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2006年2月19日 (日)

PSE法の「猶予期間切れ」目前

皆様は「PSE法」というのをご存知でしょうか?平成13年4月に施行されたのですが、この4月に適用猶予措置の期限が切れまして、いよいよ本格的な「中古品販売禁止法」として違反者(法人を含む)には最高1億円の罰金が課されることとなります。かの有名な坂本龍一氏や高中正義氏ら、ミュージシャンの方もPSE法の改正要望のために署名運動を開始しておりまして、先週後半からボチボチと報道機関もニュースとして取り上げるところとなりました。

PSE法といいますのは、「電気用品安全法」のことでありますが、電化製品の危険性から消費者を守るために平成13年4月から施行されたものでありまして、電化製品の製造販売業者の検査章(PSEマーク)の付いた電化商品以外(ただし、指定商品に限ります)は「業者として」販売してはならない、といった法律であります。なお5年前に施行された法律でありますが、とりあえずこの5年間は電化製品の中古品流通について猶予期間を置いておりましたが、いよいよこの平成18年3月31日をもって、PSEマークの付いていない電化製品は販売製造はできなくなりまして、したがってPSEマークの付いていない電化製品については中古品としても流通することはなくなってしまいます。詳しくは経済産業省の説明をお読みください。(また、2月18日に読売ニュースで報道された記事はこちら)

おそらく、今後このPSE法関連のニュースが今後各マスコミによって報道される機会が増えるものと予想しておりますが、ビジネス法務として取り上げる意義も若干ございます。その理由は①電気製品の安全性確保の要請と環境保護問題が真っ向から対立する可能性があること②耐震強度偽装問題や証券取引市場規制問題などと同様、「事前規制」と「事後規制」のあり方が問われること③中古品販売業者の死活問題となり、営業の自由、財産権保障といった憲法上の権利をどこまで制約できるか、といった議論などなど、企業コンプライアンスといった方面での論点が山盛りと思われるからであります。おそらく感情的な意見や、行政よりの意見など、今後さまざまな議論がなされることと予想されますが、適宜、このブログでも「企業と行政規制の接点」といった視点から、取り上げてみたいと考えております。

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コメント

これ恥ずかしながら極々最近まで知りませんでした。
ご存じかとは思いますが、平成2年商法改正で最低資本金制度が導入されたときも5年間の猶予期間がとられたんですが、それを思い出しました。
当時も期限間近になって批判する人がいて、だったら制定時に言えばいいのにとか、5年間何やってたんだろうとか思った記憶があります。結局この制度無くなってしまったというのもご案内の通りですけれども。

ただ、この法律の場合にはいろいろと問題があるようです。

http://blogs.dion.ne.jp/tanimidori/

上記のブログは経産省の方のものらしいのですが、夥しい数の意見が寄せられていますね。そのほぼ全部が批判的なもののようですが、読んでいますと反対意見の方が説得力があるように思えてなりません。

立法に際しては、とくに国民の権利を制限するような立法では、その必要性と許容性とが厳しく問われるべきでしょう。

この法律では、上にもあります「電気製品の安全性確保の要請」がどこまで尊重されるべきかということだと思いますが、この法律によって本当にこれが確保されるのかという点も、その規制手法も含めて、再検討が必要なように思います。


いい加減な行政立法や解釈・通達のせいで国民が迷惑を受けるのは困ったものですね。

投稿: とーりすがり | 2006年2月20日 (月) 08時57分

はじめまして。

論点としては、まず「電化製品の安全性を国が保証する必要があるのか」と言う事かと考えます。これは「食品の安全性を国が保証する必要があるのか」「建物の安全性を国が保証する必要があるのか」と絡めると、面白いテーマになりそうな気もします。

次に、電気製品の安全性を国が保証する必要はないと仮定します。いざ、事故が起こった場合、消費者はどうすればいいのかと言うテーマにもなりますね。企業を訴える事になりますが、裁判で白黒つける方法は浸透していません。裁判制度の改善が必要になるんでしょうね。また、行政責任を問う声も出そうですね。

