめと2つめの特性があることによる論理的な帰結であって、特性は2つと言い換えることができるようにも思えます(これは私の意見です) つづきが楽しみ。

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ホリエモン殿は出馬するのか?

自民党から正式な出馬要請が堀江さんにあったとのことで。

最近、多くのブログで選挙ネタといいますか、郵政法案賛否の議論が盛り上がっていますね。私も意見はあるのですが、自民党にも民主党にも、「お得意様センセイ」(いわゆる、事件を紹介してくれる・・という意味です。でも個人零細事務所なんでちっちゃい事件ですが)がいらっしゃるので、ズルイ(せこい)ですが、ここでは控えております。 Σ(^^;)゛ゴメンナサイ・・

ホリエモンさんは出馬宣言されるんでしょうかね??

あまり根拠はありませんが、出馬されないと思います。ホリエモンさんの生き方にとって、なんかプラスになりますかね。出馬要請があった、というだけでプラスにはなったわけでして、ご自身よりも頭のよい官僚の方々と御すメリットというものがあまり思い浮かばないです。センセイは、とてつもなく勉強しなければいけないようですから、勉強する時間がありましたら、せっかく緒に付いたネットによる社会インフラ整備に全力を注いでいただきたいと思いますが、いかがなものでしょうか。(明日くらい、出馬宣言してたりして・・・)

それから「刺客」という言葉。昔の「子連れ狼」を想いだすのは私だけでしょうか。橋幸夫さんの唄が毎日頭をめぐっております。今年の流行語大賞ノミネート間違いなしですね。

(追記です)

と、エントリーしているうちに、ホリエモン殿が「可能性ある」と答えているとのこと。いきなりハズしましたね。(*^0^*)ノ350兆円の重みか・・・・

(8月19日 追記)

とうとう、広島6区からの立候補が決まりましたね。しかも無所属ということで。いままでの自民党の一部幹部の方との経緯や、ご高齢の有権者の評価などの理由から、おそらく自民党公認というのはマズイ、ということで無所属での出馬となったんでしょうね。いずれにしても9月11日の総選挙、これほどまでに話題の多い選挙も久しぶりのような気がします。私はちょっと9月11日は投票ができませんので、不在者投票をする予定です。

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明治安田のコンプライアンス委員会

明治安田生命保険の社外取締役である北尾哲郎弁護士(有限責任中間法人コンプライアンス・オフィサー認定機構の試験委員でもいらっしゃいます)が、不祥事調査委員会と将来の不祥事防止を目的とするコンプライアンス委員会(委員長兼務)の調査状況、活動状況、調査方針などを語っておられます。

フジサンケイビジネスアイの記事

自分の目で見たもの、自分の耳で聞いたものしか信じない、報道についても断片的な情報は推測材料として検討するだけであり、予断は排除する、という姿勢はたいへん納得できるものです。9月20日ころを目処に調査報告書を提出する、と明言するところも真摯な姿勢がうかがわれます。

このインタビューのなかで北尾先生は「明治安田は変われるか」との質問に、「これをしたらマズイ」という感覚を一般社員が皆、もってくれれば法令順守になる、と回答されています。これも報道からの私の推測になってしまいますが、おそらく不祥事発生の時点でも、明治安田の一般社員の方は「これをしたらマズイ」という感覚は当然にもっていたと思います。ただ、規模の小さな企業でもないかぎり、今後の不祥事は「これをしたらマズイ」という感覚を社員が持っているだけでは不祥事再発は防止できないと私は考えています。「マズイ」とわかっていても、社員の公的な事情(取引先との関係、上司の指示や期待、部下の頑張りを無駄にしない温情など)や私的な事情(金銭的な苦境、仲間からの孤立感、出世名誉欲など)から不祥事に走ってしまうのが通常です。いまの時代、名門企業と呼ばれているところは、社員倫理研修などもかなり浸透しており、一般正社員の方でしたら、(とりわけ金融コンプライアンスに関しては)「マズイこと、マズくないこと」の峻別は十分可能だと思われます。

ただ、そっから先が法令順守の難しさだと思いますし、委員会の腕の見せ所ではないでしょうか。私のコンプライアンス委員の経験からすると、(たいへん情けないのですが)不祥事発生の関係者の聞き取りを行うと、その動機が先にあげたような公的な事情による場合には、「なるほど、そんな状況なら私だって同じ行動に出たかもしれない、いやきっと出たと思う」と納得してしまうのです。

