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2005年10月 5日 (水)

中小企業と新会社法

大阪商工会議所で「中小企業と新会社法」という講演を、若い弁護士さんといっしょにさせていただきました。時間が限られておりますので、非公開会社(有限会社を含む)特有の問題に限ったものです。

来年5月施行(予定)ということで、なんだか「いまのうちに勉強しとかなきゃ」といった風潮がありますが、それは定款変更などに多くの時間を必要とする公開会社には妥当しても、非公開会社には「もうすこし、ゆっくり考えたらどうでしょうか」と申し上げてもよろしいのではないでしょうか。そもそも経過措置というのがあるわけですから、特別に手続をしなくても、いままでの会社が回っていくことは確かなわけです。ただし、新会社法は非公開会社を原則として、定款自治を広く認める立場で作られていますので、「知らなくても損はないけど、知っているとかなり得する」ことは間違いなさそうです。そこで中小企業の経営者の方へ今日も申し上げましたが、「弁護士とはいわないけども」日ごろお付き合いのある税理士、会計士、司法書士などの専門家の方とご相談になって、機関設計や種類株式など、企業の実情に合った定款変更手続(およびそれに伴う登記手続き)をされてはいかがでしょうか、とお勧めしています。

私が「ゆっくり考えたほうがいい」と申し上げますのは、「こんなに簡素な機関設計もできるんやったら、すぐにでも司法書士さんにお願いして、定款変更、登記手続きをお願いしよう」と即断せず、メリット、デメリットを考えておいたほうがいいですよ、という意味であります。たしかに、取締役1名と株主総会のみの機関設計というのも考えられますが、会社の基本的な意思決定が株主総会に大きく依存した形ですと、株主のなかに行方不明者や既に死亡された方がいらっしゃったり、また株主名簿の不整備などの事情があったとき、「手続の瑕疵」を招来してしまいます。また、先日敵対的相続防衛プランのエントリーにも書きましたように、相続という事実によって、会社経営が混乱を来たす場面も想定されます。結局のところ、会社の人的資本(経営者、従業員)の構成や、物的資本(株主、ファイナンス)などの現状と、将来の会社のあるべき姿(親子間で事業承継するのか、儲かったら事業譲渡、会社再編をするのか、すみやかに解散するのか等)をすべて勘案したうえで、新会社法を利用されてはいかがでしょうか。

最近、すでに新会社法に基づく定款変更手続を代行します、といった広告が目に付くようになりました。不具合が生じたらすぐにまた定款変更すればいい、という見解もあるでしょうが、どういったスキームを用いることが、中小企業のパフォーマンスを最適化するか、という点でご指導申し上げるためには、単に事業主の希望する方向へ手続代行すればいい、というものでは不十分でして、税理士、司法書士、弁護士など相談を受ける側にも、ある程度の実力が必要なのではないか、と考えています。

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