日本人の間には「お上がなんとかしてくれる」「なんとかするのはお上の仕事だ」と言う、お上意識がまだまだ残っているのではないかと思います。

投稿: マッキー | 2006年2月20日 (月) 21時57分

別の見方も必要かなとも考えたりします。
国家の存在意義は、究極的には国民の利益のためだといえないでしょうか。そのために、各種立法活動や行政活動があるわけだと理解しております。
「お上」の意識について、意見を述べられるほどの私見はないですが、法政策として、どういうものが適正であり、効率的であり、国民の真の利益になるかを考えることは、意味があり、かつその観点で不十分であったり不適切な立法などがあれば、批判してもいいのでは?

投稿: 辰のお年ご | 2006年2月20日 (月) 23時58分

批判して悪いなど言ってませんが。「お上意識」の真意は、政府が規制強化する背景には、我々自身が政府による規制・コントロールを望んでいるのではないかと言うものです。

何かあると政府の監督責任を持ち出す風潮があるような気がするのですが、いかがでしょうか。

投稿: マッキー | 2006年2月21日 (火) 00時42分

>とーりすがりさん

いつもありがとうございます。(こういった話題にもコメントをいただけるとは思っておりませんでした 笑)
ただ、ものすごーく、自分勝手で恐縮なのですが、とーりすがりさんに教えていただいた経済産業省の方のブログを拝見して、「この話題を真剣に取り上げるとブログが炎上するかも・・・・・」といった恐怖感が芽生えました。(しかし、ひとつのエントリーに1000以上のコメントがつく、というのは初めて見ました。)

あえて火中の栗を拾うべきかどうか・・・、この話題はエントリーのなかにも書きましたが、おもしろい論点をたくさん含んではいるのですが、ひとつ方向性を間違えると法律の世界から政治の世界へと力点が移ってしまって収集がつかなくなってしまいかねない問題を孕んでいるような気がします。マッキーさんや、辰のお年ごさんのコメントを拝見しておりましても、ただ単にPSE問題をとりあげるのではなく、そのなかで「何が問題なのか」を先に整理したほうがよさそうですね。
以後、留意したいと思います。

>マッキーさん

はじめまして。コメント、どうもありがとうございました。マッキーさんのおっしゃっているのは、事前規制と事後規制の問題に含まれるのでしょうか?
きょう、新聞社の方から取材を受けたのですが、興味は消費者からみたPSEといったところではなく、ビンテージモノのアンプなど数億円相当の在庫品を抱える中古音響機器店などの死活問題について法的にどういった論点があるか・・・といった視点でした。私は、もちろん、そういった視点も必要ですが、マッキーさんの言われるような問題点、たとえば事後規制だとしても、PSEのマークを信頼した消費者になんらかの損害が発生した場合には、行政責任(たとえばイーホームズのような民間確認検査機関にミスがあった場合に、その責任は監督者としての国の責任となるのかどうか)が発生するかどうか、なども重要な論点だと申し上げましたし、またノーベル平和賞をとられた「もったいない運動」の女史の方の主張に賛同しながら、この法律は過度の規制となるのではないか、などいろいろな論点があるとも思っています(まだほかにも申し上げたい論点はありますが)

>辰のお年ごさん

ひょっとすると、私のブログで「憲法違反」などといった問題を取り上げたのは初めてかもしれません。(罪刑法定主義のときに少し触れましたかね?)「ビジネス法務」と銘打って、憲法問題を論じるのは少々ルール違反かもしれませんが、すこしばかりおつきあいください。
この問題、すこし気になるところがありまして、すでにエントリーにも書きましたが、著名人などが署名活動をはじめ、たいそう盛り上がってきそうな雰囲気なんですが、国の政策を批判する際に、批判する側の主張が「自分の業界だけがよければいい」といった風潮になってしまわないか、という点です。現に「うちの業界の製品は特定指定商品からはずせ」といった改正要望を前面に押し出してる業界もあるようですし、これをやってしまうと何のための立法活動であり、行政活動であるのか、わからなくなってしまいそうですし、また批判する側の大儀名文もなくなってしまって「お上」への対抗力が薄れてしまう傾向になってしまわないかと懸念しております。マッキーさんの問題意識とはすこし外れますが、こういった一般市民側のエゴのようなもの、自己主張といったものを大きな法益にまとめて(環境権、過度の規制による立法、財産権規制の際のデュープロセス違反の有無など)整理してみせるのも、法律家の仕事ではないか、と考えたりしています。

