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2005年11月18日 (金)

「会計参与」の有効利用を考える

昨日は、会社法と会計ネタが融合したせいでしょうか、ブログ開設以来、はじめて一日2000アクセスを超えました。このような場末のブログをたくさんの方に閲覧していただき、厚く御礼申し上げます。ただ、これからも「アクセス数」は気にせず、企業価値研究マニアに喜ばれるような内容で一貫した「インディーズブログ」を目指しますので、ゆるりとおつきあいください。

といいつつ、まだ昨日のエントリーを引きずるわけでありますが、東京横浜会計事務所のv6spiritさんのコメントで一蹴されましたように、同じ企業に会計監査人と会計参与を、同じ監査法人から別の会計士を選任させてはどうか、という妙案につきましては、限りなく自己監査に近づいてしまうということで、冷静に考えてみると、やはり私の案に無理があったかもしれません。しかしながら、この「会計参与」という制度、昨日紹介させていただいた磯崎さんの「お笑い会計参与制度」の中で記事として掲載されていたように、どういった制度なのか日本の著名商法学者からも「わからない」と切り捨てられてしまっては、実もふたもないわけでして、なんとか会計参与制度に魂をこめるような有効利用はないものか、いま一度考えてみたいと思います。

そこで本日考案したのが、会計監査人国家権力擬制理論であります。(なんだか、ドクター中松氏になったような気分ですが)8月に、中央青山監査法人のカネボウ粉飾関与事件関連のエントリーで自論を述べさせていただきましたが、たしかに企業と監査人の癒着を防止し、客観的な適正・不適正判断を可能とするためには、会計監査人に国家権力を付加してしまうのが理想的、との意見に対しまして、民間の独立専門家が、突如権力をもつことの「おそろしさ」については、強く危惧するところであります。そこで、会計監査人の不正監査の動機、原因を取り除き、かつ会計士、税理士などの会計専門家の実力主義世界を実現するために、この「会計参与」制度を利用してはいかがだろうか、と思う次第であります。

具体的には、(ここでは公開企業を想定しておりますが)、自己監査が疑われないように、会計監査人と別の監査法人もしくは税理士法人の会計専門家が会計参与として株主より選任されます。それで、なにを目標とするかといいますと、その企業の監査方針の平準化、普遍化をはかるわけです。すくなくとも、会計監査人の交代によって、短時間で監査要点が客観的に理解しうる程度に平準化を行い、(補助者の期間を含めても)3年程度で会計監査人が交代しても、その監査に支障が出ない程度の平準化作業を会計参与が担当するわけです。

メリットとしましては、企業と会計監査人との癒着といいますか、情実による監査の可能性は少なくなり、純粋な第三者的立場で監査を行うことが期待できるところです。また、企業にとりましても、計算書類の作成と報告までの間に、2名の会計専門家が関与することになりますので、これまで困難であった専門家の能力を評価する機会となります。実際の現場でみられるような、なんでも会計士さんのおっしゃる指導に従う、という風潮もすこしばかり変わり、事後規制的な適法性確保にも役立つのではないでしょうか。また、作業の平準化がはかられますから、企業と会計監査人の信頼関係が破綻した場合にも、比較的容易に別の会計監査人に依頼できるのではないでしょうか。加えて、ふたりの会計専門家が関与することで、ある程度レベルの高い監査業務も期待できるところです。

いっぽうデメリットとしましては、やはりコストでしょうね。でも、実際に会計監査人による監査が会計参与の関与によってかなり楽になるでしょうから、ひとりあたりの単価は低くなる可能性はあります。