「人間はそんなに強くない。強くなれ、といっても無理。」私のコンプライアンス委員としての提言はまずこんな現実を企業が受け入れるところから始まります。したがって、前のエントリーにも書きましたが、社員が責任を回避できるような「モノサシ」を企業が社員に与えることが必要だと思います。それは各企業によって異なりますが、あるときは社長のコミットメントであり、倫理憲章であり、独立委員会による規律であったりします。マジメな社員が「マズイ」ことに手を染めていく段階において、「○○さん、悪いけどうちの会社には○○といった規則があるんで、これ破っちゃうと私も生きていけないし、○○さんも出入り禁止になっちゃうんで」と責任回避できるシステム、拒絶することで個人的に責められないシステム、そしてこういったシステムが機能していることを少なくとも半年ごとに精査、評価するシステムこそ必要だと思います。

先日、高校野球で明徳義塾の出場辞退がいろいろと話題となりました。関西から「君なら甲子園にいける」と説得して、能力のある中学生を引っ張ってきて、地元や学校から大きな期待を受けて、暴力行為の発生後、頭を下げて関係者に詫びて示談交渉に応じ、なんとか迎えた予選で優勝。しかしながら、予選前に監督の採り得た選択肢は3つあったはずです。①暴力行為発生時点で、不祥事を公表して予選出場辞退か、②予選出場直前まで、もっとうまく暴力事件の事後対応を行い、告発という事態を防止するか、③今回のように不祥事を隠して、発覚したらすべて自分の責任とわきまえて、予選に出場するか。監督という立場に立った場合、自信をもって①の選択をする勇気があるでしょうか。情けないですが、私にはありません。もし①の選択をすべきなら、たとえば先に学校側が「不祥事を隠匿した場合には今後10年間は出場辞退する」とか、高野連の出場ルールのようなものがあって、なんら暴力行為に関与しなかった選手たちにも「非情」になれるシステムがないと無理だと思います。

こういった不祥事予防システムを作ることが、企業の経済活動の積極性を阻害する要因にならないか、という不安、それがまた次の課題となってくるわけですが、これはまた別の機会にアップする予定です。

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2005年8月13日 (土)

「共謀共同正犯」を立件する検察庁の意図

猪瀬直樹さんを「名誉毀損だ」と非難しながら逮捕されてしまった内田道路公団副総裁に対して、検察庁は異例の独禁法違反の「共謀共同正犯」容疑で起訴することを検討している、と各報道機関で発表されています。

そもそも身分犯である独禁法違反被告事件(事業者のみが刑罰の対象)に、事業者ではない内田副総裁が「正犯」となるわけですから、よっぽどの理由があると思われます。(ちなみに、身分犯であっても、非身分者が身分者と共同で行う場合には、共同正犯が成立する、というのは最高裁でも認められております。たとえば女性が犯行に加わった強姦罪など)とくに「共謀共同正犯」といいますのは、犯罪の実行には加担せず、たんに「犯行の謀議に加わった」というだけで、正犯と同じ価値がある、と認定するわけですから、社会政策的にみれば、自分は犯行に手を染めないで指示するだけの「首謀者」的な者を捕まえる要請があるときに用いられることが多いわけでして、今回の内田副総裁が談合の首謀者的立場にあったか、というとこれはすこし疑問を感じるわけであります。それでは、検察庁はなぜ、これまで官製談合の際に用いられてきた刑法上の「談合罪」や独禁法違反の従犯(ほうじょ犯)よりも「共謀共同正犯」による立件をめざすのでしょうか。

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2005年8月12日 (金)

日経ビジネスの「法廷戦争」(2)

8月1日の特集記事について、つづきのエントリーです。きょうはいよいよ盆休みスタート!ということもありまして、9月11日に行われる最高裁判所裁判官の国民審査に関するブログなどを事務所でゆっくりと読んでおりました。

先の日経ビジネス特集記事でも「裁判官は権力側に立っているという意識が見え隠れしていて」「お上意識が強い、下々の者に判断を下す」という印象について書かれています。おそらく、国民審査の対象となる「最高裁判事」という方がたに対しても、弁護士出身者を除いて、どちらかというと権力志向の判決を書く人が多い、という印象が一般には強いようですね。

