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2005年9月 2日 (金)

無形資産と知的財産(その2)

一週間ほど前に「無形資産と知的財産」というテーマでエントリーして、いろいろなコメントをいただきました。そのときは、無形資産というものを果たして客観的に金銭的な価値評価をして「市場化」できるのか、かなり懐疑的な意見を書かせていただきました。

ところで、たまたま大阪の某大学農学部内に本社を構える「産学連携ベンチャー企業」の倒産手続きに関与することになり、関係者の話をお聞きしているなかで、すこしばかり追記したほうがよさそうに思われましたので無形資産と知的財産(その2)としてエントリーいたします。結論からいいますと、現実の社会では「無形資産の金銭的評価方法の策定」は待ったなしの状況にある、ということです。私のような机上の理論で、つまり理屈で考えている世界とは別に、こういったベンチャー企業がバタバタと倒れていく現実に関与してみると、「市場化できるかどうか、理屈では疑問があったとしても、清水の舞台から飛びおりるつもりで無形資産の評価方法を作らないともっとたいへんな状況になる」という空気が流れています。無形資産の価値基準としてどっかで理屈で割り切れない部分があったとしても「これが正確で客観的な相場価格です」という「世の中の擬制」を前提とする必要がある、ということでしょうね。

このベンチャー企業は大手の製薬会社が出資し、公共団体も金銭的支援を行い、その大学の教授以下、いわゆる「ナノバイオテクノロジー」を基に商品開発を行ったのですが、研究開発のためにすでに8億円を投入し、あと3億円投入すれば「臓器移植」などに画期的な効果をもたらす商品が完成するところだった(この評価はその大学教授の意見ですが)が、資金が続かず、また仕掛商品を買取る製薬会社も現れず、やむなく倒産してしまいました。日本ではすでにこの3年間で1000ほどの産学連携ベンチャー企業が誕生したわけですが、そのかわり次から次へと事業閉鎖に追い込まれているのが現状のようです。わずかな事例に関与しただけで大きなことは言えませんが、「産学連携」といっても、その失敗はやはり「人間」によるところが大きいようです。組織と組織がいっしょになってみても、やはり産業界と大学側との人間的な信頼関係が築かれない場合には、うまくいかないケースが多いと思います。とりわけ大学の先生は企業人ではありませんから、その商品開発のすばらしさをプレゼンする能力はどっかで補完してこなければなりません。結局、そのベンチャーの有するものは将来に大きな商品価値を有するかもしれない無形の技術であって、これをなんらかの形で金銭的な価値に置き換えられないと開発の時間と資金を考えた場合に、どっかでショートしてしまいます。このたびの事件を概観するなかで、ベンチャーにおいて追加資金を融資してもらったり、無形資産の切り売りで資金をつないだりする方法としては、もはやVCに対しても、産業界に対しても、その市場価格算定は不可欠です。21世紀の日本を支えると言われる「ナノテクノロジー」を国をあげて積極的に開発していくためには、民間資金の投入は不可欠であり、またそのためには無形資産の担保化、売買対象化が必須の課題のようです。

私の当初の考えでは、この「無形資産の資産評価推進」というのは、「オンバランス化による会計の国際基準化の推進」というものが大きな動機だと思っていましたが、こうやって現実社会との接点から考えると、日本の将来をしょってたつ生命技術、バイオ、IT、そして軍事、そのすべての将来を左右するナノテクビジネスの開発と深い関連性を持ち、市場化計画が喫緊の課題として多大な知恵と労力が投入されていることを、すこしばかり納得することができました。

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