« 法律事務所と情報セキュリティ | トップページ | 経済産業省の企業行動指針(1) »

2005年9月 4日 (日)

窃盗罪に罰金刑が適用

2007年あたりから、窃盗罪に「罰金刑」が新設されるそうです。

窃盗罪に罰金刑導入 法務省方針(朝日新聞)

このブログを読まれている方には、あまり関係ないかもしれませんが、弁護士の業務にとってはかなり影響のある改正です。公務員や公認会計士さんなど、「禁固刑以上の刑に処せられる」ことが失職につながる人の弁護を行うケースでは、起訴されるか、起訴猶予となるかで、大きな違いがありました。いまの刑事司法において、窃盗罪で起訴されてしまえば、間違いなく公務員の方は職を失います。(執行猶予でも失職です)したがって、公務員犯罪の起訴前弁護においては、被告人の家族から「嫌疑不十分」もしくは「起訴猶予」を勝ち取ることが私選弁護の至上命令でした。

しかしながら、罰金刑が新設されるということは、「起訴猶予」と「起訴」の間に「略式起訴」という「クッション」ができます。公務員や士業の失職要件は「禁固刑以上に処せられる」ことですから、たとえ起訴されたとしても、罰金刑によって救われることになります。窃盗被害の金額が多少高額であっても、その被害弁償などが可能であれば、おそらく初犯の場合にこの罰金刑が適用される場面が多くなると予想されます。保釈金も必要なくなりますので、家族にとっても助かります。窃盗罪の初犯ケースなどにおいては、今後「国選弁護」と「私選弁護」の差異、そして担当弁護士の刑事弁護能力の差というものが、被告人の職業人生に大きな影響を与えることが予想されます。

もちろん、罰金といいましても、支払えないと「労役場留置」ということで、身柄が拘束され労役することになりますが。(でもここ数年、労役場に留置するといっても、留置できるほど設備に余裕がないので、本当に身柄が拘束されるかどうかはわかりません)

ちなみに、最近よく「大阪の社民党候補の方は、有罪が確定しているのになんで国会議員の選挙に出られるの?」と聞かれますが、あれはちゃんと公職選挙法11条で、有罪が確定して執行猶予中の人は候補者たりうる、と明文規定がありますので、被選挙権はあります。

|

« 法律事務所と情報セキュリティ | トップページ | 経済産業省の企業行動指針(1) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 窃盗罪に罰金刑が適用:

« 法律事務所と情報セキュリティ | トップページ | 経済産業省の企業行動指針(1) »