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2005年10月 7日 (金)

会計監査の品質管理について

朝日のアエラ記事をネットで読んでおりましたが、これがまたずいぶんと中央青山監査法人への厳しい処分を予想させるような内容になっています。(営業目的で新聞報道の見出しをそのまま引用すると、賠償請求の対象となる、という知財高裁の判断が出ましたので、今後はすこしばかり気を遣うようにします。といいましても、個人的には実名ブログの中に引用することが「反復継続して営業目的で使用」する意思が認められるとは思えませんが)

会計士の間で「粉飾は常識」(朝日ネット記事引用)

数日前は、会計監査人の報酬という面から、不正監査防止を考えてみましたが、会計監査自体への品質管理の充実、という観点からも検討してみたいと思います。綱紀審査会の設立、会計士協会の品質管理、公認会計士・監査審査会における審査、中央青山監査法人内部の内部監査専従班の設置などなど、このたびのカネボウ粉飾事件を発端として、会計監査の事後的な審査体制の充実が謳われています。今後は国際会計基準の策定に日本が参加することによって、その品質管理基準の国際ルールに準拠することも検討されている、とのことです。これだけ、いろんな会計監査への事後審査が実施される、ということであれば「再犯防止策」は万全であるから、今回の中央青山への金融庁の処分も相当に軽くなってもいいのではないか、という意見も出てくるかもしれません。

ただ、ここでひとつだけ確認しておくべきことは、フットワーク事件、足利銀行事件、カネボウ事件など、会計監査人の責任問題が世間で浮上してくるのは、「先に倒産ありき」という場面です。つまり、企業倒産→粉飾発覚→旧経営陣の責任→会計監査人の責任→監査人の監査の評価、という順序です。刑法犯で例えると、いわゆる業務上過失傷害事件と同様です。(被害者の傷害という結果があって、それからはじめて被告人の違法性を追及する)

ところで、このたび不正会計防止策として提案された会計監査の品質管理というのは、こういった循環を否定するところから生まれているのでしょうか。つまり、企業の倒産という事態に関係なく、品質管理は行われるのかどうか、という点です。結局のところ、景気がいい時期には、どんな粉飾を行っても、その景気回復によって「不正が永久に忘れ去られてしまう」という事態を甘受してもよいか、という意思確認が必要です。もし、上の循環を否定するのであれば、企業と会計監査人との監査方針の食い違いという事実だけをもって、「会計監査人のミス」が公表される可能性がありますし、企業と監査人との間に監査方針の食い違いがなく、また企業が健全経営を継続している場合でも「不正監査」が認定される可能性もあります。こういった企業の継続性とは無関係に会計監査の是非が活発に審査される状況についての合意がないと、品質管理自体に対するモニタリングが困難になり、会計監査自体に対する内部統制システムは機能しないはずです。たしかに、内部審査の本来の目的は個々の会計士の判断是非を問うものではなく、会計監査体制そのもののチェックにある、ということかもしれませんが、やはりなんらかの形で、個々の会計処理判断と関連がなければ品質管理を本当にやっているのかどうか、わからないんじゃないでしょうか。

監査対象となっている企業や、投資家などからの審査請求の道が確保されていなければ、やはり「先に旧経営陣の責任ありき」の運用しかなされないような気もします。そのような運用では、到底再犯防止の可能性は乏しいものとなり、結局のところ厳罰でのぞむしか方法はないということになってしまいそうです。こういった会計監査の品質管理を考える場合、その審査体制を設置するだけでなく、その運用を確実にモニタリングできることの約束事まできちんと決めておくことが不可欠でしょう。

10月 7, 2005 会計監査の品質管理について |

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コメント

はじめまして、TBありがとうございます。
監査は本来、財務諸表が適正であることを保証する、
という目的に基づいて行われますから、
こういったことが原因で注目されるのは、
非常に恥ずべきことだと思います。

しかし、私のように実際に監査報告書にサインを
したことがない者には分かりかねる部分は
あるかもしれませんが、
やはり報酬をもらって「不適正」の意見を出すのは
非常に困難な部分もあるのでしょう。

カネボウのように完全な赤信号の場合は、
監査というある意味「おおざっぱ」な視点から見た場合、
ある年度に突然生じるのではなく、
ある程度の期間をかけて生じるようにも思います。

そういった意味では、黄色信号の時点で、
監査法人が契約をきる、ということもあるようです。
ですから、「監査法人の交代」があった場合、
その理由を突っ込んで調べていけば、
実は黄色信号であった、という事例はあるかもしれません。

ただ、私のような、若手の会計士は、基本的には
非常に潔癖に監査に臨んでおりますし、
上も若手の意見はよく取り入れてくれるという
雰囲気はあったと思います。
これから会計士は、信頼回復に努めなければなりませんね。

投稿: miho | 2005年10月 8日 (土) 19時33分

>mihoさん

どうも、コメントまでいただきまして、ありがとうございます。ここ1年ほど、会計士さんと一緒に仕事をする機会が増えましたが、あのアエラの記事に掲載されていたような感想を漏らしていた会計士さんもいらっしゃるので、すこし不安をもっていました。でも、いろいろな会計士さんのブログを拝見するうちに、職業意識を持ってきちんと監査に臨まれている方が大半であることを知り、認識を新たにした次第です。それでも、やはり周囲を見ますと「監査はもう卒業。やっぱりコンサル業務です」という方も多く、会計士さん方にとっての制度監査への意識というものも、もうすこしお聞きしてみたいところではあります。
また、お時間がありましたら、遊びに来てください。

投稿: toshi | 2005年10月 9日 (日) 00時47分

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