長々と書きましたが、自分自身、もうすこし論点を絞ってエントリーしたほうがよさそうかな・・・と思っています。

投稿: toshi | 2006年2月21日 (火) 01時36分

とーりすがりさんが上記で教えてくれたブログですが、今チェックしたら閉鎖になっていました。後で読もうかな、と思っていたのに残念。閉鎖に追い込まれたということでしょうか。。。

投稿: 辰のお年ご | 2006年2月21日 (火) 02時29分

このエントリに興味を持ったのは、某省令と何となくかぶるものを感じたからだったりするわけですが・・・。

このブログに関しては、フレームアップするといった心配はいらないとは思いますけれども、話題の選び方等についてはそれなりの配慮はやはり必要なんでしょうね。

さて、その某省令の方ですが、すでにかなりの数のミスが明らかになっているようですね。本当は法務省のサイトに直ちに掲載すべきだと思うんですがねぇ。

投稿: とーりすがり | 2006年2月21日 (火) 15時51分

toshiさんへ
いろいろありましてコメントが遅れてしまったのですが、ちょこっと前に書いたエントリーをTBさせていただきました。
このマークの問題・・・グランドファーザー条項として猶予期間を定めていたのは理解できるんですけど、如何せん周知の方法というか取り組みが、相当広い商品が対象に渡ることとか特定の業種や所有者に深刻な打撃を与えかねないこと、そして見過ごされがちなのが「エコロジカル」な観点からの未対応商品についての「大量の粗大ゴミ化」という問題まで一般国民が周知するのに十分なくらいの程度と計画で行われていたのかという点が検証される必要があるんかなあという印象を持った次第です。
また、ある商品が周知期間が何年かについても結構結論出すのが難しそうな建て付けにもなってるようで(エレキギターの例とかご覧ください)、こういう法律の国民への適切な周知ってやっぱり大変だよなあとも思った次第です。

投稿: ろじゃあ | 2006年2月21日 (火) 18時06分

国民への周知は、マスコミの仕事かとも思いますけどね。なぜ五年前に、マスコミがこの件に関して取り上げなかったのか、理解に苦しみます。

これでは、もし官僚が意図的に悪法を作り上げた場合、国民には対処する手段がありません。マスコミが機能不全を起こしていると言うことなんでしょうね。

投稿: マッキー | 2006年2月21日 (火) 20時13分

みなさま、追加のコメント、ありがとうございました。
ちょっと本業やら、弁護士会のお仕事やらで忙しくしておりまして、追加エントリーもままならない状況で申し訳ございません。実は私もマッキーさんが指摘されているように、マスコミというのはもう少し以前から話題として取り上げられなかったのか・・・と疑問を感じていたのです。まぁいくら社会の公器とはいえ、ご商売ですから「機能不全」とまでは申しませんが。おそらく中古品販売の大手あたりが、正式に経済産業省に問い合わせをした時点あたりまでは、「なんかへんだぞ・・・」くらいにしか誰も気にとめていなかったのかもしれませんね。もしよろしかったら、どなたか経済産業省のHPにあります「Q&A」の中に、いつから「中古品の取扱」に関する質疑応答が掲載されたか調べてみてはいかがでしょうか。5年前からでしょうか??

