消費者団体訴権と事業リスク
ようやく(日曜日を除いて)6連日の忘年会も終了しまして、これからはクリスマスモードと「和解モード」(嫌なことは年内に片付けよう、といった雰囲気のために、この時期は裁判の和解成立に向けた話し合いが急ピッチに進む事件もけっこうあります)に突入することになります。
忘年会の席で、消費者ネットワークのNPO法人を支援する弁護士さん方とお話をする機会がありまして、消費者団体訴訟に向けた準備状況などについて、いろいろと伺いました。
そういえば、2,3日前に日経ニュースでも報道されておりました。消費者契約法が改正されて、認証団体(団体訴訟を提起する資格を与えられた団体)となって、企業の契約や商品販売を差し止めることになるわけですが、団体自体が原告となるために(つまり被害者たる消費者が原告に加わる必要はない)どういった資金で運営されていくのか非常に興味があります。あまり中身について詳細にお話することはできませんが、その弁護士さん方のお話では「なるほど・・・」と思わせるような団体訴権の利用方法をすでに準備されており、おそらく差止請求だけでも(つまり、損害賠償請求については当面は提起できないとしましても)NPO団体が(資金面で枯渇することなく)企業を相手にドシドシ訴訟を提起していくためのシステムは十分構築できるようです。しかも、いままでは消費者が「200円、300円の世界」のために、やむをえず泣き寝入りしていたような「商品」についても、この制度を利用することで商品販売や契約方法の違法性をトコトン追及できるわけです。
しかし、こういった団体訴権が利用され、将来的に被害者代表のような形で損害賠償請求まで認められるようになりますと、企業の事業リスクもまた増えていくような気がします。企業コンプライアンスといった側面から眺めますと、行政団体からの監視、株主からの監視、公益通報者制度による内部者、外部者からの通報による監視、そして一般消費者的立場のNPOからの監視といった多方面からの企業活動への監視システムが「あたりまえ」になり、そういった監視に基づく企業活動への圧力といったものは、今後大きな事業リスクとして評価されるようになるのではないでしょうか。営業所単位でも、裁判管轄が認められるようですので、(つまり企業本社以外の場所でも販売差止、営業差止の判決が下りる可能性がある)全国規模で消費者団体訴訟が盛り上がることは必至のようですし、公益通報とはまた違った対応を企業として準備しておく必要がありそうです。また、認証される消費者団体とはどういった組織か、といった問題を含め具体的な対応方法等につきましては、別途エントリーしたいと思います。
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コメント
既に差止訴訟のみでも資金がまわっていく工夫を考えておられる方がいらっしゃるわけですか。制度の詳細は全然わからないのですが、先日インセンティブがないんじゃないかという趣旨のエントリを書いたところでした。現場を離れて考えると制度論への不平を書くだけに終わりますが、当事者として考えた場合にはそういうわけにはいきませんものね。少しシニカルすぎた発想を反省しつつ、公表するには差支えがあると思われるアイデアを想像してみることにします。
投稿: neon98 | 2005年12月20日 (火) 03時07分
neon98さんのエントリー拝読いたしました。私も実はneonさんと同じ感覚だったんで、すこし意地悪な質問をしてみたんです。(損害賠償請求権が認められるとしても、被害者以外の人間に損害賠償請求できるかどうか、かなり発想の転換も必要ですよね。まして差止め請求となると、団体独自の利益というものがどっかた出てくるのか、皆目見当がつかなかったものですから)
ちょっと、詳細をかけないのは、弁護士さんによって利益獲得のスキームが少し異なるようで、まだ完全に方針が固まっていないからです。ただ、やはり現実に消費者運動を長くやっておられる方ばかりなんで、他の団体との関係や、被害者組織との関係など、その業界を熟知していなければわからないような経験、知識が駆使されることで、収益の確保をはかることが可能なようです。
これからの法制化が企業においても注目されるところだと思いました。
投稿: toshi | 2005年12月20日 (火) 15時23分