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2005年12月12日 (月)

会社の商号の誤認混同

みずほ証券の誤発注、東証のシステム不良発覚で一躍有名になってしまった「ジェイコム」ですが、私の周囲では、おそらくまだたくさんの方が、あのケーブルテレビの「J-COM」(ただし、商号は別ですが)の新規公開と思っておられる方が多いようです。(お恥ずかしいですが、私も2日間ほど、そう思ってました・・・ちなみにジェイコムは人材派遣企業大手、ということです)一時期、宗教団体「アーレフ」が誕生したときに、「びっくりドンキー」(株式会社アレフ)でハンバーグ食べていても、壁に「うちはオウム真理教とはなんらの関係もございません」と貼ってありましたし、最近はきっと全国の「木村建設」さんも、真剣に困惑しているのではないでしょうか。笑い話にしてはいけないほど真剣に経営問題にかかわるほど、この商号の誤認というのは恐ろしいものです。

新会社法6条以下では「会社の商号」に関する規定がありますが、現行商法よりも商号自由使用の範囲が広がりまして、極端な例で言えば、木村建設のお隣の住所に「木村建設」の商号を使用しても、法人登記が受理されてしまうんですね。しかも株式会社の最低資本金制度が撤廃されてしまうわけですから、(別に有名な企業ではなくても)同じ町内に、事業目的も同一の同じ商号の会社がたくさんできる可能性もあるわけです。もちろん、不正目的によって他の会社と誤認されるおそれのある商号を使用してはいけないといった規制(会社法8条1項)はありますが、そういった不正目的は排除請求したい側が立証しなければなりませんから、既存の商号使用企業は「商号管理」にも気を配る必要があるのではないでしょうか。(会社法の規定以外にも、民法上の不法行為責任追及や、不正競争防止法上の差止請求、法人格否認法理などの判例理論が進むことも予想されます)

もっとも危惧されるべきは、郵便事業が絡む問題です。私の担当した事件でも過去に経験がありますが、郵便屋さんのミスによって裁判所からの特別送達郵便が届いていない、といった危険が考えられます。裁判手続においては、この「送達」というのがけっこう重要なところがありまして、送達がないと裁判は始まらないし、強制執行もできません。債権管理などにおいては、時効中断効が発生せずに、債権を消滅させてしまった、などというとんでもない事態も考えられます。間違えて郵便屋さんから受け取ってしまった企業が、きちんと郵便局に返送もしくは誤配の連絡をしていただければよいのですが、事務のほうでそのまま放置してしまったりしたら、えらいことになってしまいます。「不正の目的」まではなくても、同じ町内で同じ商号の株式会社が3つも4つも増えましたら、きっと債権者側に帰責性のない事件が発生することが増えるでしょう。

私は現在、4社ほどの法人代表者であった社長個人の破産管財人に就任しておりまして、この法人4社については破産開始決定申立がなされておりません。(つまり、まだ会社は生きております)ところが、郵便局は、私が何度抗議しても、「○○株式会社 代表△△」(つまり、私が受け取ってはいけない法人宛の郵便物)という宛名の郵便物を私の事務所へ転送してきます。(今後、この間違いによって私が弁護過誤を起こしたら、その責任は郵便局にもあることをあらかじめ申し添えます、という内容証明の警告文を送りました)これほど、郵便事業体のコンプライアンスがルーズな現実を受け止めると、もはや自己防衛としてのコンプライアンスを実現するしか方法はないようでして、ともかく△△宛の郵便物が当事務所に転送されてきた場合には、かならず事務職において宛名を確認し、企業名が先に付されたものはすべて封を切らずに転送する、といった行動規範を作りました。皆様方の企業におかれましても、郵便誤配リスク(送る場合も、受け取る場合も)は会社法現代化の時代において、増えることありましても、減ることはないものと思いますので、自衛手段は検討されたほうがよろしいかと思います。

さすがに、12月11日のビジネス実務法務検定1級試験では、会社法がらみの問題がまったく出ておりませんでしたね。そのかわりと言ってはなんですが、いきなりこの10月3日に施行されたばかりの動産譲渡公示制度や、集合債権譲渡担保、消費者保護関連法による広告規制問題など、ホットな話題が出題されていたようです。みなさま、お出来になりましたでしょうか?

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