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2005年9月 9日 (金)

営業秘密管理指針(経済産業省)

まだ資料そのものは読んでおりませんが、退職従業員の営業秘密漏洩に対する刑事処罰の前提となる「営業秘密の管理指針」が経済産業省より公表されたようです。以下は、日経ネット記事の引用です。

企業に営業秘密の特定求める・経産省が管理指針

 経済産業省は8日、企業が従業員と結ぶ営業秘密の守秘契約に必要な内容などを示した「営業秘密管理指針」を発表した。秘密とする事項は製法を詳しく記載したり情報の保存場所を示したりすることで、できるだけ特定すべきだと指摘。従業員が守秘義務を負う範囲を明確にするよう求めた。

 11月に施行される改正不正競争防止法で、従業員は在職中だけでなく退職後も営業秘密を他社に漏らすと刑事罰の対象になる。裁判では漏らした情報が営業秘密にあたるかどうかが守秘契約の有無で判断される可能性が高いため、適切な契約を作成するための指針を作った。

 営業秘密の特定は守秘契約に「液晶に必要な素材を作るときの温度管理データ」のように、製法などを詳しく記載することが有効とする。「研究室のファイルにとじてある情報」として、情報の保管場所を具体的に示すことも適切な手法だとした。 (20:00)

 企業が退職従業員に対して、民事上の賠償責任を請求する場合と異なり、刑事上の責任追及(具体的には告訴手続)を可能とするためには、営業秘密漏洩に関する「故意」の認定が必要になります。したがいまして告訴手続に基づいて、警察が重い腰を上げて捜査に乗り出してもらえる程度に「厳格な立証資料」を企業側で用意しておかなければなりません。記事にありますとおり、まず企業と従業員間における「営業秘密管理契約」の存在は、刑事責任追及のための大前提になると思われますが、そのうえで情報を漏らしたものが「営業秘密」に該当することを従業員が知っていたことを基礎付ける事実として、どういったものが有効であるか、おそらくそのあたりがガイドライン化されたのでしょうね。

しかし、こういった営業秘密を詳細に記載した「営業秘密管理契約」を書面として締結するのであれば、営業秘密自体を外部に開示するに等しいものでしょうし、これを防止するために契約書自体を企業だけが預かっておく(いわゆる差し入れ方式)ようにすると、従業員の故意認定には有効性に疑問が生じますので、企業にとっては「営業秘密の漏洩可能性が高まること」と「秘密管理の有効性を高めること」のどっちのリスク回避を優先すべきか、経営判断を求められることになると思います。まだ公表資料を読んでおりませんので、勘違いがありましたら、またご指摘ください。

話は変わりますが、橋梁談合事件の内田元副総裁、裁判所が保釈決定をしたところ、これを不服とした検察庁が準抗告を行いましたね。こういったケースは、おそらくたいへん刑事弁護に有能な弁護士さんが元副総裁側につかれているものと推測いたします。どなたかは存じませんが。

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