証券取引所を通じた企業統治(Corporate Probation)
月例の「全国社外取締役ネットワーク関西支部例会」に参加してまいりました。本日は、東京から田村達也ネットワーク代表をお招きして、初めて京都で開催されました。いつものごとく、私が発言したくてもなかなか議論に「隙間」がみつからないほど、白熱しておりましたが、(といいながら、なんとか「隙間」をみつけて、自論を発言させていただきましたが)「Corporate Probation」(以下、Co-Proといいます)に関する議論は、たいそう興味深いものがありました。
Co-Proとは、ひとことで申し上げますと、NYSE(ニューヨーク証券取引所)が上場継続基準として、相当に厳しいガバナンス規則を取り入れておりまして、もし、この基準を上場企業がクリアできませんと、「上場廃止」になってしまうわけですが、すぐに廃止にしてしまうと、投資家や企業債権者に多大な社会的影響を与えてしまうことになりますから、「執行猶予」といいますか「保護観察」といいますか、ともかく当該企業に「コンプライアンスプログラム」を実施させて、その状況をみて上場維持を検討する制度であります。通常、「自主改善手続き」と和訳されております。研究会では、この詳細な手続きなども紹介されましたが、よくコンプライアンスに関する参考書にも登場する、アメリカの「連邦量刑ガイドライン」(1991年)にも、このNYSEのCo-Proが強い影響を与えたそうです。
アメリカの証券監視委員会の絶大な権力、日本における金融庁と証券取引所との力関係などの論点はひとまずおいとくとして、さてこういった「上場廃止に関する執行猶予、保護観察制度」は日本に導入可能でしょうかね。「自主的に手を上げて」粉飾を公表したカネボウにも、西武鉄道と同様に「退場」を命じた廃止基準の運用の現状、マザース、ヘラ、ジャスダック市場へ上場する企業の体質の問題、不適正意見を出すことに躊躇する監査法人や出されることを恐れる企業の現状などを考えますと、いろいろと克服しなければ導入はむずかしいように私は思います。ただ、司法によるガバナンスの事後的評価、ということがこの先、進まないようであれば、こういった自主的な改善を取引所が評価するという手法も、コーポレートガバナンスに関する議論を発展させるためには効果的ではないかな、とも考えます。(なお、エンロンについては発覚後わずか30日で上場廃止が決定されましたが、あれは、監査法人すら巻き込み、もはや改善不能ということが明らかだったための措置だそうです)
こういった企業の自浄作用を、ルールとして評価する制度としては、来年1月から施行される改正独禁法の課徴金免除制度がありますね。日本で、このような制度が根付くものかどうか、免除制度の運用実績などにも留意したいと思います。
しかし、この研究会、実際に社外取締役として頑張っておられる方が多いんで、食事の際にホンネをお聞きすると Independent のムズカシサを痛感しますね。。。独立といえばカッコいいけど、「孤立無援」といえば・・・・・・・・。勉強になります。田村代表、きょうはどうもご苦労さまでした。
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