会社法における「内部統制構築義務」覚書(2)
先日エントリーいたしました「会社法における内部統制構築義務覚書(1)」とは少し観点が異なりますが、これも重要な問題点と考えておりますので、本当に「覚書」程度に書き留めておきます。
昨日、届きました月間監査役臨時増刊号(508号)では、シンポジウム分科会の議事録が収録されておりまして、「監査役と監査人の新しい連携のあり方(適正なディスクロージャーに向けて)」と題する分科会記録が掲載されております。この分科会は、まだ会社法規則、法務省令案などが公表される前のものではありますが、日本監査役会主催のシンポジウムということで、「監査役と会計監査人との連携のあり方」を中心として「内部統制監査」と「財務諸表監査」との関係などが識者によって議論されております。このシンポで興味深いのは、会計監査人にとりましては「財務報告の信頼性」確保のための評価基準、監査基準といったところを中心に議論するための「内部統制議論」があり、監査役にとりましては、会社法で規定されている取締役の職務の執行適正を確保するための「内部統制議論」(会社法348条)があるわけで、この両者の違いを認識したうえで、どうやって連携を果たしていくべきか、といったことに焦点があてられているところであります。企業会計審議会内部統制部会長の八田教授が司会進行を務めていらっしゃいますが、公認会計士による内部統制監査のあり方、企業経営者による内部統制システム構築へ向けての実務指針の決め方、会社法や省令による「内部統制論」と金融庁が進める「財務報告の信頼性確保のための内部統制論」との関係および今後の考え方など、内部統制理論の今後の発展について参考となる意見も述べられております。書店で販売されていない雑誌ですので、なかなか入手するのも困難かもしれませんが、こういった議論がなされているところからいたしますと、ディスクロージャー制度と関連する内部統制監査の理論的、実践的な発展は、会社法上の内部統制構築義務(取締役または監査役の)の有無を個別事案の中で議論する際に影響力をもつ場合もありそうな気がいたします。
財務諸表監査のための内部統制評価は統制リスクの評価に関するものとして捉えられるわけですから、これと別個の内部統制監査というものへの評価基準、監査基準が必要になってくるわけで、そこではおよそ監査役と監査人との「連携」が欠かせないところとなりそうです。内部統制監査のための実証手続の際には、様々な情報が監査役と監査人の間で共有せざるをえないことになるわけでして、その情報や情報に基づく両者の判断過程といったものが、後に紛争事案における取締役や監査役の善管注意義務や監視義務の有無を判断する際に有力な資料となる、といったケースが考えられるように思います。
ただ、実際に国際基準のレベルを維持するにいたる内部統制構築といったものは、本場アメリカのSOX法の適用状況を参考にしましても明らかなとおり、法律施行以降相当の年数を要するようでして、上場企業の内部統制監査報告書といったものが、投資家に有益な情報を与えるものとなるまでには、まだまだあと3、4年ほどは時間を要するのではないか、というのが私の感想であります。(以下、3に続きます)
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