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2005年10月 6日 (木)

監査役の理想と現実

昨日は中小企業と新会社法ということについてエントリーしましたが、今回は「わが身」を振り返って、公開企業における監査役と新会社法の関係について、少しだけ考えてみたいと思います。

月間「監査役10月号」では、新会社法と監査役というテーマで、著名教授陣が現役の監査役のかたがたへ向けて、エールを送ってくださっています。なかなか格調の高いものばかりで、ひとことで言うと「定款自治が拡張され、経営の自由度が高まった分、取締役の違法行為等の是正に取り組む監査役の意義はとても大きい」ということが謳われています。しかし、逆からみるとゾッとします。株主代表訴訟や第三者責任追及の対象として、監査役が善管注意義務違反による損害賠償責任を問われやすくなる、ということです。もちろん、私のような社外監査役の場合ですと、損害賠償額の限定特約などによって自己防衛することも可能ですが、訴訟の被告として応訴しなければならないリーガルリスクは同じです。ましてや、敵対的買収防衛プランにおいて、社外取締役や社外監査役が「独立第三者」としての発動要件審査の要職を仰せつかるような事態になれば、「会社の顧問弁護士以外の」M&Aに強い専門家などの意見を聴きながら、独自の企業価値判断を強いられるわけですから、かなり厳しい職責を担うことになるわけでして、新会社法のもとでの監査役というのは、安閑とはしていられない立場といえそうです。コンプライアンス経営を支える会社の機関として、監査役の理想を大きく唱えることは結構ですが、その分企業の経営判断に問題のあるような事態となった場合には、その任務懈怠責任をつかれる枠も広がることは留意しておくべきもの、と自戒しております。

ところで、この「月間監査役10月号」には、この7月13日に企業会計審議会内部統制部会から出されました公開草案への日本監査役協会意見というものが発表されており、これが非常に興味深いものになっております。ひとくちで申し上げますと「監査役の理想と現実」をどう捉えるか、という点に金融庁サイドと日本監査役協会サイドでは大きな隔たりがあるようです。もともと企業会計審議会での(公開草案を出すにあたっての)審議では「監査役不要論」が活発に議論され、しかしあまりにも過激な意見はマズイということになって、最終的には内部統制システム構築の目的として「資産保全」という項目を追加することで監査役制度との妥協点を見出した、という経緯があります。しかしながら、どうも日本監査役協会からすれば、いまだ公開草案(の底辺に流れる監査役のスタイル)は「監査役というものは所詮、経営者にはなにもいえない無力の存在であり、会計監査人は、そういった監査役制度自体に依存することなく、自ら(監査役制度の現実を含めた)統制リスクを評価し、実際に財務上の不正を発見すれば、直接経営陣にその是正を促すべき」という(監査役制度をないがしろにした)スタイルだと非難して、様々な文言の訂正、修正に関する意見を出しています。そこでは、監査役からみた経営陣や会計監査人との理想の立ち位置が描かれており、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」を最終的に策定したり、また実際の監査基準の要綱を発表するにあたって、こういった日本監査役協会の意見がどの程度採り入れられるのか、注目したいところであります。

さて、2,3日前に「これからの会計監査人の報酬」についてエントリーしまして、いろいろなご意見も頂戴しましたが、監査役には会計監査人の報酬決定権(正確には監査役には業務執行権がありませんので、同意権)があるわけですから、こういった権利行使にあたっても「理想と現実」の問題って、発生してくるわけです。今朝あたりの新聞報道では、今後会計監査人が公開企業の統制リスクについて「格付け」することも検討している、とのことですから、この格付けを企業の監査役が易々と受け入れるというのは、たまったもんではないですよね。たとえば統制リスクの評価について、会計監査人と監査役とで食い違いがあるんだったら、真摯な態度で堂々と主張反論を尽くすべきでしょう。報酬金額をめぐって、いろいろと意見交換をする態度こそ、企業も会計監査人も不正監査をなくすための努力が(投資家や株主に対して)目に見えるものとなりますでしょうし、また会計監査人の実力も評価されることとなって、法定監査における報酬アップのインセンティブとしても役立てることができるんじゃないでしょうか。

こういった「会計監査人の報酬決定への監査役の関与」も、おそらく理想論に近い話なのかもしれません。しかし、常勤さんなら言いにくいことでも、社外監査役であれば、礼を尽くして異を唱えることも現実には可能のようにも思えます。こういったところから、本当に実務を変えていかないと、企業会計審議会の思い描く「監査役」の姿が、予想どおりに新会社法のもとでもそのまま維持されてしまう、という悲しい結末に至ってしまうような気がします。

「今度の役員会からは、私達監査役会はちょっと変わりますよ」と、経営陣にモノ申すために、新会社法の施行というのが、いいきっかけになればいいですね。(もちろん、そのためには新会社法によって公開企業の監査役制度がどのように変容しているか、を説明できる程度には勉強しておかなければ話になりませんが・・・・)

10月 6, 2005 監査役の理想と現実 |

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