しかし、地裁レベルでの話となりますと、「お上意識が強い」という意見について、私はすこしばかり異論がございます。現代の裁判所はおそろしいほど、当事者に対して気をつかっているのが実情ではないでしょうか。とりわけ一方当事者に弁護士がついていない事件では、懇切丁寧に訴訟行為の意味を説明し、その効果発生について明確な承諾が得られるまで説明を繰り返す。公平な訴訟指揮だけでなく、控訴されれば、自らの証拠評価や法律判断が高裁裁判官に精査されるわけですから、判決を書くときもまた非常に慎重です。当事者が「もうすこし主張したいことがある」と言えば、不承不承でも期日の延期(期日の追加)を認めてくれます。ですから、先の記事で批判されているように「小さなクレームでも判決まで2年かかり、実際のビジネス紛争には使えない」との印象を与えてしまうのはないでしょうか。下々の者に判断を下すようなイメージなら、もっと早く判決まで出せて、現状の裁判がビジネス紛争に資するものとなるはずです。

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相続税9億8000万円脱税

元経団連会長で新日鉄社長を務められた故斎藤英四郎氏の遺産(38億9000万円)について、ご長男氏が9億8000万円の脱税を行ったとして相続税法違反として起訴された、とのことです。

故斎藤英四郎氏の長男、相続税9億8000万円脱税で在宅起訴(日経ネット記事)

在宅起訴ということで、強制捜査がありませんでしたので、起訴段階で報道機関の知るところとなったようです。通常は東京国税局の査察段階、検察庁への告発段階、もしくは検察庁による強制捜査段階で報道されるケースが多いのですが、在宅事件の場合には裁判所の受付段階で司法記者に知られるケースもあります。

通常は ほ脱金額が3億円を超える場合には実刑プラス罰金刑というのが相場ですが、今回は法人税、所得税ではありませんので、修正申告、重加算税、延滞税を払って、情状さえよければ執行猶予プラス罰金刑となることも十分可能ではないでしょうか。ちなみに、出版社「ぎょうせい」の元社長さんの相続税違反のケースでは11億円の脱税金額において実刑懲役2年、罰金2億円で刑が確定しました。

まずなによりも、これだけ高額の相続税違反被告事件ですから、おそらく日本を代表するような税務法務の専門家がすでに支援されているはずですし、ほ脱金額は9億円でも、ほ脱率は(平成14年度時点の相続税率で計算したところ)およそ50%程度であって、ある程度は支払っていることが認められます。また、ほ脱金額をすでに遊興費などで使ってしまった、という事実もないようですし、なによりも割引債を他人名義の貸し金庫に保管していたのはお父様だったとのことで、租税支払回避の動機が薄いように思われます。もちろん、割引債という金融商品の存在を知りながら、申告していなかたのですから、悪意はあるでしょうが、脱税へ向けての悪質な計画性というものは存在しなかったようです。また、このように報道されることによって、親子二代にわたる斎藤家の信用に傷がついてしまった、という事実も、すでに社会的制裁を受けたということが情状面で評価されるものと思います。「ぎょうせい」の元社長さんとの区別という点でいえば、脱税のための緻密な計画性がないことと、真摯に反省をして国税局の調査に協力的である、ということでしょうか。(脱税事実を否定すると、反省をしていないと評価されることもあります)法人税や所得税と異なり、相続税の場合は、一回的な申告行為ですので、再犯のおそれというものが考えにくいことから、この「反省」ということが大きなポイントになりますね。

しかし、この割引金融債、という資産ですが、たしかに現金を窓口に持っていけば無記名性が貫徹されますので税金回避にはもってこいのようにも思えますが、意外にバレますよ。銀行側の顧客名簿のようなものまで国税局が把握できるとは思えませんが、故人の通帳を丹念に調べていけば、現金でまとまったお金が口座から引き出され、その後使途がわからないとしたら、国税局はその引き出した日時に発行された割引債を丁寧に調べ上げて、同一金額の割引債を徹底的に特定します。国税局の調査能力というものは本当にスゴイと感心するときがあります。

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2005年8月11日 (木)

内部統制監査に産業界が反発?(2)

昨日はいろいろなエントリーに、たくさんのコメント、ありがとうございました。過去の記事をいろんな方に読んでいただいていることがわかりました。すべてにお返事をできずに申し訳ありません。

ただ、7月23日のエントリー(内部統制監査に産業界が反発?)について、コンプライアンス・プロフェッショナルさんより的確なご指摘をいただきました。

経済産業省が7月13日に公表した日本COSO、内部統制に関する報告書では、内部統制評価と監査役の役割の強化が提唱されています。経済界は反発しているとのことですが、企業不祥事の防止の観点からは、従来のアメリカ的に内部統制に日本的事情を加味して一歩踏み込んだ内容であると、個人的には評価しております。論文の表題にもありますように、内部統制の問題から、会社のコーポレート・ガバナンスそのものの内容として論旨を展開しております。

