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2006年3月 6日 (月)

社外役員制度導入と体制整備事項(新会社法)

新会社法は、法362条4項6号、同5項などによって、公開大会社の場合には株式会社の取締役および従業員の業務の適法性、効率性などを確保するための体制整備事項を決定しなければならない、と定めているわけでして、このブログでも何度か関連エントリーを書かせていただきました。そろそろ各論的な問題も取り上げたいと考えているのですが、たとえば社外取締役や社外監査役など、社外役員の導入につきましては、はたして「整備すべき事項として決定」しなければならないのでしょうか?もちろん、すでに導入されている株式会社にとりましても、整備状況を確認する必要がありますので、社外役員制度導入が「体制整備事項」に含まれるのかどうかは、すこしばかり関係があろうかと思います。

法務省令案(パブコメ案)「会社法施行規則案の概要」第4(社外取締役に関する事項の事業報告への記載)では、なぜ社外役員に関する一定事由について事業報告による開示を求めるのか、といった理由につきまして、自民党「企業統治に関する小委員会」において、実効性ある内部統制システム等に関する提言のうちのひとつとして、「社外取締役および社外監査役について、それらの属性等につき法務省令に基づき開示するように早急に検討すべきである」とされていることを理由としています。(詳しくはお手元に法務省令パブコメ案の冊子がございましたら参照ください)どうも、これを読みますと社外取締役や社外監査役を取締役会メンバーに迎え入れること自体も、法務省は内部統制システムの一貫のように考えている、と認識することが可能のようです。

ただ、これを当然のこととして理解するのは若干の疑問もあります。社会一般において、社外役員が取締役の職務の執行が法令定款に適合することを確保するための体制または株式会社の業務の適正を確保するための体制整備に資するものである、といったコンセンサスが得られている、とハッキリと宣言できる段階ではないような気がします。(むしろ、法が特別取締役の制度などを導入して、意思決定の迅速性などを考慮している趣旨からすれば、社外役員の存在は取締役会の意思決定の効率性を毀損するものだ、という意見もあります)もちろん、社外役員はうちの会社では必要ない、といった株式会社においては、「社外役員導入といった方法による体制整備の必要性はない」と決議すればよいことになりますが、それでもその前提では、社外役員制度の導入は体制整備にとって有益であることまでを否定するものではありません。

この点、まだ私自身もよくわからないのですが、なぜ社外取締役や社外監査役などの制度を導入したことが内部統制システムという体制整備に有益と判断されるのか、そのあたりをうまく説明するためには、会社法における内部統制システム構築論とか、社外取締役制度を導入する目的(既に以前エントリーいたしましたように、株主の代弁者としての機能を重視するのか、株主への説明責任論を重視するのか、あるいは取締役の違法行為防止、アドバイザリー的存在論を重視するのか)をきちんと整理した議論が必要ではないか、と思いますね。(なお、ご参考のため、会社法施行規則124条は以下のとおりです)

(社外役員を設けた株式会社の特則)

第百二十四条 

会社役員のうち社外役員である者が存する場合には、株式会社の会社役員に関する事項には、第百二十一条に規定する事項のほか、次に掲げる事項を含むものとする。
 一 社外役員が他の会社(外国会社を含む。以下この号において同じ。)の業務執行取締役、執行役、業務を執行する社員若しくは法第五百九十八条第一項の職務を行うべき者(他の会社が外国会社である場合にあっては、これらに相当するもの。第三号において同じ。)又は使用人であるときは、その事実及び当該株式会社と当該他の会社との関係重要でないものを除く。)
 二 社外役員が他の株式会社の社外役員を兼任しているときは、その事実(重要でないものを除く。)
 三 社外役員が当該株式会社又は当該株式会社の特定関係事業者の業務執行取締役、執行役、業務を執行する社員若しくは法第五百九十八条第一項の職務を行うべき者又は使用人の配偶者、三親等以内の親族その他これに準ずる者であることを当該株式会社が知っているときは、その事実
 四 各社外役員の当該事業年度における主な活動状況(次に掲げる事項を含む。)
  イ 取締役会への出席の状況
  ロ 取締役会における発言の状況
  ハ 当該社外役員の意見により当該株式会社の事業の方針又は事業その他の事項に係る決定が変更されたときは、その内容(重要でないものを除く。)
  ニ 当該事業年度中に当該株式会社において法令又は定款に違反する事実その他不当な業務の執行(当該社外役員が社外監査役である場合にあっては、不正な業務の執行
)が行われた事実(重要でないものを除く。)があるときは、各社外役員が当該事実の発生の予防のために行った行為及び当該事実の発生後の対応として行った行為の概要
 五 社外役員と当該株式会社との間で法第四百二十七条第一項の契約を締結しているときは、当該契約の内容の概要(当該契約によって当該社外役員の職務の適正性が損なわれないようにするための措置を講じている場合にあっては、その内容を含む。)
 六 社外役員の当該事業年度に係る報酬等の総額(社外役員の全部又は一部につき当該社外役員ごとの報酬等の額を掲げることとする場合にあっては、当該社外役員ごとの報酬等の額及びその他の社外役員の報酬等の総額)
 七 社外役員が当該株式会社の親会社又は当該親会社の子会社(当該親会社が会社    でない場合におけるその子会社に相当するものを含む。)から当該事業年度において役員としての報酬等その他の財産上の利益を受けているときは、当該財産上の利益の総額社外役員であった期間に受けたものに限る。)
 八 社外役員についての前各号に掲げる事項の内容に対して当該社外役員の意見があるときは、その意見の内容

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