無形資産の時代
経済産業省の「企業行動の開示・評価に関する研究会」で座長を務めていらっしゃる伊藤邦雄教授(一橋大学副学長)が、きょうから日経新聞の「やさしい経済学」欄で「無形資産の時代」と題する論稿を出されています。(連載モノ)
企業価値を決めるモノとして、1990年代以降は無形資産が大きな影響を与えていること、そしてバランスシートに表示されない無形資産によって同年代以降、会計情報の有用性低下が著しいことが各種調査によって証明されている、ということだそうです。評価方法の発達していない無形資産を表示しない現行会計はもはや「アンチーク」とさえ言われているとか。
そういえば、今朝のニュースでも「京都大学と大和証券が無形資産・知的財産の評価システムを共同研究」というのがありました。(私あまり詳しくないんですが、「無形資産」と「知的財産」とは意識して区別使用されているんでしょうか。)関西では弁理士、公認会計士、弁護士などが「知財ネット」を発足させたのも、この無形資産の評価に関する共同研究を目的としているものと思われます。
無形資産が企業価値に影響を与える、ということであれば昨今言われるように企業「法務部」だけの問題ではなく、全社的取組が必要になってきますね。おそらく価値を評価するのであれば、「無形資産」の範囲や、その無形資産のリスクマネージメントなども評価対象になるんでしょうね。
それにしても、財務の信頼性という視点からとらえた場合、もしこの「無形資産」を企業価値の分析対象に加えた場合、その評価の正確性、合理性をどのように担保するんでしょうかね。いろんな分析方法が可能であるならば、また企業経営者やCFOにとっては決算の数字について、裁量の幅を広げることになるように思えるのですが。
この伊藤先生の連載モノ、楽しみです。
(8月17日 追記)
無形資産の定義・・・物的な実体を伴わない将来の便益(利益)の請求権。定義はさまざまだが、いちおう技術やソフトウエア、ブランド、ビジネスモデルなどを想起されたい、とのこと。
重要なのは無形資産のマネジメントが、有形資産と比較してはるかに難しいこと。オンバランス化を阻む無形資産の特性が3つある。同時、多重利用の可能性、便益の不確実性(リスク)の高さ、市場の不存在という3つの特性が要因とのことです。
なるほど。でも3つめの市場不存在、という特性は、1つめと2つめの特性があることによる論理的な帰結であって、特性は2つと言い換えることができるようにも思えます(これは私の意見です) つづきが楽しみ。
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