どこからこういった発想が出てきたのかと申しますと、破産開始決定の申立を行う代理人弁護士と破産裁判所の関係からであります。たくさんの負債を抱える人が、破産開始決定を受けるのは、本来ならば非常にたくさんの資料と聞き取りが必要になります。もし、裁判所が申立人個人と直接向きあうのであれば、騙されて破産開始決定を出した場合に債権者から責任を追及されてしまいますし、人生は千差万別であって、この個人がいったい、どの類型によって破産要件を満たすのか、という点を逐一判断していては裁判所はパンクしてしまいます。そこで、中間に代理人弁護士を媒介させますと、裁判所は自らの責任は免れ、要件該当性の判断事由は弁護士に平準化させて、短時間に重要な部分だけを精査すれば判断の過誤は防げます。もちろん判断の公正さを疑われることもありません。こういった制度を会計監査にも応用できれば、普段会計や税務に携わっていらっしゃる専門家の方が、会計参与となって、財務コンサルタント的な支援を行うことで付加価値を上げることができますし、その実力を企業に評価してもらう良い機会にもなります。

勝手なことを述べさせていただきましたが、すでに会計監査人の品質管理基準なども出てきておりますので、現実の流れとは整合性に疑問もありますが、せっかく会計監査人と同時に会計参与を選任することも構わないわけですから、会計監査人の公正さをアピールするため、会計参与としての会計専門家の実力をアピールするため、そして企業の財務情報の信頼性の高さをアピールするために、ぜひ会計参与活用方法を真剣に検討してみてはいかがでしょうか。

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コメント

あまり会計参与についてわかっているわけ
ではないんですが、Big4の一つが会計監査、
他の3つのうちの一つが会計参与として財務
諸表作成というのは結構、いいと僕も
思います。海外の会計事務所では、記帳
代行業務は、割と大きなビジネスだと聞いた
ことがあります。グローバル企業の記帳
代行業務を全世界で一括して受注できれば
かなり大きい仕事になって、監査よりも
美味しいビジネスになるとのことでした。

知り合いの会計士の方に以前似たような
話をしてみたところ、会計参与はリスクが
高いので、リスク感覚のある会計士や監査
法人はやらないだろう、といわれましたが・・・。

経理業務でも、管理会計は経営者のための
会計ですが、財務会計は投資家のための
会計なので、財務会計部門を監査法人の
記帳代行業務専門子会社にアウトソースする
のは、投資家も会計事務所もどちらもハッピー
だと僕も思います。経営者的にも財務会計の
数値は直接経営には使わないわけですし、
アウトソースしても問題ないのでは、という
気がします。(管理会計のほうは、経営に
使われるのでアウトソースは難しい面も
あるのかもしれませんが。)

是非、教えて欲しいのですが、会計参与
の抱える法律的なリスクというのはどの
ようなものがあるのでしょうか?そしてそれは
会計監査人の抱える法律的リスクと比較
してどの程度のものなのでしょうか?
最近は、会計監査人の抱えるリスクも
かなり大きいような気が個人的にはしている
のですが・・・。

投稿: taurus | 2005年11月18日 (金) 21時58分

どうも、はじめまして。コメントありがとうございました。海外の事情など、ちょっと私は疎いものですから、非常に参考になります。実際にbig4に勤務されていらっしゃる会計士さんなどに、こういった制度の是非など、聞いてみたい気もします。
会計監査人の必然的に抱えるリーガルリスクというものについては、本当にこのブログで議論したい話題なんです。実際に関西でこういった研修をしたいと考えています。会計参与のことも含めまして、私個人の意見として、法律的なリスクについてエントリーをいたしますので、またご意見いただければ、と思います。ちなみに、何度もブログで申し上げているとおり、これからは「会計の時代」が到来すると信じておりますが、逆に言えば「会計士受難の時代」にもなりうる、ということだとも予想しています。また、是非遊びにきてください。

投稿: toshi | 2005年11月19日 (土) 01時52分

コメントのお返事どうもありがとうございます。
先の私のコメントでは、自己紹介もなく不躾
なコメントで失礼しました。私は、数年の会社
勤め経験を経て、今は会計学を勉強し始め
た学生です。(まだ初学者ですが)。

先生のblogは、最近は毎日拝読させて
いただいており、先生の「これからは会計の
時代」というお言葉や、それを具体的に投稿
されているblogの内容に大変興味をもって
おります。
(また、時々、素人的な内容になってしまい
ますが、投稿や質問をさせてください。)

今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: taurus | 2005年11月20日 (日) 12時09分

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