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2005年9月30日 (金)

住友信託・UFJ和解の行方

ちょうど、昨年のいまごろは、独占交渉権破棄によるUFJと東京三菱との交渉差止仮処分事件というのが話題に上っていましたよね。この1年は、企業間のいろいろな話題性のある裁判が続きましたので、なんかずいぶんと前の事件のようにも感じますが、皆様は憶えていらっしゃいますでしょうか。仮処分で決着が着いた後、住友信託銀行が本訴訟を東京地裁に提起しまして、現在、統合差止と損害賠償金(の内金)1000億円を求めて第一審が係属中、ということです。この9月28日に裁判所からの勧告で和解に関する話し合いが始まりましたが、双方の金額提示の開きが大きく、次回10月9日までに和解金額だけでなく、和解による処理方法をも含めて両者再検討されるようです。果たして、まだまだ続きそうな裁判に決着をつけて、双方和解で解決をつけることができるのでしょうか?勝手に考えたことだけを書き留めておりますので、まとまった意見ではありませんので念の為。

企業イメージの維持ということのためでしたら、どっちも「和解で早期に終結させたい」と思うのは同じですよね。ただ、UFJの場合には東京三菱の要望を無視しえないところがあるでしょうから、株主へ早期決着させたことの説明はしやすいのではないでしょうか。いっぽうの住信の場合には、仮処分事件の最高裁決定で「基本合意書には法的拘束力がある」とまでいわれたのに、なぜ和解したのか、ということについて株主への説明責任が残ることになりそうです。役員に株主への説明責任が残るくらいなら、裁判所に損害賠償金算定根拠を示してもらって判決を受けたほうがよい、という考え方に傾くように思えます。したがいまして、どちらかといいますと、住信のほうがUFJよりも「早期終結」への執着は薄いのではないか、と推測されます。

つぎに、いままでの裁判における裁判官の心証をどうみるか、判決の見込みをどう読むかは、それぞれの代理人を務めていらっしゃる有名法律事務所の弁護士さんの力量に頼るところが大きいと思いますが、「独占交渉権を規定した基本合意書」の法的拘束力というものを、いったいどんなものと捉えるかが大きなポイントになりそうです。

これは私の考えですが、家庭裁判所で訴訟を行う事件に「婚姻予約不履行による損害賠償請求事件」というものがありまして、いわゆる世間でいうところの「婚約破棄」というものにまつわる紛争事件です。この事件、なかなかオモシロイところがありまして、いろんな(結婚に向けた)事情が重なってきますと、次第に法的拘束力が高い(つまり破棄された場合の慰謝料がアップ)されてくる性質があります。もちろん、最低限度「婚姻予約の合意があった」とされるための事情(いっしょに指輪を買いに行ったとか、女性が退職手続をとったとか)が認められることが前提ですが、その最低限度の事情に(追加して)相手方に「結婚への期待度」を高めるような客観的な行動がプラスされてくると、その裏切りへのペナルティとしての慰謝料も変わってくるんです。つまり不法行為ではなく、合意違反なのに、ペナルティが変わる(つまり、法的拘束力に段階がある)というところが特長でして、本件で問題になっています「基本合意書」の性質を考えるときにも、同じような考え方が妥当するような気がしています。

もし、このような考え方が正しいとするならば、今回のケースでは、相当低額による和解が予想されるのではないかな、と予想します。合併まで拘束するのではなく、とりあえずは合併できるかも??といった住友信託側の期待権を保護することが、この「法的拘束力」という言葉で表現されている、とみるのが筋ではないでしょうか。この請求額1000億円のうち、どこまでが合併による将来利益なのかはわかりませんが、期待していろいろと準備したことに要した費用程度が「基本」になるのではないでしょうかね。そうしますと、たとえば住信側にどこまで本気で調査させ、また住信側の企業秘密も握った後だったのか、2年間という独占交渉期間のうち、最初のうちに「やめます」と言ったのか、2年ぎりぎりで「もう時間切れですよ」といった状態で別交渉に入ったのか、などいろんな事情によって基本合意書の法的拘束力も変わってくるように思われます。ただ、いずれにせよ、さまざまな事情が加わったとしても、その金額は「知れている」程度ではないでしょうか。判決もらったほうが、株主への説明責任がつきやすい住友信託としては、和解解決を選択してリスクを回避する必要性について悩むでしょうが、その工夫として裁判所へ和解意見を書いてもらう、ということも考えられますね。

ただ、「契約違反があった」という事実がどうしても欲しい、金額が和解でも低額なら、金銭よりも「相手にルール違反があった」ことの公証のほうが「実」がある、ということならば、やはり和解はむずかしいかもしれません。いずれにせよ、今後の和解交渉の進展に注目してみたいと思います。

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