敵対的相続防衛プラン
というほど、たいそうなものではありませんが、中小企業の社長さん向けに会社法講演などをいたしますと、株式会社、有限会社の将来への不安として、株式相続の問題が非常に深刻なのがわかります。私も大阪地裁の商事部で会社乗っ取りに関する裁判などをしたことがありますが、真剣に会社経営権を握りたい、という場合だけでなく、なるべく高値で相続株式を売却したいとの思惑から、ドロドロの裁判に至るケースが多いですね。
予防法務の問題として、現経営者死亡によってその後に内紛が発生する可能性があることは、だいたいわかりそうなものですから、遺言によって株式取得者を指定して、そのほかの相続人には償金請求権があるように定めておけばいいはずです。しかし、実際のところは、遺言をきちんと作成していないケースが多く、また遺言を作成していたとしても、遺言自体の無効やら、遺留分減殺請求やら、いろんな理屈も考えられます。こういった相続を原因とする会社事業承継上の問題はおそらく今後は増え続けるものと予想されます。
そこで、今回の会社法では、相続を原因とする株式承継の場合であっても、会社の譲渡に関する承諾を要する旨、定款に記載することができるようになりました。一般に、相続といいますのは、株主の地位を相続人が「包括的に承継」するために、会社法上の「譲渡」にはあたりません。これまでは、こういった防御手段がなかったために、紛争が発生しておりましたが、今後は事業承継上問題あるケースでは、会社法制定後、すみやかに相続時における株式譲渡制限の定款変更をされてはいかがでしょうか。もちろん、株式の売り渡しに伴う値段の問題など、解決できない点もありますが、「企業経営は防衛される」安心感がありますから、裁判所が選任する会計士さんや税理士さんなどの鑑定だけが重点になるだけだと思います。
あと、有限会社についてはどうでしょうかね。会社法のもとでの「特例有限会社」については、おそらく社員の地位の承継についての手直しはされていないと思われますので、これまで同様、ドロドロ裁判のリスクはあるかもしれません。(社員の地位も相続によって包括承継されます)ただ、特例有限会社から商号変更して、「会社法」の適用のある株式会社に変更すれば、同様に譲渡制限規定を定めることが可能です。
中小企業の社長さん対象の講演会だとよく聞かれるのが
「先生、有限会社はそのままでええの?なくなるって聞いたんやけど」
「うーん、なくなると言えばなくなる。なくならないと言えば、なくならない・・・」
「どっちやねん!」
(あっそうそう、会社法の施行日が1ヶ月延期になり、5月1日からになるそうです。4月総会の企業とか、買収防衛策の導入など含め、検討しないといけませんね)
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