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2005年10月14日 (金)

TBSの買収防衛策発動の要件

今日(10月14日)の日経夕刊の一面では「TBS 統合の妥当性、協議へ~楽天の提案受け第三者機関と」の見出しで、TBSは買収防衛策発動の是非を判断する第三者機関「企業価値評価特別委員会」委員と協議する方針を固めた、という記事が掲載されました。

TBSは14日、楽天による株大量保有と共同持ち株会社方式での経営統合の提案を受け、近く買収防衛策の発動の是非を判断する第三者機関「企業価値評価特別委員会」委員と協議する方針を固めた。楽天の株保有比率は15%強で買収防衛策の発動基準の20%には満たないが、楽天の株保有と提案が妥当かどうか助言を仰ぎ、同社との交渉に応じるかの判断に役立てる方針だ。

 特別委はTBSが5月に新株予約権発行による買収防衛策の導入を決定した際に設置を決めた。社外の取締役、監査役、専門家の7人で構成し、防衛策発動の是非を判断する。TBSは委員に楽天による株取得の経緯や提案内容を説明する。

ところが、今夜のTBSのリリースでは、一部報道にあるような企業価値評価特別委員会でへ諮問するような事実はない、と明確に否定されております。私としましては、このTBSの素早い対応は当然のことと思います。

昨日も「TBSは楽天を「濫用的買収者」とみなすのか?」というエントリーの題名にしておりますが、報道はとりわけ楽天の持株比率が20%を超える場合には、すぐにでも買収防衛策が発動されるような書き方をされておりますが、いささか論点がずれていると思われる話でして、たとえ楽天が20%を超える保有株式を取得したとしましても、防衛プランに関するTBSのリリースによれば、まず楽天が「当社に対する買収者または買収提案者」に該当するかどうか、という前提問題があり、さらに買収提案者に該当すると判断されるとしても、「濫用的買収者」に該当するかどうかは、極めて厳しい要件を満たすものかどうか、チェックしなければならないこととなっています。

そこで、まずこれまでの一連の楽天の動きだけで、TBSにとっては「買収提案者」と決め付けていいものでしょうか?リリースをよく読みますと、まず買収提案者と決め付けないと、TBSは第三者機関たる「企業価値評価特別委員会」へ諮問することができないことになっているようです。つまり、TBSが楽天を「買収提案者」と決め付けることは、すなわち「敵対的」な相手方との交渉モードが高まることは間違いないわけでして(「濫用的買収者」かどうかを、いろいろな事前交渉によって検討する手続きが楽天との間で開始される)、この日経の報道が正しいとするならば、すでにTBSが楽天について「買収提案者」だと認定したことになってしまうのではないでしょうか。(少なくとも文面からはそのように受け取られますよね)現段階で、このように戦闘モードをTBS側から示す、というのは理解できないところです。(本日、TBSは「楽天は20%以上の株式を保有するつもりはない、と明言した」ともリリースしているわけですし)また、そもそも、この防衛プランでは「事前対応の開始、検討開始事由の充足および各プランの発動の有無」まで、すべて適時公開いたします、と宣言されているわけですから、この報道を否定しておかないと、いきなりTBSの「お約束違反」になってしまうことにもなります。

さらに、一番肝心なところですが、現時点で「濫用的買収者」の要件該当性を第三者機関の判断に委ねる、ということは、これから先の楽天や村上ファンドの動きというものを、その判断材料として使えないという失策につながってしまうように思います。防衛プラン発動の可否を検討するにあたっては、もうすこし先に発生する(発生が予想される)事態までを含めて「濫用的買収者か否か」を判断するほうがTBSにとっては得策でしょうし、その要件該当性が極めて厳しいこと、さらには該当性判断過程を公表しなければならないことを考えますと、いささか時期尚早ではないか、と考えられます。

こういったことから、TBSは素早い対応において日経夕刊の記事内容を否定したものと思われますが、さらに日興プリンシパル・インベストメンツ(NPI)に800億円分の新株予約権を発行する防衛策の効果がかなり限定的である、との記事は、私としましては、かなり説得性があるように思いました。(フジサンケイビジネスアイの本日記事です)

TBSが毒薬条項 「防衛策」発動に焦点 効果は限定的

この記事の分析が正しいとするならば、買収防衛プランというのは、買収策のスキームだけに拘泥するのではなく、株価予想などを含む実際の買収時を想定して、その効果予想までを正確に把握しておかねばならないことが認識できます。といいますか、こういった効果予想まで、敵対的買収者にしっかり戦略に組み込まれるところに「事前警告型」の防衛プランの弱点が垣間見えるようです。

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コメント

 株式消却による減資を行い、
 保有比率20%超にした後に、
 防衛策発動という可能性は
 あるのでしょうか。


 

投稿: やまもと | 2005年10月26日 (水) 20時37分

コメントありがとうございました。
手続き的な問題もさることながら、時期的な問題として、この状況で株式消却による減資を行った場合、本来の減資を行う目的を逸脱してしまうのがマズイような気がします。やはり警告した内容を、自ら反故にしてしまうような対応をとることにもなってしまいますし。
TBS側としては、ここは自ら動かないのが正解だと私は解釈しております。
どうでしょうかね?

投稿: toshi | 2005年10月27日 (木) 02時36分

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フジサンケイ ビジネスアイの記事に以下のようにありましたが、そうでしたっけ…。 「ポイントになるのは楽天がTBS株式の20%超を取得したときだが、防衛効果は限定的とみられる。  防衛策導入を発表した五...... [続きを読む]

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