監査法人ランク付けと弁護士専門認定制度
昨日のエントリー(監査法人のランク付けは可能か)に対しまして、たくさんのコメント、ありがとうございました。KOHさんにご紹介いただいたPCAOBのレポート、たしかにランク付けではございませんが、けっこう詳細な監査法人への調査報告がなされているようで、ビックリいたしました。皆様のコメントを総合いたしますと、「建築確認審査と異なり、会計監査は裁量の幅が広く、客観的な審査になじまない、よってランク付けは困難」「客観的なランク付けを可能とするような人材がいない」「客観的なランク付けが可能であったとしても、その費用が膨大である」「寡占化をますます急進させる」・・・といったところ、のようです。かなり私的には納得いたしましたが、それでは「監査の監査」というものの効果は結局のところ、何者によって品質が評価されるのでしょうか。「資格保有者による会計監査人の審査は間違いない」といった信頼の基礎と同じレベルの基礎のうえに成り立つのでしょうか。それでは「儀式」と揶揄されてもいたしかたない、ということなのでしょうか。このあたり、私が大阪弁護士会の厚い壁によって弾き飛ばされております「弁護士専門分野の認定およびその紹介制度」の議論と非常によく似ているように思います。(正確には、はじき飛ばされておりますのは、私ともうひとり、業務改革委員会の副委員長さんですが)
業務改革委員会の委員としまして、商工会議所の理事の方々と懇談しておりますと、
「なんで弁護士はんは、自分らの専門を広告しないんや。わしら、あんたらの『ご専門』が知りたいんやで」
「俺はこれが得意やから、ええ仕事しまっせ!って、何で言わんのや。いつまでも敷居の高いままとちゃうか?」
と毎年のようにつつかれます。「ハハぁ、ごもっともでございます」と(言ったか言わないかは定かではございませんが)、私どもは弁護士会に戻り、さっそく「弁護士専門認定制度」などを構想し、専門認定手続や、その広報などを検討するわけでありますが、いろいろな委員会や役員の人たちから(誰、とは申し上げませんが)
「弁護士の専門や得意分野って、誰様が認定すんねん。そんなレベルを評定できるような高邁な弁護士がおるんかいな。ひょっとしておまえらか?(冷笑)」
「弁護士が得意分野や専門分野を広告するなんて、『金儲け第一主義』とちゃうか?なんと品のないことやろか。そら、市民から軽蔑されるだけやで」
「大阪には、市民や企業へ弁護士を紹介するところが、公式にあるんやから、なにも業務改革委員会がしゃしゃりでんでもええがな。そんな肩肘張らんでもよろしいがな。な、ゆるりと、ゆるりと。」
「弁護士会が(この弁護士は専門がこれです)と広報して、依頼者とトラぶったらどないすんねん。弁護士会が責任とるんか?」
とまあ、コンサバなご意見に押し切られ、我々中堅の弁護士の構想は毎年見事に、陽の目を見ないままに、次年度へ繰り越し続けられているような次第であります。(なお、弁護士会よりお叱りを受けるとブログの続行に支障を来たしますので、念のため申し添えいたしますが、もちろん私どもの構想に賛同していただいている会員の先生方や委員会もございます。上記発言内容につきましては20%程度値引きしてご認識ください。また、東京第二弁護士会は、某大手企業を模範として、弁護士広報活動を成功裡に展開しておりまして、最近は大阪でも東京の法律事務所の広報へ向けた計画をお持ちのようであります。東京などは、もっと割り切っておられて、営業やりたきゃ、自分の事務所でやったらいいじゃん、といった印象を持っていましたので、その組織力や、とても意外に思えます)
依頼者の企業にとりまして、比較的実力の差が認識しやすい「弁護士」と、監督官庁があり、100点をとって当たり前、誰も100点とっても褒めていただけない「会計監査人」(管理会計や税務といった場面ですと、会計士さんも実力の差が出るのかもしれませんが)とは、若干、状況は異なるのかもしれませんが、その実力のほどをオフィシャルに公表したり、専門分野や得意分野を誰かが認定して公表するといった制度は、実際のところ、資格保有者にはなじまないのかもしれません。司法試験も公認会計士試験も改正され、どちらも大量の合格者が見込まれて、大増員時代が到来するなかで、いつまでもその「職業倫理の神聖化」を背景にした企業とのおつきあいでは、企業情報の適時開示、消費者契約法など、企業の商品価値を一般市民に情報提供している時代の流れにそぐわないのではないか、とすこしばかり疑問を抱いております。
※ 実は「不動産競売の民間開放検討(法務省)」といった記事が目につきましたので、そっちをエントリーしようかと思ったんですが、どうも前フリで書き始めた上記「つぶやき」が長くなってしまいました。また、コメントをいただいた方へはあらためて、お返事差し上げます。月曜日のアクセス数 1711 どうも、ありがとうございました。(最近、コメントをいただく数が増えましたが、ココログのコメントは最新10個しか表示されません。せっかくコメントをいただきながら、すぐに消えてしまった方、申し訳ありません。これ、どうにか20個くらい、表示されるような仕組みってできないんでしょうか・・・・・)
| 固定リンク
コメント
「監査の監査」というのは難しい問題ですね。
現状、監査法人の「品質管理体制」を会計士協会がレビューし、その「レビュー」を公認会計士・監査審査会がモニタリングする。という制度になっています。
これはまだ新しい制度ですので、その実効性はこれから検証されていくのでしょうが、個々の監査意見に対しての監督ではなく、体制・システムの検証です。
PCAOBのレポートもザッと見た感じ(英語力の問題です。すいません)SOX法を根拠にしているようなのでエンロン事件を契機とした改革の一環でしょうか。
ちなみにアメリカと日本では監査報酬が文字通りケタ違いなので、そのまま比較されるとちょっと…というのが正直なところです。
以下、個人的な意見を書こうと思ったのですが長くなったので結論だけ。(詳しくは私のブログをご参照下さい)
現状では監査の信頼性の拠りどころは「責任の重さ」にあると思います。この方向性で間違っていないのではないかと考えています。
弁護士の認定制度については賛成です。が、認定主体と認定についての責任主体については難しい問題がありそうですね。例えば実績の開示とそれを根拠とする範囲での広告という形であれば可能ではないかと思うのですが、それも禁止されているのでしょうか?
投稿: L2 | 2005年12月 7日 (水) 01時12分
貴重なコメント欄を浪費してすいません。
上記コメントに書こうと思っていたのですが忘れていました。
私のブログに引用させて頂きましたので報告します。
何か問題があればご指摘下さい。
http://tobeacpa.seesaa.net/article/10308966.html
投稿: L2 | 2005年12月 7日 (水) 01時46分
ご紹介いただき、ありがとうございました。
貴ブログにて、若干のコメントをつけさせていただきました。今後とも宜しくお願いいたします。
投稿: toshi | 2005年12月 8日 (木) 02時19分