従来の内部統制では、経営者自らが、不正を行った場合、企業不祥事を防止することができませんでした。三菱自動車、日本ハムなどがその例です。

今回の経済産業省の意図は、このような企業経営者暴走型の企業不祥事に対して、監査役の機能を強化することで、監査役本来の監視機能による牽制を図ろうとしているものと考えます。特に、今回の会社法の成立により、会計監査人が会社の機関として認められたため、今後の会社の監査については、会計監査は会計監査人、業務監査は監査役というきりわけがより一層色濃くなるものと考えられます。

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2005年8月10日 (水)

内部統制の事例検証

月間「監査役」8月号から、内部統制システム研究で著名な鳥羽至英(とば よしひで)早稲田大学教授の「内部統制事例検証」の連載が開始されました。今回は東京電力原発点検記録改ざん事故に関する検証がなされており、改ざん発覚後の内部統制システムと改ざん当時の統制システムとの比較、および関与した人達への法的責任問題などが非常にわかりやすく説明されています。こういった企業不祥事の調査研究報告は、季刊誌「コーポレート・コンプライアンス」などでも詳細な解説が掲載されております。こういった解説を読みますと、統制環境(たとえば会社の社風やトップのコミットメントなど)が不祥事発生について大きな原因となっていることがよく理解できます。

私自身もすでにエントリーで少し書いたことがありますが、関西のある企業の不祥事をきっかけとして設立された「コンプライアンス委員会」で事故調査をしたことがありますので、こういった不祥事発生原因の調査報告書や改善提案書などを参考にしたことがあります。

関係者からのヒアリングや、膨大な資料の解読など、その調査に向けるエネルギーは相当なものなんですが、ちょっと私としましては、事故発生直前と調査後の内部統制システム変更ということで不祥事の再発が防止できるほど甘くはないなあ、と考えております。といいますか、私の場合、たとえ不祥事が発生したとしても、従前の内部統制システム自体を「目にみえる形で」変更する必要がないのでは・・・と思えるときもあります。なぜなら、たまたま新聞報道されるような企業不祥事が1件発生したとしても、それまでに、そのシステムによって10件ほどの「不祥事原因」を未然に防止した経験があるのであれば、それは「かなり良質の内部統制システム」であって、たまたま発生した1件によって「出来の悪いシステム」とはいえないのではないか、と考えるからです。

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2005年8月 8日 (月)

夢真TOBに対抗TOB登場

郵政法案が参議院で否決、総選挙・・・という記事に隠れて、夢真のTOBに対抗する友好的TOBが発表されました。日本技術開発のホワイト・ナイトとして、株式会社エイトコンサルタントが118円で日本技術開発の分割株式含め公開買付を行うそうです。

また詳細を検討したいと思いますが、日本技術開発のHPで、このエイトコンサルのTOBに対して日本技術開発役員の賛同表明がなされています。会社を現時点で清算するよりも、他社の子会社となるほうが適切であるとの意思を表明するわけですから、現時点での業績予想の修正に関するお知らせが同時にアップされております。一株あたりの純資産額が限りなく118円に近くなければ、「賛同表明」は取締役の善管注意義務違反になってしまう可能性がありますので、こういった予想修正のお知らせが出されたものと思います。ただ、先週(8月2日)の日本技術開発の発表では、そんな気配は一切感じられずに夢真の110円という買付金額を批判しておられ、なおかつ一週間前には119円よりも上昇するような予想を明確に述べておられたにもかかわらず、なんで1週間でこうも変わるのか、素人の私にはよく理解できません。修正理由についても、業務損失引当金見積りを大きく変更したり、繰延税金資産計上額の前提となる「回収可能性」を大きく見直す、ということが実際には行われるものかどうか、非常に疑問でありまして、このあたりはどなたかに教えていただきたいところです。

しかし、この夢真・日本技術開発の問題は法律雑誌、会計雑誌ネタをつぎつぎと提供してくれるものですね。。。(夢真が買付価格を上げた場合には、日本技術開発の賛同表明はどうなるんでしょうか。株式分割は取り下げる可能性がある、ということもちらっと述べられておりますが。)

(8月9日午後 追記)

夢真HDより、上記友好的TOBに対するコメントがアップされております。コメントによりますと、買付期間、買付価格とも延長、アップの意思はない、とのことです。たしかに、現状の市場価格よりも33パーセントほど低い買付価格であることや、50,1%以上の買付を条件とする提携ということですから、買付が進むかどうかは微妙なところでしょうね。

