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2005年8月 4日 (木)

会計監査人の守秘義務

会計士さんのブログというのは、その数も多く、また仕事ぶりを懇切丁寧に解説していただいているスグレモノが散見されますので、よく拝読させていただいているのですが、会計士さんの守秘義務についてエントリーされていたものがありました。

依頼主の企業と監査に関する契約を締結した以上、その企業の内部事情に触れるわけですから、当然に依頼主たる企業の秘密を守る義務を負うわけですね。また、その守秘義務があるからこそ、依頼主企業の信頼を得ることができますし、財務情報の信用性を確保できるわけです。こういった守秘義務については、企業の不正が疑われる場合もしくは不正を発見した場合に、その企業の監査役に対しては(これは企業内部の人間に対してですから守秘義務とは関係ありませんが)報告をすることになるんでしょうが、外部者、たとえば証券取引等監視委員会のような官公庁へ報告をする、ということになると職業会計人の守秘義務との抵触が問題として出てくるわけですね。いま、そういった不正報告義務を会計監査人に認めよう、との機運が高まっているわけですが、どういった基準で「報告する」「報告しない」と区別するのか、これは法律に精通しておられない会計士さん方には、どんなに詳細な基準を作ってみても困難な課題だと思われますし、弁護士の立場からみると、判例の積み重ねでもないかぎり、曖昧なゾーンでの判断はどっちに転ぼうとも訴訟対象にはならざるをえないでしょう。したがって会計監査人が、もっとも訴訟リスクを回避しうる手段としては、経営者からの聞き取りプラス弁護士の意見、ということになるでしょうね。つまり、最終判断者となることを回避するのが適切なことになろうかと思われます。

そして、この「守秘義務」の問題なんですが、たとえば監査人と企業との意見が合わず「不適正意見」しか書けないということで企業が監査人を変更した場合、その従前の監査人は後任の監査人に対して、自分がなぜ不適正意見しか書けないと判断したのか、その説明というのはなされないんでしょうか?これは「守秘義務」の問題になってしまうのでしょうかね?弁護士にも当然職業上守秘義務は課されておりますし、こういったブログを書くときにもたいへん気を遣うわけですが、依頼者との関係で諸事情により弁護人(代理人)を辞任したり解任される場合、後任となる弁護人(代理人)に対してはかなり詳細に事情を説明いたしますし、こちらで作成している事件記録も後任の弁護士に交付いたします。これは依頼者自身の要望によることが多いのですが、後任の代理人の事務処理遂行上必要な行為だと考えておりまして、守秘義務の範囲外のものだと思われます。会計監査人の場合にも、やはり後任の方への事務引継ぎの際に、どのような事情で辞任(解任)に至ったのか説明することは委任契約に付随する義務履行行為のひとつだと思いますし、またたとえ現行法上会計監査人が外部の者だとしても、後任者はその職務上企業内部の者と同視して、そもそも守秘義務が免除される対象者ではないか・・・と考えたりします。

さらに、新会社法のもとでは、会計監査人は会社の機関となるわけですから、どのような事情で辞任もしくは解任に至ったのか、株主から要望があれば説明する責任も発生するようにも思われます。そういった事態にまで「守秘義務」をいうものを持ち出すことは、どうも理由のはっきりしない責任回避のようにも受け取られかねないのではないでしょうか。

カネボウ粉飾事件などにより、不正監査報告義務というものが、さらに議論されてくるものと思いますが、会計監査人の法的責任との関係で「会計監査人の守秘義務」の適用場面を明確にしておかないと、今後は会計士さんが訴訟当事者となってしまう可能性が無限に広がってくることになりそうです。

8月 4, 2005 会計監査人の守秘義務 |

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(メールマガジン『CFOのための最新情報』(2005/8/3号)より抜粋、一部加筆修正) 昨日の日経新聞1面トップに「会計士に通報義務」という記事が掲載されていた。 記事によると、 『金融庁は監査法人や公認会計士に対し、会計監査の過程で粉飾決算など... [続きを読む]

受信: 2005年8月 4日 (木) 10時08分

コメント

こんにちは。
会計士の任務は守秘義務ですね。
改めて 実感しました。

投稿: 智佳子 | 2009年7月 2日 (木) 18時44分

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