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2006年3月25日 (土)

八田教授の「内部統制の考え方と実務」

やっと入手しました。ご存知、金融庁企業会計審議会内部統制部会長による「内部統制の考え方と実務」(3月20日発売 日本経済新聞社 1700円)

4532312698 四半世紀にわたって、その人生を「内部統制」と「会計士のインテグリティ(誠実性)」の研究に捧げてこられた八田進二先生(青山学院大学)が、平成18年3月時点ではありますが、改正証券取引法(金融商品取引法)で予想される内部統制報告書実務のあり方を説き下ろした著書です。私が公認コンプライアンスオフィサーの試験勉強をしていたころ、参考図書のひとつとして掲げられておりました「内部統制の統合的枠組み」を拝読して以来、たいへん尊敬申し上げている先生の著書、ということもございますが、なんといっても内部統制監査に向けて公開企業がどのような準備をすればいいのか、その実務指針の方向性を考えるにはまさにピッタリの一冊であります。さっそく3時間ほどでザッと読了いたしましたが、もはや「付箋」だらけになっております。基本的には昨年12月に企業会計審議会内部統制部会から出されました「財務報告に係る内部統制の評価及び監督の基準のあり方について」の解説本と考えてよろしいかと思いますが、八田先生からみた「ライブドアという企業に内部統制監査があったらどうなっていただろう?」とか「会計士の報酬は今後どうあるべきか」「内部統制の不備を指導することは、監査業務との兼業禁止違反か」などなど、私自身も以前からたいへん興味を抱いておりました問題への八田先生ご自身の見解なども記されておりまして、企業担当者の方にも(たいへん読みやすいですよ)、また企業会計に携わる方にもお薦めいたします。(私のようなものがたいへん僭越な言い方ではございますが)なお、これは私の単なる推測にすぎませんが、この本には財務報告の信頼性確保のための内部統制報告実務の一般的手法(経営者による内部統制報告書のひな型や、監査人による内部統制監査報告書のひな型なども織り込まれています)に関する説明がございますが、おそらく「もうすぐ出るよ」とウワサされております内部統制の「実務指針」も、これに沿った形になるのではないか、と思います。

また、法曹からみましても、新会社法や会社法施行規則等に規定されました体制整備(取締役会および監査役との関係)の決議内容やその相当性判断実務と会計監査人による内部統制監査との関係など、会社法と改正証券取引法にまたがる非常に有益な示唆がございますので、これはまた別の機会にエントリーさせていただこうかと思っております。

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コメント

M・Eです。早速、八田先生の本を購入しました(本当は、昨日、東京有楽町で宝塚のベルバラを見に行った帰りにでも購入したかったのですが、購入しそびれたため、今朝、事務所近くの本屋で購入してきました。因みに私は生まれて初めて宝塚をみましたが、感想は胸のうちに秘めておきましょう)。早速、帰りの電車の中で読みたいと思います。
 昨日の買収防衛策の記事といい、いつもながらの精力的な情報発信には感服します。
 

投稿: M・E | 2006年3月27日 (月) 11時02分

連続の投稿、すいません。(きちんとご挨拶しませんでしたが、ある会社の法務部の者です)
私も八田教授の本、購入しました。
先生の前ではちょっと申し上げにくいのですが、「う・・・ん」といった感じです。
たしかに読みやすいのですが、なんか頭に残らないのです。どこをどう読んだら「付箋」が貼れるほどに頭に残るのか・・・
私がおそらく内部統制構築の何たるかを全く理解していないのかもしれません。
ぜひ、先生のご解説などお願いできたら、と思います。
いつも勉強させていただいておりながら、勝手なお願いで申し訳ありませんが。

投稿: oups | 2006年3月27日 (月) 11時11分

>M.Eさん
コメント、ありがとうございます。
内部統制をご講演される立場からしますと、やはり気になる一冊ですよね。私の印象など、また(すぐにでも)アップしたいと思っておりますので、またよろしければご意見など頂戴できたら幸いです。

>oupsさん
はじめまして。連続投稿でも大歓迎ですよ。
実は、oupsさんのご意見は、他の方からもメールを頂戴しておりまして、率直なご意見かと存じます。ここはビジネス法務に関連するご感想であればどんなご意見でも構いませんのでどしどしご意見ください。
おそらくこれまでの八田先生の考え方や雑誌などの講演録などを読んでおりますので、その問題点が指摘しやすいのかもしれません。「私の印象」といった観点から私なりに解説したいと思いますので、またお付き合いください。

投稿: toshi | 2006年3月28日 (火) 02時18分

はじめまして。お勧めの本、今日読み終わりました。官庁や監査法人の資料では、当然のこととして、説明が省略されている概念について、適確に説明がなされており、勉強になりました。
156ページの「日本の場合は、執行が絡むため、できるだけコストを減らしたいといった考え方が起こりやすいと思います。」の意味がよく分かりませんでした。

投稿: atsukai | 2006年3月28日 (火) 22時46分

>atukaiさん

はじめまして。コメントありがとうございます。
「執行」といった言い回しは、この前頁にも出てきますね。日本の場合は業務執行担当者の意見が反映さえて報酬額が決定されますから、当然に執行者の意思が反映されますね。新会社法でも、監査役に「同意権」はあっても、監査報酬額の決定権はありません。そのあたりの日本の制度についての説明ではないか、と私は考えています。
また、遊びに来てくださいね。

投稿: toshi | 2006年3月29日 (水) 03時09分

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