また、日本技術開発の株価がとんでもなく跳ね上がっています。前日比88円高 263円終値 個人投資家の短期売買目的によるものと思われますが。

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弁護士が権力を持つとき

LAT37Nさんのブログに、たいへん興味のあるエントリーがあります。

監査人って不正をみつけてくれるんですよね?
内容がたいへん興味深く、勉強になります。このエントリーのなかで「監査が最高のパフォーマンスをあげるためには、監査人が国家権力をもたないと無理なんではないか」との感想をもらしておられます。最近の「監査人の不正監査」に関する金融庁の構想などを読んでおりますと、ほんとに私も「よっぽどの権力をもたないと不正発見というのも無理ではないか」と思っています。たんに「意見不表明」あたりをちらつかせるだけでは、企業の不正をこじあけるのは至難の業のように感じます。
ただ、民間人が「ある日突然」権力を手にした場合、その先にはたいへん恐ろしい世界が待っていることも知っておかなければなりません。私は以前、整理回収機構(RCC)の債権回収のお手伝いをしていた時期があります。ご承知のとおり、RCC自体が強制権限を持っているわけではありませんが、100%親会社であります預金保険機構は特別な調査権限を持っております。(RCCの機構内容が少し変わった現在でも同様の権限があるかどうかは、ちょっと不正確ですが)金融機関の商品販売に問題あり、として商品購入者の代理人として、私が金融機関へ説明を求めたときには一回も会えなかった役員さんでも、RCCの代理人として伺うや、その役員さんが門戸を開いて「お待ちしていました」とのこと。最初はこちらも戸惑いましたが、こんな仕事に慣れてしまうと自分がたいそう偉くなったような錯覚に陥り、「権力」の背景があたりまえのものとなってしまって、なんでもできそうな感覚になりましたね。
「私のやり方に文句があるなら、訴訟でもおこしはったらどうですか?」
もともと訴訟に対して拒絶反応がない弁護士ですから、そんな捨てゼリフを残してもあまり罪悪感はなかったのですが、市場経済に対する萎縮的効果というものを考えるととんでもないことだったと反省しています。
権力というものは、できるだけ謙抑的に行使されるべきですし、そういった権力の使い方は若いころからすこしずつ身に付けるべきだ、民間人が突然強制権限を手にする、というのはたいへん危険、というのが現在の私の意見です。

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2005年8月 6日 (土)

裁判員制度(弁護士の視点から)その2

きょうは土曜日ということで、ビジネス以外の話題をひとつ。(大阪はたいへんな雷雨になっておりますが・・)

「裁判員制度模擬裁判」が無事に3日間の日程を終えました。判決言渡しにおいて、裁判員らは殺人未遂罪の被告人について懲役5年の実刑判決を言い渡したそうです。公判前整理手続き(新しい刑事訴訟法によるもの)を導入したために、取調証拠も限定されており、かなりスピーディに審理が進んだとのこと。

ただ、記事を読んで気になりましたのが「量刑に関する裁判員と裁判官とのやりとり」です。被告人の前科を重視して懲役6年が相当とした50代男性会社員(検察官の求刑は7年)や、被告人が高齢のために3年が妥当とした20代の女性の意見も出たそうですが、最終的には同種事件の前例を職業裁判官が紹介して5年に決まった、とのこと。たしかに職業裁判官の意見に裁判員が異を唱えることは、本当にムズカシイですよね。

99,8%の有罪率維持を誇る、日本の優秀な検察官による起訴独占主義を前提とした刑事裁判制度のなかで、もし裁判員制度が機能するならば、おそらく「事実認定」よりも「量刑」にこそ民意が反映されるべきだと(すくなくとも私は)思うのですが、こういった量刑の決定システムを聞いていますと、現実に刑事裁判に関与していく弁護士としましては、ちょっと裁判員制度について、「ひょうしぬけ」してしまいますね。16年も弁護士をやっておりますと刑事事件の同種事犯に関する量刑表のようなもの(どういった犯罪で、どういった事情を準備すれば、どれくらいの刑が言い渡されるか、というものを詳細に表としてまとめたもの。これは保釈の可否も検討できて、依頼者である被告人や被告人の親族との説明義務を尽くすためには非常に便利で重宝します)を持っていますので、裁判員制度になっても結局のところ裁判官の相場感が最重視されるということでしたら、裁判員のほうをわざわざ向いて弁論しなくてもだいじょうぶ、などと軽率にも安堵してしまいます。

