M&A新時代への経営者の対応
8月1日、私が参加しております全国社外取締役ネットワークと関西経済同友会との共催によるシンポジウム「M&A新時代に経営者はどう対応すべきか」に出席してまいりました。パネリストは近藤光男教授、大楠泰治氏、田村達也氏、丸一鋼管の鈴木社長です。最近の夢真HDによるTOBやワールドのMBOに対する感想なども盛り込まれた、興味ある内容でした。とりわけ、ワールドが上場を廃止するに至った経緯など、相談を受けておられた立場からの内容などは、逆に敵対的買収というものの本質を認識するうえではたいへん貴重な情報でした。もうすこし具体的なところまで言及すると、はたして今回のワールドの非公開方針は通常のMBOといえるものか、価格との関係から取締役の利害相反取引の可能性はなかったのか、純粋にプライベートエクイティの手法をとるべきではなかったか、など非常に興味のある論点にまで話題が及びました。また、丸一鋼管が事前警告型の株式分割、およびライツプランを導入するに至った経緯なども、その事業規模等を考えると他社にも非常に参考となるものでありまして、経営者サイドからみた防衛策導入の目的、というものを考えさせられる内容でした。
シンポジウムの内容については詳しく触れませんが、このシンポジウムが関西経済同友会との共催ということもあり、討論終了後にホールとの質疑応答の時間が設けられました。その質疑応答がこれまた、たいへん面白かった。
「M&A新時代といっても、我々は昔から合併、事業提携をやってきた。いまごろ新時代などといわれても、なんかファンド向けの銀行やら、弁護士やらに儲け口を与えているにすぎないのではないか。新しいことを勉強せえ、と言われてもしっくりこない。」
「社外取締役といわれても、月1回会社にきてくれる人になにがわかるんや。偉い人に社外取締役になってもらったことがあるが、ハッキリいって失敗やった。事前に書類送っても、なんも勉強せんと会議に来てはった」
大阪のシンポは辛口の質問がポンポンと飛んできます。討論者サイドの企業統治や企業買収がグローバルな金融システムを見据えているのに対して、関西同友会の会員の方々のご意見は、やはりいままで成功してきた企業理念への自信に基づく現実論を基礎においたものでして、これまた説得的なご意見です。
もちろん私自身は、日本企業が世界向けの商売に挑む以上は、OECD主導型のルールを日本にも導入していかなければならないし、金融資産の活性化のためにも新しいM&Aルールを模索したり、企業統治の方法を検討すべき、との立場ですが、きょうのシンポジウムを聞いておりますと、日本人の文化を取り入れたシステム(折衷案)というものであっても、なかなか浸透させるには険しい道があることを再認識いたしました。
| 固定リンク
コメント