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2005年10月29日 (土)

明治安田生命のコンプライアンス委員会(2)

明治安田生命が今年二度目の行政処分を受けた、ということで、子会社を含めて、その営業に大きな影響を与えるほどの相当に厳しい内容の処分のようです。すでにいろいろなブログで、この話題が取り上げられており、ほとんどの方が「処分が甘い」「解散しろ」「会社ぐるみの詐欺だ」という論調です。ただ、保険業界でも、また当の明治安田生命でも、おそらくこれほど厳しい処分が金融庁から出されるということは予想していなかったのではないでしょうか?事実、先週の明治安田の役員会議では、もう関係者の処分も済んでいるので、形だけの処分(改善命令)程度ではないか、と予想されていたようです。ただ、一回目の処分は、自社で発表した2月の「不適切な不払い」事件の件数をもとにしたものであって、今回は7月に、ほかの多数の不祥事が発覚して、その後独立した第三者機関による本格的調査があり、また金融庁独自の立ち入り調査などもあったうえでの処分ですから、より厳しい処分が発令される可能性は十分予想されるはずであったと(私は)思います。ここで、金融庁の処分が甘いか厳しいか、を議論するつもりはまったくございませんが、とりあえず、一連の報道から、私なりに特筆すべき点として掲げるとすれば、以下の2点になります。

まずひとつめは、この金融庁の処分根拠となった調査報告です。今年7月中旬に、コンプライアンス委員会とともに、特別調査分科委員会が組織されました。私の8月16日のエントリーにも書かせたいただきましたとおり、北尾哲郎弁護士が委員長になり、社外第三者が中心となって不祥事の内容を調査する機関です。北尾委員長の10月11日の調査結果報告書や発言の内容からは「この○○という人のこういった行動が原因である」とか「会社ぐるみでの犯行」という「わかりやすい」原因究明結果の言葉は出てきておりません。(金融庁は、そういった明確な調査報告を期待していたフシがあります)むしろ、平成12年にまでさかのぼって、「明治」と「安田」、そして合併後の「明治安田」とのかかわりにまで触れ、いつの時点から急に不払い契約の案件が増えたかを分析したうえで、なぜそのころから増えたのかを検証する、というオーソドックスな手法を用いて冷静に事実認定を行っています。①モラルリスク対策プロジェクト(1990年代になって、保険金詐欺など、本来的に保険金を受給できる資格がないにもかかわらず、保険会社を騙して受給をはかろうとする個人や法人への対策は各保険会社にとっては急務でした)を立ち上げたこと自体は、非難に値するものではないけれど、その対策に全社あげて熱心になってしまったあまり、(目標としているモラルリスクは予想どおり減少したけれども)その裏で発生する別の会社リスク、つまり審査査定基準が厳しくなったことにより、本来すぐに受給できる人が、受給できないことになってしまうリスクが増えてしまった、②そして、会社としては、契約者にリスクを転嫁させて、収益を上げ、うまくリスクを転嫁させた部署に対しては表彰をしていた、というもので、バランスを欠いた会社の姿勢というものが、会社すべてに蔓延し、結果として会社自体がまちがった方向へ次第に向かっていった、という報告結果の要旨です。結論として「会社ぐるみの犯罪とはいえない」とされています。ただ北尾委員長は「経営陣が気づいていながら黙認していた、ということはないが、経営計画の面に問題があった」とされています。なんか、これだけを聞くと、「なんでそんなに甘いのか」といった印象を受けられると思います。でも、私の8月16日のエントリーにもすこし書きましたが、私自身のコンプライアンス委員としての経験からいえば、これ、すごく「リアリティ」があって、かなり真実に近いところの分析だと思っています。いきなり上司から「お前ら、このマニュアルどおりの勧誘方法で、だまして契約とってこい!」などという指示があったということは、到底考えられませんし、査定の段階でも、泣き寝入りしそうな契約者に、うまいこと言って支払を拒否しようといった気持ちがあったとも思えません。コンプライアンスを論じるときに最もむずかしいところがここにあると思います。現場の担当社員の気持ちとしては「まじめに保険料を払っている人たちが不公平な思いをしないように、また迷惑がかからないように、絶対に不当な保険料の支払請求には応じてはならない」という強い意思があったと推測します。ただ、そういった全社あげての奨励の結果、支払金額を抑えた部署を表彰したり、他者との不払い件数の比較をしなかったり(つまり、聞きたくないことには耳をふさいだり)したことが、もうひとつの常識であるところの「まじめに保険料を払っている人に正当に保険料を支払わなければならない」という絶対のルールを軽視する結果を招来してしまったのではないでしょうか。

たしかに、このコンプライアンス委員会(分科会)報告によっても、果たして経営陣が本当に「不適切な不払い」をしていることを認識していたのか、していなかったのか、曖昧なところが残るのは事実です。日本生命、第一生命、住友生命などへのライバル意識から、かなり「ヨコシマ」な気持ちがあったことも、ある程度は真実だと思います。(詳細に金融庁の処分内容を読んでおりますと、金融庁は、この報告書よりも、もうすこし「認識していた」に近い言葉を使用しており、興味深いところです)ただ、私はこの報告内容を(現実の企業を冷徹に眺めたときの)真実として受け止めて、再発防止の対策を考えるのが適切であり、金融庁の業務改善命令の内容にあるとおり、最善の策としましては、企業内部におけるガバナンスの改革、内部統制システムの構築とモニタリング、そして明確な形での経営陣の責任追及に尽きるものと思っています。

