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2005年10月19日 (水)

中堅ゼネコンと企業コンプライアンス

平成16年から継続していた中堅ゼネコンの破産管財業務がほぼ終了しました。(つまり、旧破産法を適用する破産管財業務です)破産管財人として、企業コンプライアンスの難しさを痛感した事件でした。

ひとつは大型マンションや新築ビル建設の請負業務にからむもの。大手ゼネコンが受注するわけですが、第一次下請として中堅ゼネコンが大手から受注します。破産管財人になった当初から懸案だった数十億の使途不明金。解明できたのはごくわずかですが、予想以上に「闇の世界」への流出です。近時、大手ゼネコンは自ら手を汚さないわけでして、結局は「闇の世界」をうまくまとめあげるのが中堅ゼネコンの仕事であり、そういった仕事を手際よく仕切るところが重宝がられるようです。もちろん「どこでも」とは申しませんが、中堅クラスのゼネコンだと、長年の経理上の「知恵」こそ、平穏な工事完了に不可欠な要素のように感じました。コンプライアンス経営とはいえ、こういった「元から絶つ」ことが困難な事情が存在する場合には、下へ下へとリスクの大きい灰色の仕事が回されている現実をみると、なにか割り切れないような思いがしました。サプライチェーンCSRなど、こういった業界では受け入れることは現状では到底困難だと思います。

もうひとつは、現場監督と私との工事現場でのやりとりが発端でした。ご承知のとおり、大きなビル建設の工事現場では、警察の許可を得て、工事車両の現場出入りを円滑に進めます。(たとえば一方通行道路の逆進行の許可など)ただ、この警察の道路使用許可というのも、けっこう細かい条件が付されるのが通常でして、車両進入時には、どういった方向から何人の警備員に誘導されてバックから進入しなければならない、など)ところが、工事の円滑な進行のために、いろいろと現場監督が「裏の手」を使って、車両をさばくわけです。バックで進入しなければならないところを、「こういったときは工事現場において、こういった緊急事態が発生したことにして、前から進入させよう」など。私はビックリして「○○さん、そんなんあかんやん。きちんと許可条項は守らな。せめて、私が現場にいるときぐらいは規則を遵守して工事を続行してくださいな。私が責任とらなあかんことになるやん」

現場監督は「っるせいなあ」みたいな対応をとりつつも、仕方なくこちらの意向を汲んでくれて、車両の工事現場進入を許可条件どおりに行うこととなりました。するとたいへん、ものの10分もすると、工事現場周辺に大渋滞が発生。近隣の一般車両に多大な迷惑をかけ、住民の通行も妨げ、最後は近隣住民から警察に通報がなされ、警察官がやってきて、なぜこのような大渋滞を招いたのか説明することを求められました。その後、警察官の交通整理がはじまってやっと大渋滞は解消できましたが、こちらは冷や汗のかきっぱなしでした。規則を遵守せず、あたりまえのように法令違反行為を繰り返していても、そのほうが一般の人たちに多大な迷惑をかけず、かえって平穏な工事現場の維持に役立つ。もちろん、この違法行為は、企業側が人件費などにもっとお金をかけていれば防止できるものかもしれませんが、法令遵守の形式論というものが現場では無力であることを思い知らされました。

「企業コンプライアンスの徹底」、この言葉はたいへん美しく道徳心に訴えかけるに十分な響きではありますが、その裏には、市民生活を平穏にしているルール違反を激変させるために多くの費用を要したり、他社のコンプライアンス経営に関する悲しい犠牲のもとに成り立っていたりするわけでして、私は容易には「WINーWINの関係」とか「みんなが幸福になれる経営」などというものは信じることはできません。もう少し現実論的に考えると「みんなが逮捕されたり、大きなリスクをしょいこまないための我慢の均衡」をどこに持ってくるか、といった感覚こそ本当に必要ではないかな、と考えるようになりました。

10月 19, 2005 中堅ゼネコンと企業コンプライアンス |

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