ホンネで申し上げますと、こういった模擬裁判の段階で「若い女性裁判員の意見を尊重して、裁判官は5年と思ったけど3年に意見が集約された」とか「相場は5年だが、どうも弁護人と被告人とのぎくしゃくした法廷でのやりとりをみていると、被告人が本心から反省しているようには思えなかった、との裁判員の意見が強かったので、求刑どおり7年とした」など、量刑決定に至るシステムにドラスティックなところがあってもよかったんじゃないでしょうかね。そうすれば、我々や検察官方としても「これはえらいこっちゃ!市民向けのわかりやすい弁論を工夫しなくては」とか「公判前整理手続きの勉強しなくちゃ」と思い、刑事司法への弁護士の能力アップの機会につながると思うのですが。

もちろん、被告人には公平で適正な手続きによる裁判を受ける権利がありますので、相場感覚を伴う判決を受けることができるほうが「公平」であり「適正」とは言えるでしょうが、時代の流れによって国民の処罰感情に変化が生じることもあるでしょうし、過去の「相場」が正しかったのかどうかを現代において検証する意義もあるでしょうから、裁判員制度を取り入れる以上は、あまり職業裁判官が過去の同種事件における量刑などを持ち出すのはどうなのかな・・・との危惧は否めないと思います。

しかし今回のものは、純粋な法曹三者による「まじめな」検証が目的だと思われますので、プレゼン目的などといった私の軽率な意見は無視されてしまうんでしょうね。。。。私なんか、保釈許可決定の場面にこそ、裁判員制度を取り入れるべきだと真剣に思うんですが。

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日経ビジネスの「法廷戦争」(1)

日経ビジネスの8月1日号で、またまた「法廷戦争」という特集記事が組まれています。ライブドアとニッポン放送の事件における「最強の弁護団」の話などはたいそう興味深く読ませていただきました。

日経ビジネスという雑誌の性格からでしょうか、裁判所に対するイメージは現状としてかなり批判的な特集が組まれておりまして「時代に取り残された戦場、裁判所は変われるか」とのタイトルが掲げられ、「嘘がまかりとおる法曹界」「偽証の海を泳ぐ」「下々の者へ判断を下す意識」「企業に役立つ裁判所へ」などの副題がついております。ちょっとこの記事には閉口しました。弁護士のビジネスに対する意識に対するご批判などは、まったく気にならないのですが、裁判所への注文となると、私の意識と日経ビジネスの意識とではかなり大きな隔たりがあります。あまりにも片面的な主張であって力のない文章になっています。

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2005年8月 5日 (金)

掲示板発言者探索の限界

きょうもエイベックスのWEBサーバーに何者かが侵入して、一時閉鎖措置をとったというニュースが流れていました。

ネットの世界の違法行為を民間の力で抑止することはけっこうムズカシイのが現状です。私がある企業から依頼されて、その企業の信用毀損の発言を繰り返す者を特定する作業を継続してきましたが、やっと掲示板運営企業からその発言者のIPを開示してもらい、解析したところ、その発言者は常にホンコンやマレーシア、タイなどのブロキシサーバーを経由して、その掲示板に発言をしていたことが判明しました。専門家に問い合わせたところ、この先、特定のパソコンまで辿り着くための作業は可能ではあるが相当な経費と時間を要するとのこと、結局のところあきらめざるを得ませんでした。よく「IPアドレスさえわかれば、身元がわかる」などと説明されている法律本などがありますが、あれは不正確な表現ですね。たしかにIPアドレスから契約プロバイダーが判明して、その後弁護士による開示請求などでプロバイダー契約者が特定できるケースもありますが、実際に悪質な発言を繰り返す常習者というのは、IPアドレスが判明しても、その先特定人に辿り着けないような用意周到な準備をしています。われわれ弁護士としても、掲示板(特定のスレッド)を閉鎖に追い込んで、更なる企業の損害を回避したり、発言者情報を入手することはできても、本当の意味で発言者に損害賠償請求訴訟を提起できる事例というのは、発言者がネット情報にそれほど詳しくない人でもないかぎり限界があると思いますし、依頼企業にはまえもって受任事務の限界もきちんと説明しておく必要はあろうかと思います。(ただ、どこの世界にも闇の「必殺仕事人」のような方はいらっしゃって、2ちゃんねるなどで叩かれた企業などは、高いお金を払えば発言者のパソコンまで教えてくれる人がいらっしゃるようです。)

私が探索しているその発言者は、私のブログもよく見ているらしいので、一言申し上げますが、掲示板の発信者情報調査のなかで、あなたの特定ができる別の情報を把握しました。これでやっと大阪で訴訟を提起できる状況になりましたので、今後ともよろしくお願いいたします。

