監査役からみた会社法施行規則(1)
私のブログをお読みになっていらっしゃる方々は既にご承知のことと存じますが、2月7日、会社法施行規則(法務省令)が公布されました。よくコメントいただく方が、だいぶ前に「今度は3本になるよ」ってコメント頂戴していましたので、まぁ予想通りでした(・・・・しかし、どんな方が私のブログをご覧になっていらっしゃるのか、ホント怖いです)
総会担当者の方、経理の方、役員の方、中小企業の経営者の方、士業、証券会社の方などなど、それぞれ関心のある分野が異なるでしょうし、おそらくあっという間に「会社法規則解説号」が企業法務界を席巻するでしょうから、私など解説する能力も必要もございませんが、やはり自分の役職からみた会社法施行規則について一言。(おそらく「月間監査役」でもすぐに解説が掲載されると思いますが)
1 会社法施行規則の運用指針として、「法務省令案」の雑誌は残しておく
商事法務の臨時増刊号や、ビジネス法務の別冊付録として、「法務省令案」の冊子がございますが、これ、単に改正点の比較のためでなく、今後の施行規則の運用指針を探るためにも大切に利用したほうがよさそうですね。昨日のエントリーとも関係しますが、法務省令案には「訓示規定」や「努力義務」、そして「規則の目的」といったものがけっこうたくさん規定されていたわけですが、規則が3本にまとめられたことなどから、大きく省略されているところがあります。「その他、これに準ずる事項」などの例示列挙事由の該当性などを判断するためにも、法務省令案に掲載されていた指針を参考にしたほうがいい場面もありそうです。
2 「業務の適正を確保するための体制整備に関する決議事項」の監査
おそらく会社法施行後初の取締役会に向けて、今後どこの企業でも、「どうしたらいいの?」と話題になりそうな点がここではないでしょうか。施行規則が公布され、規則の施行日と会社法の施行日が同じ日に設定されているわけですから、これから開催される取締役会で会社法が施行される日に決議の効力が発生するように、将来効のある(停止条件付き)取締役会決議をあらかじめとっておくこともできそうです。なお、監査役の監査業務が適正に行われるような仕組み自体もこの体制に含まれるということですから、体制整備の監査というだけでなく、体制作りにも監査役は一部加わるということでしょうね。しかし、内部統制構築の議論によく出てくる「業務執行の効率性」監査というものが、会社法上は「取締役の職務執行の効率性」だけに限られて、会社全般に及ぶ業務執行の効率性までは監査の対象とならないのか(それは内部監査担当者の業務なのか)、損失の危険の管理に関する規程その他の体制といったものの監査は、いわゆる狭義のリスクマネージメント基準の範囲でよいのか、それともクライシスマネージメントまでを含むものなのか、など、その監査範囲についても、企業によって判断の自由度がかなり高いのではないでしょうか。
3 事業報告に関する監査
敵対的買収防衛策の妥当性監査とか、監査役自らの一年間の活動状況の監査とか、会計監査人との連携(会社法施行規則では、監査役候補者は財務、会計などの識見が高いことを要求しているように読めますが、いかがでしょうか)など、どうやって事業報告書の適正であることを監査すればいいのか、現時点ではよく理解できません。おそらくこれから、いろんなところで議論されていくことでしょう。また、電話会議などを含む「監査役会のあり方」なども、社外監査役による出席状況、発言状況などが事業報告書に記載されるということであれば、今後早急に検討されるべき課題ではないでしょうか。会社債権者や株主へ情報を的確に開示することで「理想的なコーポレートガバナンスを構築する」ためには、監査役が善管注意義務を尽くすための「最低限度の業務」とは何か、を考えることも大切でしょうが、せっかく監査役の業務の自由度が増えるわけですから、IR活動にまで結びつくような積極的な企業価値向上策につなげていきたいものですね。(不定期にてつづく)
※ちなみに、ぴてさん(ぴてのひとりごと)が、施行規則のうち、インターネット掲載に関するエントリーを、またぐっぱるさんが、業務の適正を確保するための体制整備に関するエントリーを、さっそくアップされています。こういった「会社法施行規則ネタ」がございましたら、TBしていただけますと、たいへん刺激になりますので、どうかお気軽にお願いいたします。
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コメント
おはようございます。
会社法施行日というのは、いったい何時になるんでしょうか。これは施行規則で決まるもんなんでしょうか、それとも施行令で決まるんでしょうか。
どういった仕組みで決まるのか、よくわからんところです。
投稿: narita-k | 2006年2月 8日 (水) 10時58分
toshi先生、おひさしぶりです。精力的に更新されていらっしゃる様子、敬服いたします。
監査役の立場からしますと、株主代表訴訟における不提訴理由書の扱いについても悩ましいところではないでしょうか。とりわけ、役員間の馴れ合い防止といった意味が付与されているとなると、このたびの内部統制システムを構築するにあたっては、こういった不提訴理由書が株主のために作成されるための資料などもきちんと整える必要があると思います。そういった整備がなされない場合には、不提訴理由書の不備を問われて、監査役自身が損害賠償請求の対象になってしまうことも考えられるのではないでしょうか。
いずれにせよ、toshi先生のいわれるとおり、監査役それぞれの監査業務の自由度が上がった分、その責任主体としての重要度も上がったといったところでしょうか。
投稿: 神田川康郎 | 2006年2月 8日 (水) 13時36分
>narita-kさん
いつもコメントありがとうございます。
施行日については、平成17年7月26日から
1年半以内で、施行日を定める政令によって決まるとされています。まだ決まっていませんよね。私は5月1日と信じておりますが。
なお、会社法施行令や整備法などの簡単な解説は商事法務1754号の相澤さんの解説がわかりやすいと思います。
また、よろしくお願いします。
>神田川さん
おひさしぶりです。補足いただき、ありがとうございました。
これはブログを書き始めた最初のころに、エントリーのなかで私自身も疑問を書いたところでした。ちょっと、もう一度規則の該当部分を読んで勉強させていただきます。
投稿: toshi | 2006年2月 8日 (水) 14時15分
トラックバックありがとうございました!
省令では、内部統制システムの監視活動は監査役の仕事と捉えているようですね。
報告先がコンプライアンス部門でなく、監査役となっているところが、気に掛かるところです。
投稿: ぐっばる | 2006年2月 8日 (水) 20時49分
トラバ&リンクありがとうございます。
業務の合間をみて会社法施行規則を読んでいますが、細かいところが結構変更になっているみたいですね。この週末に読み込まないといけないですね・・・。
投稿: ぴて | 2006年2月 9日 (木) 01時50分