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2006年3月20日 (月)

会社法の「内部統制」と悪魔の監査(1)

会社法の勉強法としまして、これまでセレブな学習法、ロハスな学習法などを(自分勝手に)紹介させていただきましたが、会社法の法律学としての解釈のむずかしさ(多様性)を認識するためには「オトナの学習法」も必要なのではないか・・・などと最近思ったりしております。すでに会社法の5月1日施行に向けて、街の書店にはたくさんの「新会社法」基本書が並んでおりますが、どれを手にとってみましても、それなりに特色があってすばらしい出来栄えだとは思うのですが、会社法の「人間臭さ」が行間ににじみ出てくるものは少ないのではないでしょうか。人間はそれぞれプライドを持っているでしょうし、また出版社の思惑もあるわけでしょうから、なんとなく会社法の理解に関する自信のなさ がにじみ出てくるような基本書というものは、おそらく書けないわけでしょうね。私が数年前に、プロとして真剣に企業法務に携わらねばならないようになって、会社法に関する基本書を探していたとき、「神田会社法」のはしがきの冒頭に著されておられた「これは、私が現時点までに会社法に関して理解しているところをまとめたものである」というフレーズに魅かれ、内容もほとんど検討しないままにこの神田教授の会社法基本書を衝動買いしたことがありました。もちろん、日本を代表する商法学者の先生だからこそ、「私がいまのところ理解している範囲で書き綴りました」などと堂々と宣言できるものなんでしょうが、そういった「会社法を理解するうえでの悩み、ナマの経済社会を律する法律を扱うことの難しさ」のようなものが人間の弱さとして表現されているような会社法基本書がありますと、私的には膨大な条文数を誇る法律の理解のためにたいそう資するものになろうか、と考えております。プロボクサーの世界チャンピョンでさえ、試合の前には恐怖心のために「この武道館から逃げ出してしまおうか」と真剣に考えるといいます。会社法の基本書を著するにあたっても、おそらく著者ご自身は「私は完璧な理解者である」とは思ってはいらっしゃらないと推測いたしますし、「おっかなびっくり」で書かないといけない部分もあったりなんかするんじゃないか、とも考えたりします。先週のエントリーではありませんが、そんなときにも、やはりプロである以上は「カラダを張って」俺の意見は正しいんだ、と自信をもって書いていらっしゃるほうが読者にはありがたいのですが、「でもすこし怖い」といった叫びも聞こえてきますと、なにやらホッとするところもあったりいたします。昨今、出版されている新会社法の基本書を読んでおりますと、1条から979条まで、さも経済法としての思想信条に一貫性があり、その解釈には争いの余地がないほどに理路整然と条文解説がなされておりまして、制度趣旨についても矛盾というものが存在しないのではないか、と信じてしまいそうな雰囲気が漂っております。高尚な書籍であるがゆえ、それはそれで当然のこととは存じます。また顧問先企業に新会社法セミナーをやらなければいけない、といった著名な法曹実務家の方々や、これから司法試験に合格するぞ!っといった明確なインセンティブが備わっていらっしゃる受験生の方であれば、まぁ最後まで内容を十二分に理解しようという意気込みが継続するんじゃないか、とも思うのですが、ただ私のような場末の弁護士からいたしますと、どうも途中からしんどくなってくる。新鮮味がなくなるといいますか、トキメキ感が薄れるといいますか、そのあたりが偽らざる心境なのであります。

そんなことから、オトナの会社法学習法というものがあったら、どなたか教えていただきたいのですが、今のところ江頭憲治郎先生の論稿(昨年6月ころ)で別冊商事法務でもまとめて掲載されている「会社法現代化要綱案の解説」は、そんなオトナのココロをくすぐる宝石が適度に散りばめられており、やはりおもしろいですね。会社法、施行規則が出揃ったところでこそ、再度これを熟読する意味があるような気がいたします。なにがオトナのココロをくすぐるかと申しますと、(もちろん既に熟読されていらっしゃる先生方はご承知のとおりですが)会社法の「産みの苦しみ」を比較的正直に表現されていらっしゃるからです。このあたりは法制審議会からの議事録や国会審議録などを丁寧にフォローすることでも理解できるのでしょうが、私のような「一般の仕事持ちの弁護士」には、そのあたりまでフォローするだけの時間的余裕はございません。で、この解説論文、とりわけ要綱試案で出てきて要綱案では消えていった条文だとか、要検討事項がそのまま検討中で終わってしまったとか、試案には出てこなかったけれども、突然要綱案で出ちゃった・・・などなど、法律化へ向けての人間模様が背景から読みとることができます。なかには「とりあえずこれで法律化してみて、様子をみましょう。また都合が悪かったら5年後あたりを目途に改正するなどして・・・」のような条文もあったりして、ここは強気で攻めて、ここは譲歩するといったような各界の意見集約の産物ではないか、と思われる部分もあったりしまして、「会社法は幕の内弁当ではなく、日替わり弁当ではないか」といった議論から、「法とは何か」という高邁な議論などとも関連付けてしまいたいほど、おもしろい世界へ導いてくれたりしますし、なによりも会社法の条文の解釈というものは、そんなに理路整然とひとつの答えは用意されていない、といった実態を認識させてくれるところに大きな意味があるんじゃないでしょうか。

なんだか、タイトルである「会社法の内部統制と悪魔の監査」という本題に入るまえに、ずいぶんと長い前フリになってしまいました。(笑)この本題部分はまた明日にでも入ることにいたしまして、きょうはちょっと早く寝ないといけませんので、失礼いたします。(月曜日は、昼からずっと東京の「表参道」というところにある某大学にいてます。)

3月 20, 2006 会社法の「内部統制」と悪魔の監査 |

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コメント

いつも楽しく拝見しております。
「会社法現代化要綱案の解説」、
私も気に入っています。

会社法の条文の海におぼれかけた頃、
ふと思い出して、読み直したところ、
改正の背景やプロセスがわかりやすく、
急に楽になった覚えがあります。

座談会の中で、
会計参与の制度は、知らないうちに
いつの間にか入っていたというくだりには、
やっぱり!と得心しました。

「大人」には、ストーリーが必要ですね。

投稿: zousan | 2006年3月20日 (月) 07時47分

こんにちは。
おしさしぶりです。
先生、きょうは東京はあったかいでしょう。

表参道にある大学というと、表題と関係の深い先生方がたくさんいらっしゃる大学のことですね。また差し支えない範囲で、いろいろと情報を教えてください。期待しています。

投稿: narita-k | 2006年3月20日 (月) 12時52分

>zousan さん

はじめまして。コメント、ありがとうございました。
やっぱり「要綱案解説」、愛読されていらっしゃる方、いてはるんですね。
私もまったくzousanさんと同じ感覚で読み返しております。
「弱さ」を表現できる、ということは、裏を返すとその「弱さ」を克服できるほどの自信があるからこそなんだろうなぁ・・・と、エントリーを書いた後、想像しております。
また「オトナのストーリー」といった視点からですと、神田教授、江頭教授のライブドア事件での鑑定書もおもしろいですね(笑)こういった人間模様を想像するのが私的には大好きであります。
また遊びに来てください。

>narita-kさん

そういえば、narita-kさんのお勤めの会社が、日経朝刊の「なんやらランキング」でベスト10入りしていたような・・・。ああいったランキングというのは、お勤めになってらっしゃる社員さんからすると、どういった感想をお持ちなんでしょうか。実感とか湧くのでしょうか?
一度、聞いてみたいもんです。

ご推察のとおり、青山学院に行ってまいりました。

投稿: toshi | 2006年3月21日 (火) 01時59分

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