課徴金納付命令と内部通報制度
昨夜のエントリーに対して、1ma24 さんからコメントをいただきました。
「課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則」から、課徴金の減免に関する申告書には社長印を押印することになります。そうすると、担当者個人の申告では受理されないのではないかと思いますが、如何でしょうか。
なるほど、公正取引委員会のページに「課徴金の減免に係る報告および資料の提出に関する規則」がアップされています。(先週10月17日に公表されたものなんですね。)気がつきませんでした。(ご教示ありがとうございました。)この独占禁止法7条の2の運用に関する規則によりますと、課徴金減免対象企業になるための報告書様式やファックス番号まで指定されています。その申請書には代表者印を押捺しなければならないこととなっており(原本は追って提出すればいいようです)、客観的な証拠などについては、その後別の様式の報告書を提出することで補完されることになっているんですね。
課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則
(調査開始日前の違反行為の概要についての報告)
第一条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「法」という。)第七条の二第七項第一号又は第八項第一号若しくは第二号(法第八条の三において読み替えて準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による報告及び資料の提出を行おうとする者は、様式第一号による報告書一通をファクシミリを利用して送信することにより公正取引委員会(以下「委員会」という。)に提出しなければならない。2 前項に規定する報告書の提出に関するファクシミリの番号は、〇三―三五八一―五五九九とする。3 ファクシミリを利用して第一項に規定する報告書が提出された場合は、委員会が受信した時に、当該報告書が委員会に提出されたものとみなす。4 第一項に規定する報告書の提出を行った者は、遅滞なく、当該報告書の原本を委員会に提出しなければならない。
こういった運用は、今後たとえば証券取引法違反行為に行政処分を付するような改正があった場合にも、同じ運用になることが予想されますから、実際にどのような運用がなされるのかリーディングケースになりそうです。
課徴金減免の効果を有する申請が「事業者」自身によるものでなければいけないことは、この規則でよくわかりましたが、やはり(公取委における調査開始までに)実際に反則行為(もしくは犯罪行為)に加担していた担当社員が公正取引委員会に自社の行為を申出ても、なんの効果もないんでしょうか。検察庁が「起訴はしない」という誓約をすることは考えられませんが、公正取引委員会側から、客観的な証拠資料を持参したうえで情報を提供した社員については事実上「告発」しないということは無理なんでしょうかね。
この問題で悩ましいのは、もし来年4月から施行される公益通報者保護法による内部通報によって企業に談合事実が申告された場合です。今回の道路公団の事件によって、もはや企業は担当者を助けてくれることはないはずですから、これからの自分の人生を守れるのは自分ひとりです。「ヤバイ」と思ったら、内部通報制度を利用して、自主申告を勧めることも十分考えられるところです。通報を受けた企業としても、対応をゆっくり検討しているわけにもいかないでしょうし、これまでのように「トップとしては知らなかった」とは言えないはずです。内部通報制度についても、統制手段のひとつですから、かならず手続きは文書化されるはずですし、(通報や受理の時期次第では)当該企業が告発免除や課徴金納付減免を受けられなかったとなると代表訴訟の対象にもなりますよね。たとえば、匿名通報で受けたケースなんかでも、ホットラインの窓口としては、「匿名だから受理しない」といった対応で済ますのは申告事案からみてマズイんじゃないでしょうか。匿名での申告であっても、客観的証拠の有無や、申告事実を知った経緯などについては再度質問したり、調査することも可能なはずです。
実際のところは「官製談合」と思われるカルテルが多いとは思うのですが、こういったケース、企業としてどういった対応をとるべきか、シミュレーションしておいたほうがいいような気がします。
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