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2005年8月 4日 (木)

会計監査人の守秘義務

会計士さんのブログというのは、その数も多く、また仕事ぶりを懇切丁寧に解説していただいているスグレモノが散見されますので、よく拝読させていただいているのですが、会計士さんの守秘義務についてエントリーされていたものがありました。

依頼主の企業と監査に関する契約を締結した以上、その企業の内部事情に触れるわけですから、当然に依頼主たる企業の秘密を守る義務を負うわけですね。また、その守秘義務があるからこそ、依頼主企業の信頼を得ることができますし、財務情報の信用性を確保できるわけです。こういった守秘義務については、企業の不正が疑われる場合もしくは不正を発見した場合に、その企業の監査役に対しては(これは企業内部の人間に対してですから守秘義務とは関係ありませんが)報告をすることになるんでしょうが、外部者、たとえば証券取引等監視委員会のような官公庁へ報告をする、ということになると職業会計人の守秘義務との抵触が問題として出てくるわけですね。いま、そういった不正報告義務を会計監査人に認めよう、との機運が高まっているわけですが、どういった基準で「報告する」「報告しない」と区別するのか、これは法律に精通しておられない会計士さん方には、どんなに詳細な基準を作ってみても困難な課題だと思われますし、弁護士の立場からみると、判例の積み重ねでもないかぎり、曖昧なゾーンでの判断はどっちに転ぼうとも訴訟対象にはならざるをえないでしょう。したがって会計監査人が、もっとも訴訟リスクを回避しうる手段としては、経営者からの聞き取りプラス弁護士の意見、ということになるでしょうね。つまり、最終判断者となることを回避するのが適切なことになろうかと思われます。

そして、この「守秘義務」の問題なんですが、たとえば監査人と企業との意見が合わず「不適正意見」しか書けないということで企業が監査人を変更した場合、その従前の監査人は後任の監査人に対して、自分がなぜ不適正意見しか書けないと判断したのか、その説明というのはなされないんでしょうか?これは「守秘義務」の問題になってしまうのでしょうかね?弁護士にも当然職業上守秘義務は課されておりますし、こういったブログを書くときにもたいへん気を遣うわけですが、依頼者との関係で諸事情により弁護人(代理人)を辞任したり解任される場合、後任となる弁護人(代理人)に対してはかなり詳細に事情を説明いたしますし、こちらで作成している事件記録も後任の弁護士に交付いたします。これは依頼者自身の要望によることが多いのですが、後任の代理人の事務処理遂行上必要な行為だと考えておりまして、守秘義務の範囲外のものだと思われます。会計監査人の場合にも、やはり後任の方への事務引継ぎの際に、どのような事情で辞任(解任)に至ったのか説明することは委任契約に付随する義務履行行為のひとつだと思いますし、またたとえ現行法上会計監査人が外部の者だとしても、後任者はその職務上企業内部の者と同視して、そもそも守秘義務が免除される対象者ではないか・・・と考えたりします。

さらに、新会社法のもとでは、会計監査人は会社の機関となるわけですから、どのような事情で辞任もしくは解任に至ったのか、株主から要望があれば説明する責任も発生するようにも思われます。そういった事態にまで「守秘義務」をいうものを持ち出すことは、どうも理由のはっきりしない責任回避のようにも受け取られかねないのではないでしょうか。

カネボウ粉飾事件などにより、不正監査報告義務というものが、さらに議論されてくるものと思いますが、会計監査人の法的責任との関係で「会計監査人の守秘義務」の適用場面を明確にしておかないと、今後は会計士さんが訴訟当事者となってしまう可能性が無限に広がってくることになりそうです。

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2005年8月 3日 (水)

コンプライアンス委員会からの提案

昨年より、ある企業の不祥事をきっかけとして、コンプライアンス委員に就任をしておりましたが、その委員会での「改善提案」というものを提出いたしました。もちろん、いままでは原因調査や再発防止策という、その不祥事特有の問題だけを取り扱っていたのですが、今回は将来展望ということで、「トップへの委員会からの要請」というものでした。

私の提案は性善説と性悪説の折衷案です。性善説は「社員は変わることができる」をモットーとして社長からのコミットメント中心のもの。「この会社は社員に敗者復活戦を保証する。もし、あなたが会社を愛するあまり、会社に傷をつけてはいけない、仲間に迷惑をかけてはいけない、関係取引先に迷惑をかけてはいけない、という気持ちが先立ってしまい、その行動が社会に迷惑をかける事態になりそうだったら、立ち止まってください。あなたが立ち止まることを会社は評価するし、それで迷惑をかける人が出たとしても、会社はあなたの今後の努力を正当に評価することを約束します。たとえば具体例をあげると・・・・・・」