投稿: toshi | 2006年2月22日 (水) 01時56分

いつから「中古品の取扱」に関する質疑応答が掲載されたか→今年の2月17日

投稿: unknown | 2006年3月 3日 (金) 01時50分

>unknownさん

情報ありがとうございました。実は私も知らなかったのですが2月の初めころかな・・・と思っていました。
あと5年ほど猶予期間を置くべきではないでしょうかね・・・あまりにも世間の反響が大きいようですし、リサイクル法との整合性に関しても、一般的な意見としては納得できないように思います。

投稿: toshi | 2006年3月 4日 (土) 14時32分

電取法と安全性が変わらないのに電取法の認可済みの物を販売禁止にすること、新品の製造を規制するための法律に想定外の中古や修理をこれに当てはめる事、既に流通されたものを再び流通前とする解釈、いずれもおかしいと思います。販売店が製造事業者になれるのですか。修理で当初の部品を変えたら製造なのですか。法令のどこを見ても中古の文字は見つかりません。記載のないものを規制するならば、新たな規定を別に設けるべきだと思います。法曹界はこれを問題にしないのでしょうか。

投稿: unknown | 2006年3月 7日 (火) 11時42分

これは新聞記者のかたにも質問されたのですが、もちろん司法も問題視すると思いますよ。ただ、少なくとも法曹資格を有する者として、十分検討しておかなければいけないのは、紛争の具体性がないと問題視できないこと、そして取締法規による規制のデュープロセスのあり方だと思います。中古品をこの法律の規制対象として、どの商品がダメでどれがセーフなのか、立法時に区別可能なのかどうか、区別できるとして、国民に納得できる説明ができるかどうかなど。とりわけ在庫商品を多数抱えている中古品業者の立場からすれば、規制による損害については法曹として問題にしていくのではないでしょうか。(もうすこし時間を要するところだとは思いますが)

投稿: toshi | 2006年3月 8日 (水) 02時49分

実際に被害(額)が算定できなければ問題視できないということなのでしょうか。
ビジネス法務の部屋というタイトルからすれば、また弁護士さんというお立場からすればそうなのかもしれませんね。

倒産してしまっては遅いと思いますし、中古品も廃棄されてしまえば、もうそれが蘇ることはありません。
実際に法施行される前に、廃業を決めたところ、従業員を解雇せざるを得なくなったところ多数あるそうです。
なぜ、そのようにならざるを得ないのか。
法解釈の妥当性に異を唱えられないとすると、それが誤っていたとしても誰も止められない。
予想され得る事態を未然に防ぐことも誰もできない。なにか寂しいです。
適当な例えではありませんが、日弁連が反対している共謀罪と同様、解釈によって権利侵害(事業者の財産もそうですが、消費者が正当に物を購入できる権利)
が予想されると言う点では同じに思うのですが。
素人考えですいません。

投稿: しろうと | 2006年3月 9日 (木) 00時05分

>しろうと さん

いえいえ、この問題、いろんな方からメールをいただきました。法律家であるがゆえに、現実論を申し上げる必要があろうかと思い、「紛争の具体性」という言葉を出したような次第です。未然に防止するということに対して、司法がいかなる有用性を持つか、非常にむずかしいところではないか、と思ってしまいました。経済産業省の部長さんのブログ炎上に関する朝日新聞の記事をみましても、やはりこの問題に関しては、まだまだ反響が大きくなることが予想されますし、私自身ももう少し法律面において、(とりわけ行政法問題として)フォローしていきたいと考えております。回答になっておらず、申し訳ございません。

投稿: toshi | 2006年3月 9日 (木) 02時03分

ネットで昨日の会合の中の記事を見つけました。

「特に、秋葉原で中古の放送用機材を売ってらっしゃる女性の方の生々しい発言には、胸を打たれました。
500あまりの在庫のうち、電安法に対応できる機材は4つしかなかった、もうこれ以上商売ができない、店をたたまざる得ないと思い、もう既にたたんだ。今まで、まじめに営業して来たのに、税金のきちんと納めてきたのに、こんな目にあうなんて納得できない。
こんな趣旨の発言でした。」

これはあまりに酷すぎませんか。あまりにも可哀相過ぎます。何の罪もない人が泣きを見る。やくざが何のいわれも無い理由で因縁つけて「商売やめろ」と脅しているのと何ら変わらないと思います。
この方の生活を破綻させてしまっても良しとする、正当な理由がこの法律にあるのでしょうか。

投稿: unknown | 2006年3月10日 (金) 16時03分

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