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2005年12月28日 (水)

内部統制システム構築と企業価値(2)

(12月28日午後追記あります)

12月10日のエントリー(内部統制システムと企業価値)では、日本版SOX法適用時における企業再編問題について、すこしばかり空想を書いてしまいましたが、きょうはその続編ということで、営業秘密(事業機密)と企業価値についての若干の疑問について触れてみたいと思います。(最近、よく周囲の方から「よく、いろんな話題が続きますねぇ・・・」と感心されることが多いのですが、仕事をしながらの思いつきばかりなんで、あまり苦労せずに疑問が浮かんでくるんです。ですから、けっこういい加減なエントリーも多いのかもしれませんので、どうか気楽にお付き合いください)

商事法務のメルマガで知りましたが、東証1部の稲畑産業株式会社が株主、一般投資家向けに「大規模買付行為に対する対応について」と題する買収防衛策を公表されております。これとまったく同時に「企業価値最大化について」と題する企業戦略ビジョンも併せて公表されたようです。事前警告型の買収防衛策のリリースといったものは、それほど珍しくなくなりましたが、「わが社はこういった戦略によって企業価値の向上に努めたい、もし買収提案があるんだったら、こういった視点で堂々と企業価値向上策を公表してもらいたい」といった意思表明を同時に行うものは斬新であり、興味をそそります。私も、以前から事前警告型の防衛策を発表するのであれば、株主の比較材料を提供するためにも、こういった提言をくっつけたらどうなのかな、とも思ったこともありました。

ただ、稲畑産業のリリース自体は、それほど詳細な企業戦略というものでもありませんが、企業の保有する有限の資源を、この企業はどこに振り分けて戦略を立てていく予定なのか、内部留保はいつまで取り崩さずに保有するつもりなのか、等を公表するわけですから、ライバル企業や、同業に参入したいと考えている企業にとりましては、競争政策という意味合いで言えば、非常に計画がたてやすくなるわけでして、一種の「営業秘密」の開示にも近い意味を持つのではないでしょうか。こういった営業秘密に属するような企業内情報を惜しげもなく開示したり、企業価値の適正な算定を株主にしてもらうために、知的財産などのオフバランス取引上の無形資産の保有状況などを開示する(国際会計基準に合わせることとなれば、オンバランス取引化?)ことが、今後ますます広まるのではないか、と予想されますが、こういったものは一面において知的財産や企業機密の流出の可能性を招き、企業競争力の低下につながるのではないか、といった危惧を生じせしめるのではないのでしょうか。

企業の保有するビジネスモデルや知的財産が開示されて、その企業価値算定に影響を及ぼすことにつきましては、時代の流れといってしまえばそれまでかもしれませんが、やはりいくら守秘義務を負う人や法人に対するものであったとしましても、企業外の第三者に手の内をさらけだすわけですから、事業上のリスクをできるだけ低く抑えるための方策については検討しておく必要があると思います。そういった意味での方策としてのひとつめは、昨今の内部統制システムの構築にあると考えます。全社的に知財法務の重要性を浸透させて、業務執行プロセスにおける企業秘密の管理を徹底することによって、たとえ投資家へ無形資産に関する情報を公開しても、その最も重要な部分については社内から漏洩されないような管理システムを構築することが非常に有益でしょうね。つまり、今後ディスクローズすべき情報が増えれば増えるほど、内部統制システムの構築が適正になされている企業の情報管理の重要性が高まるものと考えられます。

そして、もう一つの方策が、無形資産の客観的な価値化、つまり無形資産の市場化といったものの進展ではないかと思います。以前たしか日経新聞に「無形資産の時代」といった連載テーマで、伊藤一橋大学副学長が論稿を出しておられたときにも取り上げさせていただいたのですが、そのときは、私は果たして無形資産といったものが、価値の客観化に耐えられるものなのだろうか、市場化といったものは無理ではないか、と疑問を抱いておりましたが、その後「産学連携事業における銀行融資」の現実を垣間見たときに、「この無形資産価値の市場化、客観化はもはや待ったなしやなぁ」との思いを抱きました。また、このたび「裸の無形資産や企業機密」が開示されることなく、その価値だけが企業外に公表されるスキームとしましては、この無形資産の客観的価値化といった作業は非常に利便性が高いのではないか、とも思えてきました。なんといいましても、無形資産などの価値算定を説明するにあたり、「市場価値」を参考にしましたとだけ述べて、無形資産やビジネスモデルの内容を個別に開示することを避けることが可能になるように思います。

もちろん、無形資産が企業価値におよぼす影響といいましても、副次的な判断材料にとどまるものだとは思いますが、内部統制システムの構築といった「しんどい作業」が不祥事防止や業務の効率性アップといった「なかなか目に見えないもの」で終わることなく、企業戦略の展開にも大きな威力を発揮するといった前向きな理由で導入されるための材料としては大きな意義があるんじゃないでしょうか。

(追記)

午前中は、いつもの平日のアクセス数と変わりありませんが、午後から一気に激減しております。( ̄~ ̄;)??皆様、やはり会社から閲覧されているのですねぇ。。。多くの企業はきょうのお昼で「終業」ということなんでしょうね。うちの事務所も、大掃除も終ってもう仕事納めとなりましたです。

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