もうひとつは性悪説に基づくもの。会社トップと業界団体とのつきあいに関するものでして、「業界団体の恒例行事はトップだけでなく、社員も同行させること、業界団体行事予定については、たとえ私的な会合であっても事前に○○総務部長に申出ておくこと、業界団体が、オブザーバーとしての社員同行を認めるよう働きかけること」

いままで社長以下、役員の方にはたいへんよくしていただきましたが、上記提案が受け入れられなければ、コンプライアンス委員は辞任する旨、申し上げました。もちろん、委員会は存続しますので、個人的なものではありますが。妥協案であれば、またそのとき、進退については検討する、ということで慰留要請は受けましたが・・・

せっかく不祥事をきっかけに、社内の雰囲気を一新しようということで始まった委員会ですから、業界のリーダー的役割も果たしてほしい、というのが願いです。こういった委員は、社員さんとは違って、「トップに解任されたり、辞任してナンボ」の世界だと思っています。もちろん外部の人間ですから、企業や業界団体の実情を知ろうとする最大の努力を果たしたうえでのことですが。あとは私を、その企業に紹介していただいた方の顔が立つような形だけを工夫するだけです。

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2005年8月 2日 (火)

夢真 株式分割東京地裁決定について

8月1日に東京地裁のWEBページに「決定全文」が掲載されておりましたので、きょう全文を読んでみました。仮処分決定を申し立てる、というのは、債権者(この事件では夢真のことを指します)が本裁判を待っていては救済されないので、なんとか裁判所に「仮の」裁判を出してもらう、という意味の暫定措置を求めるものです。したがいまして、将来の本裁判になったときに、どんな権利を守りたいのか、その「権利」の立証を必要とします。この権利自体が成り立たない場合には、本裁判になっても救済されることはありませんから、仮処分命令申立も却下されることになります。このたびの夢真は日本技術開発が株式分割の取締役会決議を行ったことについて、通常の新株発行の不公正発行に関する商法280条の10の適用もしくは類推適用による「新株発行差止め請求権」、機関権限分配違背に基づく「取締役会の無効確認請求権」、夢真TOBを妨げられたことによる「夢真の営業権」侵害排除請求権を、上記の「守りたい権利」として主張したわけですが、いずれも裁判所からは認容されませんでした。

そこで、認容されなかった理由を、鹿子木決定の構成をおおまかに分析して、今後夢真側で検討している「日本技術開発の新株予約権発行差止め」を展望する材料にしたいと思います。なお、ここに書いておりますことはいままでと同様に、まったくの個人意見ですので、その結論がどのようになろうとも責任を負うものではございませんので、あしからずご了承ください。

なお、本日(8月2日)の日経ネットによりますと、8月12日以降で夢真側は日本技術開発側とトップ会談を行う用意があることを表明し、その際に夢真側は、日本技術開発の会計帳簿などの開示を求めるそうです。もし、開示に応じない場合には、新株予約権差止め請求も辞さないとのことだそうです。ただ、よくリリースを読みますと、9月の株主総会開催までは日本技術開発の対応を静観するようですので、日経の2日ほど前の記事にあったように今週にも差止請求を申し立てる、ということはない模様です。

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M&A新時代への経営者の対応

8月1日、私が参加しております全国社外取締役ネットワークと関西経済同友会との共催によるシンポジウム「M&A新時代に経営者はどう対応すべきか」に出席してまいりました。パネリストは近藤光男教授、大楠泰治氏、田村達也氏、丸一鋼管の鈴木社長です。最近の夢真HDによるTOBやワールドのMBOに対する感想なども盛り込まれた、興味ある内容でした。とりわけ、ワールドが上場を廃止するに至った経緯など、相談を受けておられた立場からの内容などは、逆に敵対的買収というものの本質を認識するうえではたいへん貴重な情報でした。もうすこし具体的なところまで言及すると、はたして今回のワールドの非公開方針は通常のMBOといえるものか、価格との関係から取締役の利害相反取引の可能性はなかったのか、純粋にプライベートエクイティの手法をとるべきではなかったか、など非常に興味のある論点にまで話題が及びました。また、丸一鋼管が事前警告型の株式分割、およびライツプランを導入するに至った経緯なども、その事業規模等を考えると他社にも非常に参考となるものでありまして、経営者サイドからみた防衛策導入の目的、というものを考えさせられる内容でした。

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