もうひとつの「特筆すべき点」につきましては、また明日にでもエントリーしたいと思います。(つづく)

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コメント

ご推察どおりの、内容、体質の相互会社です。如何に様々な問題を隠蔽して、すり抜けようか、その悪あがきが、目に見えます。保険契約締結に於いて最も重要な「告知義務」を、ベテランになるほど、又、多件数優積者になるほど、陰での違反を平然としている事実!!又,社は{、違反を指示した物的証拠が無い!従って、お咎めなし}悪質営業員を、罪の意識も無く温存している事実!!保険業法七項は、全て、確固たる「物的証拠」は、ありません!それに漬け込んでの回答を平然と、顧客にしています。検査期間中に!!断じて許せません。恐らく旧明治の弁護士の指導でもあると、思います。それなら{告知義務違反を指示しなかった「物的証拠」を出すべきです。}この件は、金融庁にも、通知しました。結果が今回の余りにも甘い処分で、愕然としております。真に、改善する気構えが有るならば、業法を、犯した営業員を、処分すべきです。目に見える形!先ず、そこから、手を付けるべきと、思っています。罰則がある以上!!それさえも出来ない明治は、信頼回復は、「無」と、思って頂きたい!!本音は、潰れれば良いと思っています。精々一年ぐらいは、執りあえず、緊張感を持って、いるでしょうが、その後は、元の木阿弥になるでしょう!!心底信用できません!!!

投稿: moon eve | 2005年10月31日 (月) 23時46分

>moon eveさん

私のブログをお読みいただき、ありがとうございました。今回の件は、moon eveさんのようにご立腹されておられる方がたくさん、いらっしゃると思います。他のブログを読ませていただいても、おおかた同じ意見のようです。
ただ、私はプロフィールでも書かせていただいているとおり、「コンプライアンス・オフィサー」としての企業価値向上の方策を検討することに最も関心を抱く立場であります。できれば、この社外取締役である北尾弁護士の視点にもっとも近いところから、この問題を推論したいと思い、エントリーの題名も「コンプライアンス委員会」とさせていただきました。証券事故の被害者代理人として10年ほどの経験もあり、心情察するところもございますが、潰れてしまうことの社会的な影響というところにもすこしばかり気持ちを配ってしまいます。そのあたりのブログのご趣旨をご理解いただければ、と思っています。

投稿: toshi | 2005年11月 2日 (水) 02時43分

toshiさま、お目を通してくださいまして、有難う御座いました。私が最も知りたいことは、非常に単純ですが、「告知義務違反を指示したベテラン営業員に対し、(物的証拠が無い)従ってお咎め無し」で、済まされるのでしょうか?
常日頃、その者は、「自分の契約は、全て成立する!一般営業員は、無理ですが・・」と、豪語していましたが、事実、その通りになってしまいました。保険業法七項から成る、法律は、どれをとっても、「物的証拠等、」ありません。そこを、逆手にとっての、こじつけた回答を、金融庁にしました。何度も、抗議、疑問のメールを金融庁に送ったり、電話で話したりしました。結果は、個人的には、どうした等の回答は、出来ないと、何度も、電話を頂きましたが・・・どうしても、釈然としません。社内では、一体、誰が、金融庁に電話をさせたか!等、馬鹿な詮索があったと、又、ベテラン参与の本人は、親しい私の友に、「どうして!金融庁に電話をする事を、止めなかった!!」と、責められたと訊き、事実を公表された腹いせだと、思っています。悪質営業員は、どうして?許されるのでしょうか?他生保の社員からメールを頂きましたが、どこでも、その様な有積者は、温存しておく、社の業績の為にと、有りました。この事実は、今回の不祥事の全ての根底にあると思っています。扱う営業員によって、本来ならば、契約締結等有り得ない内容でも、社は、認める。これは、契約者にとって、不公平そのものです。難しい法律は分かりませんが、入社して教えられた「保険業法の遵守」は、しっかり守って参りましたが、一部この様な悪質営業員の為に、多くのまともな営業員や、何よりも、顧客が、迷惑、損害を、被っていることは、確かです。又、新社長の元で、発表された、様々な処分など、顧客は、一体どの様にして、事実か否か!目にすることが、出来ましょうか?それこそ、「物的証拠」を、拝見したい!!一部、辞任したと報じられている方が、関連した所に就いていることが、分かり、どうしても、敢て旧明治は、信用できません。

投稿: moon eve | 2005年12月21日 (水) 17時57分

追加の感じる事、考える事。「当の明治安田生命にも恐らくこれほど厳しい処分が、金融庁から出されるとは予想もしていなかったのではないか?の文面中を、読みまして、私は、全く違う感じを持っております。と申しますのは、100%出資の子会社、明治代理社の大不祥事は、どこから見ても、非常に悪辣です。取引相手企業の社員の契約を、勝手に契約書に署名、又女所長が印鑑を用意して、勝手に押印した事実又手数料と称し相手企業に支払っている金銭これは一体なんでしょうか?これこそ、刑事事件に相当しませんか?生保始まって依頼の、悪辣事件です。 金融庁は、もっと、厳しい処分をするべきと、思っております。  それを、役員たちの随分甘い認識には、呆れております。  コンプライアンス委員会のお一人として、どの様にお考えでしょうか??

投稿: moon eve | 2006年2月10日 (金) 23時06分

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